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セブンススタイル  作者: ブレイブ
第二部、三章、教国編
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八話、アリシアとグレイのデート

アリシアが泊まる客室


「やっとお休みになられましたか・・・」


メアとの話をした後、アイリーンと部屋に戻ったアリシアは、部屋に入るなりアイリーンに抱き着き泣き続けていた、アイリーンは自分の胸の中で泣くアリシアを背中をずっと優しく撫で続け、夜中になった所で少女は泣き疲れ眠った。


「・・・」


アイリーンが眠るアリシアを見守っているとその顔が不安気な表情になり手が何かを探し始めた、それを見たアイリーンがアリシアの手に触れるとアリシアはアイリーンの手を握りまた安心した表情になる。


「メア様、グレイ様、どうか早く、お母様を救ってあげて下さい・・・」


自分ではアリシアの心を癒す事は出来ても救う事は出来ない、そう理解している聖女はメアとグレイに闇に堕ちた少女の心を早く救ってあげて欲しいと願う。




翌日


目を覚ましたアリシアは、前日入れていなかった風呂に入り、アイリーンに髪を乾かして貰っていた、そしてドレスを着るとアイリーンの顔を見て小さく呟く。


「ありがと・・・」


「えっ?」


アイリーンはあまりに小さい声だったので聞き逃してしまったので聞き返す。


「なんでもないっ」


するとアリシアはプイッとそっぽを向く、そんな少女の仕草を見たアイリーンは頬をツンツンと突いてみたが無視されたので、クスクスと笑う。


「入るぜ、アリシア」


クスクスと笑って来るアイリーンをアリシアがツーンと無視する中、グレイが扉を開け部屋の中に入って来た。


「何よ?」


その声を聞きそっぽを向いていた状態から正面を見たアリシアは、彼を睨み付け何用か聞いた。


「俺とデートしてくれないか?」


「はっ?、なんであんたなんかと今日はアイリーンと約束があるの」


「・・・」


これはアリシアの良い気分転換になるかもしれない、そう思ったアイリーンはこの日予定されている自身のドレス選びを明日に回すことにした、そしてそれを言葉に出す。


「お母様?、私のドレス選びは明日でも良いですわ、ですから、グレイ様とデートに行って来て下さい」


「はっ?、なんでよ?」


「皇帝と言えどたまには遊びも必要ですわ、遊びに誘ってくれた人がいるんです、気分転換して来て下さい」


「・・・、こいつとデートに行かせて何が目的なのやら・・・、まぁ良いわ、グレイ、あんたとデートしてあげる、さっ行くわよ」


ニコニコと微笑むアイリーンの顔をジーと見つめるアリシアは、また彼女の顔からプイッとそっぽを向くとグレイの顔を見て、手を差し出す。


「おう!」


グレイはアリシアの手を取り、二人は町に出かけて行った。


「アイリーン、あなたは・・・」


暫くしてからメアが部屋に入って来た。


「勘違いしないでください、私は帝国の暗黒聖女、お母様の邪魔をするあなた達の敵ですわ、私の行動方針はお母様の心を癒す事、ただそれだけ、その為なら何でもします」


「そうですか、よく分かりました、今のあなたの事、やはりあなたは聖女です」


「ふふ、暗黒、聖女ですよ、メア様」


「ふふ、そうでしたね、暗黒聖女様?」


「はい!」


メアに暗黒聖女と呼ばれたアリシアを優しく支える少女は、可憐に微笑んだ。




教都グランシャリオ


ムスッとした表情なアリシアと手を繋ぎ歩いているグレイは、先に町を見て回り目星を付けていたカフェスタイルのケーキ屋の前まで来ていた。


「お前ケーキ好きだろ?、好きなの買ってやるから、ここ入ろうぜ」


「・・・、あんたにしては良い判断ね」


チラリとケーキ屋を見たアリシアはグレイの手を引きケーキ屋に入って行く、手を引かれるグレイは良し良しと内心頷く。


店内に入ると店が帝国の皇帝が来たとシーンとなった、それもその筈、アリシアの顔は以前の演説により世界中に知られている、観光客が多く訪れるケーキ屋なら、アリシアの事を知っている客が多いのは当然だろう。


「あんた、どれにする?」


そんな周りの者の視線など素知らぬふりで、どうせデートをするのならば思いっきり楽しんでやろうと思っているアリシアは、グレイの手を離しケーキが並ぶショーケース前に来ると手を後ろで組んで振り返り彼にどれにするか聞いた。


「そうだなぁ、俺はショートケーキで良いよ」


「そう?、私はショコラケーキね、見てあそこの空いてる席に座ってるからコーヒーと一緒に持って来なさい」


「はいはい、皇帝になってますます偉そーになったなお前・・・」


「あら、皇帝が偉そうなのは当たり前じゃないかしら?」


「そうですねー、座りたいなら早く座れよ全く」


「ふふ、そうさせてもらうわ」


アリシアはグレイにひらひらと手を振ると椅子に座る。


(うん、やっぱ可愛いな)


グレイは席に座るなり机に頬杖をつき、外を見ているアリシアを見て見惚れる。


(でもさ、お前にはやっぱ笑顔が似合うよ)


先程の会話でアリシアが笑顔を見せたのは小さく微笑んだ最後だけだった、前のアリシアなら先程のような会話であればもっと楽しそうに何回も笑っていたのに。


「えっと皇帝さんの彼氏?さん、前進んでるけど?」


「あっすまん、後彼氏じゃねぇよ」


「ええ?、こんなお店に二人で来てるのに?」


前に進むよう催促して来た女性の言葉を聞き、周りを見渡したグレイは周りがカップルだらけなのに気付く。


(こりゃカップルと思われても仕方ねぇか)


そう思ってアリシアを見るとニヤニヤしていた、彼女も気付いたのだろう周りがカップルだらけなのに。


(ぜってぇ、揶揄われる・・・、どうしたものか・・・)


こんな店に自分を連れて来た事を確実に揶揄って来るアリシアに対し、どう言い訳をするか悩んでいるうちに自分の番が来た、グレイはアリシアご注文のショートケーキとコーヒーと自分の分のショートケーキとコーヒーを頼み、商品を乗せたトレイを受け取るとアリシアの元に行く、


「ほら、お前の分だ」


「ありがと」


アリシアは受け取ったショコラケーキをホークを持つと食べ始める。


「うまいか?」


「ええ、中々ね」


そう言って美味しそうにケーキを食べ進めるアリシア、好きな女性が美味しそうにケーキを食べる様子を楽しげに見守るグレイは、甘い物が好きな所は変わってないんだなと思った。


「あなた、食べないの?」


「いや、揶揄って来るのかな?って身構えてたんだよ」


「いくらなんでもデート中にそんな空気が読めない事しないわよ」


そう言ってグレイの顔の前にホークを突き出すアリシア。


「もし私をそんな事をする女なのだと思ってるのなら、このホークをあなたの顔に刺してやるわ、で?どうなの?」


「・・・、思ってました」


正直に言った方が良いのだろうなぁと思ったグレイは、揶揄われると思っていたと素直に言った。


「素直でよろしい、その素直さに免じてやめてあげる」


華麗な動作で指先で持っていたホークを握り直したアリシアはケーキを一口食べてからコーヒーを飲む、グレイはコーヒーを飲んで、あら美味しい、などと言っているアリシアを暫く見つめてから、ケーキを食べ始めた。




ケーキ屋を出たアリシアとグレイは噴水広場にやって来ていた、ここはグランシャリオの観光名所であり、先程のケーキ屋のように沢山の観光客カップルが集まっている。


「あなたは余程、周りに私が彼女だと思って欲しいようね」


そう言ってグレイと手を繋いでいるアリシアは彼の顔をジーと見て来る。


「偶々だよ偶々、観光名所なんてカップルが多いもんだろ?」


「ふーん」


「なんだよ、ふーんって」


「なんでもなーい」


そう言って、繋いでいる手を離しアリシアはグレイの腕に抱き着く。


「ちょっ、なんだよ」


腕に抱きつかれ腕に二つの柔らかい感触を感じたグレイは照れる。


「優しくしてくれてるお礼にサービスよ、感謝しなさい」


「そうかい、ならありがたくお前のサービスを受けてやるよ」


「エッチ」


「お前から抱きついておいて何を言うか」


噴水に近付く二人、アリシアは静かにその美しい光景を見つめる。


「綺麗ね」


「だな」


「ねっ、キスしよ?」


周りのカップルがキスをしているのを見てキスがしたくなったアリシアは、グレイにキスしようと言った。


「あ、あぁ」


好きな女性にキスしようと誘われて断る理由などグレイにはない、グレイが頷くとアリシアは目を閉じる、それを見たグレイはアリシアの腰に手を回し抱きしめるとキスをした。


「一応合格かしら、今のは良かったわよ、ちょっとときめいちゃった」


そう言って頬を染めて微笑むアリシア、グレイはアリシアのその表情が余りにも可愛くてドキッとした。


「ねぇ見て、グレイ、あれ嫌いじゃない?」


アリシアが指差すのはアクセサリーを沢山並べた露店だった、少し離れたこの場所から来ても店が並べているアクセサリーはキラキラと光っており綺麗だ。


「ねっ、似合う?」


露店に近付いたアリシアは、髪飾り、を手に取ると髪に合わせてみせる。


(やっぱ、アレ、欲しかったんだな、そうだよな、母ちゃんの形見だもんな、俺だってそんなのがあるのなら喉から手が出るほど欲しい)


昨日アリシアが母の髪飾りを見て一瞬見せた嬉しそうな表情を覚えているグレイは、店主の顔を見る。


「おっちゃん、これ買うよ、いくら?」


「五万ゴールドだ」


「た、高いのね?」


「買った」


グレイは財布を取り出すと五万ゴールドを店主に渡す、五万ゴールドを受け取った店主はまいどありと伝えて来た。


「さっ、それはお前のだ、大事にしてくれよ」


「ええ、でも良かったの?、五万なんて、結構厳しいんじゃない?」


「問題ねぇよ、好きな女の為さ、ほらまだまだ見て回る所はある、行こうぜ」


グレイはアリシアに手を差し出す、買ってもらった髪飾りを胸に抱くアリシアはその手を取ると、また町の中を歩き始めた。



大教会


デートを終え二人は教会に戻って来た。


「今日は楽しかったわ、グレイ、ありがとう」


楽しかった、アリシアはそう言った、それを聞いただけでグレイは内心でガッツポーズをした。


「楽しんでくれたようで何よりだ、でもこの時間が終われば・・・」


「そうね、私は私の野望を諦めたりなんてしない、この世界は全部私が支配する、それを邪魔するのならばあなたは私の敵よ、グレイ」


しかしアリシアはグレイに手を差し伸べる。


「でも、私が好きなのならば、私と一緒に来るって手もあるわよグレイ、もしその気があるのなら、この手を取りなさい」


「断る、俺はお前をエンジェルズに連れ戻したい、その為にメア達といるんだ、お前とは行けない」


グレイはアリシアの誘いを断った。


「そっ、なら私とあなたはまた敵ね、グレイ」


「あぁ、お前に殺されないようにお前を取り戻してみせるさ」


「やれるものならやってみなさい」


「おう、それじゃあな、アリシア」


「ええ、グレイ」


デートの終わりが来た、アリシアは彼に近付きその頬にキスをしてから大教会の中に戻って行った。


「・・・、成功だ、成功だよな?、俺」


グレイはキスをされた頬に触れつつ俯く、そして足にグッと力を入れると・・・?。


「やったぜ!」


デートの成功を喜び真上に向けて大きくジャンプをした。


そんな一人の少年の様子をアイリーンが温かい視線で見つめていた。

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