五話、VSバトルシア人
大教会、地下
迫るバトルシア人、アリシアは横目でメアに視線を送ると、メアが一人目を鞘付きの剣で食い止め、右足で上に蹴り上げる、そこにアリシアが杖からダークショットを打ち込み気絶させた。
「光よ!」
「水よ!」
アイリーンとウォーリーがまずアイリーンが箱型の光の結界を作り五人のバトルシア人を閉じ込め、ウォーリーがその中に大量に投入する、逃げ場のなくなった彼等は気絶した。
「フン!」
「オラァ!」
グレイとケイネスが協力して土と鉄の壁を作りバトルシア人達の行く手を阻む、そこにキースが炎を撃ち込み、意識を奪った。
「行くわよ!エリシア!」
「あぁ!」
「二人の武器を強化するよ〜!」
シメラが二人の武器に魔法をかけて刀身を巨大化させる、二人はそれを無理矢理に振るってバトルシア人達をまとめて吹っ飛ばした。
「な、なんだこやつらは、何故これほどまでに・・・」
ジェラーゼンはあっという間に40人ほどのバトルシア人を倒したアリシア達を見て恐れおののく。
「フン、私達は既に何回か戦ってるのよ」
「だから手の内は知り尽くしてるんです」
「だからこそ、逆に共闘をすりゃ一緒に戦いやすいってわけよ!」
二人のアリシアとメアはバトルシア人を動かしているスイッチを破壊する為、ジェラーゼンを迫る、それを見たジェラーゼンは別のスイッチを取り出すと押した、すると部屋の奥から大きな叫び声が聞こえて来る。
「グォォォォ!」
「くはっ!?」
次の瞬間未来のアリシアが殴られ、吹き飛ばされた、吹き飛ばされた未来のアリシアにバトルシア人達が迫るが騎士団がカバーし、その間に未来のアリシアは立ち直った。
「クク、私の最終兵器、英雄リューチャの改造体だ、皇帝よ、いくら貴様と言えどこいつには簡単には勝てんぞ!」
「グォォォォ!」
英雄リューチャと呼ばれた改造バトルシア人はアリシアとメアに迫る。
「ダークシールド!」
アリシアが闇の盾でリューチャの動きを止める。
「ホーリーソード!」
その盾の横からメアが飛び出し光の斬撃を当てるが傷一つ付いていない、剣をその筋肉に弾かれたメアは体を仰け反らせた。
「ぐっ!?、あぁぁ!?」
その先にリューチャはメアを掴む、そしてギチギチと握りしめて行く。
「今は味方のその子を殺させると思う?」
アリシアはリューチャの手の中にワームホールを作ると、出口を自分の横に出現させた、出現した出口からメアが降りて来る。
「助かりました・・・」
「捕まってんじゃないわよ、情けない、今ので奴の防御力の高さは分かった、残念だけど手加減は出来ない、殺すしかない、分かっているわね、メア?」
そう言って尻餅をついているメアを冷たく見据えるアリシア、もしここで殺さないと言うのならば、先に邪魔なメアを殺し一人でリューチャを殺すつもりだ。
「分かっています・・・、彼にはもう意識はない、なら楽にしてあげるべきです」
「あはっ、分かってるじゃない、それじゃ手加減は無しで行くわよ!」
「・・・はい!」
同時に駆け出す二人、アリシアは走りながらリューチャの胸に魔法陣を貼り付け三重に重ねた。
「何でもいいわ!、攻撃を撃ち込んで!」
走りながら魔法陣を維持するアリシアはメアに魔法陣に攻撃を打ち込むよう言った。
「はい!、ホーリーショット!」
メアは魔法陣に向けてホーリーショットを撃ち込む、すると魔法陣が爆発し、その爆発によりリューチャの胸が焼け焦げた。
「グァァァァ!?」
胸が焼かれた痛みにリューチャが悲鳴をあげる、メアはその声を聞いて俯き、アリシアは確実にダメージを与えていると微笑みながら、剣に闇の魔力を溜めると焼け焦げた皮膚を斬る、すると剣が通り鮮血が舞った。
「良し、メア、あの胸の傷を狙いトドメを刺すわ、あなたの魔力を貸しなさい、光と闇の魔力を合わせるわよ!」
「・・・、こんな残酷なやり方・・・」
「フン、なら甘い手を使い死にたいの?、確実に勝つ為に残酷な手でも非情な手でも使うべきよ」
そう言ってアリシアはメアに向けて剣を振るう、メアは慌ててアリシアの斬撃を受け止めた、アリシアが斬りかかった理由、それはメアが甘い事を言ったからだ、メアに斬りかかりつつ左手の杖ではダークチェーンを発動させ、リューチャを拘束している。
「あいつが動かないうちに私はアンタなんて殺せる、さぁどうする?、メア、私に殺されて死ぬ?、それともアレに殺されて死ぬ?、それとも私と共にあいつを殺して生き残る?、どれ?」
「そんなの決まってます!」
そう言ってメアは左手を差し出す、そしてアリシアが左手で握る杖を持ち光の魔力を発動させた。
「フン、ウジウジと鬱陶しい奴、それじゃ行くわよ!」
「はい!」
アリシアとメアは魔力を合わせる、膨れ上がる魔力は杖の先に白と黒の魔法陣を作り上げた。
「「ダークホーリー!」」
ズン!と言う衝撃と共に細く収束させた魔砲が放たれる、その名は・・・。
「ブラスター!」
ダークホーリーブラスター、光と闇の魔力が合わさりあった事により、ゼロの魔力に近い性質になった魔力はリューチャに迫り、アリシアが剣で傷付けた胸を貫いた。
「ガァ・・・」
胸を貫かれ心臓を失ったリューチャは倒れ、絶命した、アリシアは敵を倒せた事を喜んで微笑み、メアは悲しそうに目を伏せる。
「他も終わったみたいね、ふふ、アンタ達って戦闘能力だけは高いわよね、そこだけは素直に賞賛してあげるわ」
そう言って俯いているメアの肩を叩いたアリシアはジェラーゼンに近付いて行く。
「アンタは今日から私の下僕よ、お姉ちゃんを操るなんて馬鹿な事をしたのだから当たり前よね?」
「ッ!、ウォーリーさん!」
「分かっています!」
アリシアが目を光らせる、諦めたかのように皇帝を見上げているジェラーゼンの瞳が洗脳された証拠として一瞬赤く光った、その次の瞬間にジェラーゼンはウォーリーの水に覆われた。
「クスッ、無駄よ!」
アリシアはウォーリーの顔を見て無駄だと言う、ウォーリーは訳が分からないと言った表情で浄化魔法を止めた、水の中から現れたジェラーゼンは・・・?。
「私・・・、ジェラーゼンは・・・、皇帝陛下に・・・、全てを捧げます・・・」
アリシアの下僕のままであった。
「そ、そんな!、僕の浄化が効いていない!?」
「あははっ!、対策をしないとでも思ったの?、あなたの浄化魔法はもう私の魔眼による洗脳を解けないのよ!」
そう言ってアリシアはもう一度魔眼を光らせる、するとジェラーゼンが立ち上がり、近くに落ちていた剣を手に取り首に当てた。
「何を?」
「私が指を鳴らせば自害するように設定したの、教皇が死ねばどうなるか、分かるわよね?」
「ふふ、聖教を信仰する者の中で強く信仰している者は、自殺をしてしまうかもしれませんわ、それも大量に」
そう言ってアリシアに近付き抱き着きメアを嘲笑うアイリーン、アイリーンはその表情だけでこう言っているのだ、教皇を殺されたくなければ教国は帝国の物となったと認めろと。
「くっ、嫌な手を使いやがって・・・」
アリシアに恋心を抱くグレイでもこのやり方は気に入らないようでアリシアを睨む、アリシアはそんな彼を見て笑みを深め、右手を上げ指を鳴らそうとする。
「分かったわ、ここは引く、でもいつまでもあなたの思い通りになんてさせないわよ、私」
教皇が殺させる訳にはいかないそう判断した未来のアリシアは今の自分に引くと伝えた、それを聞いたアリシアは右手を下げる。
「残念ながらずっと私の思い通りよ?、さて帰るのならさっさと行きなさい?、あぁ、手を貸してくれた事には感謝してるわ?、ありがとう」
適当な喋り方で手を貸してくれたメア達にアリシアは礼を言った、アイリーンはそれを聞いてクスクスと笑っている。
「・・・、アリシア、少しだけで良いのです、話をしませんか?」
帰れと言われたメアだが、話をしたいと食い下がった。
「・・・、今日は協力してもらったしね?、良いわよアンタと無駄な時間を過ごしてあげる、でも後でね、こいつが余計な事をしたせいで私自身が色々と調べなきゃいけなくなったのよ、あぁ、それとメア以外の他の奴らは全員帰りなさい、それがメアと話をする条件よ」
「分かりました、皆さん先に戻っていて下さい」
アリシアと話がしたいメアは仲間達に帰るよう促す。
「待て、俺も残らせろ、仲間を一人にさせたくねぇ」
「もう一人残らせる事による私のメリットは何かしら?」
「無い」
「くっ、あはは!、無いですって?、ふっふふ、アンタらしいわ、良いよ、残りなよ、あはっ!、ほんっと笑える、ふふ」
皇帝である自分相手にメリットは無いと堂々と言い放ったグレイの言葉を聞きアリシアは楽しそうに笑う、グレイはそんな彼女を見て頬を掻き、メアはそりゃ笑われますよと言った視線を彼に送った。
「アイリーン?、シスターに頼みその二人の部屋を用意させなさい、ジェラーゼン、お前の部屋に案内しなさい、ついでに普段の仕事は出来るように設定もしてあげる、ニアとお姉ちゃんは私について来て調べ物を手伝ってアイリーンも後から来なさい、キースは・・・、遊んでて良いわよ?」
「「「はい」」」
「俺にもまともな仕事をくれ・・・」
遊んでて良いと言われ肩を落とすキースを見てアリシアはドSに微笑む、そして文句ありありな様子な彼に背中を向けると部屋から出て行った。
「メア、私の事頼むわね、後、これを渡してあげて、お母さんの物なの」
そう言って未来のアリシアはボスから受け取った母親の髪飾りをメアに渡す。
「分かりました」
メアはアイリスの髪飾りをポケットの中に入れるとギグルスの町に帰って行く仲間に手を振る。
「はぁ・・・終わりましたの?、それなら早くして下さい」
「待たせてごめんなさいアイリーン、行きましょう」
「ええ」
メアとグレイもアイリーンについて行き、与えられると言う部屋に向かって行った。
この日からこの世界の各国に徐々に伝わる事になる、教国は帝国の物となったと、それは各国にとって非常に衝撃的な出来事であった。




