一話
一話はアイリーン視点かつ彼女が教国に対し仕込みをする話なので少し短めです、次回からはアリシア視点に戻ります。
教国、教都グランシャリオ
アイリーンは教国に戻った、すると沢山のシスター服を着た少女達がアイリーンを出迎える。
「お帰りなさいませ、聖女アイリーン様」
(私は暗黒聖女と言うお母様に貰った呼び名がありますわっ!)
「ええ、ただいま」
アイリーンは少女達に内心で毒を吐きながら、笑顔で挨拶をする。
「早速、教皇様にお会い下さいませ」
(・・・拘束せずにこれを言ってくると言う事はエンジェルズは私が帝国に降った事を話していないようですわね、第一段階はクリアですわ)
もしエンジェルズやアイリーンが帝国に降った事を知る者達が、教国にそれを伝えているのならば、この場でアイリーンは拘束されていたはず、それをされないと言う事はまだ教国に情報は伝わっていないと言う事だ、その為アイリーンは内心でほくそ笑む。
「ええ分かりましたわ」
アイリーンはシスターに分かったと伝えると彼女達を引き連れ、大教会、教国の本部に入って行った。
大教会
誰もいない廊下、ここだと判断したアイリーンは振り返り、後ろにいる二人の少女のうち、一人の少女の目を覗き込む。
「あ・・・」
アイリーンに目を覗き込まれた途端、少女の瞳から光が無くなった、アイリーンの魔眼により彼女の傀儡にされたのだ、不審に思ったもう一人の少女がアイリーンに何か言おうとしたが、その前にアイリーンはもう一人の目を覗き込み、傀儡とする。
「魔眼を通して情報は送りましたわ、やる事は分かりますわね?」
「はい私達の役目はアイリーン様の意見に同調し」
「アイリーン様と共に皇帝アリシア様をこの国に招待するよう進言する事です」
「よく出来ました」
二体の傀儡の出来上がりに満足気に頷いたアイリーンは、二人に手招きし着いて来るよう手招きすると、教皇の部屋に入った。
「よく戻ったな、聖女アイリーンよ」
教皇の部屋に入ると、教皇ジェラーゼンがアイリーンに声を掛けて来た、アイリーンは彼に近付くと彼の前で片膝を着く。
「はい、ただいま戻りました、教皇様」
教皇に向けて健やかに微笑んで見せたアイリーンは頭を下げる。
「うむ、風のスタイル使いから頼まれた仕事は雷のスタイル使いが皇帝となってしまうと言う形で失敗したようだが、ふん、こんな仕事ただの我が教国から力の持たない弱者への慈悲だ、気にする事はないぞ、アイリーンよ」
他の国を見下しせせら笑う教皇をアイリーンは心の中でクズと罵っていた、あくまでもその表情は微笑んだままであるが。
「それでは、今日は暇をやろう、明日からはこれまで通り職務を果たせ」
「教皇様、一つお願いがありますわ」
「なんだ?」
お願いがあると言うアイリーンに教皇はなんだ?と聞き返す。
「私、考えましたの、このままではいずれ我が教国を含めたこの世界の各国と帝国は戦争となる、それは我が教国は望まない事でしょう?」
「まぁな、あの国と戦争となれば、我が教国とてただでは済まん、ならどうすると言うのだ?」
「無駄な血を流さない為にも、皇帝を我が教国に招き話し合いをし、説得をすべきです」
「・・・、優しいお前らしい考えだ、流石は聖女と呼ばれるだけはある、・・・お前達はどう思う?」
教皇はアイリーンの狙い通り、背後にいる二人に意見を聞いた。
「私も無駄な血が流れる事は望みません、なのでアイリーン様の意見に賛成です」
「私も同意見です」
アイリーンの忠実な二体の傀儡はアイリーンの狙い通りの言葉を言った、それを聞いたアイリーンは必死に笑いそうになるのを堪える、これで上手く行く筈だ。
「・・・、よかろう、初の試みではあるが、皇帝と話をしよう、私も無駄な血が流れるのは望まぬからな、右の者よ、帝国に招待状を出せ、アトリーヌ帝国の皇帝と戦争を起こさない為の話し合いをしようではないか」
「分かりました」
黒髪のシスターはアリシアに送る招待状を作る為部屋から出て行った。
「しかし、この話し合いが無駄に終われば分かっているな?、アイリーンよ」
「はい、無駄な血を流そうとする、愚かな帝国を滅するのですね?」
「そうだ、その為にもバトルシア人を集めておる、これは奴等に対しての最大の切り札となる、同胞を討ちたい者はおらんからな、バトルシアを前面に出すだけで奴等の動きは鈍くなるだろうよ」
帝国と戦う為にバトルシア人を集めていると聞いたアイリーンは、内心彼を嘲笑う、何故ならこの国にいるバトルシア人はアリシアがこの教国を手に入れれば全員解放されるからだ。
「流石は、この世界の影の支配者、教皇様ですわ」
「ふん、楽しみだなぁ、アイリーンよ、少女皇帝がどのように我が教国で踊ってくれるか」
アリシアをただの少女と侮る教皇は楽し気に笑う。
「それでは今日はこれで休みますわ」
(ふふ、踊るのはあなたですわ)
アリシアを知るアイリーンは踊らさせるのはお前だと思いつつ、教皇の部屋から離れ、大教会の自分の部屋に向かって行った。




