アリシアの過去その3
過去、オルビアの町
揶揄って来る男の子達から逃げ出し孤児院から飛び出した幼いアリシアは泣きながら町を歩いている、町歩く住民達が涙を流しながら歩く少女を見て心配し声を掛けて来るが泣いているアリシアには聞こえていない。
「ニャー・・・」
そこに猫の声が聞こえて来た、アリシアはキョロキョロと周囲を見渡し子猫が木の上で鳴いているのを見つけた。
「子猫さん降りれないんだ・・・」
アリシアは誰かに助けて貰おうと周囲を見渡したが大人はいない、その間にも悲しそうに鳴き続ける子猫、意を決したアリシアは木登りを始めた。
「んしょっ、んしょっ、待っててね、子猫さん」
子猫を救うと決めた少女の瞳はとても澄んでおり、優しいものであった、そして遂に子猫がいる場所にまで登り切ったアリシアはまず子猫の頭を優しく撫でる。
「ナー・・・」
「うん、一緒に降りよう」
アリシアは子猫を頭の上に乗せると木から降り始めた、しかし木の下の方にまで来た所で足を滑らせ地面に落ちる。
「イタタタタ・・・、うぅ・・・」
木から落ちたアリシアの瞳には涙、また泣きそうになったが、木から落ちる瞬間にアリシアの頭から飛び降りていた子猫が近付いて来て、アリシアの頬を舐める。
「あはっ!、あはは!、くすぐったいよぉ〜!」
頬を舐められくすぐったいアリシアは笑う、その瞳にはもう涙は溜まっていなかった。
「ニャー!」
暫くの間アリシアの頬を舐め続けた子猫はアリシアにお礼を伝えると、時折振り返りアリシアに向けて鳴きながら去って行った、それを見送ったアリシアは服に付いた砂埃を落としてから、孤児院に戻って行った。
「・・・」
そんなアリシアを幼いグレイが見守っていた。




