八話
暫くは帝国での日常編です
アリシアの寝室
夜、帝国に戻ったアリシアは自身の眷属となり娘となったアイリーンに褒美を与えていた、その褒美とは自身の血を吸う事を許可する事だ、主人の血を与えられると言う事は眷属にとって最大の褒美、アリシアが血を吸う事を許した時、アイリーンは涙を流して喜んだ。
「んくっ、んくっ」
そして現在、アリシアは母親が子に乳を与えるように、アイリーンに自身の血を吸わせている、アリシアの血を吸うアイリーンは正に歓喜の表情であり、血を与えるアリシアの表情は聖母のように慈愛に満ちていた。
「あぁ・・・お母様、血をお恵み頂き、本当に感謝致します・・・」
そう言って満足行くまで母の血を吸い、母の首筋からその牙を抜いた裸のアイリーンは同じく裸の母の胸に抱き着く、アイリーンは母に抱き着きながらチラリと自身が付けた牙の後を確認すると、既に治って行っていた、それを見たアイリーンは少し残念に思う、牙の跡は自身の誇り高き牙が母に付けた証であるので残って欲しかったのだ。
「この鍵はあなたのおかげで手に入った、このくらいの褒美与えて当然だわ」
そう言ってベッドの端に置いていた鍵を手に取り手で弄るアリシア、鍵をアイリーンの顔に近付けると、褒美を貰えた要因である鍵にアイリーンはキスをした。
「さて、今度は私があなたの血を貰って良いかしら?」
「私の血を!お母様に!?、勿論ですわ!」
アイリーンは嬉しそうに首筋を母に差し出す、アリシアは一度娘の首筋をペロリと舐める、するとアイリーンはピクリと身を震わせた、そんな娘の反応を楽しんでからアリシアはその美しい首筋に牙を食い込ませ血を吸い始めた。
(あぁ・・・、お母様に血を吸われている・・・、何度味わってもこの感覚は非常に甘美ですわ・・・)
アイリーンは母に血を吸ってもらう事が嬉しくて歓喜する、アリシアは血を通して流れ込んでくる娘の感情を嬉しく思いつつ目を細め、姉とアイリーンだけは何としてでも守り切る、そう思う、ニアも娘にすればこの中に加わるだろうが、気が向かないのでまだ先の話だ。
「ふふ、やはりあなたの血は美味しいわ、アイリーン、吸血鬼にしてからは更にね?」
「ふふ、これからはいくらでも私の血を味わって下さいませ」
「ええ」
怪しく微笑むアイリーンの頬を撫でたアリシアはベッドに寝転がる、そしてアイリーンと目を合わせる、それがどう言う意味が瞬時に理解した暗黒聖女は母と交わって行った。
皇帝の部屋
アイリーンが選んだ血のように赤いドレスに身を包むアリシアは、皇帝の椅子に座り頬杖をついている。
「さて、アリシアよ、久し振りに戻った所で悪いが、お前に進言したい事がある」
「何かしら?、アルムス」
アリシアは将来の夫となる彼に向けて首を傾げる。
「教国だ、あそこを我等が帝国の物にしよう」
「教国、この世界の最大宗派と呼ばれる聖教の大元、この国にすら教会がある、この世界の影の支配者だな」
「そう、そして教国を落とせば、手始めにこの世界を手に入れると言う、陛下の野望の実現がかなり容易になるわ」
「そうね、その為にもアイリーン、あなたを手に入れたのだから」
そう言ってアリシアは黒いドレスを着る娘の頬を撫でる。
「はい、聖女の称号を持つ私はあの国では最大の影響力を持つ、正しく私は教国に対しての帝国の最大の兵器ですわ」
「アイリーン、あなたは兵器なんかじゃないわ!、私もそんなつもりであなたを吸血鬼にしたわけじゃない!、あなたが欲しいそう思ったから吸血鬼にしたのよ!」
「は、はい、申し訳ございません、お母様」
アイリーンはアリシアが兵器と呼ばれギグルスから離れた事を聞いていた、それなのに自分を兵器と言い、しかもその事を誇ってしまった事を恥ずかしく思う。
アリシアは以前自分を兵器だと言ったり思ったりしたが、あれは心底嫌っているメアに対する嫌がらせだ、もし目の前でお前は兵器だなどと言う者がいれば、惨殺するそれくらいにアリシアは誰かに兵器と呼ばれる事を嫌っている、勿論それはアイリーンや臣下たちにも該当する。
「二度と言わないで!、良いわね!?」
「分かりました、お母様・・・」
「・・・分かれば良い、ごめんね?、叫んだりして」
「良いのですわ、私が悪いのですから」
そう言って、母の手を取り微笑むアイリーン、それを見てアリシアは彼女に優しく微笑みかけた。
「ついでに言うとアルムス、あなたもよ、分かっているわよね?、もしあなたがまだ私の事を兵器などと思っているのならば、いずれ発表する婚約は破棄するわ」
「安心せよ、私はもうお前を兵器などとは思っておらん、愛する女性、そうとしか思っておらんよ」
「そう、なら婚約指輪は最大級に予算をかけて貰うわ、勿論あなたのポケットマネーを使って作るのよ?、覚悟しておいてね?」
「う、うむ・・・」
婚約指輪の制作に少しばかり国家予算を使おうと思っていたアルムスは、皇帝自身からポケットマネーから全額出せと言われ肩を落とす、そんな父の肩を娘が慰めるかのように叩く。
「それではアルムス?、次の相手は教国よ、一週間以内に落とす為の戦術を考えなさい、・・・さっきあんな事を言っておいて、不本意だけどアイリーンを作戦に使う事を許してあげる」
「分かった」
アリシアに作戦を考える事を任されたアルムスは部屋から出て行ったニアもついて行く、皇帝の部屋にはエリシアとキースとアイリーンが残る。
「一週間の暇が出来たわけだけど、何をしようかしら?、ねぇ三人共?」
「プールに行かないか?、大臣が皇帝だった頃にニアがワガママを言って作らせたデカくて凄い所があるんだ」
「是非、行こう!」
エリシアのプールに行こうと言う提案、キースは三人の少女の特に胸を見て是非行こうと言った。
「邪な思いを感じるけど・・・、まぁ良いわ、行きましょう、水着を用意しなきゃね」
欲望全開なキースをチラリと睨むアリシア、皇帝に睨まれたキースはプイッと視線を逸らす。
「用意させよう、ビキニタイプでいいだろう?」
「ええ、私のは黒で良いわ、好きな色なの」
「私もお母様と同じで」
「俺は持ってるから良い」
「お前には聞いてない、持ってなくても買って来いと言っていた」
「・・・、なんで君達俺への当たりが強いの?」
「事ある毎に私達の胸をジロジロと見てるからじゃない?」
「・・・」
女性は男が自分の体のどこを見ているのかに大抵気付く物だ、そしてよりにもよって皇帝に自身の視線の先がバレていたキースは、俯き大人しくなる、何故ならここで大人しくしないと下手をすれば打ち首だ。
「それでは行ってくるよ、明日はたっぷりと遊ぼうじゃないか」
「ええ、お姉ちゃん、あっニアも誘っておきなさいよ、アルムスは仕事があるから来ないでしょうけど」
「分かっている」
エリシアは店で水着を選ぶ為に皇帝の部屋から出て行った、部屋に残ったアイリーンは部屋に置いてあるソファでゴロゴロし始め、キースは部屋の隅っこで小さくなっている、そんな彼を見たアリシアは今日はもう揶揄うのを止めようと思い、読みかけの本を読み始めた。
夜
アリシアはアルムスの部屋にいた。
「明日はやっぱり来ないのね?」
「自分から仕事を与えておいて何を言うか」
「・・・、未来の夫に私の水着姿を見せたいと思ったのよ」
そう言って頬を赤らめそっぽを向くアリシア、アルムスはそんな少女の頬に手を添えるとキスをした、いきなりキスをされたアリシアは足をバタバタさせる。
「これで我慢してくれないか?」
「ズルいわ、このズルさは結婚式の費用もポケットマネーから出させるのに該当するわね」
「お前は私の財布をどこまで薄くするつもりだ」
「あら?、私は徹底的にワガママを言うつもりよ?、これからもっとあなたの財布は薄くなるのだから、頑張って働きなさいな」
「怖い女だ・・・」
アルムスがアリシアが言うワガママを想像して胃を痛くしていると、アリシアの寝息が聞こえ始めた。
(疲れていたのだな・・・)
この数日間は戦いの連続であったアリシア、アルムスは疲れるはずだ、と思い、未来の妻に毛布をかけてやる、そして暫くの間、その柔らかな髪を撫でてやり、自身も毛布の中に入ると、夢の世界に旅立って行った。
翌朝
「いつの間に?」
翌朝、目覚めるとアイリーンが隣で寝ていた、アルムスは既にいない、アリシアがどの時点でここに入ったのか顎に手を当てて考えていると、アイリーンが身を起こす。
「ついさっきですわ」
「・・・」
あっけらかんとしているアイリーンの顔がなんだかムカついたアリシアは、娘の頬を引っ張ったりして遊び始めた。
暗黒聖女アイリーン
フルネーム、アイリーン・レイティス
年齢、17歳
身長、162センチ
能力、光のスタイル使い、闇の力
称号、暗黒聖女
技、光の攻撃魔法、闇の攻撃魔法、光の防御魔法、闇の防御魔法、治療術。
説明、聖教会の元聖女、光のスタイル使いであり闇の魔女でもある、アリシアの眷属となり彼女の娘となった聖女は、母の野望を叶える為に暗躍する。




