六話、ギルスVSゼウス
海岸の隠れ家、上空
ケイネスの隠れ家の上空、エリシアは船を走らせ逃げるメア達の行く手を阻む為、ビームバスターの銃口を向けるが、未来のアリシアが乗るギルスがタックルをし、ビームを放つのをやめさせた。
「・・・、アリシア、お前とは戦いたくない、引いてくれ」
回線を開き、今愛理と戦っているアリシアと同一人物である未来のアリシアを殺したくないエリシアは、未来の妹に引いて欲しいと頼む。
「残念だけど断るわ、お姉ちゃん、引けばあなたはメアをみんなを殺す、そうなれば今の私はもう止まらなくなる、そしてその先にあるのは、全ての世界の滅亡よ、そんな事はさせない!」
「そうか・・・、なら私は今のお前の為に、その機体だけを落とす、アリシア、少し我慢していてくれ」
未来のアリシアはマルチウェポンソードの銃口をゼウスに向けるとビームを撃った、エリシアはビームシールドで弾を防ぎ、レールガンを展開させると放つ。
「くっ!」
未来のアリシアは迫るレールガンの弾をマルチウェポンソードの盾部分から発生させる事が出来るフォトンシールドで防ぐが、エリシアは未来のアリシアに防御させる事が目的であった、ビームブレイドを振りかぶったゼウスがギルスに斬りかかる。
「ッウウ!」
長きに渡る戦いで、ファントムでの空中戦の経験がエリシアより優っている未来のアリシアは、急激に増すGに耐えながらフライトユニットのブースターを吹かし機体を真上に向けて急加速させるとゼウスの斬撃を避けた、そして先程までギルスがいた場所を通り過ぎ背中がガラ空きなゼウスにビームを撃ち込む。
「くぅぅ!?」
背中にビームを被弾したゼウスはバランスを崩し地上にへと落ちて行く、アリシアはマルチウェポンソードをガンモードからソードモードに切り替ると、落ちて行くゼウスを追う。
「させるかぁぁ!」
このままではやられる!、そう判断したエリシアは真後ろに向けてレールガンを展開させると、後ろから迫るギルスに撃った。
「くっ!?」
ギルスは未来のアリシアの操縦について行けてはいない、その為アリシアの操縦桿の操作に機体がついて行けず、左肩にレールガンが直撃し、左肩のアーマーとその下の装甲が吹っ飛び、左肩のフレームが剥き出しになってしまった。
「くぅぅ!」
左肩に生じた衝撃によりギルスが仰け反っている内に、機体を地面に着地させたエリシアは、ビームバスターをギルスに向け放つ。
「こんのぉぉぉ!」
迫るビームを見て未来のアリシアがフットペダルを踏み込む、キュイィィンと言う音と共に激しくフライトユニットのブースターから推進剤をまき散らしながらギルスはその場で回転し、時間差を付けて放たれたビームを二回とも避けた。
「はぁはぁ、セェイ!」
機体に激しい動きをさせた事により生じたGを受けて肩で息をする未来のアリシア、ゼウスがビームブレイドを構えたのを見て、斬りかかる。
「やるじゃないか、だがスペックでこちらが勝る時点でお前の勝ちはない!」
そう言って左手で持つビームバスターを地面に投げ捨てさせたエリシアは、ギルスを蹴り飛ばすと左手で肩を掴み、ギルスの左腕を引きちぎった、左腕を失ったギルスから血のようにオイルが撒き散る。
『オーナー!、彼女が言う通りスペックで劣るのは事実・・・、このままでは!』
「くっ!」
このままでは負ける、そう考える未来のアリシアは周囲に目を走らせる、すると船の燃料を入れたタンクが見えた。
「あれだ!」
未来のアリシアはタンクに近付くとゼウスに向けて蹴り飛ばす、幸いタンクは大きくへこんだだけで壊れなかった、そしてタンクがゼウスの至近距離にまで迫った所で撃ち抜き、激しい炎を起こさせる。
「くっ!、見えない!?」
視界を遮る激しい炎、鬱陶しく思ったエリシアは機体を飛び上がらせようとするが、炎の中からギルスが飛び出して来た。
「しまっ!」
「ハァァ!」
未来のアリシアはゼウスに向けてマルチウェポンソードを振るう、エリシアはブースターを強く吹かし急いで機体を後退させる事で、コクピットの装甲を斬られるだけにダメージを抑えた。
『お姉ちゃん、そのダメージでももう駄目よ、その機体を失うわけにはいかない、帰還しなさい』
「・・・、すまない」
愛理と戦いながら二体のファントムの戦いを見ていたアリシアはエリシアに帰還するよう命じる、エリシアは悔しそうに未来の妹が乗るギルスを見てから、帰還して行った。
『アリシア、そのまま船の援護を!』
「ええ、任せなさい!、ギル、まだいけるわよね?」
『なんとか!』
「良し!」
未来のアリシアはメア達の援護をする為、機体を海の方に進ませた。
アリシアと愛理、ファントムパイロットに命令とお願いをした二人は、再び向かい合う、愛理が斬りかかろうとしたが、アリシアは端末を取り出すとどこかに連絡をかける。
「アイリーン?、もう良いわよ」
アリシアが連絡を掛けたのはアイリーンであった。
「なっ!?、アイリーンだって!?、まさか!」
「そうそのまさか、あの子は私の眷属、吸血鬼となっていたの、だから洗脳とか関係なく、永遠に私の戦力の一人になっていたわけ」
「くっ!」
アイリーンがアリシアの眷属、吸血鬼となり敵である事を知った愛理はマズイ、そう判断し船に向かおうとするが、周囲に現れた魔法陣に拘束された。
「悪いわね師匠、あなたをアイツらの所に向かわせたりなんてしないわ」
愛理を拘束したアリシアはニヤリと邪悪に微笑む、愛理はその邪悪な笑顔を見て悔しそうな表情を見せ、鎖をなんとかパワーで破壊するがその度に新たな鎖が現れ愛理を拘束する。
「駄目よ師匠、アイリーンが仕事を終わらせるまではね?、ふふ、あはははは!」
(くそっ!)
破っても破っても現れる鎖に歯噛みする愛理は願う、メア達がどうにかアイリーンを止める事を。
船
(ふふ、そろそろ始めますわ)
船に乗り広大な海を眺めていたアイリーンは瞳を赤く光らせていた、その瞳は吸血鬼の証である血の色。
(全ては我が主人、アリシア様、私の新たなお母様の為に)
アリシアの忠実な下僕となっている少女は、手に持っていた端末をポケットの中に入れ、主人に似た邪悪な笑みを見せると、船内に入って行く。
次回、暗黒聖女アイリーン




