三話
タイトルを変更しましたが最初のタイトルは最終話の題名にする為に変えました。
スタイルホルダーズの方も今後の重要な話の題名となります。
今後はセブンススタイルからタイトルが変更される事はありません。
パドルーの谷
未来のアリシア達は二箇所目の候補地がある谷を進んでいる途中に見つけた、兵士を見て岩陰に隠れた。
「あれは・・・アイオン国兵?」
「敵よ、このアイオン国はもう帝国の属国、つまり彼らはもう帝国兵ってワケ、私達の姿はもう伝えられているでしょうし、見つかったら問答無用で攻撃をしてくるでしょうね」
彼等が帝国兵の証拠として、ドラゴンのマークが刻まれた国旗を掲げて歩いている兵士が何人かいる。
「沢山いますわ、これはかなり厄介です」
帝国兵達は規則正しい足音を鳴らしながら、この先の二つ目の候補地にへと向かって行っている、その数は多く、監視の目も多い事から、この場所から飛び出せばすぐに見つかってしまいそうだ。
「どうしよっか〜」
「下はどうやっても無理だろうな、なら上からはどうだ?」
グレイは谷の上を指差す、兵士達が進んでいるのは谷の底なので、確かに上に登れば見つからずに移動出来そうだ。
「良い意見だね、採用!、みんな崖を登って谷の上から進むよ!」
「はい!」
未来のアリシア達は優れた身体能力を活かしあっという間に崖を登り切ると、谷の上を走り始めた。
崖の上を走っているとグレイが思い詰めた様子で口を開く。
「俺さ、その・・・、実はアリシアの事が好きなんだ」
「えっ!?」
「お前じゃない、今のアリシアだ」
「・・・」
同一人物なのにフラれた未来のアリシア達が不純である。
「ふふ、そんな事みんな知ってます、あなたのアリシアへの視線は特別でしたから」
「みんなって・・・、マジ?」
「うん、あんなに分かりやすいとね〜」
どこか落ち込んだ様子のシメラがメアの言葉を肯定する。
「なんだよ、なら言うんじゃなかったぜ」
「いや、誰かを好きだと言う気持ちを口に出すのは大切な事です、いざ思いを伝える際、迷いなく想いを伝える事が出来るようになるでしょうから、そして君の気持ちは闇の底にいる彼女を救う鍵の一つになる筈です」
そう言ってグレイの肩を叩くウォーリー、グレイはあんた良い人だなと、彼と握手した。
「あっそうだ、グレイ、私あなたの気持ちなんて気付いてたから、それと今の私も気付いてるわよ」
「・・・、気付いてるのになんで何も言ってくれないの・・・」
「仕方ないでしょ?、女の子は相手の気持ちに気付いても待っていたいものなの、まぁ答えはノーだけど」
余談だが、未来のアリシアは内心、ノーと答えるつもりとはいえ、告白するなら早く告白して来いよコノヤローとか思っていたが、それを言うとグレイが深刻なダメージを受ける可能性があるので、未来のアリシアは言わない。
「なぁアリシア、今のお前は何て答えるかな?」
「そうねぇ、死ねとか敵相手に何言ってんの?とかそんな感じかしらねぇ」
これは皇帝だった頃の自分を思い出しての答えである。
「・・・容赦ないね」
「あっごめん・・・、こう言う所、皇帝やってた頃の癖で中々治らなくてさぁ」
「良いよ、気にしてないよ」
と言いつつ全力で気にしているグレイの肩をウォーリーが叩き、元気付ける。
「グレイ、あなたの想いはウォーリーが言っていた通り、今のアリシアを救う鍵の一つになると思う、だから何を言われてもアリシアを諦めちゃダメだよ?、アタックあるのみだ!」
「ありがとう、愛理さん、俺やってみるよ!」
「うん!、その意気その意気!」
「・・・」
メアは思う、グレイは自身の想いをアリシアに告げようとしている、なら自分はどうだ?と。
(でも、何を言ったらいいのでしょう・・・、アリシアを一度裏切った私が・・・)
メアは考える、アリシアに自分は何を告げたら良いのか?と。
「時間が掛かっても良い、あなたの素直な想いを伝えれば良いのですよ、メア」
アイリーンは走る速度を落とすとメアにそう話し、また前を走る一団に混ざって行った。
「アイリーン・・・」
的確にメアを勇気付けるアイリーン、メアは彼女に心の中でありがとうとお礼を言うと、真剣にアリシアに伝える言葉を考え始めた。
「来た」
アリシアが持つ端末に未来のアリシア達の中から現在谷の上を走り二箇所目の候補地にへと向かっていると、メールが入る。
「バレずにメールを打つなんて、優秀ねぇ」
「ふふ、そうね」
「それで?、どうするの?、兵を谷の上に向かわせる?」
「このままで良いわ、彼等の動きはどうせ分かる、それにすぐに追い付けるわ」
そう言って空を見上げるアリシア、そこにはゼウスがおりこちらに近付いてきていた、そしてゼウスはアリシアとメアの目の前に降り立つ。
「流石に遅いわ、何をしていたの?」
「この馬鹿が腹を壊したんだ、だから仕方なしに船に一度戻っていた、ほらキース降りて早くアリシアに謝れ」
「す、すまん、アリシア」
エリシアに腹を壊した事を暴露されたキースはエリシアに機体から降りるよう促されるが、降りずに謝る、その理由は降りたら恐ろしい目に合うのが分かり切っているからだ、しかしエリシアはそんな彼を蹴り飛ばし強制的にコクピットから追い出す。
「・・・」
アリシアは目の前に落ちて来たキースを見つめている。
「な、なぁ?、怒ってる?」
「別に?」
キースの質問に別に?と答え微笑むアリシア、キースは皇帝の微笑みを見て怒ってる・・・と思い身が凍る想いをしたので・・・?。
「な、なら良いな!、ほら早くあいつらに追い付こう!」
敢えて開き直り許してもらおうとする。
「ええ、そうね?キース、早く追いつかなきゃ」
キースの言葉を聞き、ゼウスの手に乗り腰掛けるアリシア、ニアもその隣に座り皇帝と腕を組む。
「よ、良し、行くぞー」
「あら?、何を言っているの?、あなたは走るのよ?、お姉ちゃん?、谷に向かって」
「分かった」
キースは恐る恐ると手の上に乗ろうとしたが、皇帝は走れと言い、機体は空に飛び立って行った。
「くそぅ・・・、恨むぞ俺の腹よ・・・」
キースは自身の腹に恨みつらみを言いつつ、飛び去って行く機体を追って走り始めた。
パドルーの谷
「見ろ!、ゼウスだ!」
「私もいるわね」
未来のアリシア達は空を飛ぶゼウスを見つけた、そしてその手の上に腰掛けるアリシアも。
「見て?陛下、あいつらが走ってるよ」
「ええ」
アリシアはこちらを見る未来の自分とその仲間達に冷たい視線を送る、杖ならばここから砲撃しても彼等に届かせる事は可能だが、二箇所目は兵達に功績と言う最大の褒美を与えらつもりのアリシアは、今回は特に動くつもりはない、上から見下ろし、彼等が動く様子を見守るつもりである。
勿論、ケイネスがこの場にいると言うのならば、下に降りて己の手で殺すが。
「あれがいる時点でギルが必要ね、機体を取りに行ってくるわ」
「はい、お願いします」
「任せなさい」
未来のアリシアは転移しエンジェルズのファントム格納庫にやって来た、そこにアンナがいた。
「あなたがボスが言ってた、未来のアリシアちゃんね、・・・、顔を見せてくれない?」
アンナに顔を見せるように言われたアリシアは白い仮面を顔から外し、素顔をアンナに見せる。
「ふふ、私が思った通り、綺麗になった」
「ありがと」
「どういたしまして、見て、アリシアちゃん」
そう言ってギルスを指差すアンナ、機体にはフライトユニットが取り付けられていた、そして新型のマルチウェポンソードも取り付けられている。
「これは・・・?」
「今のアリシアちゃんを救おうとしているって言う、私からのあなた達への餞別よ、その代わり絶対にアリシアちゃんを救って、あの子は皇帝なんてやるべきじゃないの」
「分かったわ、アンナさん、私はみんなと共に今の私を救う、そしてあなたの前に私を連れて来てあげるわ」
「ええ、待ってるわ、アリシアちゃん」
未来のアリシアはアンナに手を振るとギルスに乗り込む。
『オーナー、エンジン動作と共にフライトユニットのマッチングを開始します』
「うん、出来るだけ早くね?」
『分かっています、最大効率で開始!』
未来のアリシアは目の前のモニターに映る、マッチングゲージが進み切るのを今か今かと見つめる。




