アリシアの過去
十年前、オルビアの町
「・・・」
町を歩く五歳になったばかりのアリシアは一人泣いていた、他の子供達にはいる両親が、自分にはいないと言う寂しさを感じて。
「見ろよ!、またアリシアが泣いてるぞ〜」
「泣き虫〜」
「・・・」
孤児院に戻って来ると同年代の子供達に泣いているところを見られ揶揄われる、アリシアはその声を聞きピクリと肩を震わせると逃げるかのように自分の部屋に向けて駆け出して行った。
「・・・」
既にアリシアを揶揄うのをやめているグレイは、涙を流しながら走り去るアリシアに話しかけようとするが、まだ幼い彼には何を言ったらいいのか分からず、何も言えなかった事が悲しくなった彼はただ俯くことしか出来なかった。
孤児院のアリシアの部屋
アリシアは男の子達に揶揄われるのは慣れっこなアリシアは、既に揶揄われた事は気にしていない、ベッドに寝転がる少女はメッシュから貰った両親の写真を見つめている。
「パパ・・・ママ・・・、なんで迎えに来てくれないの・・・?」
この頃のアリシアにはまだ両親が亡くなっている事はまだ幼いからと言う理由で告げられていない、その為、アリシアは自分が悪い子だから迎えに来てくれないのだと、随分前から思っていた、だからこそ職員の手伝いをしたり、いい事をするのだが両親は迎えに来てくれない、幼いアリシアにはその理由が分からなかった。
「よう、アリシア、また泣いてるのか?」
「おじさん・・・」
アリシアに会いに孤児院に来たメッシュがアリシアの部屋に入って来ると、寂しそうに泣く少女の隣に座り髪を撫でる。
(ごめんな・・・、アリシア・・・)
メッシュはアリシアに心の中で謝る。
「おう、アリシア、見ろ」
アリシアが泣き止んだ頃、メッシュは鞄の中に隠していた袋をアリシアに見せる。
「なぁに?それ?」
アリシアは首を傾げて袋の中身の正体を尋ねる。
「見てみな」
メッシュはアリシアに袋を渡す、アリシアは受け取り中身を取り出すと、パァァと嬉しそうな顔を見せた。
「新しい絵本だ!、おじさん!、ありがとう!」
袋の中身はとある日アリシアが本屋で羨ましそうに見つめていたのをメッシュが見ていた、新しい絵本だった、欲しかった絵本を買って来てくれたメッシュにアリシアは抱き着く。
「さてと、また会いに来るよ、アリシア」
「うん、またねおじさん、絵本ありがと!」
「おう」
渡す物は渡したメッシュはアリシアの髪をもう一度撫でると去って行った、そんな彼を見送った幼き少女は大好きな絵本を読み始める。
アトリーヌ帝国、アリシアの寝室
「・・・、何故今更、こんな夢を」
アルムスから皇帝となる為の教育を受けているアリシアは、幼い日の夢を見た事に不快そうな顔をする。
「それになんで私は泣いてるの・・・?」
アリシアは自分が泣いている事に気付く、しかし今のアリシアには自分の涙の意味が理解出来なかった。
アリシアが成長しても気付いていない事、それは・・・、今の自分も泣き虫アリシアと言われた頃と何も変わっていないと言う事だ。




