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セブンススタイル  作者: ブレイブ
第二部、二章、行方不明の土のスタイル使いを探せ
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一話

夜、皇帝の飛空艇、寝室


ベッドの上で姉に膝枕をして貰っているアリシアは、エンジェルズに居た頃に使っていた端末の画面を見ている(皇帝となってからは帝国製の別の携帯端末を連絡用として持っている)、端末の中のメールボックスやフォトアルバムの中にはメアやグレイやシメラとの沢山の思い出が詰まっていた。


「・・・」


冷たい目で画面を見つめる少女はメールや写真を全て消去する、メアやグレイやシメラとの思い出など今のアリシアにとって最早必要の無い物なのだ、アリシアは窓に近付くと開け、空っぽになった端末を海に捨てた。


「これで完全に過去の私とはお別れ、永遠にさようなら」


アリシアは月明かりを反射してキラキラと光りつつ、海に落ちて行く端末を冷たい瞳で見送り海の中に吸い込まれて行ったのを見ると、再び姉に抱き着き甘える。



アイオン国


キースは皇帝の飛空艇をアイオン国の空港に着陸させた、するとアリシア達の到着を空港で待っていたニアが操縦室にやって来ると、皇帝用の椅子に座り爪に紅いネイルを塗るアリシアの前で片膝を着き頭を下げる。


それを見たアリシアは椅子の側にある机の上に置いてあるバックにネイルの容器を入れてから、ニアに話しかける。


「顔を上げなさいニア、それと弁明もいらない、そんな事より、土のスタイル使いがどこに行ったのかを私に教えなさい」


「はい陛下、奴の行き先の候補地を知る者を連れて来たわ」


「へぇ?」


「入りなさい」


ニアが入るように言うと、初老の男が部屋の中に入って来た、アリシアは老人の顔を見ただけで彼の正体を理解した。


「ようこそ私の船へ、アイオン国大統領、リチャード」


「お目にかかれて光栄です、アトリーヌ帝国皇帝アリシア様」


リチャードはアリシアに向けて深く頭を下げた。


「それで?、この船に来た理由は土のスタイル使いの居場所を知らせるためだけじゃない筈よね?」


「勿論です、我が国、アイオン国はアトリーヌ帝国に降伏し、属国となる事を宣言します」


アリシアが皇帝になった時に各国に向けて言った降伏せよとの言葉。ギグルス国を含む強国は一日も経たないうちに拒否した。しかしいくつかの国は一年後に始まる戦争で敗北し全てを奪われるリスクを考え既に降伏しており、帝国の属国となっている。アイオン国はこれより属国になった国の一つとなるのである。


「アトリーヌ帝国の皇帝として賢明な判断を評価してあげるわ、そしてあなたの国の現体制の維持を保証してあげる、最後に私があなたの国に望む事は、一年後に開戦する予定の私の帝国に逆らう愚かな国への侵略戦争にあなたの国が帝国側として参戦する事、これだけよ」


「承知致しました皇帝陛下、後の戦争であなた様の帝国と肩を並べて戦える事、誇りに思います」


「ふふふ、期待しているわ」


「はっ身に余る光栄です」


帝国に屈した国がまた一つ増えた、アリシアはそれを嬉しく思い、満足気に微笑む。


「さて、リチャード?、あなたの最初の仕事よ、土のスタイル使いはどこに行ったの?、候補地を教えて?」


「勿論です」(ケイネスよ悪いが、お前の命、皇帝陛下の信頼を得る為に使わせて貰うぞ)


大統領はアリシアの信頼を得る為に土のスタイル使い、ケイネスの命を犠牲とするつもりである。


「それでは話します・・・」


リチャードはケイネスが向かった先と考えられるいくつかの場所をアリシアに話した、それを聞いたアリシアはニアを連れて船を離れる。


キースとエリシアは既にこの国にいる未来の自分とその仲間の元に向かわせ、ケイネスが向かった可能性がある三つある候補地を全て伝えるように言った。


アリシアはアクアマールで行った遊びの続き、ケイネスと言う一人の男の生き死にを争うゲームをするつもりなのだ。


自身の国に裏切られた土のスタイル使い、ケイネスにアリシアの魔の手が迫る。




アイオン国首都


ケイネスの情報を集める未来のアリシア達の前にキースとエリシアが現れる。


「お前達は!」


未来のアリシア達は敵が目の前に現れたのを見て身構える。


「おっと待て待て、今回の俺達は敵じゃないぜ?」


「どう言う意味です?」


敵じゃないと言うキースの言葉の意味が分からないニアはどう言う意味か質問した。


「私達はお前達に情報を伝えに来たのさ、お前達が知りたいであろう、土のスタイル使いの行き先をな」


「!、皇帝アリシアは私に対して行ったような生き死にを争うゲームをまたやるつもりですか!?」


わざわざ情報を教えると言う事からアリシアがまたゲームをするつもりではないか?、と察したウォーリーが二人に問いかけた。


「おう、第二回戦だ」


「くっ、卑劣な!」


キースの言葉を聞いた前回のゲームで死にかけたウォーリーは卑劣だと吐き捨てる、それを聞いたキースとエリシアはニヤリと微笑むだけで何も言わない。


「アリシアに情報を伝えたら早急に追いついて来いって言われててな、これ以上はここにいれねぇ、だからまた後で会おうぜ?、それじゃ場所を教えてやるよ」


キースは未来のアリシア達に候補地を伝えた、そして伝えるのと同時に二人は転移し数秒後ゼウスが飛び立った、二人は空からアリシア達を追うのだろう。


「・・・、今から行っても一つ目には間に合わない・・・、なら二つ目に向かうわよ」


過去を知る未来のアリシアは自分が同じ事をした時はメア達は一つ目の候補地には来ずに二つ目に先回りしていたのを思い出し、二つ目に向かおうと提案する。


既に未来のアリシアが知る歴史とは違いアクアマールに今のアリシアが訪れる時期が早いなど歴史の差異が現れており、未来のアリシアが知るこれからの先の時代の歴史の知識に意味がほぼなくなっており、三つの候補地のうちケイネスがどこにいるのか予想出来ないが。


今から一つ目の候補地に向かってもアリシア達に追い付かないので一つ目にケイネスがいない事に賭けて二つ目に先回りするのが最良の選択肢である。


「了解!、行こう!」


愛理が未来のアリシアの言葉に答え、互いに頷き合った彼等は走り始めた。




漆黒のドレスを風に揺らす少女と、その臣下は森の中を歩いている、この森の奥地が一つ目の候補地だ。


「止まりなさいニア」


「はい」


周囲の魔力に違和感を感じたアリシアはニアを手で制し歩みを止めさせる。


「杖を」


「はっ」


アリシアに杖を渡すように言われたニアは先端に紫色の水晶が取り付けられた杖を渡す、この杖はアルムスが、今のお前は砲撃をする時は杖を通した方が高威力を出せるだろうと、アリシアに渡した物である、前回までの戦いではアリシアは砲撃戦をするつもりは無かったので持って来ていなかった。


「ふふっ」


右手に杖を持ったアリシアは闇の魔力を纏わせた杖を横に振るう、すると幻影の呪文が解け、隠れていた者が姿を現した。


「ゴーレムか、ニア前衛は任せるわ」


幻影が解けると巨大なゴーレムが姿を現した。


「ええ」


アリシアに前衛を任されたニアは漆黒の剣を鞘から引き抜くと駆け出した。

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