六話
国会議事堂地下階段
国会議事堂に通じる階段の先で未来の自分とその仲間の到着を待つアリシア、階段に腰掛け彼等の到着を待っていた彼女は靴音を聞いて立ち上がる。
「また会ったわね、こんにちは」
アリシアは気楽に挨拶をする、ウォーリーは隣に立つアイリーンを見て浄化の魔法の準備をし、そして放った。
「きゃっ!?」
目の前から広範囲に広がり飛んできた水を避ける事が出来ずにアイリーンは躱せずに当たてしまった、数秒後に水が消滅し、先程まで敵であるアリシアを心酔しあろう事か体を重ねてしまった事に怒りを感じた彼女はアリシアに近付くと殴った。
「あら?、夜はあんなに気持ち良さそうにしていた癖に」
「ッ!」
アイリーンはもう一度アリシアを殴ろうとしたが、愛理がその隣に現れその肩を叩く。
「アイリーン?、気持ちは分かる、でもこの国を救う方が先決よ、みんなと行きな」
「・・・、はい」
「それじゃ行くわよ!」
未来のアリシアは仲間を率いてアリシアの隣を通り過ぎる、メアはアリシアの隣を通り過ぎる時に見た、アリシアがアイリーンを見て不気味に笑っているのを、メアはアリシアの笑みの意味を考えながら仲間達と共に国会議事堂に入る。
「やけに簡単に通してくれたね・・・?」
「ええ、この国は返してあげる、その代わりもっと楽しい事を思い付いたの、ふふ、今は内緒だけどね」
「何を考えたの?」
「いずれ分かるわ」
アリシアは再び不気味に笑う。
「そんな事よりも師匠?、私、本気のあなたと戦ってみたかったの」
そう言って剣を構えるアリシア、それを聞いた愛理も剣を構えた。
「良いよ、掛かっておいで」
「ふふ、行くわよ?、師匠!」
アリシアとゼロフォームに変身した愛理の戦いが始まった。
首相の部屋
未来のアリシア達は首相の部屋に入り込んだ、侵入者を見た兵士は斬りかかって来るが、アイリーンが光の魔法で吹き飛ばし気絶させる。
「さて、首相、正気に戻る時です」
ウォーリーは首相を水の中に包む、すると彼の中から黒い魔力が抜け出して行く。
「私は何て事を・・・ウォーリー!即刻、帝国の属国になるなどと言う報道を誤報だと発表する!付いて来てくれ!」
「はい!」
ウォーリーは首相と共に部屋の外に出ようとした、その瞬間・・・?。
「さようなら、水のスタイル使いさん?」
アリシアがウォーリーの背後に現れその剣で彼の体を刺し貫いた、ウォーリーはアリシアが剣を引き抜くのと同時に倒れ、アリシアは倒れたウォーリーを見てニヤリと微笑むと何処かに転移する、帝国の飛空艇が飛び立ったので、飛空艇の中に転移したのだろう。
「遅かった・・・、アイリーン!、即刻治療を!」
「はい!」
アイリーンによる洗脳を解いてくれたウォーリーへの決死の治療が始まった。
時は数分前に戻る、アリシアは愛理と戦っていた。
「くっ!、流石ね・・・」
相手の斬撃は剣で受け止め、四肢を使った攻撃で確実にアリシアにダメージを与える愛理に対して、アリシアはまだ一度も愛理に攻撃を当てられていなかった。
(コレじゃやはり負けるわね、でも私ももっと実力を上げる必要があるわ、その為にも・・・ふふっ)
アリシアは自身の実力を上げる為にアルムスにこの世界にあると言われている魔を封じた遺跡を調べさせている、最奥にいる封印されし者達を倒しその力を取り込み更に強くなる為に。
「さて、このままやってもあなたに勝ち目はないけど、どうする?」
愛理はダメージを受けて片膝を着いているアリシアの顔に剣を突き付けている、愛理はアリシアに勝利したのだ。
「あら?、勝つ方法なんていくらでもあるわよ?」
「何を言って・・・、ッ!?まさか!?」
勝つ方法などいくらでもあるとアリシアは言った、その意味が理解出来なかった愛理は首を傾げるが、アリシアの姿が透け始めたのを見て察する、今まで戦っていたアリシアが魔力を持たせた分身体だと。
「ありがとう、師匠、戦ってくれて楽しかったわ」
分身体のアリシアは消えていなくなった、そして上の国会議事堂に強い魔力が現れたのを愛理は感じる。
「くそっ!」
アリシアの策略にまんまと嵌められた愛理は、アリシアの魔力を感じる場所に急ぐ。
数時間後、病室
アイリーンの決死の治療によりウォーリーは一命を取り留めていた、未来のアリシア達は同時に敵をここまで必死に治療するはずがないと、アリシアがアイリーンに掛けた洗脳がちゃんと解けている事に安心する。
そして首相は帝国の属国になると言う報道は誤報だと国民に伝えた、同時に帝国の国旗も外され、アクアマール国の国旗が再び風になびいている。
「アイリーンさん、ありがとうございます」
「いえ、洗脳を解いて貰った恩がありますし」
そう言ってアイリーンはウォーリーに微笑みかける。
「それにしてもアリシアの魔眼は厄介だね〜、特にいつでも発動出来るという所が〜」
「・・・、それだけではないわ、あんまり言いたくないけど、私の体液にも洗脳能力があるの、そして体液を使った洗脳は精神にある程度の自由を持たせたまま操る事が出来る、さっきのアイリーンの状態ね」
「つまりアイリーンはアリシアにキスをされたと・・・」
「ッー!忘れようとしてたのに思い出させないで下さい!、殿方とならともかく女性となんてありえませんわ!」
プリプリと怒るアイリーンはメアをポコポコと叩く、しかし格闘戦はからっきしである彼女に叩かれても全く痛くない。
「はいはい、みんなこの事はもう言ったダメ?いいね?、それじゃ箱の鍵を開けようか」
「はい!、ウォーリーさん、この箱に魔力を当てて下さい!」
そう言ってメアは箱を取り出した、ウォーリーは言われた通り箱に魔力を当てるすると水色の水晶が光り、残る鍵は後一つとなった。
「もうすぐね、メア」
「はい」
「それじゃ、次の目的地に行きましょう、土のスタイル使いに会いにね!」
「おう!」
未来のアリシア達は手を繋ぎ合うと土のスタイル使いがいる国に転移しようとする。
「待って下さい、私も付いて行かせて下さい。あなた方に借りもありますし、それに皇帝アリシア、あの少女を放っておくわけにはいきません」
しかしウォーリーが引き止めた。
「私としてはスタイル使いであるあなたが来てくれるのは大歓迎だけど、あなたの国はいいの?」
「許可しよう、ウォーリーよ。一時は帝国の属国にされていたと言う屈辱をあの少女の心を救う事で晴らしてくれ」
「分かりました、首相もこう言っているので、一緒に行っても良いですよね?」
「勿論です!、力を借りますね!、ウォーリーさん!」
「はい!」
ウォーリーを仲間に加えた未来のアリシア達は土のスタイル使いがいる国に向けて、転移して行った。
皇帝の飛空艇
キースが操縦する皇帝専用の飛空艇は海上にて停泊していた、立派な椅子に足を組んで座るアリシアは楽しそうにハミングしている。
「ふふ、来た来た」
するとチラリチラリと見ていた端末に着信があった、それを見たアリシアは立ち上がると、キースに声を掛ける。
「キース、次の目的地が決まったわ、土のスタイル使いがいる、アイオン王国よ」
「オーライ」
頭の上に手を組み椅子をギコギコさせていたキースは、エンジンを起動させると飛空艇を浮上させ、アイオン国に向かう。
「敵の情報をいつでも得れると言うのは素晴らしいな、アリシア」
「そうね、ふふ、奴等がいつ私達に情報がバレていると気付くのか楽しみだわ」
自分の仕掛けた仕掛けが上手く行っている事を喜び窓の外を見て楽しそうにするアリシア、エリシアはそんな妹の頭を優しく撫でる。
アリシアの悪意は徐々に徐々に未来のアリシア達を蝕んでいく。
「おっ、アリシア、大臣からのメールだぜ、この近くに遺跡があるんだってよ」
ピピッと音がしキースが大臣からメールが来た事とその内容を伝えた。
「あら、ちょっと用事が出来ちゃったわね」
「行くのか?」
「ええ向かって」
アリシア達はアイオン国に向かう前に、近くにあると言う、遺跡に向かって行った。




