三話、ゼウスの脅威
ルーヂの谷
「ゼウス・・・」
未来のアリシアは空に浮かぶかつての自分の機体を見て歯噛みする、未来ではあの機体に自分が乗り戦っていた、しかし今では敵として相対する事となった。
「みんな!逃げるわよ!、ファントムがない時点でアレには勝てない!、転移出来る場所にまで早く!」
未来のアリシアは仲間達に逃げるよう促す、それを聞いてメア達は走り出すが、ゼウスのレールガンが発射され地面に着弾し、彼等は全員吹き飛ばされた。
「くっ、なんて威力・・・」
強力な攻撃を繰り出すゼウスに危機感を感じながらもう一度立ち上がったメア達は、逃げ切るために走り始める。
ルーヂの谷、入り口
シュンと言う音と共にアリシアがキースと共にルーヂの谷の入り口に現れた、近くの岩に腰掛けて足を揺らしながら、彼等の到着を待つ。
「見てキース、お姉ちゃんが遊んでいるわ」
「そうだな、あの機体で殺しちまわないようにするのは苦労するだろうぜ」
「ふふ、そうね、でもお姉ちゃんの腕なら大丈夫よ、確実に彼等を追い立て、ラスボスである私の元にまで連れて来てくれるはずよ」
そう言って楽しそうにクスクスと笑うアリシア、今回のゲームが楽しくて楽しくて仕方がないのだ。
「それで?、俺は何をすりゃ良い?」
「私のパーティメンバーその1をやってくれない?」
「素直に一緒に戦ってくれって言いなさい・・・」
「嫌よ、私は素直じゃないの、それとも私を素直にさせてくれるのかしら?」
そう言ってキースに近付くと抱き着くアリシア、誘うかのような視線で彼を見上げる。
「マジで手を出すぞ?この野郎?」
「ふふ、お好きにどうぞ?」
アリシアはそう言って体を反転させ、彼の手を掴むと自身の豊満な胸に持って行く。
「・・・」
絶世の美少女に誘われて理性が途切れたキースはアリシアの胸を揉み彼女の胸の柔らかい感触を楽しむが、揉んでいるうちに俺はなにをしてるんだ!?と理性が戻り、アリシアから離れる。
「あらぁ?、もっと触らないの?、これくらい許してあげるのに?」
そう言って明らかに揶揄った表情を見せるアリシア、キースはそんな彼女を見て頭を掻く。
「歳上を揶揄うんじゃねぇ、それにお前もう大臣と付き合ってんだろ?、堂々と浮気すんじゃねぇ」
「ふふふ、ごめんなさい、あなたの反応が可愛くってね」
アリシアは皇帝と付き合っている事を否定しなかった。
「チッ、マセガキめ」
「あらあら?、皇帝にそんな事を言って良いのかしら?」
「うっせぇ」
ツーンとそっぽを向くキース、アリシアはそんな彼を見て楽しそうに微笑みつつ、次はどう揶揄ってやろうかしら?と考えるのだった。
エリシアは飛行中に入ったアリシアからの、適当に追い立てて私の元にまで来させて、と言う命令を忠実に実行していた。
(徹底的に奴等で遊ぶつもりなのだな、簡単に殺すつもりはないと言う事か)
エリシア個人としてはさっさと殺してしまった方が後の為になるのではないか?と思うが、現在の皇帝はアリシアだ、ならばその臣下である彼女はその命令を忠実に実行するだけ、だからエリシアは機体を正確にコントロールし、トリガーを引き敵を追い立てる。
「今の私め・・・」
未来のアリシアはエリシアのわざと外しているかのような射撃を見てアリシアの狙いを理解する、恐らく既にここに来ており、自分が最後に相手をしウォーリーを殺すつもりなのだろうと。
「みんな走りながら聞きなさい!、このままだと今の私の罠にハマるわ!、だからこそ!、作戦を伝えます!」
「その作戦って!?」
「ワームホールよ」
そう言ってアリシアに通ずる悪い表情でニヤリと微笑む未来のアリシア、岩陰に入りエリシアからこちらの様子が見えなくなった所で宙にワームホールを出現させるとその中に入った、暫くすると別のワームホールが現れそこから未来のアリシアが出て来る。
「さっすが、元皇帝様、すぐに作戦を思い付くねぇ」
「それほどでも・・・、あるわっ!」
「あるのですね・・・、はいはい、でもワームホールを使うのはもう一人のあなたも予想しているのでは?」
「そうね、予想してるでしょう、だからこそ」
未来のアリシアは二人のスタイル使いを見る。
「二重の煙幕を発生させるのよ」
「?」
またもや長い間そうやって笑っていたせいか邪悪に見える笑みを見せる未来のアリシア、メアはそんな彼女の笑みを見て二重の煙幕とはどう言う意味か、二人のスタイル使いと作戦を話し合う、未来のアリシアを見つめつつ考えるの。
「・・・、何を話しているのか知らないが!」
エリシアは何かを話し合う未来のアリシアを見て不穏なものを感じ、わざと直撃コースでレールガンを放った。
「くっ!、師匠!、シメラ!、クソ聖女!」
「うん!」
「は〜い!」
「!?」
それを見た未来のアリシアは愛理とシメラと共にシールドを作り、レールガンを防いだ。
「クソ聖女ってなんですの!?、クソ聖女って!?」
「ごめんごめん、敵として戦ってたあなたって私の属性的に本当に鬱陶しくてさぁ、口癖になってるのよ・・・」
「・・・、次言ったら私の光で滅してあげますわ!」
「ほーう、やってみなさいよ、クソ聖女」
「ええ分かりましたとも!」
(あー、本当に相性悪かったんですね・・・)
逃げながら喧嘩を始めるクソ聖女・・・、聖女と黒騎士を見て、未来のアリシアにとってアイリーンは本当に鬱陶しい敵だったのだろうなとメアは思った。
「なんだあいつらは、なんであんな余裕なんだ!?」
エリシアは自分の攻撃を避けながら喧嘩をする敵を見て混乱する。
「見えましたよ!、谷の入り口です!」
ウォーリーが指差す先、そこが谷の出口のようだ、そしてそこには・・・。
「ご苦労様、お姉ちゃん、もう帰っていいよ」
紅い瞳でこちらを見据え薄く微笑む皇帝がいた。
ルーヂの谷を舞台にした戦いのラスボス戦が始まろうとしている。




