五話
アトリーヌ帝国、ファントム研究所
ここは帝国のファントム研究所、アリシアが運び込んだレギルスの解体解析作業が行われており、帝国の技術者達は熱心にレギルス国の技術を取り込んで行っている。
「我が騎士アリシアよ、この作業が終われば我が帝国は真にこの世界最強の帝国となる、どう思う?」
アルムスの質問、彼の隣に立ちこの施設の様子を見ていたアリシアは、アルムスの顔を見上げ嬉しそうに微笑みつつ答える。
「とても素晴らしい事だと思うわ」
「そうだ、いずれこの世界を統べる我が帝国が技術力で劣っている訳にはいかないからな」
アリシアは皇帝の言葉を聞きその通りだと頷く。
「そしてこれで帝国はすべての国にすべてに勝るようになった、お前のおかげでな」
皇帝はアリシアに感謝してからその頬に触れ顔を上げさせるとキスをした、アリシアは拒否せず寧ろ自分から受け入れ、皇帝とのキスを楽しむ。
「この解析が終わればあの機体は再組み立てされる、その後はお前がここを指揮し、帝国最強の戦士であるお前に相応しい機体を作るとよい、機体の為に資金も贅沢に用意しよう」
「ありがとうございます、陛下」
ギグルスを守る為に作られたレギルスがギグルスを滅ぼす為の機体になる、そう考えたアリシアは・・・?。
「ザマァみろ」
と言いほくそ笑む、アルムスはそんなアリシアを見て優しく髪を撫で、アルムスに髪を撫でられるアリシアは嬉しそうに目を細めた。
「今日は特に任務はない、これ以降は暇をやる、好きにするとよい」
「はい、陛下」
アルムスから暇を貰ったアリシアは彼がこの部屋から出て行くまでの間、頭を下げ続け、彼の姿が消えてから自分もこの部屋から出る。
アトリーヌ城、一階
アトリーヌ城は全十五階のシンプルな構造の城である、シンプルな構造にしているのはその方が敵に攻め込まれた際、守りやすいからである、アリシアはこの城の一階を歩いていた。
「黒騎士様よ!」
「ええ!、カッコいい!」
一階を歩いていると自分に対しての黄色い声が聞こえてきた、しかしアリシアは特に関心を示さず歩き去る、すると後ろからクール!とか言っている黄色い声が聞こえて来たが、アリシアは気にしない。
「よぉ、アリシアじゃねーか、いや黒騎士様か?」
城のどこに何があるのか覚えつつ歩くアリシアの前にキースが現れた。
「アリシアで良いわ」
「了解、何してんだ?」
「陛下から暇を貰ったから城の構造でも覚えようかと思って、歩いていたの」
「真面目だねぇ、そんなのその内覚えれるって、そんな事より腹減ってないか?、飯食おう」
「減ってない」
本当にお腹が空いていないアリシアは正直に答える。
「いいから着いて来い、この城の食堂の飯ってマジで美味いんだぜ」
「いい」
「ほーら行くぞー!」
「・・・」
キースは断るアリシアを無理矢理食堂に連れて行く、キースに手を引かれるアリシアはいいって言ってるのにと思いつつ、彼に着いて行く。
アリシアはキースと共に食堂に入っていた、丁度昼休みの時間であり、多数の兵士達がキースと共に入って来たアリシアを見て、黒騎士様だ・・・と話している。
「流石うちの国最強の騎士様だ、注目されてるねぇ」
「興味ないわ」
「冷たいねぇ、みんなお前に期待してくれてんのにだぜ?」
「・・・」
興味ないものには興味はないと示す為、ツーンとそっぽを向くアリシア、それを見てキースはため息を吐くとキースはメニュー表を指差した。
「どれにする?」
「ハンバーグセットでいい」
「了解、俺はだな、っておい・・・」
自分の分をキースに伝えるなり空いている席に向かって行くアリシア、キースは椅子に座り周囲から注目されているのに一切興味を示さないアリシアを見て、ため息を吐くと自分の分とアリシアの分を頼み、二人分の昼食を運ぶ。
「ほらよ、ご注文のハンバーグセットだ、ありがたく食べやがれ」
「・・・」
キースが運んで来たハンバーグセットを無言で食べ始めるアリシア、以前会った時のどちらかと言うと子供っぽい印象であった様子からの変わり様にキースは思う。
(憎しみは人を変えるってのは本当なんだな)
と、キースとしては以前のアリシアの方が好きであった、素直に自身の想いを言い、実力差があったとしても諦めず向かって来る敵として出会った頃の彼女の方が、しかしキースにも分かっている、目の前の少女があの頃の様子に戻る事は二度とないだろうと。
「何?」
「なんでもねぇよ」
それ以降キースは黙って食事を進める。
「今後一緒に仕事をする事もあるだろうからよぉ、その時はよろしくな」
「ええ」
キースの言葉に短い返事と右手を上げて答えたアリシアは去って行った、キースはそんな少女をの彼女が曲がり角を曲がり見えなくなるまで見送ってから自分もこの場を後にした。
アリシアの部屋
城の構造を大体覚えたアリシアは自身の部屋に戻っていた、ソファに座りガンブレードのメンテナンスをしている、そこに姉がやって来た。
「どうしたの?、お姉ちゃん」
アリシアは剣のメンテナンスをしながら、姉にどうしたのか聞く。
「なんでもない、私も暇でな、妹に会いに来ただけさ」
「そう」
エリシアはアリシアの隣に座り、机の上に置かれているガンブレードのパーツを眺める。
「意外と簡単な構造なんだな」
「複雑な構造にして可動部を増やしたら、すぐに不具合が出ちゃうもの」
「そういうものか、私はこういう武器を使わんから、分からん」
そう言うエリシアが使う武器は二本の短剣だ、軽くて短い短剣を使った苛烈な連続攻撃、それがエリシアの戦い方である。
「それで?、アリシア、あの男はどうするんだ?」
「そうね、今すぐにでも殺したいけど、アイツを殺して恨みを晴らしたいのはお姉ちゃんも同じでしょ?、だから二人で相談してから、殺しに行こうかなって」
「そうか、ならトドメは私にやらせてくれ、父さんと母さんが死ぬ原因であるだけじゃなく、お前に恋心も抱かせた、奴は絶対にこの手で殺したいんだ」
「良いよ、その代わり戦うのは私だからね?」
「ふふ、殺すなよ?」
「うーん、それは保証出来ないかなぁ」
アリシアはここで一度言葉を切る、そして邪悪な笑みを見せると言い放った。
「だってアイツを憎んでるのはさぁ、私だってお姉ちゃんと同じですもの、だからもし殺しちゃったらその時はごめんね?、お姉ちゃん」
「ふん、お前が奴を殺しても怒ったりしないさ、寧ろ良くやったと褒めてやろう」
「私が我慢出来て、お姉ちゃんがアイツを殺したら私がお姉ちゃんを褒めてあげるわ」
「ふふ、それは楽しみだ」
同じ相手に強い憎しみを抱く姉妹、アリシアがメッシュと戦う日は刻々と近づいている。




