八話、闇のスタイル使いVS雷のスタイル使い
アトリーヌ帝国
「黒騎士ニアよ、これより王都ローレリアに向かい、アリシア・レイティスに戦いを挑め、仮とは言え闇のスタイル使いであるお前と雷のスタイル使いであるあやつとの実力の差を見せ付けてやれ」
「承知致しました、お父様」
アリシアを己の物とする為動く父に対しての協力を惜しむつもりは少女、ニアは、父からの命を承知すると、転移しローレリアに向かって行った。
王都ローレリア
アリシアの修行は終盤に差し掛かっていた、100の量の電流を体内に流しても感電しなくなり、雷の属性の特性であるスピードを体現してみせたのだ。
「ここまでよく頑張ったね、後は強力な技を身に付けようか」
「うん!、でもね?師匠、私修行をしている間に技思いついちゃったんだ」
師によく頑張ったと褒められたアリシアは嬉しそうに微笑み、そして技は思い付いていると師に申し出た。
「へぇ・・・、なら見せて貰おうかな・・・?」
突然背後に気配を感じた愛理は振り返る、アリシアも同時にその場所を見る、そこには顔に仮面を付けた少女が立っていた。
「私の名は、ニア・アトリーヌ、アトリーヌ帝国の姫で闇のスタイル使いよまぁあくまでも仮だけどね、アリシア・レイティス、私と勝負してくれないかしら?」
少女は自分から名乗るとアリシアに勝負を挑んで来た。
(闇のスタイル使いで、帝国のお姫様なら・・・)
目の前の少女を倒し拘束すれば、黒い箱の鍵をもう一つ開ける事が出来、それにメッシュやボスの疑惑を更に探れると考えたアリシアは、少女の申し出を受ける事にする。
「分かったわ、やる」
「・・・、相手は帝国のお姫様、相当に強いはずだけど大丈夫?」
「安心して師匠、必ず勝ってみせる」
アリシアは師に自身有り気な様子を見せると、剣を抜き、ニアに近付く。
「ルールは?」
「相手の手から武器を先に落とさせた者の勝ちと言う事でどうかしら?」
「分かった、それじゃ、行くわよ」
「ええ!」
アリシアとニアは同時に駆け出し挨拶がわりに剣を交え合う、次にニアは力でアリシアを押し込み、武器を落とさせようとしてくる。
「させない!」
アリシアは愛理との修行の成果を発揮する、体内に電流を流し少ない魔力で飛躍的なスピードアップを果たす技エレキバーストを発動させ、高速移動し、ニアの目の前から一瞬にして消え去ったのだ。
「流石雷のスタイル使いね、速い」
ニアは気配を読み左に向けて剣を振るう。すると金属音がしアリシアの剣とニアの剣が再び交わり合った。
「気配だけで私の速さに追い付いて来るなんて、凄いのね、あなた」
「あなたこそ、その速さでこのパワー、流石ね」
(第七真祖、これならお父様が欲しがるのも理解出来るわね)
一度アリシアから離れたニアは、闇のスタイル使いとしての魔力、闇の魔力を全力で解放した。
(ッ!?)
この時アリシアは、少女が発する力に対し体の中の何かが反応するのを感じた、しかしそれを把握する暇などはなく、ニアが一瞬にして自分の目の前に現れた、アリシアは慌ててエレキバーストを発動させニアから離れるが、ニアはアリシアに追い付いて来る。
「ふふ、感じたのね?、アリシア」
アリシアの目の前に回り込み、抱き着き押し倒したニアは、闇のスタイル使いの魔力を全力で発した。
「・・・」(なんで?、この力がなんでこんなに心地良いの?)
「気持ち良さそうね?、何故この力があなたにとって気持ち良いのか?、その理由を今教えてあげれないのがとても残念よ」
アリシアの手が勝手に動き仮面に向かって行くが、アリシアの手が仮面に触れる前にニアはアリシアから離れた。
(そうよアリシア、闇のスタイルの本体はこの仮面、何故なら闇のスタイルの魔力は資格者が移り変わる度に一度仮面の中に格納され、新たに資格者となる者に注ぎ込まれるのだから、そして受け継がれるたびに闇のスタイルの魔力は強化されて行く)
「まだダメよアリシア、まだその時ではないの、それより私達は今何をしていたのかを思い出した方が良いんじゃないかしら?」
そう言ってニアはアリシアに斬りかかる、仮面をボーと見つめているアリシアは、ギリギリでようやく反応し、先程愛理に思い付いたと言った技を発動した。
「ライジングマグナム!!」
ライジングマグナム、それは体内に走る雷の魔力を左手に集中させ、一気に敵に向けて撃ち出す技だ。ライジングマグナムはニアに命中するかと思われたが・・・?
「シャドウホール」
宙に出現した漆黒の穴に吸い込まれ消滅してしまった。
「そんな・・・」
「はい、私の勝ち」
ライジングマグナムを防ぎアリシアの懐に潜ったニアはアリシアの剣を右手から弾き、勝利を宣言した。
「ふふふ、私と勝負してくれてありがとう、楽しかったわ、それじゃ近いうちにまた会いましょう?、そしてその時に・・・」
意味深な言葉を言い残しニアは転移してこの場から消えた。
(・・・)
師と折角修行をしたのによりにもよって師の目の前で負けたアリシアは、悔しさと自分の情けなさを感じ俯いている。対する愛理は、アリシアが見せた闇のスタイル使いの魔力に対する反応の意味を考えていた。
アトリーヌ帝国
「戻ったかニアよ」
「はい」
「それでお前が力を発した時、アリシア・レイティスはどのような反応を見せた?」
「私がこの仮面を私に無理矢理に従わせた時とは違い、まるで吸い寄せらせるかのように、この仮面に手を伸ばして来ました」
「ククク、やはりな」
皇帝は予想通りに物事が進んで満足気な笑みを浮かべる、そして必ずアリシアを手に入れるそう改めて誓うのだった。




