六話、両親の死の真相そして・・・
話数を間違えていたので修正しています。
王都ローレリア
修行中突然連絡が来て、愛理は誰かと連絡会話している。
「ええ!?、また喧嘩?、仕方ないなぁもう・・・」
連絡を終えた愛理はため息を吐くとアリシアの方を向く。
「ごめんアリシア、魔界でちょっと野暮用が出来ちゃった・・・、すぐ帰って来るから暫く自由時間ね」
「はぁーい」
「それじゃ!」
魔界での喧嘩の仲裁に愛理は向かって行った、暇になったアリシアは黒い箱の事を思い出し、はこに魔力を注いでもらう為、ファーリーの元に向かった。
「ファーリーさん、ちょっと話があるの」
「君か、どうした?」
「この箱に魔力を注いで欲しいの」
そう言って黒い箱をファーリーに見せる。
「分かった、でもこの中には何が入っているんだ?」
「分かんない・・・、とにかく私の友達が開けたいみたいなの」
「・・・ふむ、魔力を注いだ後暫くこれを貸して貰っても良いか?、この国の図書館にある文献を漁り、この箱について調べてみよう」
「本当!?、お願い!」
「良し、そうと決まれば私の魔力を注ごう」
ファーリーは黒い箱を手に持つと魔力を注ぐ、すると箱の緑色のクリスタルが発光した。
「それではこれを暫く貸してもらう」
「うん、何か分かったら教えてね」
「ああ」
箱を手に持つファーリーは早速部屋から出て行く、図書館に向かうのだろう、ファーリーに対しての用事も終わり暇になったアリシアは暇潰しのために街に出かけた。
「・・・」
その様子をエリシアが見ていた、そしてエリシアは端末を取り出すとすぐに皇帝に連絡をするのだった。
城下町
賑やかな城下町、アリシアは沢山の人々を眺めながらのんびりと歩く。
「あっ美味しそう」
アリシアが見つけたのはローレリアシュークリームだ、沢山の同年代の少女達が並んでおり、かなり賑わっている、丁度お腹が空いているアリシアも並ぶ。
「・・・、?」
並んでいる途中、アリシアは以前感じたような視線を感じた。
(・・・)
列が進み、自分が買う番が来た、アリシアはシュークリームを買うと、食べながら町中を歩き、そしてわざと路地裏に入る、そしてガンブレードに手を掛けながら路地裏を進む。
(来た)
背後に何者かが降り立った気配、アリシアは敢えて行き止まりに入るとシュークリームを食べ終わるのと同時にガンブレードを引き抜きつつ振り返り、銃口を向けた。
「!、・・・あなた誰?」
振り返ったアリシアは目の前にいる人物の顔が自分に似ているのを見て一瞬目を見開く、しかしすぐに平静を装うと、何者か聞いた。
「私の名はエリシア、エリシア・レイティス」
「!」
レイティス、自分と同じ名、平静を装ったアリシアの表情はすぐに驚愕の表情に塗り替えられてしまった。
「初めましてだな、アリシア、私の妹」
「い、妹?、そ、そんな筈はないわ、だって私には家族なんて一人もいない筈よ!」
「今まではな、だが私は確かにお前の姉だ、証拠は、血を吸えば分かるだろうさ」
そう言って瞳を紅くしたエリシアは小さく指先を切った、それを見たアリシアの心臓が大きく動悸しフラフラと吸い寄せられ、アリシアはエリシアの指先に吸い付き血を吸う。
(流れて来る・・・、この人の記憶、これ私が産まれた日だ・・・)
アリシアの脳裏には自分が産まれた日のエリシアの記憶が血を通して流れ込んで来ていた、そして記憶の中に流れ込んで来る赤ん坊は孤児院にある、赤ん坊だった頃の自分の写真と全く同じ姿をしていた。
「本当にお姉ちゃんなんだ・・・、ッ!」
ずっとずっと会いたかった家族、それが目の前にいる、嬉しさと言う感情を抑えられなくなったアリシアはエリシアに抱き着き、その胸で泣き始めた。
「こんなに会いに来るのが遅くなってすまない・・・、寂しい思いをさせたな・・・」
「ううん、良い!、会いに来てくれただけで嬉しいもの!」
「私も会えて嬉しいよ、アリシア」
エリシアは胸の中で涙を流すアリシアをギュッと抱きしめる、そしてアリシアが泣き止むまで優しくその背中と髪を撫で続けた。
「落ち着いたか?」
「うん」
三十分ほど泣き続けようやく落ち着いたアリシアは、箱の上に座る姉の隣に座り腕に抱き付いている、その顔はとても嬉しそうで幸せそうだ。
「それでさ?お姉ちゃん、今までどこにいたの?」
「アトリーヌ帝国だ」
「帝国!?」
姉が帝国に居たと知りアリシアは驚いた顔で姉の顔を見る。
「ははは、驚くのも仕方ないな、帝国の悪い噂は他国にも他の世界にも知れている、しかし十七というこの歳まで私を育ててくれたのはあの国だ、だから私はあの国には感謝しているんだ、そこは分かってくれ」
「う、うん」
自分を育ててくれた国に感謝する気持ちはアリシアにも分かる、アリシアも今まで生きて来れたのはギグルス国のお陰だという感覚は持っているからだ。
「それでだな?いきなりで悪いがお前に提案がある。私と一緒に帝国に来ないか?私は今陛下の元で働いているのだが、陛下がお前の力を欲しているんだ」
「皇帝が?、なんで私なんか・・・」
「お前は私と同じ吸血鬼だ、そして私とは違い真祖であるお前は強者の血を吸えば吸うほど強くなれる、だからこそ陛下はお前を欲しているんだ」
「・・・、それって真祖なら私じゃなくても良いってことじゃない?、私そう言うの気に入らないわ、それに今の私から私を兵器として見ている人が沢山いるって聞いたわ、その陛下って人も同じに私は聞こえるわ」
(流石、賢いな)
自身の主人の目的をすぐに予想するアリシアにエリシアは感心する。
「そうだな、陛下はお前を兵器として扱うだろう、しかしなアリシア、お前が今いるエンジェルズに私達の両親の仇がいると聞けば、お前もあの国に戻る価値はないと思える筈だ」
「エンジェルズにお父さんとお母さんの仇・・・?、それって・・・」
この時、アリシアは強く嫌な予感を感じていた、その為逃げ出そうとしたが、エリシアに腕を掴まれ逃げ出せない。
「私達の両親の仇はメッシュだ、あの男は自分のせいで私達の両親が死んだのにそれを隠してお前に近付いた最低の男だ」
「・・・」
「私達の両親が死んだ日、奴は両親と共に帝国の城に侵入した。そして奴の迂闊な行動により、両親と奴は見つかった。そして奴は自分が見つかった原因にも拘わらず・・・」
「もうやめて!」
自身が恋心を抱く者の罪を知り両親の仇だと知る事、それは今もアリシアにとって何よりも辛い事だった、だからアリシアはやめてくれと叫んだ。
「いいやお前は聞かなければならない、あの男が隠し続けて来た秘密をな!、帝国兵に見つかった奴は帝国兵に囲まれた両親を見捨てて自分だけ逃げ出し、そしてのこのこと自分の国に帰った!、どうだ!?アリシア!、お前はこれを聞いてもあの国に帰りたいと思えるか!?」
エリシアの瞳にはメッシュに対しての激しい憎しみが宿っている、対するアリシアの瞳にはメッシュが仇だと知った悲しみが宿っていた。
「・・・すまない、あの男は仇だ、奴の話をする時はどうしても熱くなってしまうんだ・・・」
先程の嬉しさから来る涙とは違い、悲しみの涙を流すアリシアをエリシアは優しく抱きしめる。
「アリシア、一緒に帝国に来るんだ、そしてあの男を一緒に殺そう、そして帝国で一緒に・・・」
「・・・、ごめんお姉ちゃん、私、行けないわ、例えメッシュさんが仇だったとしても、あの国には大切な人が沢山いるの、あの国が私の家なの、だからごめん」
どうにか涙を止めたアリシアは姉の提案を断った、例えメッシュが仇だと知っても。
「帰ってどうするつもりだ?」
「メッシュさんと話をする、その先は・・・、まだ分からないわ、とにかく、メッシュさんとの話が終わったら私ともう一度会ってくれないかしら?、その時に答えを出すから」
「分かった、それまではこの話は保留にする」
「ありがとう、お姉ちゃん」
アリシアは自分の都合で待ってくれる姉を強く抱きしめた。
「これは私の連絡先だ、お前がこの国にいる間は私もこの国にいる、会いたくなったら連絡してくれすぐに会いに行く、そしてこの国を離れた後も連絡があれば私は必ずお前に会いに行くと約束する、お前がどこにいたとしてもだ」
「うん、必ず連絡するね、お姉ちゃん」
姉の連絡先をポケットに入れたアリシアは姉から背を向ける、再び流れ始めた涙を自分の事を確かに愛してくれている姉に見せたくなかったのだ。
「それじゃまた!」
涙を流すアリシアは姉に別れを告げるとその場から走り去った、エリシアは離れて行くアリシアの背中を静かに見守る。
アリシアとメアとシメラの部屋
「アリシア?」
メアは部屋に戻って来たアリシアが泣いているのを見て慌てて近付く、メアが近付いてくるのを見たアリシアはその胸に抱き着き泣き始める。
「アリシア?、何があったの?」
シメラが何があったのかアリシアに聞く、しかしメアは言葉を発さずにシメラに向けて首を振り、大きな声を出して泣き続けるアリシアの背中を優しく撫で続けた。
数時間後、城に戻って来た愛理にメアはアリシアが涙を流しながらここに戻って来た事を知らせた。
「そう、何があったのかは分からないんだね?」
「はい・・・」
メアは泣き疲れ自分の膝を枕にし眠っているアリシアの髪を優しく撫で続けている。
「とにかく起きたら・・・」
「もう起きてるわ」
起きたら話を聞こう、愛理はそう言おうとしたが、アリシアは言い終わる前に目を覚まし身を起こした。
「お、おはよう、それで?何があったの?」
「そうね」
アリシアは髪を撫でてくれていたメアの方を向きながら話す。
「私にはもう好きな人なんていないって事かしら」
「?」
「!」
アリシアのメッシュへの恋心を知らない愛理は首を傾げる、しかしそれを知っているメアとシメラは顔を見合わせ驚いた顔をする、そんな二人の様子を見たアリシアは立ち上がると部屋のドアに近付く。
「待ってください!、まだ話は!」
メアの声を聞き振り返ったアリシアはメアとだけ目を合わせると部屋から出て行った、彼女と親友だからこそ目を合わされた理由を察したメアはアリシアを追う。
「やっぱり来てくれたわね、メア」
「私はあなたの親友ですもの、あれだけのヒントがあれば追いかけるに決まってます、何があったのですか?」
「・・・、ついさっきね・・・」
アリシアはエリシアと会った事、そしてメッシュが両親の仇である事をメアに話した。
「そんな・・・、メッシュさんがそんな事・・・」
「合点が行く話よ、帝国にスパイに向かい、お父さんとお母さんは殺されたのに、メッシュさんだけは帰って来てる、普通なら三人とも殺されている筈なのにね」
「確かにそうです、でもメッシュさんの事嫌いになっても良いのですか?、好きだったのでしょう?」
「うん、好きだったわ、さっきまではね」
そう言って辛そうに微笑むアリシア、メアは彼女の表情を見てそれ以上は親友と言う立場を持ってしても踏み込めなかった。
「もう一つ聞きます、帝国に行ったりなんてしませんよね?、結局は帝国はあなたの両親を奪った仇である事は変わりません、それに行けば兵器として扱われる、絶対に行きませんよね?、アリシア?」
「安心して、メア、ううん、メアリ姫?」
「!、何故それを・・・?」
「ちょっと調べれば分かるよ、あなたが滅びたあの国のお姫様ってくらい、よく似てるねあなたとあなたのお母さんって」
そう言って端末で撮ったメアの母親の写真をアリシアはメアに見せた。
「あなたは帝国への復讐を考えている、それもそうよね、自分の国を滅ぼされたお姫様が仇を憎まない筈がないわ」
「ふふふ、流石ですね、アリシア、やはりあなたを選んで良かった」
怪しく微笑むメアはアリシアに向けて手を差し出す。
「そう私はメアリ・アルビオン、今はなきアルビオン王国の姫、そして我が国アルビオンを滅ぼした帝国への復讐を誓うもの、雷のスタイル使い、アリシア・レイティス?、その力、私に貸して下さいますね?」
「ごめんメアリ、それも保留よ、お姉ちゃんにも帝国に来ないかって言われたんだけど保留にしたの、どうしてもメッシュさんの口から全てを知りたいの、それから私はあなたの剣になるか、あなたの敵になるかを決めるわ」
そう言ってガンブレードを構えたアリシアは剣先をメアリの顔に突き付ける。
「そして、私があなたの剣となったとしても、あなたが少しでも道を間違えれば、私はこの手であなたを斬る、覚えておきなさい」
「あなたに斬られるのであれば本望ですアリシア、そして私は絶対に道を踏み外したりなどしません、だって私の道は帝国への復讐、これだけですもの」
「ははっ、単純明快だ」
「ふふっ、ですね」
笑い合った二人の復讐者は手を繋ぐと部屋に戻って行く。
「アリシア、もう一度言っておきますね?、あなたを選んで本当に良かった」
「私もあなたに会えて良かった、そう思うわ」
「ありがとうございます、それとこの国にあなたのお姉さんがいるんですよね?」
「何をするの?、殺すつもりじゃ・・・」
「安心して下さい、そんな事はしませんよ、でも」
メアリは再び怪しく微笑む。
「あなたのお姉さんには、私の目となって貰います」
「目・・・か、了解、必要な物だしね」
二人の少女の復讐の物語はその幕を徐々に開け始めている、その先にある物とは・・・。
今後メアの名前の表記は王女として動いている時はメアリ、普段はメアとなります。




