四話、アリシアVS愛理
風の国ローラン、王都ローレリア
吸血鬼第七真祖アリシアと、金の聖杯であり魔王でもある愛理の戦いが始まる、相手に向けて同時に突っ込んだ二人は同時に剣を振るうと剣を交え合う、その瞬間激しい金属音が辺りに鳴り響いた。
「なぁ、私の城大丈夫だろうか・・・」
「さ、さぁ?」
一国の王とその側近が冷や汗を掻く中、力と力の比べ合いをしている二人の均衡が崩れ、愛理が無理矢理に押し切る、押し切られ姿勢の崩れたアリシアは敢えてそのまま倒れ、地面に左手を着くと左腕だけでバネのように跳ね上がり、愛理の顔をしたから蹴り上げた。
「よし!、きゃっ!?」
宙に浮いているアリシアは愛理に一撃当てれた事に喜ぶが、相手の顔を蹴り上げたばかりの足を掴まれ可愛らしい悲鳴をあげてしまった、そしてそのまま体を振り回され地面に叩きつけられる。
「ぐふぅ!?」
顔から地面に叩きつけられたアリシアは背後から追撃を加えようと迫る愛理の気配に、痛む顔をさする暇もなく振り返り、宙で停止する雷を放ち、そこに更に雷を撃ち込む事で簡易的なスタン爆弾を作り愛理に命中させた。
「どうだ!」
「痛くも?痒くもないね!」
雷撃の爆発の中から余裕そうな表情で飛び出して来た愛理、これを予想していたアリシアはギリギリまで引き付けてから跳び、愛理の背後に現れる。
「・・・」
ほんの少しの迷いの後、アリシアは愛理に向けてからを放つ、その迷いが致命的であった、驚異的な反応速度で振り返った愛理は、腕でアリシアの蹴りを止める、そしてアイシアの顔を左拳でぶん殴った、愛理に殴られたアリシアは地面に激しくその体を打ち付けられる。
「アリシア、一つだけ言っておくね、戦いの途中で躊躇だけは絶対にするな、今の攻撃がもし剣での攻撃ならあなたは死んでるよ」
先程までの温和で優しい声から一変して低い声を発し警告する愛理、冷たい印象を受けるかもしれないが、ダメな所はキッチリとダメだと教える、これが数人の少年や少女の師をして来た中で見つけた愛理のやり方だ。
「うん!、次からは気をつける!」
愛理の今の言葉が自分の事を想っていてくれるからこそ出た言葉だと理解しているアリシアは、返事をし、剣を構え立ち上がる。
「よし、ならもう一度、やってみなさい」
「はい!」
大きな声を出してから走り始めたアリシアは今度はジグザグと走る、そして愛理の目前に来ると斬ると見せかけ、彼女の真横に飛んだフェイントだ、だがアリシアがどう動くか予測していた愛理は、アリシアが飛んだ場所に向けて剣を横振りに振るっていた。
「予測されたのなら、更にその先を予測すればいい!」
愛理の横振りの斬撃をしゃがんで避けたアリシアはガンブレードに雷を纏わせ、今度は躊躇せずに剣を突き出す。
「良い攻撃だね、でも私はその更に先を行く!」
愛理はアリシアの斬撃を剣でパリィした、剣を下から弾かれたアリシアの体が後ろに向けて跳ね上がる。
「まだだぁ!」
体が背後に向けて跳ね上がりつつも左腕を上げて雷を放つアリシア、愛理はそれすらも素早い動きで避けるとアリシアに迫り首に剣を突き付ける。
「今の攻撃凄く良かったよアリシア、でも一つだけあなたには足りない物がある、何か分かる?」
愛理の質問、答えが出なかったアリシアは首を振る。
「簡単に言うとスピードさ、今のあなたにはスピードが足りないの」
「スピード・・・」
「そう、あなたはその雷のスタイルの力をパワーを上げる為だけに使ってる、でもね?雷の属性は速さを司る属性とも言われてるんだ、だからあなたも雷のスタイルを上手く使えば俊足の剣士に慣れると私は思う」
「スピードなんて考えもしなかったわ、だって跳べばスピードなんていらなかったもの・・・」
「雷が届く範囲ならどこにでも跳べちゃうあなたの能力の弊害だね、でもね?、ある程度の実力者になれば簡単に読めちゃうんだよ、だってさ?跳んで何をするか?って言われたら、背後に現れての斬撃しかないでしょ?、背中は人間の一番の弱点だもの、少し考えれば予測出来てしまう攻撃なんて実力者や強いモンスターには通じないのさ」
アリシアは愛理の話を聞き、このまま跳ぶ事に頼り続けていたらいつか死んでいたかもなと思った。
「良い?これからは跳ぶのは回避に使うの、正直言うと攻撃には向かない技だと思うからね、その代わり跳ぶのと同じくらい速くなろう、いい?」
「はい!」
「良い返事だね、それじゃあなたは今日から私の弟子だ、よろしくね?、アリシア」
「こちらこそよろしくね?、師匠」
「うん!」
こうしてアリシアは愛理の弟子となった。
ホテル
ロミアスに一度城から離れると伝え、アリシアは師に仲間を紹介する為、彼等がいるホテルにやって来た。
「よっ!、みんな!」
「もっと遅くなると思ってましたのに、早いですね、・・・その人は?」
メアはアリシアの背後にいる愛理について早速聞いて来た。
「魔王久城愛理さんよ、私この人の弟子になる事になったんだ〜」
「ま、魔王!?、ほ、本物の久城愛理ですか!?」
「ふふふ、正真正銘、魔界の魔王だよ、私」
「は、はわぁー・・・」
愛理は他の世界についての教育を受けた事があるものなら必ず知っているくらいの有名人だ、何せ多重世界学の教科書にその名が載っている。
「それと、私さ、吸血鬼だった」
「はっ?、幼馴染の俺の前で何言ってんだお前、つまんねぇ嘘は言うなよ」
「本当よ」
そう言って口を開け、吸血鬼としての立派な牙を三人に見せる。
「わぁ〜大きな牙〜、本当なんだねぇ〜」
シメラはアリシアの牙を見てすんなりとアリシアが吸血鬼なのだと信じた。
「どう見ても本物の牙ですし、信じますけど、なんでいきなり目覚めたのです?」
「簡単に言うと私より強い種族な師匠の血を見たら興奮した、そしたら血が吸いたくなった」
「興奮したって、オイオイ、それで?、俺らを見てどう思ってんだお前?、吸血鬼って人間を餌にしか見れない奴が多いって聞くぜ?」
グレイの話を聞いたアリシアはニヤリと笑うとグレイに近付き抱き着く。
「お、おい!」
「どう思う?」
そして耳元で囁く。
「お、お前が俺らの事を餌だなんて思ってない事くらい、分かってるよ!」
「なら聞かないでよね、答え次第では本当に吸ってたわよ?私」
そう言ったアリシアの目は紅くなっている、血を吸いたいと思うだけでも目を紅くする事は可能なのだ、勿論今は吸血衝動に襲われたりなどはしていない。
「でも、吸血鬼なら血を吸いたくなるものですよね?、そう言う時はどうするんです?」
「それは安心しなさい、トマトジュースを飲めば収まるみたいだから」
「ふぅん、なら特に心配はないですね、ここまで歩いて来たのでしょうし、それなら陽を浴びても問題ないって事ですので」
「うん、あっ、それとさ私、ただの吸血鬼じゃなくてさ、真祖なの・・・」
チラチラとメア達の様子を伺いながら自分は真祖だと告げるアリシア、しかしアリシアの予想とは違い三人とも驚かず平静だ。
「私達がまた驚くって顔してますけど、先程まで散々驚かされたのにまだ驚けるとは思わないで下さい」
「ですよねー」
三回も連続で驚ける者は少ないので、メアの言葉は至極当然である。
「さて、みんな、ロミアス王が三人も城に泊まっても良いって言ってたからこのホテルからはチェックアウトしようか、アリシアの新スタイルが形になるまではここで修行を行う予定だから、暫くはお城で生活だよー」
「お城で生活かぁ〜、美味しいもの食べらるかなぁ〜」
「当然ね、お城のシェフは皆腕が良い・・・筈よ!」
「筈かよ、聞いたんじゃねーのかよ」
「勿論!」
「お前なぁ・・・」(吸血鬼になってもなんも変わりゃしねぇ)
吸血鬼真祖になっても幼い頃からの様子と何も変わらないアリシアにグレイが安心する中、アリシア達は部屋を離れホテルからチェックアウトし、城に戻って行った。
城
夜、愛理とついでにアリシア達の歓迎会が開かれ、アリシア達は美味しい料理をたらふく食べ、満足したままお風呂に入りに来た、そして風呂場で三人の少女は凄いものを見た。
(デカ!)
(腰細いです!)
(足も長いね〜)
三人の少女が見た凄い物とは愛理の裸であった、気持ち良さそうにお湯に浸かる、何かは形良く大きく、腰は細く、程よく肉付きが良くそれでいて長い足、を持つ金色の九尾はまさに絶世の美女である。
「ほぉーう、アリシアとシメラは中々の物を持ってるね」
愛理はお湯に浸かりながらアリシアとシメラの何かを中々の物と称する。ちなみにシメラの物の方がアリシアの物より大きく、愛理の物はそれの更に上をいく。
「メアは・・・、・・・」
「せめて何か言ってください!小さい所なのは分かってます!分ってますからぁ!」
「あはは・・・」
涙目なメアの肩を叩きつつ、アリシアはメアとシメラと共に浴槽に向かう、浴槽に向かうまでの間左右で揺れる何かをメアはジロジロと恨めしげに見つめていた。
「いらっしゃーい、あっメア、触る?」
「・・・、良いんですか?、普段ない分揉みしだきますよ?」
「良いよー」
「なら今日の私は狼になります!」
「きゃー!、あっ言い忘れてたけど、触ったのなら・・・」
キランと目を光らせ両手をワキワキと動かす愛理、嫌な予感がしたメアは、グヘヘと揉みしだいていた何かから手を離し逃げようとするが遅かった。
「私も触るから」
「にゃー!?」
この後、愛理に襲われ戸惑うメアがどうにか立ち直り愛理にやり返しをした、その結果、愛理VSメアの泥沼の触り合いバトルが始まったのは、その様子を眺めていたアリシアとシメラだけの秘密である。




