九話、ドラグーンとの戦い
オルビナの町
アルズが放ったミサイルが迫る、同時に歩兵部隊同士の戦いも再開され、激しい剣戟と銃撃の音が周囲に響く。
「撃ち落とせ!」
組織間連合側のファントムパイロット達は銃口からビームや弾丸を放ちミサイルを撃ち落として行く、機動性の高いギルスに乗るアリシアはミサイルを避けながら機体を走らせ、アルズの前足に取り付いた。
「喰らえ!」
ビームサーベルを関節に向けて突き出す、しかし相当に硬い装甲のようで表面を焼くだけだ、そして足を振り上げたアルズはギルスを踏み潰そうと足を振り下ろす。
「くっ!」
アリシアは急ぎフットペダルを踏み込みスラスターを吹かし移動する事で前足を避けた。
「うぉぉ!」
ギルスに集中していたドォーズはメッシュのミウラが迫っている事に気付いていなかった、振り下ろされたばかりの前足に迫ったメッシュは、大剣で関節に向けて斬りかかる。
「チィィ!」
メッシュの攻撃はアルズの関節を傷付けた、しかし浅い、これではまだ前足は沈まずジャンプしコクピットに取り付くには隙と距離が大きすぎる。
「喰らえや!」
「当てる!」
グレイとオラシズが左足を狙い集中攻撃する、次々と関節に命中する弾薬は関節表面を焼け焦がし、装甲の下の機械部が徐々に見え始めた。
「やらせるか!」
オラシズは関節がやられる前に敵の攻撃をやめさせるために、尻尾をグレイとオラシズに振り向ける、グレイはしゃがんで尻尾を頭上を通らせる事で避け、オラシズは上に飛んで尻尾を避ける、尻尾での攻撃が終わるとアミラーゼのミウラ隊が厄介な尻尾に向けて集中攻撃をし、その高威力のビームで尻尾を撃ち落とした。
「やるなぁ!」
ドォーズはアルズの口から強力なビームを放たせる、薙ぎ払うかのように放たれるビームを各機ギリギリで避ける。
「行けぇ!」
アリシアは最大出力に設定したビームライフルからビームを放ち、放たれたビームは左足の関節を撃ち抜いた。
「これで!」
「グォォ!、まだだぁ!」
左前足の関節が撃ち抜かれたことによりその巨体を支えられなくなったアルズは、ズゥンと言う音と共に左側にその機体を横たわらせた、アリシアはコクピットに向けて機体を迫らせ、ドォーズはとあるスイッチを押し、アルズの背部から何かが放たれた。
『アレは!』
アルズの背部から放たれた物の正体を知るギルは急ぎ機体のコクピットを開く。
「ギル!?どうしたの!?」
『今放たれたのはファントム用のジャミング弾です!、効果は三十分ほどファントムの機能を停止させ・・・』
空で弾丸が弾け周囲に粒子が散布される、その途端にギルが最後まで言葉を言い終わる前にギルスが機能を停止した、他のファントムも同様に沈黙する。
「そんな・・・、もう少しだったのに・・・」
「見て下さい、アリシア」
アルズのコクピットを貫きドォーズを仕留める事が出来なかったアリシアは俯く、そしてメアが指差す前方を見ると、ドォーズがアルズのコクピットから出て来ているところであった、周囲のファントム達が停止している間にこの場から逃げ出すつもりなのだ。
(いや、まだ諦めるには早いわよ、アリシア、あっちが生身ならこっちも生身で戦えば良いだけよ)
ガンブレードを手に持ちコクピットから飛び降りたアリシアはメアと共にドォーズに近づいて行く。
「お前・・・、その顔は・・・」
「何よ?」
「俺の息子ドゥームをムショ送りにしやがったクソ女じゃねぇかぁぁぁ!」
息子の仇であるアリシアの顔を見たドォーズは怒りにより狼人間に変身した、その背丈はドゥームよりも遥かに大きい、巨大な狼人間の姿になったドゥームはアリシアに迫り、鋭い爪を振り下ろす。
「くっ!」
アリシアは身を捩りギリギリでドォーズの攻撃を避けた、メアがアリシアの横を通り過ぎたドォーズにビームを浴びせるがダメージは無い。
「ガァァ!」
アリシアに突進攻撃を避けられたドォーズは足を踏ん張らせ急制動をかけついた勢いを止めると、かなり早い動きで振り返り口を大きく開かせながらアリシアに噛み付き攻撃を仕掛ける。
「セァァ!」
噛み付かれる前に真上に跳びドォーズの真上に現れたアリシアは、宙で体を回転させ首を狙った回転斬りを放つ、しかしドォーズの丈夫な皮膚はガンブレードの刃を弾く。
「あぁ!?」
皮膚に剣を弾かれたアリシアは跳んで移動しようとしたが、ドォーズに足を掴まれ地面に叩きつけられる。
「ぐぅぅぅ!?」
「アリシア!」
アリシアを振り回して何度も地面に叩きつけるドォーズ、このままでは親友が死ぬ、そう思ったメアは全ての魔力を込めた弾丸を撃ち、ドォーズに当てた、その衝撃でドォーズはアリシアを取り落とし、地面に落ちたアリシアは力なく地面に横たわる。
「はぁはぁ・・・」
魔力を使いすぎた影響で魔力欠乏症となり、意識が朦朧としているメアはそれでもアリシアを守る為に、震えながらもサブウェポンであるダガーを構える、そんなメアを嘲笑ったドォーズは腕を振るいダガーを弾くとメアを全力で殴った、ドォーズからの渾身の一撃を喰らったメアは何度かバウンドしながら地面を転がって行き動かなくなった。
「メア?、メア!」
その様子を見て痛む身体を奮い立たせ立ち上がったアリシアはメアに駆け寄る、そして脈を測ると脈を感じた、まだ生きているようだ。
(良かった・・・)
メアが生きているのを確認したアリシアはホッと安心しながら立ち上がる、そしてドォーズを見据える。
「おい、私を本気で怒らせた事、後悔するなよ?」
メアを傷付けたドォーズに激しい怒りを感じているアリシアの体から青い雷が放たれる、スタイルバーストが発動したのだ。
「行くぞぉぉ!」
青い雷を放ちながらアリシアが駆け出す、デッドスカルのボスドォーズを倒す為に。
魔界
「魔王様、例の少女が再びスタイルバーストを発動させたようです」
「うん、感じてる」
アリシアの力を感じているその証拠に愛理の尻尾はピーン!と立っている。
「近いうちに会いに行く予定なんでしょ?、弟子にでもするつもり?」
「うーん、あの子が望むのなら弟子にして鍛えてあげるつもりだけど、本人が断るのなら弟子にはしないよ、あくまであの子に自分が何者かを教えてあげるだけさ」
「驚くじゃろうのぅ、様子を見るに全く気付いておらんし、衝動に襲われた事もないようじゃからな」
「今まで衝動に目覚めなかった事が奇跡のようなものですしね」
「だね」
部下達との会話を終えた愛理は強い力を魔界にまで届かせる少女の勝利を天に祈る。




