六話
エンジェルズ本部
アリシアがドゥームを倒した日から三日が経った、突然強大な力を発揮したアリシアはあの日からずっと眠り続けていた。
「んっ・・・」
眠り続けていたアリシアが目を覚ます、ムクリと体を起こしたアリシアはボーと周囲を見回す、するとベッドにもたれかかってメアとシメラが眠っていた。
「よう、アリシア」
メアとシメラから視線を逸らしたアリシアがボーと壁にもたれかかり眠っているグレイを見つめていると、隣のベッドから何者かが話しかけて来た。
「!、メッシュさん!、目が覚めたんだ!」
「おう三日前にな」
話しかけて来たのはメッシュだった、彼の顔を見たアリシアはボーとした状態から覚醒し、彼に話しかける。
「その二人とあそこで寝てるグレイは、熱を出しちまってたお前をずっと看病してくれてたんだぜ?、目を覚ましたらお礼を言っときな」
「そうなんだ・・・、分かった、必ず言うわ」
「それでよぉ、聞いたぜ?アリシア。お前ドゥームを倒したんだってな。本音を言っちゃ俺が倒したかったが、よくやってくれたな、ありがとう」
「ふふん、私はアリシア様ですもの、あのくらいの奴倒せて当然よ!」
「熱出すほどに力を使って寝込んでた奴が言うセリフじゃねぇ」
「う、うるさい!」
メッシュの言葉を聞きアリシアはプクーと頬を膨らませる、メッシュはそんなアリシアを見て大笑いした。
「さて、まだまだ体は本調子じゃねぇし、寝るか」
「うん、お休み、メッシュさん」
「おう、お休み」
メッシュはお休みの挨拶をすると布団に潜る。アリシアはベッドから降りて毛布を持ってくると三人共に被せ、メアの隣に座り肩を寄せると静かに寝息を立て始めた。
「・・・」
朝、目覚めたメアは混乱していた、ベッドの上で寝ていた筈のアリシアが地べたに降りており、しかも自分の膝を枕にして眠っているのだ、それに眠る前は被っていなかった毛布が被せられている、数時間のアリシアとメアの会話を知らないメアにとっては正に怪奇現象である。
「んー、・・・、あっ、おはよメア」
「おはようございます、もしかして夜に一回起きました?」
「うん」
「そうですか」
アリシアの言葉により謎は解けたメアは、怪奇現象が起こったわけではないのだと思い安心する。
「それでさ、メア、熱を出した私の看病してくれたってメッシュさんに聞いたわ、ありがと、いつかメアが熱を出しちゃったら今度は私が全力で看病するからね」
「ふふっ、その時はお願いします」
「うん!」
アリシアとメアは目を合わせあいニシシと笑い合う、そうしている間にシメラが目を覚ましたようで肩を寄せて来た。
「私だけ仲間外れはやだよー」
「仲間外れになんてしないわ、シメラも大切な仲間ですもの、それとあなたにも言うわね、看病してくれて、ありがとう」
「えへへ〜、どういたしまして〜」
アリシアにお礼を言われシメラはにへらと笑う。
(なんだアレ、美少女三人が肩を寄せ合って楽しそうに話してやがる、桃源郷かな)
一方のグレイは薄眼を開け楽しそうに話すアリシア達の様子を見守っていた。
デッドスカル本部
「ボス・・・、降参しましょう・・・、施設を大量に失い、構成員も大勢パクられた、こんな状況じゃもう組織間連合に勝つ事なんて出来ませんよ・・・」
「降参?ありえねぇな、ドゥームを奪われた時点でな」
デッドスカルのボスはアリシアが捕らえたドゥームの父親である。息子が奪われたのだ、取り戻すまでは退けない。退くとしても取り戻した後だ。
「奴等は近いうちにここに攻めて来るだろう、その前にここに戦力を集中させる、そう国中にいるもんに伝えろ」
「はい!」
「ここに攻め込む時は奴等も最大の戦力を投入して来るだろう、その最大の戦力に勝てればこっちのもんだ、今は奴等に吹いてる追い風は俺らの方に回る、そうなりゃこの国を俺らの物にする事すら可能だ、だからよぉ!、お前ら!、気合い入れやがれ!、国を俺らのもんにするぞ!」
「「おお!」」
国盗りをすると聞きデッドスカルの構成員達の指揮は一気に上がった。ボスはそれを見て満足気に頷く。
(後はアリシアとか言う女だ、その女のせいで俺の息子は奪われた、絶対に許しちゃおけねぇ、俺の手で絶対に殺してやる、待ってやがれよ・・・)
デッドスカルのボスはアリシアを殺す為に牙を研ぎ始めた、その牙がアリシアに届く日は近い。
ギグルス国、オルビアの町
「まさか、今更故郷に戻る事になるとはな・・・」
転移魔導師の転移魔法で共にオルビアの町にやって来たエリシアは、薄っすらと記憶に残る故郷の町並みを眺める、かつて父と母と過ごした町を。
「お前は隠れていろ、私は監視対象の確認に向かう」
「分かりました、私は用意しておいた隠れ家に向かいます」
「あぁ」
転移魔導師と別れたエリシアはエンジェルズの近くに行く、そのままエンジェルズ本部の向かい側のビルの上に登ると、転移魔導師が得ていた病室に運び込まれたと言う情報に従い、エンジェルズの病室部分を双眼鏡で覗く。
「・・・」
いた、双眼鏡で捉えたアリシアは楽しそうに友と話している。
「・・・・・、はっ!?、いかんいかん、私の任務はライジングスタイルの保有者の監視、妹、アリシアなどに興味はない、興味はない」
アリシアを見つめトランス状態に入っていたエリシアはハッとした表情を見せると、何やら自分に自分で暗示をかけ始めた、すると双眼鏡で捉えているアリシアが微笑んだ。
「・・・・、はっ!?、なんて可愛い笑顔なんだ!、って違う違う!!、妹などに興味はない!、興味はない!」
アリシアの笑顔を見て今度は携帯端末でその笑顔を写真に収めようとしていたエリシアは、四苦八苦して抵抗する右手を下げさせ、また双眼鏡でアリシアの監視をする、するとアリシアが窓から顔を出して風を浴び始めた。
「・・・、はっ!?、今すぐ行かなくては!、位置に付いてヨーイど・・・、ダメだダメだ!、監視任務なのに自ら姿を晒してどうする!、ええい!陛下は何故私にこのような任務を任せた!、他の奴でいいだろ!、他の奴で!、それはそうと妹最高!」
最終的に本音が漏れたエリシアは、この後もアリシアの元に向かおうとする自分を必死に抑え、監視任務を継続する。
「アリシア?、どうしたのです?」
「なんか視線を感じて寒気が・・・」
「気のせいですよ、気のせい」
「ええー?、確かに感じるって」
「気のせいですよ、気のせい」
「・・・」
何者かに見られている気がするアリシアは適当な返しをするメアをジーと見つめる。




