一話、時戻しの剣
DIVAの世界
出産の影響で相当に疲労していたGATEは丸一日寝ていた。目を覚ますとアリスの鳴き声が聞こえて来たので慌てて身を起こす。
「起きたか!シア!、お腹空いたみたいでずっと泣いてんだ!、助けてくれ!」
「もう、パパになったのに情けないわね、ほら貸して」
GATEはお腹が空いた為大きな声でなくアリスをグレイから受け取ると胸を服から取り出し娘の口に含ませる。
「おっ、凄い吸い付き、ふふっ、元気元気」
力強く元気に母乳を飲むアリスに母乳を与えるGATEは愛おしげに微笑み娘の頬を撫でる。
「・・・そう言えば私眠っている間に十九歳になったのよねぇ、ねぇレイ君?誕生日プレゼントはないのかしら?」
(げっ、忘れてた・・・)
「それは忘れてたって顔ね、全く・・・君らしいわね、一年経っても全く成長してない、そんなんでこの子を育てられるのかしらねー」
「グヌヌ・・・」
一年振りに目覚めた妻に早速小言を言われるグレイはグヌヌと俯く。そうしている間にアリスは十分に母乳を飲み満足した様で胸から口を離す。GATEは机の上の布を手に取るとアリスの口元を拭き自分の胸も履くとアリスにゲップをさせた。
「て、手慣れてる・・・」
グレイはGATEの手慣れた仕草を見て自分の不甲斐なさを感じた。
「お兄さん、あれ、データベースに頼り切ってるんですよ」
すると一年のうちにグレイの事をお兄さんと呼ぶようになっているマイがトコトコとグレイに近付いて来て。GATEが手慣れてるのはデータベースのお陰だと伝えた。
「あー、納得」
「マイ!、余計な事言わないの!」
GATEは余計な事を言うなと顔を真っ赤にしながらマイに言う。
「私嘘は正すべき物と思ってるので、お姉様相手でも」
「くー!、生意気!、そう言うところ直しなさい!」
「ふふふ、私が生意気なのは私が私である為に必要な事なので絶対に変えません、そんな事よりアリスを抱かせて下さい」
「・・・、良いけど優しくね?」
「分かってます」
マイはGATEに近付くとアリスを受け取る。
「わぁ・・・、本当に可愛い・・・」
あまり笑顔は見せないマイ。しかし今回ばかりはアリスの可愛さにやられたようで思わず微笑んだ。GATEはそんな妹を見てニヤニヤする。
「な、なんですか!その顔!、可愛いアリスを見て微笑んじゃいけないんですか!?」
「良いわよー?、ただあなたが笑うなって珍しいなって思っただけ」
「ムー」
マイが姉に膨れっ面を見せ付けているとイチちゃんがとととー!と走って来た。
「お姉ちゃん、この子がアリス?」
GATEが産気づいた頃は下界に降りて遊んでおり。戻って来てからは寝かせてあげて下さいとマイに言われ。GATEにもアリスにも会えていなかったイチちゃんはアリスについて姉に尋ねた。
「そうよ、この子がアリス、イチちゃん?、アリスのお姉ちゃん、出来るかしら?」
「出来る!、アリスのお姉ちゃんになる!」
GATEの言葉を聞いたイチちゃんは出来るとガッツポーズをした。
「良し、それじゃあアリスをお願いね?」
「うん!!」
「おっ、お腹いっぱいになったから眠くなったみたいだぞ」
「あら、ふふっ」
マイやイチちゃんと話している間にアリスはマイに抱かれながら眠ってしまったようだ。
「さてと、私の方も動かなきゃね」
GATEは完全なる世界を作る為の戦争を始める為に行動を始めようと立ち上がる。がフラつき倒れそうになった。グレイがフラつく妻を慌てて抱き止めた。
「無茶すんな、もうちょい寝てろ」
「うん・・・」
グレイはGATEをお姫様抱っこしベットの上に寝かせた。マイが気を使いGATEの隣にアリスを寝かせる。GATEは隣で眠る娘の頬を愛おしげに撫でながら再び眠りに就いた。
ホムウロスの森
メア達はホムウロスの森を歩いていた。
「鈴さん、ここに素材が?」
「はい、魔力を吸収させれば強力な力を与える事が出来る名もなき鉱石がここにあります」
「・・・あなたはここでその鉱石を守護していたと言う訳ですか」
「はい、人が得てしまうには危険すぎる素材ですので」
鈴がここで守護していた鉱石は例えば大量に魔力を吸収させ爆発させれば大量破壊が可能な爆弾となるだろう。そんな代物を人に与える訳にはいかないと言う鈴の考えに一同は同意する。
「ですですですトリオか」
「やめておけ、怒られるぞお前・・・」
シールスがボソリとメアと鈴とウォーリーのトリオをですですですトリオと称した。エリシアはそんなシールスを小突きやめておけと言った。
「だってよぉ〜?」
「・・・聞こえてますよ」
「ヒッ!」
最近ですですコンビと言うたびに謝るまでメアに追いかけ回されている(お陰で体力がかなり増田)シールスはトラウマになっている為悲鳴をあげてこっそりと恋心を寄せているケイネスの後ろに隠れた。
「メア、あまりこいつを虐めるな、後で煩いぞ?」
少女が寄せて来る視線から想いに気付いているがその想いに応えるか応えまいか迷っているケイネスはシールスを庇う。
「・・・そうですね!、後でギャーギャー煩くされると堪らないので今日はここら辺でやめてあげます!」
「そうだー、そうしとけー!」
「・・・やっぱり追いかけ回してあげましょうか?」
「ヒィィ!」
「はぁ・・・」
このままだと永遠ループだと思ったメアはシールスから視線を逸らすと鈴の方を見る。
「もう着きますか?」
「今着きました」
鈴は着いたと言うと指をさす。鈴の指の先には無色透明な不思議な鉱石があった。メアは近付き触れてみるが魔力も何も感じない。
「これに魔力を与えて本当に時渡りの者を作れるのでしょうか・・・」
「さぁね?、でもやってみなきゃ分からないわよ、だからさ?やってみようよメア」
アリシアを取り戻す為の修行の際にいつも支え合いそしてウォーリーへの告白をする時に勇気付けられた事により。アリシアとの仲よりは劣るが確かにメアの親友となっているニアは親友にやってみようと言い肩を叩く。
「そうですね、ニア、やってみないと何も始まりません」
メアは剣を抜くと鉱石を斬り出した。斬り出した事により上に飛んだ鉱石を明日奈が受け止める。
「さて愛理、メア、これに魔力を、あなた達の大量の魔力ならば時渡りの書を作る為に十分な魔力を溜めれるわ」
「分かった」
「やってみます!」
メアと愛理は鉱石に手を触れ魔力を送り始める。すると二人の光の魔力に反応し鉱石は金色に光り輝く。グングンと魔力を吸って行く鉱石は眩い光を放ち始める。
「もういいわ!、さぁ!作るわよ!」
魔法はイメージ、明日奈は鉱石を時渡りの書に変える為、時渡りの書に慣れとイメージする。すると眩い光を放つ鉱石は書の形に徐々に変質して行き。数秒後には時渡りの書が愛理の手の上に現れていた。
「ふぅぅ・・・、次!」
明日奈は額の汗を拭く。この作業だけでもかなりの魔力を使ってしまっているのだ。メリアと共にセカンドマナを得ていても辛い作業である、そして再び魔力を放つと次は時渡りの剣に書を変化させた。
「もう少し!!」
最後に残り全ての魔力を注ぎ込み明日奈は時戻しの剣を完成させた。
「はぁはぁ・・・、ふぅぅ、出来たわ・・・」
時戻しの剣を完成させた明日奈は魔力欠乏症状態である為フラつく。それを見た鈴は主人を抱き止め魔力を送って回復させる。
「ありがと、さて・・・メア、受け取りなさい、これが時戻しの剣、私達の切り札よ」
鈴から魔力を貰い回復した明日奈は時戻しの剣をメアに渡す。メアは受け取った剣を掲げ日にかざす。剣は刃に時計のマークが描かれておりその時計は常に動き続けている真っ白な剣だ。
「それは一応言っておくけど戦闘には使えない、使う時が来れば使いなさい、良いわね?」
「はい」
メアは受け取った時戻しの剣を鞄の中に入れる。切り札を得た彼等は戦争がいつ始まっても良いようにアルトシャルセンに戻った。




