二十二話、宣戦布告
アルトシャルセン王都、王室
「本当に彼女に対しそれを行うつもりですか?、陛下・・・」
シュルツ王の側近が何かを成そうとしている王に改めて質問する。
「ああ、覚悟はした、一般人を殺すくらいなら明確に彼女の敵となるとな、他の国も了承させた、後は彼女と全面的な対決をし打ち勝つ、それだけだ」
「・・・分かりました、あなたがそうお決めになられたのならば我等も従いましょう」
「すまない・・・」
覚悟を決めた王は転移する。GATEの元に。
帝都、近隣
GATEは剣を構え皇帝用ナイアロスタの出方を伺っている。するとナイアロスタの右手が赤く輝きビームが放出された。
「ハッ!、そんな攻撃!」
GATEは剣で放たれたビームを弾くとナイアロスタに接近する。そして斬撃を放ったが防御魔法に阻まれ。期待から伸びて来たアームに拘束される。
「攻撃を弾けても!、俺の機体の防御力には敵わぬようだな!!、喰らえ!!」
「チッ!」
GATEは拘束から抜け出せないままナイアロスタの胴体部砲門から放たれた砲撃に巻き込まれ吹き飛ばされた。
「ぐっうう、あうう・・・」
今の攻撃で左腕を失ったGATEは地面に倒れて蹲り苦しむ。
「ハハハ!お前の血は素晴らしいな!、恐ろしい程の力を持つお前すらこうして追い込める!!」
ナイアロスタを飛行させた皇帝は真上にまで接近すると右足でGATEを踏み付ける。踏み付けられたGATEは目を見開き血を吐く。
「この・・・、人間如きがぁぁ!」
人間が操縦する機体に苦しめられているこの事実に怒りしか感じていないGATEは叫ぶと左手からブラスターを放つ。しかしナイアロスタは再びGATEの攻撃をシールドで弾きGATEを右手で掴み握りしめる。ボキグキと握りしめられるGATEの体は軋む。
「あぁぁぁぁ!?」
体に強烈な痛みを感じるGATEは悲鳴を上げ同時にこの苦痛を与えている存在である目の前の機体に乗る男への怒りを更に高めて行く。その時だった。
「うぉぉぉ!!」
グレイが転移して来て現れアリシアを掴んでいる右手を斬り裂いた。
「レイ・・・君」
ナイアロスタの手から解放されたGATEは力なく地面に落ちる。グレイは慌てて妻を受け止めた。
(腕が・・・、やったのはあいつか!)
「俺の女を傷付けやがって!!、よくもやれやがったなぁぁぁぁ!!」
この時グレイは強くセカンドマナを得る為のイメージした激しい怒りを感じている為痛みすら感じないグレイはセカンドマナの取得に成功し。一気にその出力を向上させた。
「レイ君・・・、大丈夫?」
フラフラと立ち上がったGATEは夫の隣に立ちその身を心配する。現に彼の鼻や目からは血が流れ出しており大丈夫そうには見えない。
「お前の為だ問題ない、そんな事よりもあいつを倒すぞ!、シア!」
「ええ!、スタイルバースト!!」
GATEはスタイルバーストを発動させ更に出力を高め夫と頷き合うと駆け出した。それを見た皇帝は砲撃をするが。セカンドマナを得て防御力が増しているグレイは全身を鉄に硬化させる事で受け止め。その後ろに隠れていたGATEがナイアロスタを蹴り飛ばしナイアロスタを地に着ける。
「このぉ!」
皇帝は追撃を加えて来るGATEに向けて胴体部から針を飛び出させて迎撃する。その攻撃でGATEは左脚を失う。
「くうぅ!、はぁぁ!」
スラスターを吹かし逃げるナイアロスタに追いすがったGATEは剣で胴体部を斬り裂く。その攻撃で内部に乗る皇帝の顔が見えた。
「まだだぁ!!」
皇帝は左手からビームを放つ。GATEはシールドビットでそれを防ぎ切るがその隙に距離を取られてしまう。
「行かせねぇよ!!」
逃げようとするナイアロスタの真上に飛行して取り付いたグレイは縦の回し蹴りを当ててナイアロスタを地面に叩き付けた。
「ぐぅぅ!?」
機体ごと地面に叩き付けられた皇帝は内部で呻き声を上げる。
「シア!、決めろ!!」
「ええ!!、アルトシャーニア流剣術!!、エクスペクトスラッシュ!!」
GATEは連続剣撃をナイアロスタに浴びせていく。次々と斬り刻まれ行動不能となる機体の中で皇帝は言う。
「我等皇族が作り上げた国も・・・、ここまでか・・・」
と、最後にGATEの剣がコクピットを斬り裂いた時。宙に鮮血が舞い皇帝専用のナイアロスタはオルボルクが命を失うのと同時に沈黙した。限界を迎えていたGATEも浮遊していられなくなり地面に向けて落ちて行く。それをグレイが受け止めた。
「勝ったわね」
「おう、・・・こんなボロボロになりやがって、全く・・・お前って奴は・・・」
「ごめんなさい・・・」
グレイはバラバラになったGATEの小さな体を抱きしめる。夫に抱きしめられるGATEはその胸に顔を埋めた。
数時間後
連合軍と帝国軍の戦いは皇帝を失った後も続き。最終的には連合軍の勝利で終わった。グレイに連れられ連合軍の集結地点に来たGATEはニヤリと微笑みながら口を開く。
「さぁ?、あなた達?、軍を潰したからと言って終わりではないわ?、帝国人であるだけでも罪なのだから、一般人も殺し尽くしなさい?」
GATEは一般人を殺し尽くせと命令する。しかし兵士達はそれを聞いても動かない。それどころか一斉にGATEに向けて武器を向けた。
「・・・何のつもりかしら」
「これが我等の答えと言う事だ、各国の一般人を攫い洗脳をし言う事を聞かせたりしていたのはこの国の軍部や皇帝だ、しかし一般人はそのような事はしていない、つまり何の罪もないのだよ、アリシアよ」
「・・・またそれか、全て殺し尽くさないといつか反抗させると言ったでしょうに」
「そうはさせんように我々は動くさ、よって我々はお前には従わん!、悪行を行うお前とその父DIVAに我々は宣戦布告をしよう!!」
剣を引き抜きGATEに向けたシュルツ王はDIVAやGATEに向けて宣戦布告をした。まさかこの場で宣戦布告をさせるとは思っていなかったGATEはきょとんとした顔を見せる。
「ふっふふふ、あっはははは!!、良いわ、良いわよ!!、お前達と戦ってあげる!!、そして後悔させてあげるわ!!、私の力を見て怯えている癖に逆らった事をね!!」
「後悔などせん、何故ならば私達は必ずお前に勝つからだ」
「あはっ!、出来るものならやってみなさいよ!下等生物が!、必ず私達が勝ってお前達全員を家畜にしてやるわ!!、帰るわよ!レイ君!」
「・・・あぁ」
グレイはGATEと共にDIVAの世界に転移して行った。
「シュルツ王、アリシアはあのダメージです、かなりの長い期間動き出す事は出来ない筈、その間に準備をしましょう、勝つ為の準備を」
「分かっておる、抜かりはない準備をするさ、人類の命運をかけた戦いの為にな」
メアの言葉に頷いた王は前を見る必ずDIVAやGATEに勝つそう心に誓って。メアもその隣で誓うこの戦いでアリシアを必ずDIVAから取り戻すと。
DIVAの世界
「随分とやられた物だ、この欠損具合だと一年は動けんぞ」
「・・・もっと早められないの?」
「・・・早めれば機能不全が出る可能性がある、俺の片割れであるお前に機能不全など俺が許さん、一年間待て、その間に俺はサードロットを更に増やし、同時にお前の体の更なる強化も行おう、ククッ、我々に従わぬ愚か者どもに確実に勝つ為にな?」
更なる強化と聞いたGATEはニヤリと笑いカプセルの背もたれに身を預ける。眠っているだけで更に強くなれるのならば一年間待つ価値はあると考えたのだ。
「良いわ、待つ、それにお腹にはこの子がいる、そんな状態で今回の帝国との戦争以上に激しい戦いになる筈の戦いには迎えないわ」
「うむ、お前の子の栄養は俺に任せよ、必ず元気に産まれれるようにしよう」
「お願い」
GATEは眠る前にグレイの顔を見て微笑むと目を閉じた。するとカプセルの中を水が覆って行き治療と新たな腕と脚を形成する作業が始まった。
「少年、お前はどうする?」
「お前に関係あるか?」
「フン、ないな、だが下界に降りるのならばマイナスを連れて行け、つまらぬ事でお前が命を失えば目覚めたGATEが悲しむからな」
「・・・今の俺マイより強いと思うぜ?」
「万が一と言う事を考えろ、それを考えないから人間は愚かなのだ」
「チッ、分かったよ、お義父さん?」
グレイは皮肉を込めてまたDIVAをお義父さんと呼ぶとGATEが眠るカプセルに右手を触れた。




