十九話、愛理VSラフォリア
帝国決戦編の最初の戦いは愛理とラフォリアの戦いです。
ナイリアーノ帝国、帝都、皇帝の部屋
「アレは・・・なんだ!?」
皇帝は窓から見える無数の扉に驚いた表情を見せている。
「・・・分かりません」
以前GATEがこの国に現れた際どのように現れたか見ていない彼等にはあの扉の正体が分からない。そして扉が開きその奥から軍勢が現れたのを見て目を見開く。
「GATE、チッ、名前が答えと言う訳か!、全軍を動かせ!、敵は今日で我々との決着を付けるつもりだ!」
皇帝は一瞬判断を迷ってしまった事に舌打ちをしながら全軍に出撃命令を出す。その時だった窓ガラスを突き破り一人の女が皇帝の部屋に入って来た。金色の髪に金色の狐の耳と尻尾。久城愛理が親友をGATEに殺させない為にも先回りしてやって来たのだ。
「あなたは!、ワルキューレモード!」
「やっぱそう来るか!、リアちゃんらしいや!」
既にゼロフォームに変身している愛理とワルキューレモードに変身したラフォリアは武器を激しくぶつけ合った。武器をぶつけ合った二人は全く同じ威力であった為体を仰け反らせた。そしてここでは戦えないと焦るラフォリアが愛理より先に立ち直り。愛理を蹴り飛ばし部屋から追い出す。
「陛下!、私は前も言ったように彼女を殺します!、私の隊の指揮をして下さい!」
「了解した、必ず生きて戻れ、我が帝国最強の騎士よ」
「はい!」
帝国の言葉に頷いて見せたラフォリアは部屋から飛び出し。重力に従い落ちて行っている愛理を追う。
「さて・・・」
ラフォリアを見送った皇帝は机の上に置いてある装置の前に立つ。そして奪われないように首元に身に付けていたキーを取り出すと鍵穴に差し込み捻った。
「ナイリアロスタ、全機起動!」
皇帝は切り札を使い惜しみをせずに起動させた。起動した魔導重機士ナイリアロスタは敵を迎撃する為に空に飛び立つ。
帝都上空
「はぁぁ!!」
白い魔力を滾らせながらラフォリアが愛理に迫り取り付いた。体を縦回転に回転させたラフォリアは縦の回し蹴りを愛理に当てて地面に叩き落とす。
「くぅぅ!!」
地面に落ちた愛理はすぐに立ち上がり剣を構える自分を地面に叩き落としたラフォリアがこちらに迫っているのだ。そして槍と剣がぶつかり合いその衝撃で地面に小規模なクレーターが出来る。
「はぁぁ!!、セカンドマナ!、解放!」
親友を取り戻す。その思いだけでラフォリアと向き合う愛理はメアより後に物にしたセカンドマナを解放しラフォリアを吹き飛ばした。
「っうう!、なんて力・・・、でも!」
ラフォリアは急激に上昇した愛理の魔力に怯むが彼女にも秘策があった。とある薬を取り出すと右腕に打つ。
「それは・・・?」
「ふふっ、今はGATEと言う名を名乗っているあの子の血から作った魔力増強剤です、他の竜騎士達なら耐え切れずに発狂してしまう代物ですが、私ならこの通り!」
ラフォリアは体にグッと力を込め。膨れ上がっていく魔力を一気に解放した。
「以前より遥かに力を増したあなたにも追い付けます」
(凄い力・・・、そしてこの魔力・・・、GATEになってからのアリシアの魔力に似てる・・・、つまり今のリアちゃんは擬似ファーストロットって事かな、・・・本人はバトルシア人の力を一時的に得たと思ってるみたいだけど)
愛理はラフォリアを見据えその力を冷静に解析する。そして現在の彼女が擬似的にGATEと同じファーストロットとなっているのだと判断した。擬似的にとは言えファーストロットとなったラフォリアは愛理以上の力を得ている。愛理は気を引き締めて剣を構え魔力量で負けていても絶対に勝つと誓う。
「はぁぁ・・・、この・・・高揚感、実に素晴らしいものです・・・、うふふ、早くあなたを殺してその死体を滅茶苦茶にしてあげましょう!」
ラフォリアは顔に邪悪な笑みを張り付かせると愛理に向けて接近する。愛理は受け止め切れないと判断し彼女の攻撃を避けた。すると槍の先から放たれた衝撃波が街を大きく破壊する。
「・・・、リアちゃん、街の人避難出来てないんでしょ?、今の攻撃でかなりの人が死んだよ?、それって騎士としてどうなのさ?」
「あははっ!、あなたを殺せれば!役に立たない一般人などどれだけ死んでも構いません!!」
(・・・、完全に力に振り回されてる、早く止めないとリアちゃんの体も危険かもしれない・・・、だから・・・出来るだけ短い時間で倒す!)
短期決戦にする、そう思った愛理はラフォリアに迫ると回し蹴りを放った。しかし、ラフォリアはその攻撃を指先だけで止めると。攻撃を止められ空中で一瞬静止した愛理の足を掴み地面に叩き付けた。顔から地面に叩き付けられた愛理の顔からは血が流れる。
『ご主人!、いきなり大ダメージですよ!?』
「分かってる!!」
愛理はまだ足を掴むラフォリアの腕を狙って剣を振るう。それを見たラフォリアは後ろに飛び退いて避けた。狙い通りそう思う愛理は立ち上がると。ラフォリアの腹に蹴りを当てて空に打ち上げた。
「もう一発!、ゼロブラスター!!」
「ははっ!」
空に打ち上がったラフォリアに愛理はブラスターを差し向ける。ラフォリアはそれを槍で弾き手からブラスターを放った。
「くっそ!、人がいるってのに!」
背後を仰ぎ見て住民がいるのを見た愛理は大きく魔力を膨れ上がらせるとラフォリアのブラスターを弾いた。
『ご主人!、残り魔力50パーセントです!』
(今のでそこまで減ったか・・・、マズいけど!焦るな!、とにかく攻撃を当てるんだ!)
愛理は翼を広げ空に飛び立とうとするがその前にラフォリアが背後に邪悪な笑みを見せながら降り立ち槍を突き刺された。腹に大穴を開けられた愛理は血を吐く。
『ご主人!?、ヤバヤバです!!』
「ふぬうぅぅぅ!」
腹に生じる強烈な痛みの影響でガクンと崩れ落ちそうになる膝を奮い立たせ、愛理はラフォリアの腕を掴む。
「捕まえたぁ!!」
「離せぇぇ!」
「あなたにこれ以上街を壊させない為にも離すかぁぁ!」
愛理は腹に槍が突き刺さったまま転移する。
「これで終わりだよ!!、リアちゃん!!」
「終わりじゃありません!、必ず私はあなたに勝つんです!愛ちゃん!!、・・・私、今・・・」
愛理を愛ちゃんと愛称で呼んだラフォリアは戸惑う。それを見た愛理は体内から激しく魔力を放ち自爆した。薬の影響で大きく力を増しているラフォリアでもその爆発には耐え切れず。同時に大ダメージを喰らった二人は地面に落ちて行く。
「愛理!!」
街の中から愛理の戦いの様子を見守っていたレベンは魔力で編んだ網を空中に出現させ愛理とラフォリアを受け止めた。二人が無事地面に着地したのを見たレベンはホッと安心しながら駆け寄る。
「レベンさん!、早く愛ちゃんの治療を!!」
相変わらずの無茶をする様子を見て愛理の事を思い出したラフォリアは駆け寄ってきたレベンに愛理の治療を頼む。レベンはその言葉に頷くと治療を始めた。
「ヘッヘッヘ、また勝ってやったもんねー」
夫に治療されながら愛理はラフォリアににやけた笑みを見せる。
「私はまだ動けますけど?、動けなくなるほどのダメージを受けてる愛ちゃんの負けです」
「いやいや、お腹に槍まで刺さってたんだよ?私、それなのに私より強くなってたリアちゃんを地面に落としたんだから私の勝ちだよー」
「怪我人が喋りすぎです!」
「あー、逃げた、なら私の勝ちって事でオッケーだね!」
「くー!、あなたって人は全く!、愛ちゃんは全く!!」
愛理の言葉を聞いたラフォリアはいつも通り頬を真っ赤にして怒る。そんな彼女を見た愛理は体を起こしラフォリアに抱き着く。
「元のあなたに戻ってよかった・・・、お帰り、リアちゃん」
「・・・、私、言い訳が出来ないほどこの国の竜騎士として沢山の他国の人を苦しめました・・・、この罪、どうやって償えば・・・」
「私にはあなたがどうやって罪を償えば良いかなんて分からないさ、でもさ?私はこれからもずっと一緒にあなたといる!、だから一緒に罪を償う方法を考えようよ!親友!!」
「・・・、はい!、親友!!」
ラフォリアは愛理の言葉を聞き涙を流しながら彼女を抱きしめる。愛理はラフォリアを抱きしめ返しながら親友を取り戻せて良かったと思うのと。GATEとメアにもこの様な日が早く訪れて欲しいと心から願う。
帝都外周
帝都に向けて進軍する各国の軍勢。帝都の外周まで100メートルという距離にまで迫った時。地面が光った。
「なんだ!?」
「た、退避!!、うわぁぁぁ!!」
指揮官達は光る地面を見て退避を命じるが間に合わず多数の兵士達が吹き飛んだ。メアは上空に吹き飛ばされ地面に落ちてくる亡骸達を見て目を伏せる。
「何を悲しそうな顔をしているのかしら?、油断をして先行しすぎた彼等らが悪いのに」
「沢山の人が死んだんです!!悲しいに決まっています!!」
「フン、ホント人間って余計な事ばかり考えてて愚かね」
メアを鼻で笑ったGATEは空に浮かび上がりデータベースを開く。そしてサードロット達の命令画面を開く。
「何をするのですか?」
「ふふっ、見ていたら分かるわ?」
愛理は迫るナイリアロスタ達を見て明らかに見下した表情を浮かべると。二千機程度は迫るナイリアロスタ達と同じ数のサードロットを召喚した。
「なっ!?、一瞬でそんな数の兵力を・・・!?」
「あはは、これが全てじゃないわ、お父様の世界にはもっともっと沢山のサードロット達がいる、こんなの私達にとっては大した戦力ではないの」
(こんな強い魔力を持ったサードロットという存在がもっといる?、一体どれだけの兵力をDIVAは持っているのですか・・・)
「さて、行きなさい?サードロット達、あの不恰好な人形達を倒し、私達の力を人間共に見せ付けるのよ!!」
GATEの命令を受けてサードロット達はナイリアロスタに対して一方的に撃破して行くと言う帝国にとっては正に絶望的な戦いを始めた。




