十六話
王都アルトシャルセン、王城
帝国との最初の戦闘で快勝をしたとは言え戦火の爪痕が残る王都、王の命令で聖騎士達は騎士や住民と協力して壊れた建物の修理や崩れた建物の除去を行なっている。
「・・・お前か、昨日は助かったよ」
前日は戦場に出て自身の軍の指揮をし、この日は王室で街の修理などの指示を出している王は明らかに疲れた様子だ。そんな彼の目の前にGATEが現れまた彼の膝の上に座る。
「なぜそこに座る」
「あなたの膝の上ってなんだか落ち着くのよね、理由はなんとなく分かるんだけど」
王はちょこんと自身の膝の上に座るGATEになぜそこに座るのか聞く。座る理由を説明したGATEは精神世界で見た皇帝アリシアの夫の姿を思い出し。彼女の夫の子孫である王の膝の上に座りたくなる事から自分も少なからずは彼女の影響を受けているのだなと思う。それでもやはり自分はグレイ一筋で他の男はあり得ないとも思った。
「それで?今日は何をしに来た?」
「言ったでしょ?、最初の戦いが終われば帝国の帝都に攻め込むと、その為の会議を私主催で開こうと思ってね」
GATEはフッと小さく笑うと指を振る。すると部屋にいくつもの扉が現れ開いた。その先には様々な国の王室があり。その先にある王や代表達は驚いた顔でこちらを覗き込んでいる。
(これが扉を作る能力・・・、恐らくだが思っただけでどこにでも行き先を繋ぐ事が出来るのだろう、風景を記憶していないと発動しない転移の明確な上位互換だな)
王はチラチラとGATEの胸元を見ながら思考をし、この能力を使えば自身の膝の上に座る少女は帝国よりもさらに有利に奇襲作戦を仕掛けられるだろうと思い。実に厄介な敵になりそうだと思う。GATEはチラリと胸を見て来る王と目を合わせ王が慌てて胸から目を逸らしたのを見て口元に手を当ててクスクスと笑う。
「さてとスケベな王様は放っておいて、・・・、初めまして、私はGATE、この世界を作った存在DIVAの娘よ」
笑うのを辞めたGATEはまだ驚いた顔でこちらを見て来る王達に名乗り話しかける。シュルツ王がDIVAについて各国に知らせていた事もありDIVAの娘だと名乗った少女を見て王達はこれがスイールガーデンの首都を一夜にして滅ぼし後に軍勢を率いて自分達の敵となる存在と警戒を強めた。
「まず最初にあなた達に聞きたい事があるの、自分達の王都や首都を攻撃されて破壊されてどう思うのかしら?」
首を傾げ質問をした。
「決まっている!」
「愛する我が王都を破壊した帝国を絶対に許さん!」
GATEの言葉を聞いた王達は口々に帝国への恨みつらみを述べて行く。
「あははっ、そうだよね?許せないよね?、だからさぁ?」
GATEは指を鳴らし更に扉を作り開ける。そこには帝国の帝都の姿があった。
「あの帝都、みんなで壊しちゃおうよ、進軍の為に必要な扉は私が作ってあげるからさぁ?、だからぁ、ねっ?」
(恐ろしい・・・、言葉巧みに全ての国を自身の味方に付け帝国を滅ぼさせようとしている、・・・このままこの娘に誘導されれば歯止めが効かなくなり一般人すら死ぬ、それはいかん!)
シュルツ王は口を開き王達に対し言葉を伝えようとしたが口が開かない。なぜ開かないのだとシュルツ王が焦っていると。GATEが顔だけをシュルツ王の方を向け。可愛らしくニコリと微笑んだシュルツ王の口が開かないのはGATEの仕業であるようだ。
(何か言いたいのなら聞いてあげるわ?)
(罪もない一般人まで殺すつもりか!)
(あはっ、前も言った通り帝国人と言うだけで私は容赦はしないわ?、みーんな同罪、みーんな死んで貰うの、うっふふ、あははははは!!)
(くっ!、いい加減正気に戻れ!、アリシアリィターニア!!)
(ふふっ、私は正気よ、この力に目覚めた時からずっとね)
魔法で作った回線でのシュルツ王との会話を終えたGATEは回線を破棄し。王達の方に向き直る。
「さぁ?、私に答えを聞かせて?」
「勿論!、帝国を滅ぼす!」
「ふふっ、一般人にすら生きる事を許さず、根こそぎ狩るのよね?」
「決まっている!、これまで何人の国民があの帝国に殺されたか!、もう見て見ぬ振りはやめだ!」
王達は次々と帝国の殲滅戦に参加すると口に出して行く。
「勿論、シュルツ王、あなたも参戦なさるのですよね?」
「ええ勿論」
GATEは体を回転させシュルツ王に抱き着き胸を押し付けると。アルトシャーニア軍が参加するかどうか聞いて来た者の方に振り返る。
「あなた達と話をする前にね?、私と彼で話をしたの、その話で決まったのよ私の能力を使いあなた達の為に扉を開いて進軍をするって事がね、だからぁ、アルトシャーニア軍もこの戦いに参加するわ」
GATEは時折シュルツ王の顔を見て目を細めながらアルトシャーニア軍も帝国への殲滅戦に参加すると言った。GATEはこうする事でこの世界最強の国の王であるシュルツ王の逃げ道を完全に無くしたのだ。悪しき少女の手によりアルトシャーニアも一般人すら根絶やしにする非道な戦いに参加する事となったのである。
「そうか!、それならば百人力だ!、少し時間をくれ!!、準備をする!」
「ふっ・・・、ええ、出来るだけ急ぎなさい?」
GATEは笑いそうになるのを堪えながら王達に出来るだけ急ぐように伝え扉を消した。
同時にシュルツ王を喋れるようにする。
「よくもやってくれたな・・・」
膝の上にGATEが座った理由が落ち着くからと言う理由だけでなく、体を触れさせている事で言葉を話せなくさせる魔法の効力を強める為でもあったのだと理解している王はすっかりと自分を嵌めた少女を睨む。
「あはは、これであなたも逃げれないわね」
トンっと座る理由が無くなった為王の膝の上から飛び降りたGATEはドレスの裾を揺らしながら振り返りニヤリと笑みを見せる。
「やられたよ、私の中にはまだお前を小娘だと侮っている部分があったらしい」
「当たり前ね?私はお父様の娘、ただの小娘ではないわ」
「全くその通りだ」
はぁぁと完膚なきまでこの短い間にGATEに敗北したシュルツ王はため息を吐く。
「それじゃあね?王様」
GATEはシュルツ王に小さく手を振るとDIVAの世界に向けて転移して行った。
DIVAの世界
「お帰り」
DIVAの世界に帰ってくるとイチちゃんはまだグレイの腕の中でスヤスヤと眠っていた。同時に彼はまたシュルツ王の膝の上に座った事を知らないようなのでGATEはホッと安心し、秘密にしておこうと思う。
「会議はどうだったんだよ?」
「ふふっ、上手く行ったわ」
「・・・帝国を完全に滅ぼす為の戦いをシュルツ王が飲んだのかよ?」
「ふふーん、彼を喋れなくして私と決めていたって事にしちゃいました!」
「うわぁ・・・」
グレイはGATEのやり口に完全にドン引きした様子を見せる。
「私に対してそんなドン引きをして良いのかしらね?、今日の夜は・・・、ふふっ」
意味ありげな表情を見せグレイに対して誘っている表情を作り胸の下で腕を組み胸を持ち上げて彼を誘惑するGATE。
「・・・子供いるんだからやめとけ」
グレイはGATEの誘いと誘惑を子供がいるからと拒否した。
「ええー、なら触り合いっこするだけ!、それでも駄目?」
「それなら、良いよ」
「えへへ、やった」
GATEはグレイの方に甘えた様子で抱き着くとウキウキと夜が来るのを待ち始める。




