十二話
王都アルトシャルセン、城下町
メアは仲間達と共に城下町にいた。目の前には無数の魔導人形達。心のない兵士達はアルトシャーニアの王都、アルトシャルセンを滅ぼす為に進軍して来ている。
(・・・あれだけの魔導船を師匠と共にアリシアは殲滅した、私だって負けていられない!)
圧倒的な力を人類に見せ付けたGATEに負けてはいられない、そう思うメアは一番最初に魔導人形と相対し一撃で破壊してみせた。
「行きますよ!、みんな!」
「ええ!、メア!」
ニアがメアの隣に並び立ち剣を振るう。シールスは炎を放って魔導人形達を燃やし尽くし。ウォーリーは水を一気に流し魔導人形達を巻き込んだ。そこにシメラが雷の魔法を打ち込みショートさせ起動不能にさせる。
「・・・」
光のスタイルの力を奪われた今、攻撃魔法を使えず攻撃手段がないアイリーンは戦闘に加わらず何も出来ない事を心苦しく思った表情で城から戦場を眺めている。
「アイリーン、あなたの仕事は怪我をした人の治療だ、それはとっても大切な事、戦闘に加われなくてもあなたに感謝する人は沢山いるからね」
オーグルとアイリスと共に別の門から進軍してくる魔導人形達を相手にするつもりの愛理はアイリーンに言葉を掛けると肩を叩く。
「はい!」
アイリーンは愛理の言葉に救いを感じたようで力強く頷いた。
「それじゃ俺達の背中は任せた」
「ふふっ、怪我をせずに帰って来るわ」
「はいっ!、行ってらっしゃい!」
アイリーンに送られて愛理達は戦場に向かって行く。最大限の治療が出来るよう魔法陣の準備をしながら。
「アルトシャーニア流剣術!、サイクロンスラッシュ!」
サイクロンスマッシュ。風を纏わせた刀身を振るい敵を一気に吹き飛ばす技でありオーグルの狙い通り魔導人形は吹き飛び風の斬撃に切り刻まれ地面に倒れて行く。
「くっ!?、させない!」
娘を抱きしめ蹲る母親に魔導人形が迫る。それを見たアイリスは全力疾走でその間に入り込み魔導人形の手に備え付けられた電動ノコギリのようになった手を剣で防ぐ。ガリガリと言う音と共に愛剣が削られていくのを見たアイリスは急ぎ魔導人形の腹に蹴りを叩き込むと剣を突き刺した。
「流石だね、剣は大丈夫?」
「ええ、あの動くノコギリのような物を当てられた部分が刃こぼれしただけよ」
愛理との会話を終えたアイリスは母親に近付く。
「大丈夫?」
「ええ・・・、なんとか・・・」
「なぜこんな所に?、王城に避難するよう言われていたでしょう?」
「・・・、この戦いが始まる前、この子をお使いに出していたの、でも避難命令が出てもこの子は帰ってこなくて・・・」
「それで今まで探していたわけか」
オーグルは母親の腕の中で震えている子を安心させる為に頭を撫でた。
「騎士様、あの悪い奴らみんな倒せる?」
少女は不安気にオーグルを見上げ魔導人形を倒せるかどうか聞いて来た。
「あぁ勝てる、俺達は強いからな!」
オーグルはガッツポーズをすると少女に勝てると伝えた。それを聞いて少女は嬉しそうに微笑みオーグルに向けて頷いた。
「おじさん!信じてるからね!」
「おう!!、ほら城に行け、避難するんだ!」
「はい!、ありがとうございました!」
親子は手を繋ぎあい走って王城に向けて走って行く。
「さぁ、どんどん敵を叩くわよ!あなた!」
「おうさ!」
アイリスとオーグルは並び立って戦場をかけ愛理と共に次々と魔導人形達を打ち倒して行く。
王城
テラスで足をブラブラと揺らすGATEは楽しそうな様子で戦場を眺めている。
「あはっ!、見なさい?マイ、聖騎士団が活躍をしているわ!」
オデッセルス率いる聖騎士団は中央通りから王城に向けて攻めて来ている魔導人形達をその優れた能力で仕留めて行っている。指揮高い彼等は左右の通りから迫る敵を相手にするメア達や愛理達よりも早く魔導人形達を押し切って行っており。現状一番の活躍をしているのは彼等であろう。
「この国は本当に強いのですね、あの魔導人形も解析してみた所、悪くはない実力ですのに」
魔導人形は動力は小型魔導炉、武器は両手のノコギリに肩部のビーム砲だ、強固な鉄製のボディも相まって実力高い兵団でないとあっという間に押し切られてしまいそうだが。アルトシャーニア軍は余裕で魔導人形達を打ち倒して行っている事からその強さを窺い知れた。
「フン、この国はね?、後はプレミリカも善戦している、他の国は・・・かなりの戦力を消耗しそうだわ」
データベースを使い宙に各国の戦闘の様子を映させているGATEはこの戦いで人類の戦力がかなり弱まりそうだと思い笑みを見せる。後の自分達と人類の戦いで確実に勝利する為にもこの戦いで人類側の戦力が減る事はGATEにとって喜ばしい事なのである。
「この国の戦力がこの戦闘では減りそうにもないのは残念ですね」
「それは仕方ないわ、後の戦争でも私達の最大の敵はこの国になるでしょうしね、それに最大の敵が強い方が戦い甲斐があって面白いでしょう?、マイ」
「そうですね」
マイは姉の言葉に確かにと頷く。
「さぁ?、ここの魔導人形が減って来たわ?、彼等はどうするのかしらね?」
GATEは帝国の皇帝オルボルクが次の手はどんな手を使うのか?と思い、帝国の皇帝の部屋をデータベースに映し出させた。
ナイリアーノ帝国、帝都
「アルトシャルセンに送った魔導人形がもう限界です、陛下」
「フン、流石と言っておこう、兵を送れ、それと竜騎士隊の三番隊を出撃させる」
「了解しました」
オルボルクは一般兵とエリート集団である竜騎士隊の三番隊を王都に送った。
「GATEはどうしている?」
続けてオルボルクはアルトシャルセンにいるはずのGATEについて部下に聞く。
「不明です、魔導船を全機落とした以降は戦闘には参加していないと魔導人形のログから判明していますが・・・」
今回の戦いには参戦していないヴェアヴォルフ隊の隊長ラフォリアは魔導人形のログからGATEは魔導船を落とした以降は戦闘に参加していないと言う。
「・・・大方、城から戦闘を観戦しているのだろう、あれを向かわせろ、勝てるとは思えんが手傷を付けれる可能性はある」
「分かりました」
オルボルクはGATEの元に兵器を送る。少しでも彼女に手傷を負わせる為に。
王室
「何か来たわね」
GATEは王室内に何か現れたのを感じ振り返る。そこにはサソリ型の巨大な魔導人形がいた。城下町を襲う人型の魔導人形より発せられる魔力量が多くかなり高性能である事がGATEとマイには分かった。
「ふふっ、あの雑魚共よりは楽しめそう」
クルリと手すりの上で体を室内の方に回転させたGATEはトンっと地面に着地する。そして影の中からエリシャディアを取り出すと構える。
「お姉様、この間に新しい紅茶を用意して来ますね」
「ええ」
姉が負けるわけがないと確信しているマイはティーポットを右手に持つと転移しDIVAの世界に帰って行った。それと同時にサソリ型は尻尾から何か飛ばして来た。
ピピッと脳内に音が響きデータベースがサソリ型が飛ばした物を感知しGATEに警告する。
「趣味が悪いわね、毒針だなんて」
データベースの解析結果から飛んで来た物が毒針だと理解したGATEは毒針を全て避けた。
「まぁ私には当たらないけどね、でも下で戦っている人間達にはかなり効果がありそうね」
高速で飛んで来る小さな針は中々に避けれないだろう。その為更にサソリ型が投入され街を襲えばかなりの犠牲者が出そうだと思う。
「!!」
脳内でのんびりとサソリ型による予想被害人数を計算しているとサソリ型が再び毒針を飛ばして来た。GATEは剣で弾く。
「ざっと対策から討伐までの時間を含めて250人くらいやられるかしら、動きも早いしね!」
多脚を動かしサソリ型はその巨大からは判別出来ない速さでGATEに迫って来た、そして前足を振り下ろしてくる。GATEはそれを華麗な宙返りで避けた。
「ふふっ、これが今回の戦いで更に投入されないと良いわねぇ?、王様?、じゃないと沢山の背後死んじゃうよ?」
宙返りを終え地面に着地したGATEにサソリ型は続けて前脚を突き出して来た。しかしGATEが剣で前足を弾く前にビームが命中し止められた。
「アレシア、今の攻撃で私がやられるとでも思った?」
「いいえ?、でももしもの可能性があるでしょ?、だから攻撃を防いだってワケ」
「フン、余計なお世話よ」
GATEはアレシアの助けを余計なお世話だと言うとアレシアから視線を外しサソリ型を見る。部屋の入り口に立つアレシアはその姿とその横顔を見る。
(これがあの優しかったママ?、全然違う人みたい・・・)
頭に生えた角も冷淡な表情も茶色の髪を風になびかせ優しく笑っていたアリシアとは全然違う。アレシアは本当に目の前にいる者が自身が知っているアリシアと同一人物なのかと疑った。
「それで?あなたはそこで何をしているの?、戦わないのならさっさと帰りなさい、あなたの国も帝国軍に襲われているわよ」
「・・・、お父様達ならば帝国軍を退けてみせる筈、だから今はママと一緒にこのサソリを倒すわ!」
「好きにしなさい」
「ふふっ、好きにさせてもらうわ!」
GATEとアレシアのコンビによるサソリ型との戦いが始まった。




