十一話
王都アルトシャルセン、王城
魔導船団に勝利したGATEと愛理は王城に舞い戻り地面に着地した、するとアイリスが駆け寄ってくる。
「お疲れ様、アリシア」
アイリスは恐る恐るではなく強く勇気を持って娘と相対する。しかし・・・GATEは目線すら合わせずアイリスの隣を通り過ぎようとした。アイリスは一瞬ショックを受けた表情を見せたが負けずにGATEの前に回り込む。
「邪魔なんだけど」
ここでようやくアイリスの顔を見たGATEは邪魔だと言った。アイリスはその言葉にも負けず少女を抱きしめる。
「何のつもりよ」
「娘が危険な場所に行ったのですもの、親として心配なのは当たり前でしょう?」
「私はあなたの娘じゃない」
「いいえ、あなたは私が産んだ子、私の宝物、それ以外の何者でもないわ」
アイリスはそう言うと更に強くGATEを抱きしめた。
(・・・そうこの女は確かに私を産んだ女だ、私はこの女がいなければこの世界には産まれていなかった、でも私はお父様改造された日からお父様の子、それ以外の何者でもない)
アイリスの胸の中でスゥーと冷たい目になったGATEは腕を動かすとアイリスを突き飛ばす。GATEに突き飛ばされたアイリスは尻餅を着きGATEを見上げた。すると目の前の少女は冷たすぎる目で自分を見下ろしていた。
「人間如きが私に触れるな」
GATEはアイリスを突き放す言葉を言うとヒールの音を響かせ王の元に向かって行った。愛理はDIVAによって改造されてしまった娘の元の性格との変わり様が悲しくて涙を流すアイリスの肩に優しく手を置く。
「私だって私が産んだ子達にあんな目をされて冷たい言葉を言われたら泣いちゃう、だからあなたの気持ち、よく分かるよ、アイリス・・・」
そして愛理はアイリスを優しく抱きしめた。通路にアイリスの鳴き声が響く。
王室
扉を開けてGATEが王室に入って来た。それを見た聖騎士達は身構える。
「私は今はあなた達の敵ではないのだけれど」
GATEは彼らの様子を見て明らかに気に入らないと言った表情を見せ。敵ではないと言う。
「皆の者警戒を解け、この者は今は確かに我々の味方だ」
警戒を解けと言う王の言葉を聞いた聖騎士達は警戒を解く。そんな彼等を鼻で笑ったGATEは王に近付いて行き彼の王の膝の上に腰掛けるとその頬に手を触れさせる。
「ふふ、シュルツ王?、次の手はどう打つの?」
「と、取り敢えずは街に兵を展開する、今回の戦いは明らかにこれで終わりではないからな」
美しすぎる美少女に膝の上に座られ頬に手を触れられた王は緊張した様子で喋る。その自分より遥かに歳上の男の戸惑う様子見て、そして大胆に谷間を見せているドレスの胸元に視線を感じたGATEはクスッと笑ってから口を開く。
「敵が転移魔法で戦力を送ってくる現状、確実な手と言えるわね、でも、それだけで戦力は足りるのかしら?、私は気まぐれでここに来て目障りだったからあの船団を潰しただけなの、勿論これ以上手を貸してはあげない」
王の膝の上に座り色っぽい上目遣いで彼を見上げるGATEはこれ以上は手を貸さないと言った。今回の彼女はあくまでも一時攻撃で成すすべもなくアルトシャーニア軍が叩かれ戦力を一気に減らさせるのを防ぎに来ただけなのである。
「分かっている、共闘をするだけでお前は敵、船団を潰してくれただけでも感謝しよう、後は我々だけで十分だ、全軍、城下町に展開、確実に現れる帝国軍から城下町を守れ!」
王は通信魔法を王城中に開き自身の軍に展開命令を出した。それを聞いた騎士達は勇ましく街に展開して行く。
「あはっ、こんな戦いで無駄に戦力を減らさないでね?、次は私達が奴等の帝都に攻撃をやり返すんだから、ふふ、このゲートを使ってね?」
GATEはそう言うと何もない空間に扉を作り開けた。すると扉の先には帝国の帝都が見えた。
「・・・次の戦いでは進軍の手を貸してくれるのか」
「ええ、私とお父様の物であるこの世界を支配するだなんて言ったあんな愚かな国は圧倒的な戦力差に押し潰されて滅びるべきなの、でもね?、あくまでも私はあなた達に進軍の足掛かりを作ってあげるだけ、前も言った通りあなた達はあなた達の、私達は私達で動く、それは変わらないわ、それで良いわよね?」
王の膝の上に腰掛けるGATEは体を回転させ王と向き合うと、その大きな胸を彼の胸元に当てて腕を彼の首に絡ませると自分の考えは問題ないかどうかを王に聞く。
「あぁ・・・、問題ない」
「ふふっ、あなた達の宿敵である帝国はもうすぐ滅びるわ?、楽しみよね?、一緒に国民すら根絶やしにしてあげましょう?」
「国民までだと!?、民には罪はない、叩くのは帝国軍だけだ!」
民まで殺すと言うGATEの言葉を聞いた王は反論した。
「流石は人間、甘いわね?、民を残しておいて後に新たな軍を作り私達に復讐をして来るとは考えないのかしら?」
「・・・軍を叩き降伏させた後、彼等が我々ともう一度戦争をしたいと思わせないように導くのも我々の仕事だ、だからこそ私はお前のようには考えない」
「フン、ぜーんぶ滅ぼせばそんな面倒な事せずに済むのに、人間って本当に面倒な事が好きね」
王の考えを聞いたGATEは馬鹿にした様子でクスクスと再び笑った。
「それが人間でお前もその人間だったのだ聖騎士アリシアよ、・・・どうか思い出してくれ」
GATEは最大級の敵だ。出来れば彼女と戦いたくない王は彼女に人の心が戻って欲しいと願い思い出して欲しいと言う。
「思い出す気もないし思い出す必要もない」
GATEはその必要はないと否定した。そして窓の外に無数の魔力反応を感じテラスの方をチラリと見ると彼の膝から飛び降りた。
「敵が来たわ、さぁ?、あなたの軍は勝つ事が出来るのかしら、この特等席で見させてもらうとしましょう」
GATEが言う特等席とはテラスの事だ。テラスの手すりに腰掛けたGATEは楽しそうに鼻歌を歌いながら今にも戦闘が始まりそうな街を眺める。その隣にいつの間にかマイナスが現れ紅茶を手渡す。
「お姉様なら前線に出て暴れているのかと思いましたが意外です、後グレイ様が王様に抱き着いた事怒ってましたよ?」
「あちゃー、やっぱり怒ったか、あとで謝らなきゃね」
少し気分が乗りすぎて王に胸まで押し付けてしまったGATEは額に手を触れて反省する。
「そうして下さい、お腹に子供がいるのにこんなつまらない事で別れてしまったとすれば、可哀想です」
マイナスはそう言うとGATEのお腹に手を触れた。マイナスもGATEのお腹の中の子が無事に成長し産まれて来る日を楽しみにしている。その幸せな日を迎えるに当たってGATEの隣にグレイがいなければGATEの表情は確実に暗いものとなる。マイナスはそれを防ぎたいから姉に注意をするのだ。
「分かってる、そもそも私レイ君一筋だし、あんなのただのおふざけよ、しかもおっさんに興味ない」
「はぁ・・・」
姉妹の話を聞いていた王はおふざけと言われしかも美少女におっさんと言われ興味もないとまで言われ物凄く傷付くと涙目で俯く。
「あらぁ?、どうしたのかしら?シュルツ王」
GATEはそんな王を見て煽る、煽られた王はクルリと少女に背を向けると王室から出て鎧を着るためドアに向かって行く。GATEはそんな彼の背中を見て楽しそうに笑った。
「お姉様ってやっぱり悪い女です」
「あら?何を当たり前の事を言ってるのかしらね?私の可愛い妹ちゃんは、私が悪い女じゃなかったらなんだと言うのかしら?」
「・・・そんな谷間を見せ付けるドレスを着てる変態女?」
「・・・毒舌」




