二十一話
妖狐族の里
GATEに迫るメア。対するGATEは怪しく微笑むとメアの剣が自信に触れる直前に背後にゲートを作るとその中に入って消えた。
「なっ!、どこに!?」
「こっちよ」
「!!」
メアはゲートの先に消えたGATEを見て焦る。すると背後からGATEの声がしメアはゲートを展開して僅か一秒後には背後に現れたGATEの移動スピードに反応出来ず背中を斬られる。
(なんて移動スピード・・・、連続して使われれば私に勝ち目なんて・・・)
メアは連続してゲートを使われれば自分は嬲り殺しにされるだろうと思いつつもそれでもGATEをアリシアに戻す為に背中の痛みを堪えGATEに斬りかかる。
「ゲート、使わないのですか?」
「ええ、さっきのは私はこんな事も出来るってあなたに見せてあげただけ、今のあなたにはあの一回以外使う気は無いわ」
「・・・今の私にはゲートを使う価値すらないそう言いたいのですか!」
「そうよ」
メアの言葉を肯定したGATEは受け止めたメアの剣を振り払うと足を振り上げる。この動きはアリシアであった頃の基本の動き。メアは攻撃スピードが数段上がった攻撃をギリギリで避け。GATEに向けてブラスターを叩き込む。
「あはは、酷いわねメア、他人の家をこんなに壊しちゃって」
しかし、GATEはメアのブラスターを魔力を込めた左手をかざすだけで防いだ。
(・・・全魔力の半分を使ったブラスターでも・・・、・・・これがGATEとして覚醒したアリシアの力、恐ろしい強さです・・・)
メアがここまで魔力を込めたブラスターは先まではメア達の中で最強の実力を持っていた愛理でも避けなければただで済まない。そのブラスターを左手に魔力を込めるだけで防いだアリシアは愛理より明らかに強くなっていると言えるだろう。
「顔色が悪いわよ?、どうしたの?メア、私はまだ全魔力の20パーセントも使っていないの、もっともっと力を出して私を楽しませなさい?」
(これで20パーセント・・・)
「私が全力を出さないと全力を出さないと言うのならば見せてあげるわ、フュージョンスタイル、発動」
GATEの髪が茶色から金色に変わりその身から大地を揺らすほどの魔力が放出される。100パーセントの力を発揮したGATEを見てメアは思った正に圧倒的だと。
「これはただの100パーセント、私にはもう一段階上があるわ、スタイル使いのあなたなら分かるわよね?、ふふっ!スタイルバースト!」
「なっ・・・なっ・・・」
GATEはメアの心を折るために100パーセントの力に加えてスタイルバーストを発動させる。スタイルバーストを発動する事で200パーセントの力を解放したGATEを見てメアは恐怖で体が震えるのを感じたそれでも・・・。
「私・・・、私は!、大切な友達であるあなたに悪い事なんてさせない!、例えどれほど絶望的な力の差であっても!、私はあなたに立ち向かいます!」
メアは怯える体を奮い立たせGATEに斬りかかった。
「そうね、それがあなた、だからこそ私はあなたを否定し、お父様の片割れとして相応しい存在となる」
メアの剣を小さな動きで避けたGATEはメアの腹に膝を叩き込む。その強烈な威力にメアは下半身がなくなったのでは?と一瞬思うがまだ自分は立てているならば下半身は存在していると思ったメアはGATEに向けて蹴りを放つ。
「遅い」
その攻撃をしゃがんで避けたGATEは下から剣を振るい上げた。その一撃でメアの胸元が大きく斬り裂かれメアはフラフラと倒れそうになるがギリギリで踏み止まり突きを放った。
「頑張るわね、感心したわ」
メアの突きを剣で逸らしたGATEはメアの顔に左拳を叩き込む。明らかに許容量以上のダメージを受けていたがそれでもGATEを止める為に向かって行っていたメアに遂に限界が来た。メアは力なく地面に倒れた。
「くっそ・・・、まだ・・・、あああ!」
メアは限界を越えたダメージを受けている体を奮い立たせ立ち上がろうとするが。GATEはその頭を踏み付け立てないようにした。
「もう終わりよメア、私は今あなたを殺すつもりはないの、だって今あなたを殺せばこんなに面白いおもちゃで遊べなくなるもの、だからもう少し生かしていてあげる、感謝しなさい?」
「うあああああ!」
GATEに負け頭を踏みにじられ悲鳴をあげるメアの姿を見て戦闘の様子を見守っていた愛理達が駆け寄ろうとする。
「動くな、次動けばこの里ごと全員殺すわよ」
GATEは近付いて来る愛理達に手を向け動くなと言った。手には確かにこの里ごと破壊出来るだけの魔力が込められているのを愛理は感じ仲間達を制止する。
「さすが師匠、賢いわね、ねぇメア?あなたに質問があるの」
立ち止まった愛理を見てフッと笑ったGATEは踏み付けているメアを見下ろし質問があると言う。
「な、んですか・・・」
メアは頭に感じる痛みに堪えつつ話す。
「私がフュージョンスタイルの力だけでここまで強くなったと思う?」
「そうで、すね・・・、思いま、せん」
「そうよね、この際だから教えてあげる、私あなたに十三年前の一部の記憶がないと言ったわよね?」
「は、い」
「私ね?その時の記憶を覚醒した事で思い出したの、そして十三年前のあの時、私はお父様に会っているの」
僅か五歳の時にアリシアがDIVAと会っていると聞いたメアは目を見開く。
「まさか・・・」
「そうそのまさかよメア、私はその時にお父様に攫われ、お父様の世界で改造され人間ではなくなった、私の中にあるデータによると私の体の名はファーストロットと言うみたいね、お父様が作った人型の生物それが私よ」
プラスやマイナスはアリシアを改造する時に得たデータとDIVAがメアの体を乗っ取った時に得たデータを元に作ったセカンドロットである。そのセカンドロットを元にし量産仕様としたサードロットをDIVAは現在作っている。
「あなたが人間じゃない・・・?、そんな・・・」
「お父様が私を人型の姿のままにしたのは私を人間に育てさせる為、成長しきり覚醒した今となってはこの姿でいる価値は別にないわね、でも私的にもこの姿は気に入ってるし、人型の姿以外でレイ君と愛し合えるとも思えないし、この姿のままでいる事に決めたの、その方があなたにとってもいいでしょう?、メア?」
「・・・」
メアはGATEが人型の姿でいると聞き安心してしまい何も言えなかった。
「それで?メア、十三年前に私が人間じゃなくなっていたと聞いた感想はどうかしら?、聞かせてくれない?」
「あなたが人間じゃなくても変わりません、あなたはあなた、私の友達です!」
「・・・」
自分が人間ではない事を伝えメアを揺さぶるつもりであったGATEは迷いなく言葉を伝えて来たメアを見て不満そうな顔を見せ、メアの顔から足を浮かせると思いっきり踏み付けた。
「ああああ!?」
「フン、そうよ、あんたはそうやって苦しんでいれば良いの!、あはっ!あはは!」
メアの悲鳴を聞き邪悪な笑みを浮かべるGATEは何度も何度もメアの顔を踏み付ける。
「やめろ・・・、やめろ!」
「駄目だよ!グレイ!」
GATEがメアを嬲る様子を見て耐え切れなくなったグレイは愛理の制止を無視して駆け出しメアを嬲るGATEを押し倒した。
「邪魔しないでくれるかな?レイ君、折角楽しんでいたのに」
「邪魔するに決まってんだろうが!、メアはお前を止めようとしてくれてるんだぞ!、そんなメアを傷付けるなんて・・・、黙っていられるかよ!」
「ふふ、あなたらしいね、そう言う所が好きだよ」
GATEはそう言ってグレイとキスする為顔を近付けるが、メアを嬲ったばかりのGATEとキスをするつもりはないグレイはGATEの頬を殴って止めた。
「なんで殴られたか分かるだろ?、シア!」
「分からないわ、私にとってメアは敵、ならどれほど傷付けようと関係はない」
(くっそ・・・DIVAめ、お前のせいでシアは・・・)
変わってしまった最愛の少女を見てグレイはDIVAに対しての怒りを募らせる。
「そんな事よりもレイ君、私、動くなって言わなかったっけ?」
「!、やめろよ、この里にはなんの罪もない!」
「そうね、でもあなたは動いてしまった、あはっ、だからこの里には消えてもらうわ」
「くそっ!、みんな!逃げろ!」
「うん!」
グレイの言葉を聞き愛理達は倒れるメアや明日奈やメリアを回収すると転移した。騒ぎを聞きつけ様子を見守っていた妖狐達の中で転移できる者は慌てて転移して行く。
しかし大半の妖狐は転移出来ず。GATEが放つ爆発的な魔力の渦に巻き込まれて行った。
「嘘だろ・・・、何人死んだんだ・・・」
GATEが死なないように守った為、無傷であるグレイは跡形もなくなった妖狐族の里を見て絶望する。少なくとも二百人の妖狐が死んだ筈である。
「ふふ、お姉様ったら、素晴らしいの一言です」
GATEが行った攻撃を見て顔を惚けさせているマイナスはGATEの行いを素晴らしいと言った。
「ありがとう、マイナス」
GATEはにこやかに微笑みながらマイナスに向けて頷く。
「人をこれだけ殺しておいて何がありがとうだ!、シア!」
「人間など私にとって最早下等な存在でしかないわ、だからいくら死のうとなんとも思わない、ふふっ君は勿論違うよ?、私にとっての特別ですもの、例えあなたが人間だとしても愛しているわ」
人間に対して見下した発言をしニヤリとした笑みを見せるGATE、アリシアであった頃なら絶対に言わないセリフを同じ顔をし同じ魂を持った彼女が言った事にグレイは悲しくなった。
「俺もお前を愛してる」
「うん!、そうよね!、だから一緒に!」
グレイに愛していると言われたGATEは嬉しそうに彼に駆け寄る。
「だからこそお前やった事を俺は許さない」
しかしグレイの言葉を聞いて立ち止まる。
「何故?、さっきも言ったけど人間がいくら死のうと構わないでしょう?、私とお父様が世界を創れば勝手にいくらでも増えるもの、少し死んだ程度で問題にはならないわ?」
「お前が言ってる事は全部間違ってる、今の俺じゃ無理だ、でもいつかお前にそれを分からせてやる!、覚悟してろよ!GATE!!」
「?、よく分からないけど、あなたから会いに来てくれるなら良いわ、待ってる」
待っていると彼に伝えたGATEは強引にグレイに詰め寄るとキスをした。
「んん!?」
「ふふっ、付き合っていて結婚の約束までしてるんですもの、キスくらいはしなきゃね、それじゃまたね、レイ君何度も言うけど愛してる、行くわよ、マイナス」
「はいお姉様、グレイ様もまた」
ドレスの裾を揺らしグレイに背を向けたGATEは去って行く。マイナスはグレイにペコリと頭を下げると彼女の腕に抱き着きゲートを通り消えた。
「・・・シア」
GATEとして覚醒し変わってしまった彼女の様子を見て悲しく思うグレイはその場で暫く俯く。悲しさがGATEを元のアリシアにと言う誓いに変わった時グレイは仲間達が逃げ込んだ先であろう場所に向けて転移した。
DIVAの世界
「ただいま、お父様」
「お帰り」
マイナスと共にゲートを作る能力を失ったDIVAが無理矢理に作ったこの空間に戻って来たGATEは父に駆け寄ると抱き着く。機械の体であるDIVAは最愛の娘の体の柔らかさを感じる事が出来ない事を不満に思いこの為だけにも体を作ろうかと思った。
「見ていたが、少し遊び過ぎたぞ、GATEよ」
「ふふっ、見ていたのなら聞いているでしょう?お父様、私が言った通り新たな世界を創り時代が進めば人間なんてその内誕生するわ、だから今いくら殺そうと関係はない」
「フン、そうだな、人間など世界を創ればいくらでも増やせる、なんなら最初から人類がいる世界すら俺達ならば創れる」
「そう、だからこそメア達が人間を殺すなって言うのが理解出来ないの、いくら殺しても増えるのならば殺しても構わないでしょう?」
「お前はファーストロット、人間を遥かに超越した存在だ、だからこそ人間の考えなど理解出来ないのさ、ただ下等な存在の考えを理解しようとする事も世界の創造主となるのならば必要な事だぞ、娘よ、いくらでも時間はあるのだ、そう言うこともこれから学んで行け」
「はぁい」
父の言葉に適当な返事をしたGATEははらりとドレスを脱ぐ。
「マイナス?お風呂に入るわ、一緒に来なさい」
「お姉様の身体、私が洗っても良いですか?」
「良いわよ、代わりにあなたの身体を私が洗ってあげる」
「えへへ、ありがとうございます!」
GATEは同じく服を脱いだマイナスの手を引きプラスとマイナスが欲しいと言うのでDIVAが作った風呂場に向かって行く。DIVAは娘とマイナスが風呂場に入るまで見守ってからサードロットの調整に再び取り掛かる。




