二十話
DIVAの世界
ソファに座り甘えてくるマイナスの髪を撫ででいるGATEにDIVAが近付いてきた。
「どうかした?、お父様」
「GATEとして覚醒してもあの男の事を好いている事が意外でな」
「そうですよお姉様、下賤な人間などお父様と同等の存在であるお姉様には相応しくありません、あんな男早く殺すべきです!」
「・・・マイナス?、もしあなたが彼を殺そうとしたらさっきのプラスのようにあなたを殺すわ、覚えておきなさい」
グレイを早く殺すべきだと言うマイナスにGATEは冷ややかな視線を向けグレイに手を出すならば殺すと告げた。
「これでも私はあなたを気に入っているの、私に余計な殺しをさせないで」
「わ、分かりました、お姉様、あの男には手を出しません・・・」
自身の上位種とも言えるGATEの冷たい視線を受け萎縮したマイナスは分かったと言う。同時にグレイにだけは手を出さないと誓ったマイナスも死にたくはないのだ。
「それで良いわ、そうしておけばあなたは永遠に私の可愛い妹でいられる筈よ」
「はい、お姉様ぁ」
マイナスは微笑みかけてくるGATEに微笑み返すとまた抱き着き甘え始める。
「お父様もよ、レイ君は私のもの、お父様でも手を出す事は許さないわ」
「お前がそこまで言うのならば仕方ない、俺も奴には手を出さないようにしよう」
「ふふっ、ありがとう、お父様」
GATEとして覚醒しても深く愛するグレイの安全を確保したGATEは満足気に微笑む。
「それで?お父様、私はこれから何をすれば良いのかしら?、まさかここでずっと暇をしていろとは言わないのでしょう?」
GATEはマイナスの髪を撫でながら自分が何をすれば良いのか聞いた。
「お前が覚醒した今、新たな世界はいつでも創れる、だからそちらは急ぐ必要はない」
「そうね、私がいればいつでも扉を作れる」
GATEはそう言うと前方に手を向けた。そして魔力を解放すると何もない空間に丸いワームホールが現れた。ワームホールの先は真っ白な何もない世界だ。DIVAはその真っ白な何もない空間を元に新たな世界を創る。これまでは真っ白な空間に通じるゲートを開けなくなっており新たな世界を創れなくなっていたがアリシアがGATEとして覚醒したお陰で新たな世界の創造が可能となった。
「なら師匠のお婆さんが作ってる、時戻しの剣かしら?」
自身の片割れとも言えるDIVAをGATEは失うつもりはない。その為父に明日奈が作っている剣について言及した。
「あぁ、それの回収はお前に任せよう、壊すなよ?、我々としても有用な武器となる筈だからな」
「お父様はそう言うけど壊すべきよ、彼等がこの世界に乗り込んで来る方法は無いとは言えないわ、この世界の光景を見れる者がいれば転移が可能となる、そしてこの世界に彼等が乗り込んで来て剣を使ってお父様を刺したら・・・、その時点で私達の負けよ、私そんなの嫌よ」
GATEは時戻しの剣を回収しろと言うDIVAに反論する。
「私達が負ける可能性は少しでも潰しておくべきだわ、だからね?お父様、時戻しの剣は完成する前に壊してしまいましょう?」
GATEはDIVAを上目遣いで見て時戻しの剣を完成前に壊そうと言った。
「・・・敵に突き刺せばその者の時を戻せる時戻しの剣は非常に有用だと思うが・・・、まぁ良い、お前がそこまで言うのならば、お前に命じよう、時戻しの剣を完成前に壊せ」
「ええ!、今すぐやるわ!、マイナス!行くわよ!」
「はい!、お姉様!」
GATEはDIVAを失う最大の可能性である時戻しの剣を破壊する為、転移した。
旅客船
「この魔力!、アリシアの!」
もうすぐ次の大陸に着くと言う所でセラピーに怪我を治してもらったメアがGATEの魔力がこの世界に現れたのを感じ声を上げる。
「ハナ!場所は!?」
愛理がハナにGATEが現れた場所を聞く。
『・・・、この座標、妖狐族の里です』
「・・・十中八九、時戻しの剣が目的だ、破壊するつもりだろうぜ」
「私達の希望をお母様に壊させる訳にはいきませんわ!、皆さん!妖狐族の里に行きましょう!」
アイリーンの言葉にメア達は頷きこの中で一番転移スピードが早い愛理の転移により妖狐族の里に転移した。
妖狐族の里、明日奈の家
ガチャっと扉が開く音がした。明日奈はその音に反応し耳をピクンと反応させ。椅子に座って眠っていたメリアは目を開けて脇に置いている剣に手をかける。
「やっ、明日奈さんにメリアさん」
マイナスを家の前に置いて一人で家の中に入ったGATEはにこやかに二人に向けて手を上げる。
「アリシア、あなたみんなと仲間集めしてるんじゃなかったの?」
明日奈が突然この家にやって来たGATEに仲間集めをしているのでは?と質問する。
「転移をすればみんなといつでも合流出来るもの、だからみんなを代表してDIVAを倒す為の切り札となる時戻しの剣がどこまで完成したのか見に来たの」
「そう言う事ね、良いわ、見せてあげるついて来なさい」
アリシアとあまり長く話した事がない明日奈は目の前の少女の変化に気付かない。GATEはそんな彼女を見て心の中でせせら嗤った。
GATEがここに来た真の思惑を知らない明日奈はGATEを案内し家の地下室に入る。そこには一振りの剣があった。
「へぇ、ここまで出来てたんだ」
「未完成だけどね、まだ時渡りの書を剣の形にしただけ、ここから書の機能を書き換え時戻しの剣にするの」
「ふぅん」
GATEは剣に手をかける。明日奈とメリアは少女が剣に手をかけたのを見てようやく警戒をし。明日奈は少女の肩を掴む。
「何をしようとしているのかしら?」
「何って勿論、私のお父様、DIVAの為にこの剣を破壊するの」
「何を言って?、くぅぅ!?」
明日奈が少女の言葉の意味を確認しようとするがその前に薄ら笑いを見せるGATEは居合斬りを放つ、明日奈はギリギリで剣を止めた。
「流石ね、私の居合斬りを防ぐなんて、流石は英雄様だわ」
「あなた・・・、アリシアだけどアリシアじゃないわね?、誰?」
「そうよ、私は少し前まではアリシアだった、でも今は違う、今の私はお父様の為に扉を作る存在、GATE、新たな世界の管理者の一人よ」
「・・・つまり私達の敵って事?」
メリアは剣を抜きながらGATEに敵がどうか質問する。
「そうよ、私はあなた達の敵、お父様を脅かすかもしれないその剣は壊させて貰うわ」
「させないよ、時戻しの剣は私達の希望!、その希望を失わせたりはしない!」
メリアはインフェルノモードに変身しGATEに斬りかかる。それを見たGATEはフュージョンスタイルを発動させ左手だけでその剣を白刃取りした。
「なっ!?、いくらなんでもそんな!?」
「光、闇、雷、フュージョンスタイルを使う私は三つの属性を融合させる事により圧倒的な魔力量を得ているの、あはは、だからね?、あなたなんて私にとっては最早・・・」
GATEは片手でメリアを剣ごと持ち上げると放り投げ蹴り飛ばす。
「格下でしかないの」
「ぐぅ!?」
GATEの強力な蹴りを喰らったメリアは地下室の天井を突き破りその先の天井に激突し力なく地面に倒れた。GATEはアリシアであった頃は完敗したメリアに一撃で勝利して見せたのだ。
「さて、明日奈さん?、あんな目に遭いたくないのならば素直に時戻しの剣を私に差し出して欲しいのだけれど?」
「自分が傷付いたとしてもこの剣は敵となったあなたには渡さない!、逃げ切ってやるわ!」
明日奈はそう言ってGATEから背を向け逃げようとするが。突然明日奈の背後にゲートが現れそこからマイナスが現れ背中に剣を突き刺した。
「私の名から私の能力がどのような物か考えるべきだったわね英雄さん?」
「くっそぉ・・・」
腹を刺し貫かれた痛みに耐えかねた明日奈は地面に倒れ時渡りの剣を取り落す。その時だ上の階から物音がしたメア達がこの家に転移して来たのだ。GATEは彼等がここに来る前に時渡りの剣を手に取る。
「・・・やっぱその剣を潰すつもりかよ、ハン!、心からDIVAの仲間になっちまってんだな!、アリシア!」
シールスの言葉を聞いたGATEは何も言わず笑みを深め。彼等に手に持つ時渡りの剣を見せた。
「そんな事よりこれ私の手の中にあるのだけれど、焦らなくて良いの?、壊しちゃおっかなぁ?」
「お願いですアリシア、それだけは壊さないで・・・」
メアは頭を下げてGATEに時渡りの剣を壊さないでくれと頼む。
「馬鹿ね、あなた、壊して欲しくないのならば名前を間違えるべきではないわ」
「待って!」
GATEは時渡りの剣を放り投げ剣に手をかける。メアはそれを見て宙で剣をキャッチしようと飛ぶがGATEの剣の方が早かった。時渡りの剣はGATEにより破壊され刀身から放たれていた輝きが失われる。
「あはは、これであなた達の希望はなくなった、ねぇメア?どうかしら?、希望もなくなったしお父様と私に大人しく従わない?、そうすれば私達戦わずに済むしあなたの事私がペットとして直々に可愛がってあげるわよ?」
「誰が!、誰が!あなたを変えてしまったDIVAに従うものですか!」
目の前で時渡りの剣が破壊され絶望し地面に手をついていたメアはGATEの言葉を聞いて顔を上げると叫んだ。
「そうよね、あなたはお父様には絶対に従わない、そうでなくちゃ困るわ」
GATEはそう言うとメアに近付き彼女の顔に自身の顔を近付ける。
「だってあなたがお父様に従えばあなたを殺せないもの」
GATEはニヤリと微笑む。
「DIVAに従わない代わりにあなたを元のあなたに戻して見せます、絶対にです」
「無駄な努力ご苦労様、前の私なんて私の中にはもうどこにもいないと言うのに」
「あなたを説得し切って見せると言っているのです」
「はん、尚の事無理ね、私の考えはもう変わらない」
「変えてみせます!」
考えを変えて見せると言い切ったメア。それを聞いたGATEは明らかに不快そうな顔を見せた。
「そこまで言うのならやってみなさいよ、出来るものならね?」
そしてやれるものならやってみろとメアに言う。
「はい!、覚悟して下さい!アリシア!」
皇帝アリシアの時もそうであったようにGATEを倒さずに説得が通じるとは思えないメアはGATEに斬りかかる。GATEは冷酷な視線をメアに向けながら彼女を迎え撃つ。
GATEとメア。二人の少女による戦いが始まった。




