十九話、GATE
メア達にとっての最大の敵の出現です。
そしてグレイとアリシア、二人の最後の試練が始まります。
客室
(アリシア・・・、どうか無事でいてくれ・・・)
目を閉じてアリシアの無事を祈り続けるグレイは目を開けると愛理の方を見た。
「愛理さん、頼みがある、アリシアをDIVAから取り戻す為に俺をもっと強くして欲しい」
メアや愛理に頼るのではなく自分の手でアリシアを救うと決めたグレイは愛理に自分を鍛えてくれと頼む。
「お母様を救う為に一人でも強者を増やした方が良い、私も賛成ですわ」
「私もよ、って言うか私も鍛えてよ」
「私もお願いー!」
アイリーンがグレイの言葉に賛成しニア達は続けて自分達も愛理に鍛えてくれと頼む。
「良いよ、DIVAがいつアリシアの体を使って襲って来るか分からないからね!」
「そうだな、こうして襲って来るかもしれん」
「なっ!?」
(師匠!!)
アリシアの精神世界の中に悲痛な声が響く。愛理の背後に現れたDIVAは不気味に微笑みながらエリシャディアで愛理の腹を背後から刺し貫いた。
「愛理さん!、DIVA!!」
愛理がやられたのを見てメアがDIVAに斬りかかる。それを見たDIVAは愛理の体から剣を引き抜くと迎え撃つ。エリシャディアが体から抜け支えのなくなった愛理は力なく倒れ腹から血を流す。
「フッ、ダークライジングブレイド」
「ッ!」
アリシアの至近距離にまで迫ったメアはDIVAがダークライジングブレイドを使って来たのを見て予想はしていた為落ち着いて攻撃を避ける。
「やはりアリシアの体に闇と雷のスタイルの力を戻していたのですね・・・」
「当たり前だろう?、この体はこの力があってこそ本来のスペックを発揮する、こちら側に来たのならば戻さない手はない」
「厄介です!」
メアはゼロソードを乗せた突きを放った。DIVAはその剣を下から斬りはらう事で逸らすとメアの腹に蹴りを叩き込む。
「ぐっ!」
「フン、俺がこの体を使えば所詮こんな物か」
DIVAは続いて回し蹴りを放ちメアを倒した。
「さて、覚醒の儀を始めようか」
メアを倒したDIVAはゆっくりとアイリーンの方に近付いて行く。それを見たグレイ達がDIVAの前に立ちはだかるがDIVAは影を呼び出すとその中に彼等を入れ背後の天井に出入り口を作るとそこから彼等を落とした。
「お母様の体から出て行ってください!」
目の前に立つDIVAに向けてアイリーンは杖を向け浄化魔法を放つがDIVAには効果がなかった。DIVAはニヤリと笑みを見せるとアイリーンの首を掴む。
「あっがっ・・・」
「光のスタイルの力、貰い受けるぞ、アイリーン」
「いやぁぁぁ!」
DIVAはアイリーンの光のスタイルの力を吸収し始める。アイリーンはDIVAの手を掴みながら力が吸われる感覚に悲鳴を上げ数秒後には力を全て吸われDIVAの手を掴んでいたダランと手を下ろした。
「くくく!、フハハハハ!、これがフュージョンスタイルの力か!、素晴らしい!!」
アイリーンから光のスタイルを奪ったDIVAはアイリーンを投げ捨てると三つのスタイルの力を融合させフュージョンスタイルを発動させた。その瞬間アリシアの髪は金色となり鎧は金色がメインで黒と白のワンポイントの入った物ではなく。DIVAがその身の中にいた影響か髪は金色だが頭から悪魔のような角が生えフュージョンモードの時は緑色であった胸元のコアは漆黒に染まっている。服は黒がメインで所々に金や黒や白の刺繍が入った皇帝アリシアが普段着ているようなドレスとなっており。その姿はさながら悪魔のようであった。そしてその身から放たれる魔力はフュージョンモードを使っていた頃と比べて段違いの出力となっていた。
(うう!?)
(私!?、どうしたの!?)
フュージョンスタイルの力が目覚めた途端、精神世界の中のアリシアが苦しみ始める。それを隣で見ていた皇帝アリシアは慌てて駆け寄りその身に触れる。
「フュージョンスタイルを手に入れた事でこの体が覚醒しても問題ないと判断し、GATEへの覚醒が始まったのだよ」
(なんですって!?、私!、抑えなさい!、そのまま力を解放すればあなたはGATEになってしまうわよ!)
(そんな事言われたって・・・、うぁぁぁぁぁ!?)
皇帝アリシアに言われアリシアは何とか覚醒を抑えようとしたが出来なかった。GATEとしての覚醒が始まってしまったのだ。
(くっ!、あなたが止めれないのなら私が!)
皇帝アリシアはアリシアに向けて駆け出すが。突然精神世界の地面から機械的な触手が現れ体に巻き付き動きを封じられた。皇帝アリシアは突然現れた触手を見て驚き周囲を見渡す。すると俯いているアリシアが薄ら笑いを見せ自分の方に手を向けているのが見えた。
(そんな・・・)
「成したか、アリシア、いやGATEよ」
(ええ、私はGATEとして確かに覚醒したわ、その証拠をお父様に見せてあげる)
アリシア・・・GATEは触手を操るとその先端を皇帝アリシアの体に突き刺す。
(力が・・・)
皇帝アリシアの体に突き刺さった触手はドクドクと皇帝アリシアの魂から魔力を吸い始める。
「レイティスをエネルギー炉とするつもりか、フン、確かにお前はもうアリシアではなくGATEのようだ、よく覚醒したな、我が最愛の娘よ」
(ふふ、信じてくれたのなら、体の主導権を変わってくれるかしら?)
「よかろう、俺の本来の体を使ってすぐに迎えに行く、それまでの間にメア達との別れを済ませておけ、何なら殺しても良い」
(ええ)
DIVAがGATEから抜けフュージョンスタイルが解けるのと同時に体の主導権を得たGATEは目を開く。その目は普段の茶色いものから金色に変わっておりフュージョンスタイルが完成した際に現れた黒いドレスや悪魔の角はそのままであった。
メア達はDIVAとは雰囲気は違うがアリシアとも皇帝アリシアとも雰囲気が違う目の前の少女を見て焦る。
「アリシア、なのですよね?、そうだと言ってください・・・!」
メアは痛む身体を引きずり立ち上がるとGATEに駆け寄り少女の両肩を掴んで揺する。
「ええ、さっきまでは私はアリシアだったわ、でももう違う、私はGATE、私の父であるDIVA、お父様の為に扉を作る存在それが私よ」
GATEは覚醒してしまった事を認める事が出来ないメアに非情な現実を告げる。
「違います!、あなたのお父さんとお母さんはオーグルさんとアイリスさんでしょう!?」
「それもさっきまでは、よ」
「あんなに大切にしていたお父さんとお母さん相手にさっきまでって!、アリシアならそんな事絶対に言いません!、正気に戻って下さい!、アリシア!」
「しつこいわね、何度言わせる気?、私はGATE、もうアリシアじゃない、あなたが私やお父様の邪魔をするなら・・・」
普段のアリシアの柔らかい口調から冷淡な口調で喋るGATEは更に声のトーンを下げた。
「殺すわよ」
GATEは冷たい瞳でメアを睨むとフュージョンスタイルを発動させた。
「・・・精神はあなたのままなのに何故その力を使えるのです!」
「そんなの簡単よ、もう一人の私をエネルギー炉にしたの、そうすればこの力の発動なんて簡単に出来るわ」
「そんな卑劣な事!、アリシアなら!」
「またそれ?、本当に死にたいのね?、良いわ、殺してあげる」
フッとメアを笑ったGATEは剣を引き抜くとメアに迫る。彼女に懐に入られたメアはバックステップで逃げようとするが間に合わない。GATEの剣に腹を刺し貫かれ口から血を吐いた。
「何でこうなるのですか・・・、私達はなんで・・・」
GATEの肩にもたれ掛かるメアは涙を流しながら何故こうなったのかGATEに問う。
「そうね・・・、運命なのかもしれないわ、私とあなたは相入れない、殺し合うべき相手なのよ、そしてその関係も今日で終わり、さようならよ、メア」
自分とメアは殺し合う運命だと言ったGATEは左手でメアの首を持ちブラスターを放とうとする。
「お前にメアを殺させたりなんてしねぇ!!」
立ち上がったグレイがGATEの真横から迫るとGATEにタックルしメアを離させた。
「邪魔しないでよ、レイ君、メアは確実にお父様の邪魔になるから殺そうとしてたのにさ」
「へぇ、GATEって存在になっちまっても俺の事そう呼んでくれるのかよ?」
「うん、こうなっちゃっても私、あなたの事好きみたい、だから一緒に来て?レイ君、お父様に頼んであなたの事は許して貰うからさ、一緒にお父様が全てを支配する世界を作ろう?」
GATEはグレイに向けて腕を広げグレイに一緒に来るように言った。
「嫌だ、今のお前とは行けない」
「何故?」
グレイの言葉を聞き腕を広げるのをやめたGATEはアリシアであった頃にしていたようにグレイに抱き着き彼の顔を見上げる。
「メアを刺したりもう一人のお前をエネルギー炉だなんて言うのは、本当の・・・俺が好きなお前じゃないからだ!」
グレイは己の体に抱き着いているGATEを振り払う。
「水着選んだろ?シア、そんな力さっさと捨てちまって一緒に泳ぎに行こうぜ?、なっ?」
「メアにも言ったでしょ?、私はもうアリシアじゃない、だからシアだなんて呼ばないで」
「・・・良いやお前はシアさ、俺が世界で一番愛してる女だ!、言葉で分からないのなら・・・殴ってでもお前が何者か分からせてやる!」
「あはっ、良いよ、あなたをここで倒してお父様の元に連れて行ってあげる、そしてシアだなんて呼べなくしてあげる!」
GATEはグレイに斬りかかりグレイもアリシアに斬りかかる。愛し合った二人の剣が交わり合うその直前に船の真横に巨大な影。DIVAが現れたのだ。
「エクストール・・・、DIVAめ・・・」
光のスタイルの力を失っても優秀な治癒魔法の使い手であるアイリーンに治療をして貰っている愛理はかつての愛機を悔しそうに見る。
「おいで、GATEよ」
「はい、お父様」
GATEは剣を引くと。斬りかかって来るグレイを避けた。
「ごめんねレイ君、時間みたい、また会おうね?」
GATEはグレイに別れを告げるとDIVAの手の上に飛び乗る。
「行かせるかぁぁ!」
グレイは船から棘を出現させDIVAに差し向ける。GATEがそれを軽く魔力を放つだけで容易く破壊した。
「ククッ、少年よ、その程度の力では俺どころか我が娘GATEにも遠く及ばぬ、もっと力をつける事だな」
DIVAはGATEに防がれ自身に攻撃を届ける事が出来なかったグレイをせせら笑うと。GATEと共にその場から消えた。
「くそ・・・、くそぉぉぉぉ!」
グレイの悔しそうな叫び声が周囲に響く。
DIVAの世界
DIVAは自身にの世界でGATEを地面に降ろす。するとすぐにプラスとマイナスがGATEに近付いて来た。
「歓迎致しますわ、お姉様」
マイナスは早速GATEに抱き着き甘える。
「・・・、私はあんたを今でも敵だと思ってる、馴れ馴れしくはしないで」
プラスはGATEを突き放すと去ろうとする。
「お父様?、あの子これから確実に裏切るわよ?始末しておきましょうか?」
マイナスの背中を撫でながらGATEは父の方に顔を向けプラスを始末しようか?と聞く。
「良いぞ、許可しよう」
「ふふ、そうこなくっちゃ」
GATEはマイナスを離すと剣を引き抜きプラスの背後に一瞬で迫るそして心臓を刺し貫いた。
「うっ・・・あ・・・?」
「これまで私の代わりにお父様の側にいてくれてありがとう、でもね?同じ顔がお父様の側に二人もいる必要はないの、だからバイバイ」
GATEはプラスの体を刺し貫いている剣から魔力を発散させプラスを消滅させた。プラスが消滅したのを見てGATEは。
「あはっ!、こんな簡単に消えちゃうだなんて!あっけないものねぇ!、あははははは!」
DIVAの娘として相応しい邪悪な笑い声をあげるのであった。
果たしてグレイとメア達はDIVAの娘GATEとして覚醒した事により邪悪に染まり切った少女の心を救えるのだろうか?。
GATEにとってグレイはグレイなのですが。グレイにとってアリシアはGATEではなくアリシアであるためDIVAが現れる前の文はその部分だけ敢えてそう表記しています。




