十八話
マスト
夜、戦闘が終わった後のマストでアリシアは一人マイナスの言葉の意味を考えていた。
(あんなの大した意味じゃないわよ、どうせ私達を揺さぶる為の言葉よ、気にしないようにしましょう?)
皇帝アリシアは静かに星空を眺めるアリシアを元気付ける為の言葉をかける。
「・・・思い当たる事があるの」
(どんな?)
皇帝アリシアは小さな声で思い当たる事があると呟くアリシアに質問する。
「私小さい頃に一日ほど行方不明になった事があるんだって」
「だってってどう言う?」
「覚えてないの、その時のこと、私割と小さな頃の記憶まで覚えてるのにさその日の記憶だけは全くないんだ、・・・私思うのその日に私とDIVAは会ってて何かされたんじゃってね」
(・・・)
皇帝アリシアはアリシアの言葉を聞いて言葉に詰まった。覚えていない時点で怪しいと思ってしまったのだ。
「私、みんなと一緒にいない方がいいんじゃないかな・・・、もし私がDIVAと何か関係しているのならば、例の武器だって・・・」
「ふふ、もちろん知っていますよ、お姉様?」
悩むアリシアの背後からマイナスの声がしたアリシアは驚いた様子で振り返る。
「なに・・・を?」
アリシアは分かっていたマイナスが何を知っているのかをだからこそ聞かずにはいられない。
「時渡りの書を改造して作る、武器についてです」
マイナスは怪しく微笑みながらアリシアに近付くと彼女を揺さぶる為の言葉を言った。
「なんで・・・?どうやって・・・?」
アリシアはその身を震わせながらどうやってDIVAが武器についての情報を知ったのかを聞く。
「お姉様はお父様のものですから、お父様ならお姉様の目を通して見る事が出来るのです、お姉様が見たものならどんな物でもね」
マイナスはアリシアの頬に手を触れながらどうやって武器について知ったのかを話した。
(くっDIVAめ・・・、私を自由にさせている理由はこれか・・・、プラスの中にいてももう一人の私の中にいても変わらないって事か)
皇帝アリシアはDIVAが自分をあっさりと諦めた理由を察し歯噛みする。
「お姉様はどうあっても近い内にお父様の物となる、だってお姉様の居場所は私達の側なのですから、そう言う運命なのです、だから一緒に来て下さい、私達と一緒に世界を創りましょう?、ふふ、お父様が創る全てが管理された完全なる世界を」
「あなたやDIVAはこう言いたいのね?、動物も人間も植物達ですら、あいつに管理されるべきだと」
「はい」
「ならそんな話お断りだ!、私はレイ君のお嫁さんになるの!、DIVAの物じゃないわ!」
アリシアは言う自分はDIVAの物ではないと。
「そうですね、今のお姉様はお父様の物ではありません、しかし覚醒をしてしまえばあっという間です、お姉様はお父様の物となります、さっきも言いましたがそれがお姉様の運命です」
「そんな運命、認めない!、絶対に変えてやる!」
「そうです!、アリシアの運命はアリシアの物!、ならば変えるのもアリシアの自由!、私だってアリシアをDIVAの物になどさせません!」
アリシアに声をかけようと迷っている内にマイナスが現れ話を聞いてしまったメアはマイナスの背中を狙って剣を振るう。
「あらオリジナル、聞いていたのですか?、ふふっ、お姉様?、守ってくださりますよね?」
「何を言って!、!?」
アリシアは言おうとした誰があなたなど守るかと。しかしそれを言う前に体が勝手に動きメアが振るった剣をアリシアは剣で受け止めた。
『フン、マイナスめ、またも余計な事を』
体が勝手に動いた事に驚くアリシアの脳内にDIVAの声が響いた。
『ククッ、驚いているなアリシアよ、マイナスが言ったようにお前は俺の物だ、だからこうして』
「目を通してお前が見た物を見る事や、お前の体を使って喋る事も、お前の体を使って戦う事すら出来る」
アリシアの体を使うDIVAはメアを蹴り飛ばす。壁に激突したメアにDIVAは近付いて行き殺すつもりで剣を振り上げる。
(やめてぇぇぇ!)
DIVAの意思を感じたアリシアは叫ぶ。
「うるさい奴だ、まぁ良い、こやつなど俺が手をかける必要すらない存在、フン、慈悲をくれてやろう」
DIVAは剣を引き鞘に収めた。
「こいつを殺すとすればそれはお前の役目だ、それでは行こうかアリシアよ、お前がこの事を知った時点でお前をここに置いておく理由はなくなったからな、全く、マイナスも余計な事をしてくれる、経験を積ませる為にこの世界に置いていると言っただろうに」
「だって、お姉様はこいつらのような下賤な者達といるべきではありませんもの、お姉様は私達と一緒にいるべき高貴なお方です、だから話せばお父様が動くと思い話してしまいました、ごめんなさい」
「フン、反省をする気などない癖に」
「ふふっ、バレてしまいました」
マイナスはチロっと舌を見せると転移して行った。アリシアの体を使うDIVAも転移しようとするが。メアが抱き着いて来て止められた。
「行かせません!、アリシアをあなたの世界になんて!」
「邪魔だ」
DIVAは腕を振るいメアを振り払う。そして転移して行った。
「また、私は守れなかった・・・、なんで私はいつもアリシアを守れないのですか・・・なんで・・・」
アリシアが転移をして行ったのを見たメアは地面に手を着き泣き始める。
客室
「つまり、奴等はアリシアの目を通して知っていたんだね、武器の事を」
「そうなります」
「切り札が奴等にバレてた、あんまり良くない状態ね・・・」
DIVAが自分達の切り札を知っていたと聞いた彼等の中には重い空気が流れている。彼が知っていると言う事は既にその対策をされているかもしれないからだ。
「それよりもだ!、アリシアを助けに行くぞ!、神様な明日奈さんなら奴の世界を見る事だって出来る筈だ!」
「出来ないよ、お婆ちゃんが水晶を使って見れる世界は行った事がある世界だけ、DIVAの世界にはお婆ちゃんは行った事がない、だからお婆ちゃんでもDIVAの世界は見れない」
「くそっ!」
大切な彼女をDIVAに奪われ気が立っているグレイは壁を殴る。
「今、私達に出来る事は仲間を集める事だけ、急ごう」
「あぁ・・・」
グレイは愛理の言葉に小さく頷きアリシアの無事を祈り目を閉じた。
DIVAの世界
アリシアには何に使うのかすら分からない機械が周囲に並べられた場所にアリシアはいた。既にDIVAはその体から抜けており体の主導権を取り戻したアリシアはDIVAを睨みつけている。
「プラスよ、本当は覚醒してから渡す予定だったが、アリシアに闇と雷のスタイルを返してやれ」
「なっ!?、この力は私の・・・」
「俺に逆らう気か?」
「!、分かったわよ・・・」
DIVAの声色が低くなったのを聞いたプラスはアリシアに近付くと闇と雷のスタイルをアリシアの中に送る。
「うう!?、ああ!?」
突然流れてくる闇と雷のスタイルの強力な力にアリシアは悲鳴を上げ、その姿が皇帝アリシアのものとなる。アリシアの体が闇と雷のスタイル使いの持ち主であり適応能力がある皇帝アリシアに自信の体を守る為に変更させたのだ。
「はぁはぁ・・・、いいの?この力を私に返して!、ダークライジング!ブラスター!」
皇帝アリシアは闇と雷のスタイルの力が戻るなりDIVAに向けて攻撃しようとする。しかしブラスターは発動しなかった。
「言っただろう?、お前の体は俺が自由に使えると」
(くっ!)
「お前達が編み出したフュージョンモード、あれは面白い能力だ、ククッ俺もその完成に協力してやろう、強力な力は俺の為に扉を作るお前に相応しいからな、まずはフュージョンモードを完成させフュージョンスタイルとしよう」
(させないわ!、私の体から出て行って!)
「断る」
DIVAはすぐに転移し戻って来るとは思ってはいない筈のメア達に奇襲を仕掛ける為転移をした。果たしてメア達はアリシアの体を使うDIVAを退ける事が出来るのだろうか?




