十三話
セリクル大平原
アリシア達はセリクル大平原をセリクルの街に向けて歩いていた。
「当たらなければどうと言う事はないんだよぉ!」
途中、視界に入った為か戦いを挑んで来た虎型の魔物トラーニャーノとどんと来いやとその戦いを引き受けたシールスが戦っている。
「チィィ!」
「・・・ねぇ、最近思ってたんだけど、あの鎧を着ながら戦ってる時のシールス、なんか変じゃない?」
幼馴染である為変化がすぐに分かるニアは今のシールスが何か変だと言う。
「確かにー、なんだろあのグラサン」
シールスはグラサンを付けている、ノースリーブの軍服と合いそうな形だ。
「あのグラサンはね?ク・・・」
「ロワッサン!、うん!食べたいわね!」
愛理が何か言おうとしたが突然皇帝アリシアが表に出て来て遮った。
「いやだからアレ、クワ」
「ガタ取りに行きたいのね!?師匠!」
愛理はめげずに何か言おうとするが皇帝アリシアがまた遮る。
「あくまでも言わせないつもりか、弟子よ」
「ええ、絶対に言わせるものかっ!」
「私はセリフを言えない・・・」
ここまで邪魔をされ諦めた愛理は耳や尻尾をシュンとさせ俯く。そこまで落ち込むほどグラサンの正体を言いたかったらしい。そうしている間にシールスは虎型の魔物を倒しておりフッと鼻を鳴らしながら口を開く。
「君が負けたのは坊やだからさ・・・」
「誰かあいつを止めて・・・」
「嫌よ、隕石とか降ってきそうじゃない」
「アリシア?、あなた止めるフリしてノリノリですよね?」
「何の事かしら?、ほら見て、シールスが三倍のスピードで戻って来ているわ」
メアの言葉を聞いた皇帝アリシアはすっ惚けた顔をしながら更にボケる。
「・・・」
その言葉を聞きメアは呆れた様子で額に手を触れた。
「戻ったぜ?どした?」
グラサンを付けたままのシールスをアリシア達はジーと見る。仲間に顔を見られる事を不思議に思ったシールスは理由を聞く。
「い、いやぁ、あの魔物強そうなのによく勝ったなって話してたのさ」
「グレイ、あたしを誰だと思ってんだ?」
「・・・シールス、その鎧とグラサンすぐに外してください」
「はっきり言うぜ?気にいらねぇ、なんで外さねぇといけねぇんだよ?、カッコよくて気に入ってんのにさ」
「だってあなたどう考えてもシ・・・」
「ユニバース!!」
メアが何か言おうとしたがアリシアはまたも叫んで遮る。
「に侵食されてますよ、・・・、あのですね?煩いですよアリシア、なんですかユニバースって・・・」
「さっ?何かしら口が滑ったとしか言えないわ」
「は、はぁ・・・」
皇帝アリシアに呆れるメアはこれ以上話しても無駄だと思い。仲間達と頷き合うと歩き始める。
(今日はセンチメンタリズムな気分だったの?)
「そんな所」
アリシアと会話をした皇帝アリシアもメア達を追って歩き始めた。
セリクルの街
ここはセリクルの街。至る所に華やかに花が咲き乱れ。アリシア達の目の前の大通りの先には大きな噴水がある。そして蒼狐のパレードをしながら各地を回る旅団狐屋の魔導船が街と隣接する形で停まっている。
「大きな船ですね、蒼狐さんってかなりのお金持ちなのでしょうか?」
「パレードが各地でウケてるみたいだからねぇ」
「ふぅん、でも私達は知らないって事はうちの国にはまだ来てないのかしら?」
「うん、移動スケジュールの最後後にあなた達の国が予定地にあるよ」
愛理はそう言うと鞄の中に入れていたチラシをアリシア達に見せる。すると確かにアリシア達の国アルトシャーニアは最後の公演予定地であった。
「アルトシャーニアは人口もこの世界で一番多い、最後の最後に大儲けをするつもりなのでしょう」
「商売上手な妖狐らしい判断だわ、そこにいる同種族なのに商売下手そうなお狐さんと違って」
「失礼な!、私は魔王だよ?商売くらい出来るよ!」
アリシアに商売が下手そうと言われた愛理は尻尾をいきり立たせ自分も商売出来ると言う。
「意地張らないの」
「嘘じゃないからね!?、私魔界の経済回してたからね!?」
「はいはい」
「本当だからね!?」
「煩い」
アリシアと愛理の漫才をグレイ達は楽しく眺めつつ大通りを進み。
「狐屋のパレード!空き席ありますよー!」
噴水広場に差し掛かった所で売り子が空き席があると宣伝しているのが聞こえて来た。
「おっ、丁度良いじゃん、その蒼狐って人に会う前にパレード見ようぜ?」
「だねー、どんなパレードなのか見てみたいし!」
「そうと決まれば魔導船の近くに行ってみましょう!」
アリシア達は大通りを右に進み蒼狐の旅団狐屋の魔導船に向かう。




