九話
聖シルベリラ王国中部、セナオラ大森林
ここは聖シルベリラ王国中部にあるセナオラ大森林。清き光属性の魔力が溢れる地で聖地とも呼ばれる地だ。
この森の中腹までやって来たアリシア達は辺りが暗くなって来た為テントを張り野宿をしている。今回のお料理担当は愛理とアリシアだ。二人が作ったのはカレー。コトコトじっくり煮たカレーはシールスの談によるとかなり美味しかったようだ。
「ふふ、ふふーん」
夕食を食べ終わった少女達は近くの湖に向かい水浴びをしている。皇帝アリシアとメアとシメラとニアとシールスとアイリーンは楽しそうに鼻歌を歌いながら体を洗う愛理の大きな胸を見て集まってコソコソと囁き合っている。
「何アレ、母さんのよりデカイじゃない・・・」
「魔王様ボディ凄い・・・」
「・・・そろそろ勝ったかなと思ったら、やっぱり手も足も出ないわ何よアレ・・・」
「重量感たっぷりというやつですわ」
「何食ったらああなるんだよ・・・」
「・・・」
愛理の胸を見ているうちにスゥーと瞳から光がなくなったメアはアリシア達から離れると愛理の方に近付いて行こうとする。それを見た皇帝アリシアは慌てて肩を掴んで止める。
「ちょっと!ちょっと!?、今何するつもりだった!?」
「あのデカくてムカつく物を揉みまくってやろうかと、・・・、あなたのそれ私に当ててるのは挑発ですか?挑発なんですね?」
「わー!わー!、違うわよ!」
今度はアリシアに光の無い目を向けて来るメア。揉まれる!そう思った皇帝アリシアは飛び退いてメアから離れ自身の胸を隠す。
「うっふふ、離れましたね?止めないんですね?、あははは!」
「・・・、しーらね」
「何が起ころうとあいつの自業自得よ、さっ体洗いましょ」
「はい」
「石鹸とシャンプーはここにあるからねー」
スタスタと愛理に近付いていくメアを見捨てた皇達はキャッキャっと楽しそうな声を出しつつ体を洗い始める。その間にメアは愛理の背後に立った。
「どーした?」
「そのおっぱいに制裁を加えに来たのですよぉ!」
メアは愛理の背中に手をワキワキとさせながら飛びかかる。
「甘いね!」
しかし愛理はメアを避けるとその手を掴んで押し倒した。
「な、な、そんな・・・」
「魔王を舐めるんじゃないよ全く、それじゃあ私を襲おうとしたお仕置きをしましょうか!」
「ちょっあの・・・、キャァァァ!?」
メアの悲鳴が聖地に響き渡る。
「・・・」
一方のメンバー内で唯一の男であるグレイはテントの前で縄に包まれ拘束されていた。
「・・・見ねえつーのにあいつらは」
自分はアリシア一筋だ!と言ってアリシアもグレイなら大丈夫と言ったのだが。ニアとシールスは全く信じずなら拘束されても良いよな?と言いグレイを縄で縛った。本当に見るつもりはないグレイは不満そうに木々の間から見える星空を眺める。
「まぁ、アリシアが一人で入るなら・・・、うん覗きに行くな、何度見ても飽きねぇからなうん」
湖の中で体を洗う大切な彼女と言った光景はグレイにとって最高の光景である。そして自分が覗いているとバレ怒る彼女の顔を想像をしたら・・・。グレイは思わずにやけてしまった。
「ただいま、何ニヤけてるの?」
グレイがニヤニヤしているとアリシアが一人先に戻って来た。そしてニヤけているグレイを見て身を引く。
「なんでもない」
「うっそだぁ、何もないのにニヤけてるなんていくらなんでもないでしょ、何を想像してたのか言いなさい、そうしないとその縄解いてあげないんだから」
腰に左手を当てて右手でグレイを指差し何を想像してたのか言えと言うアリシア、そんな彼女自身の裸を想像してニヤけていたグレイは正直に話すべきか話すべきじゃないか悩む。
「えーとだな、お前の裸を想像したらニヤけちまってた」
「はーん、さっきはあなたを庇ったけども、ニアとシールスがあなたを拘束して正解ね」
そう言ってアリシアは腕を組むとプイッとそっぽを向く。
「・・・もしかしてこれ解いてくれない?」
「決まってるじゃない、あなたみたいな変態は今日一晩そうやって縄に包まれてなさい!」
「嘘だぁ!、待ってくれよ!」
こうなるのならば言い訳をした方がマシだったと思うグレイはテントの中に入って行くアリシアを呼ぶが。アリシアはテントから顔を出すとベーと舌を出しテントの中に引っ込んだ。
「他の奴が助けてくれる筈!、その筈・・・!」
二時間後
「・・・、俺用のテント買おう」
結局アリシアが解かなかったのならとニア達はグレイの縄を解かなかった。拘束されたままのグレイは死んだ魚のような目で燃え尽きかけている枝を眺めている。すると?。
「な、なによ、まだ寝てないの?」
テントの中から右手で左腕を持ったアリシアが出て来て口を尖らせながら話しかけて来た。
「お前こそまだ寝てなかったのか、他の奴らは寝たんだろ?」
「・・・ま、まぁね、別にあなたが気になって寝れなかったわけじゃないんだから、勘違いしないように!」
「そうかー、俺を心配してくれたんだなー」
「もう!、解いてあげないわよ!?」
「ハハッ、悪りぃ悪りぃ」
グレイから視線を逸らしたまま彼に近付いたアリシアは縄に手を掛けると解いた。そして彼の肩に自身の肩を当てて隣に座る。同時に枝が燃え尽き周囲が暗闇に包まれる。
「わぁ・・・、見てグレイ、とっても綺麗よ」
火が付いていた状態でも綺麗だった星空が火がなくなった事で更に綺麗に見えるようになった。それを見てアリシアは感動した様子で星空を指差す。グレイはそんな無邪気な彼女の横顔を暫く見つめてから共に空を眺める。
「くしゅん!」
「寒くなって来たな、テントの中に戻れよ」
「いい、あなたの隣にいたいの」
そう言うとアリシアはグレイの腕に抱き着き彼の腕で暖をとる。グレイは腕に感じる彼女の温もりと柔らかさに安心した。
「私達ずっと一緒よグレイ、どんな時だってね」
「分かってるさ、・・・シア」
「何?シアって」
「そう呼んでみたくなったんだよ、駄目か?」
「ふふっ良いよ、なら私はあなたの事をレイ君って呼ぶわ、良いよね?」
「なんだよレイ君って」
「もう決めたもーん!、今日からあなたはレイ君です!」
「子供か」
決めたもーんと胸を張るアリシアの頬をグレイは突く。頬を突かれるアリシアはにへらと微笑む。
「眠くなって来ちゃった、寝よっかレイ君」
「火は付けとくぞ風邪引く」
「うん、お願い、私は毛布取ってくる」
グレイが火を付けアリシアはテントの中に毛布を取りに向かう。毛布を持ってグレイの元に戻って来たアリシアは毛布を広げグレイに入るように促した。
「暖かいね」
「あぁ」
「幸せだね」
「そうだな」
「適当な反応だなぁ」
「悪い」
「まっ君らしいけどね」
アリシアはクスクスと笑うとグレイの肩に頭を乗せて目を瞑る。グレイも彼女の頭を自分の頭を合わせ目を閉じる。
焚き火の光が照らす中アリシアとグレイは幸せを感じながら夢の世界に旅立って行った。




