五話、パーティ
アリシアとメアの部屋
コンコンと部屋のドアを叩く音が聞こえる、メアが運搬依頼の報酬としてノメッツに貰った、電気ケトルで沸かしたお湯を使い淹れたコーヒーを飲むアリシアは、ドアを開けた。
「アンナさん」
ドアを開けるとアンナが居た、アリシア達の部屋の前に立つアンナは、それはそれはとてもとても素敵な笑顔をしている、その笑顔を見て嫌な予感がしたアリシアは、ドアを閉めようとしたが足で防がれた。
「何故ドアを閉めようとしたのかしら?」
「嫌な予感がしたからよ」
「あなたの感は当たっているわ、流石ね、アリシアちゃん」
アンナの言葉を聞き、跳んで奥の通路に移動し逃げようとしたアリシアだが、背後からスッと迫って来たメアに拘束された。
「ど、どう言う事かしら?メア」
「私もアンナさんの協力者と言う事です」
そう言ってメアは片手でアリシアの腕を強く握り、携帯端末の画面をアリシアに見せるとそこには。
『これからあなた達の部屋に向かうわ、アリシアちゃんとあなたのパーティ用ドレスを持って来たから、アリシアちゃんが逃げる前に後ろから捕まえてくれないかしら?』
と書かれていた。
「裏切ったなぁぁぁ!」
「フフフ、パーティの主役であるあなたに普通の服で出席させるわけにはいきませんもの、それに・・・」
メアはアリシアの耳に顔を近付け、アンナに聞こえないくらいの声で呟く。
(ドレス姿を見せたら、メッシュさんが褒めてくれるかもしれませんよ?)
(わ、分かったわよ)
(よろしい)
メッシュの事になると素直になるのがアリシアである、メアが手を離しても逃げない。
「きゅ、急に素直になったわね?、メアちゃん、何を言ったの?」
「ヒ・ミ・ツ、ですっ!」
「・・・」
(メアちゃん・・・、かなりの曲者ね・・・)
「それじゃ行きましょうか、アリシアちゃん、メアちゃん」
「うん・・・」
「はいっ!」
やたらとウキウキハイテンションなメアと、拗ねた表情のアリシアは、アンナに付いて行く。
衣装トラック
エンジェルズの外にはトラックが停まっていた、アンナの案内で荷台に乗り込むと、中には沢山のドレスがある。
「さぁ!選び放題よ!、どれにする?」
「あっ、私はこれでいいです」
メアはあっさりと赤いドレスを選んだ、その目的はさっさと自分のを選んでアリシアのドレスを選ぶ時間を長く取る為である。
「そ、そう、ならアリシアちゃんのドレスを選びましょうか、やっぱりゴスロリね!」
「なんでそうなるの・・・」
「似合うからよ!」
「・・・」
「アンナさん、アリシアは胸が大きいのでちょっとエッチなのも似合いますよ」
「確かに・・・」
(やっぱ逃げようかな・・・)
きゃっきゃっとアリシアのドレスを選び始めるアンナとメア、アリシアは徐々に後退し、ドアに近付くと、ドアを開けて逃げようとしたが開かない。
「残念だけども逃げれないわよ?、鍵閉めたもの」
そう言ってアンナは荷台の鍵を閉めるためのリモコンをアリシアに見せる。
「そうです、ここに来た時点で逃げようとしても無駄です、それじゃこれを着てみて下さい」
メアは青いドレスを渡して来た。そのドレスはスカート部分が短く、お腹の部分は開いており谷間を見せ付ける形となっている。
「いやいや露出し過ぎでしょ、恥ずかしいわ、こんなの」
「それだけ大きな胸、見せ付けない方が失礼です」
「そうね、あなたの最大の女としての武器だもの」
「と言うわけで着て下さい」
「分かりました、着るわよ、着ればいいんでしょう?」
どうせ女同士なのだ、既に恥を殴り捨て始めているアリシアはその場で服を脱ぐ、するとアンナとメアがアリシアの裸を見ておおぅ・・・と言う、そんな二人の声を聞いてアリシアがチラリと睨むと、二人は目を逸らした。
「着たわよ、どう?」
青いドレスに袖を通したアリシアは、腰に手を当てドレスを着た自分を堂々と二人に見せる。
「エッチです」
「そうねエロいわ」
「そうよ私はエロいわよ、おっぱいがこんなに大きいんですもの、ふふん!」
アンナとメアの反応を見てアリシアは開き直る。
「ふむ、これは選んだ自分でもやりすぎですね、別のにしましょう」
「次はこれを着なさい!、アリシアちゃん!」
アンナが渡して来たのはフリフリなフリルが沢山付いた可愛らしいデザインの白いドレス、それを見たアリシアはちょっと子供っぽいと思った。
「はいはい」
(全てはメッシュさんに褒めてもらう為よアリシア・・・、耐える耐えるのよ)
この後もアリシアはアンナとメアの着せ替え人形になりつつ、ドレスを選んだ。
パーティ会場
ボスが用意したエンジェルズの全エージェントが集まり、豪華な料理が所狭しと並ぶパーティ会場にはギルスも運び込まれている、今回はアリシアに勝手に動く事を許されているギルは、沢山集まった者達を見て照れた様子で後頭部を摩っている。
「それでは、今回のパーティの主役のアリシアの入場だ、お前ら!、拍手してやんな!」
エージェント達はボスの声に従い盛大な拍手をする、すると大きな扉が開き、アリシアが現れた。
(覚悟していたけど、恥ずかしい・・・)
沢山の者達の拍手に出迎えられたアリシアは頬を赤く染めながら、エージェント達の間を歩きボスの元に向かう、アリシアが着るドレスは結局はシンプルな物が良い!となったアンナとメアが選んだ黒いドレスだ。
(メッシュさん・・・、見てくれてるかな?)
アリシアは歩きながらメッシュの姿を探す、十秒ほど探して見つけたメッシュは、アリシアと目が合うと頷いてくれた、アリシアはそれを見て嬉しそうに微笑む。
「来たな、アリシア。お前ら!このアリシアはな!まだ新人にも拘わらず、ファントムを買った、大出世株だ!先輩のお前らも負けんじゃねーぞ!追い付かれても追い抜いてやりな!」
「「おう!」」
ボスの言葉にエージェント達は全員で返事を返す、ボスはその声を聞いて満足気に頷く。
「それじゃお前ら!、食って飲んで楽しみやがれ!」
ボスの言葉と共にエージェント達は食事を始めた、手を持っていたマイクを机に置いたボスはアリシアの肩を叩く。
「お前にはマジで期待してるからよぉ、これからも頑張りな」
「うん!」
「それじゃお前も楽しんで来い!」
「ええ、ありがとう!、ボス!」
アリシアはボスに小さく頭を下げてから、パーティに混ざって行った。
メアとシメラと話しながら料理を食べるアリシア、チラリチラリとメッシュを盗み見て、一人になるのを待つ。
「アリシア?、メッシュさんはお友達が多いようですし、待っていても駄目だと思いますよ?」
「そうだよ〜、アタック!アタック!、だよ〜」
(いつの間にシメラにもバレたのかよく分からない・・・)
「それもそうね、今日のアリシア様は、大胆なの!、行ってくる!」
アンナとメアが散々恥ずかしい思いをさせたお陰で大胆になっているアリシアは、メッシュに近付いて行く、アリシアが近付いて来るのを見た彼の友人達はアリシアが小さい頃からメッシュが面倒を見ていた事を知っている為、二人で話したい事もあるのだろうと判断して気を遣い離れて行った。
「め、メッシュさん」
「おう、アリシアか」
「ねっ、どうかな?、このドレス」
「似合ってるぞ、可愛いよ」
(やった!)
メッシュにドレス姿を褒めてもらったアリシアは心の中でガッツポーズをした。
「それにしてもちょっと前はあんなにちっこかったお前が、こんな美人になるとはなぁ」
「あら?、私の魅力にやられちゃった?」
「へっへっへ、触っちまおうか」
「い、良いわよ?、触っても」
「・・・、冗談を本気にするな」
(じょ、冗談じゃないもん)
メッシュにコツンと額を突かれたアリシアは俯いて額を抑えつつ心の中で今の言葉は冗談じゃないと言う、ただ声に出す勇気は今のアリシアにはなかった、それから暫くの間、二人は黙って料理を食べる。
(こんなに大きくなったんだ、そろそろ話す時が来たのかもしれねぇ)
「・・・、アリシア、あのな?」
「何?」
「お前の・・・」
「アリシアちゃん!、ちょっと良いかしら!」
メッシュがアリシアの両親についての話をしようとした瞬間、アンナがアリシアに声を掛けつつ近付いて来た、それを見てメアがガックリと肩を落としていた。
「・・・、タイミングが悪かったかしら?」
アンナは神妙な面持ちをしているメッシュを見て、彼にタイミングが悪かったかどうか聞く。
「いや、良いよ」
メッシュは首を振ると去って行った、彼が何を話そうとしていたのか気になるアリシアは、彼が見えなくなるまで目をで追い、見えなくなってからアンナを見る。
「それで?アンナさん、何の話?」
「昨日の件よ、あなたが通報してくれた三機のファントムがいたわよね?」
「うん」
「今、軍から報告があったのだけれど、あの場には誰もいなかったようよ、どうやら軍が来るまでの間に逃げ果せたみたい」
「逃げるとしても人だけかと思ってたら、ファントムも・・・、他の人を呼んで回収したのね?」
「恐らくはね、とにかくこれから注意をしなさい、ギルスに乗っていたからあなたの姿は見られてないけど、ギルスは新型で目立つわ、狙われるかもしれない」
「分かった、注意する」
「それじゃあ、一緒に料理を食べましょうか」
「うん」
アリシアはアンナと共にメア達の元に戻る。
「そのね?メアちゃん、何で睨むの?」
「なんでもないですよ!なんでも!」
「なんなのよぉ〜・・・」
「アンナさんが悪いと思うよ〜」




