七話、蒼と白金の勇者
ファルレオン平原
アリシアとメアを脇に抱えて飛ぶ愛理は戦場の上にいた。
「何だあれは?」
「・・・女の子二人を抱えた女?」
「と、取り敢えず敵だろう!、攻撃!」
空を飛ぶ愛理達を見付けた魔族達は戸惑いつつも攻撃を開始した。
「うおぉ!?」
愛理は慌てて回避行動をとり。その急制動にアリシアとメアの首はグキッとなった。
「・・・」
「・・・」
「ごめんごめん」
ジーと自分を見上げて来る二人にあははと謝る愛理、アリシアとメアは溜息を吐いてから手を前方に向ける。
「愛理さん!、これから私達が砲台になる!」
「はい!、ですから動きまくってください!」
「了解!」
急制動の度に首がグキッとなるが我慢する事にした二人は自分達が愛理の砲台になる事にした。二人の言葉を聞き本気で飛び始め。アリシアはバスタービットからビームを放ち。メアはブラスターのチャージが完了する度に地上に向けて放つ。
「王!、なんだがよく分からない三人組が空を飛びながら敵への攻撃を始めました!」
「見えておる・・・、なんだあれは・・・」
首都でおる城下町を守護する為に戦場に出て来ている王は正体不明すぎる謎の飛行物体を見てどうするべきか悩む。
「あれは味方ですわ、王よ」
「アイリーン!、戻ったのか!」
「はい、今敵に上空から攻撃を仕掛けている三人組は私のその・・・友なのです、ですので攻撃を仕掛けないでください」
「分かった、随分と面白い友を持っているのだな?」
「普段はまともなんです・・・、偶に突拍子もない作戦を思い付くだけで・・・」
「そ、そうか」
アイリーンから謎の飛行物体が味方だと聞いた王は通信魔法で兵達に味方だと伝え始めた。
「あははっ!、なにあれ面白い!」
魔族側の陣の最奥で指揮をしていたメリアは少女二人を抱えて飛ぶ愛理を見て爆笑していた。
「しかしメリア様、あやつらのせいでかなりの数の敵が討たれましたぞ」
「ふぅ・・・、そうだね、私の兵をあいつらかなりやってくれてる、さっき見逃してやったのにね、はぁ気に入ってたのに殺さないといけないじゃないか」
楽しそうな目から殺意を込めたギラギラとした目に変わったメリアは変身してから転移しその場から消えた。
「!?」
そして愛理の真上に現れる。
「今回は殺すからね、覚悟しなよ」
グルンと宙で回転したメリアはアリシア達に踵落としを喰らわせた。まともにその一撃を喰らった三人は謎の飛行物体からバラバラになり地面に落ちて行く。
「ちょっ!ちょっ!、飛べないんですけど!」
「転移して下さい!、アリシア!」
「私の転移はあなた達のみたいに早く発動出来ないの知ってるでしょぉぉぉ!」
「あっ・・・」
この世界式の転移を使うアリシアの転移が遅い事をすっかり忘れていたメアは愛理を仰ぎ見る。メアに顔を見られた愛理は頷きアリシアに向けて手を伸ばすがアリシアの落下スピードは速く中々に追い付かない。このままではアリシアが地面に激突するそう思われた時・・・。
「ふふっ、危なかったね」
アリシアの真下に一人の女性が転移して来た。金色の髪を持つ愛理と同じ顔をした女性、初代金色の九尾久城明日奈だ。明日奈はアリシアを抱き止めると地面に降ろす。
「お婆ちゃん!」
「明日奈さん!」
愛理は飛んで、メアは転移して明日奈の元に行く。
「ありがとうございます」
アリシアは助けてくれた大先輩明日奈にペコリと頭を下げる。空を見た明日奈はいいよいいよと手を振る。
「あなた達がメリアの記憶を戻すつもりだったみたいだけどさ、あいつ私の親友なのよ、だからその役目、私一人に任せて欲しい」
明日奈は現れるなり、メリアを自分に任せて欲しいと言った。
「分かった、任せるよお婆ちゃん」
明日奈ならメリアに負けるわけがないそう確信している愛理はまたドッキングして空を飛び立つ。
「ちょっ!またぁ!?」
「降ろしてぇ!」
「はらみなよ!二人とも!戦いがいがありそうなデッカいのがいる!、私達で倒すよ!」
「「いやー!」」
「あらあら・・・」
明日奈は飛び去って行く孫娘に呆れた視線を送りつつメリアの方を見る。
「こんにちは、親友」
そしてメリアの瞳をしっかりと見つつ親友と言った。
「ッ!、誰だアンタ」
メリアは明日奈の声と顔を見て頭痛が走り額を抑えながら誰だ?と聞いた。
「久城明日奈、この名前あなたは良く知っている筈よ」
「!!、知らない!、知らないよ!、邪魔するなぁ!」
またもや頭痛を気のせいだと振り払ったメリアは明日奈に斬りかかって来る。
「昔を思い出しますね、マスター、彼女がベアトリーチェの名を名乗りあなたと戦った時を」
「あー、あれは厄介だった、本当に強かったもの」
明日奈は過去を懐かしみつつ。長年連れ添った相棒プラチナローズと目を合わせ合う。するとホワイトローズはソードモードに変形し明日奈の手に収まる。
「過去を懐かしむのはメリアの記憶を戻してからよ!、さぁ!行くわよ!ホワイトローズ、変身!」
「レーヴァモードサード!!」
「フルパワーで行くわ!」
明日奈とホワイトローズはレーヴァモードサードに変身した。レーヴァモードセカンドとは過去のレーヴァモードを明日奈とホワイトローズなりに改良したモードで、背中の羽を大型化させる事で飛行能力の大幅な強化を実現、ソード、ブラスター、フルバースト、ツインセイバーなどのモードも更に効率化が進められており。攻撃の際の魔力消費を少なく収めつつも高威力化を実現している。その戦闘能力は愛理のゼロモードに若干劣る程度であり作戦次第では勝つ事も可能だ。
サードの一つ前の変身にセカンドと言う変身があり。これはとにかく高威力を優先した変身であるが。威力を優先しすぎた結果魔力消費がとんでもない事になってしまった為。失敗形態として明日奈とホワイトローズは封印している。
「はぁぁ!」
メリアは明日奈に首を狙って斬撃を振るう。明日奈は魔力を纏わせた素手でメリアの剣を止めた。
「なっ!?」
誇りを持っていた自身の斬撃を素手で軽く受け止めた目の前の女を見てメリアは驚愕する。
「そう驚かないでよメリア、私の実力はあなたが良く知っているでしょうに、ねぇ!」
明日奈は体を回転させるとメリアを空に向けて放り投げる。空に放り投げられたメリアは翼を広げ投げられた勢いを収める。そしてすぐに攻撃をしようとするが明日奈が既に懐に潜り込んでいた。
「レーヴァブラスター!!」
「くうう!?」
容赦のない明日奈の攻撃。メリアは顔を引きつらせながらも転移して避けた。明日奈の真後ろに現れたメリアはお返しとしてブラスターを放つが。明日奈は振り向きざまに剣でブラスターを斬り裂き寸断した。
「どうした?メリア、あなたの実力はこんなものじゃないでしょう?」
「・・・様子見を出来る相手じゃないみたいだね!、良いよ!本気出してあげる!、はぁぁ!」
メリアは身体に力を込め魔力を高めて解放する。その魔力量は地面を揺らす程であった。
「おーおー流石」
『記憶を戻す為の戦いなのに本気にさせてどうするんですか?マスター、馬鹿ですか?、馬鹿なのですね?』
「なっ!?誰が馬鹿よ!誰が!」
『私はマスターと言いました』
「キー!」
明日奈が尻尾をピーンと立ててレーヴァローズに対して怒っていると。メリアの準備が完了したようだ。圧倒的な魔力を放つ彼女は明日奈を睨み付ける。
「後悔すんなよ?、美人さん」
「そっちこそ、本気で戦っても私に勝てないって思い知らせてやる」
「ふふっ、言ってろ、絶対殺してやる」
「はん、絶対私の事を思い出させてやる!、さぁ!かかって来い!」
「言われなくても!」
メリアは翼を広げ一気に加速してまるで瞬間移動のような速さで明日奈の目前に現れる。その圧倒的な速さに反応して見せた明日奈はメリアと剣を交え。久城家直伝ヤンキー殺法戦闘術をいかし。メリアの顔をぶん殴った。
「イッテ!、相変わらず急に殴ってくるんだから!」
「ふふっ、それが私の戦い方ってのはあんたはよーく知ってるでしょ?」
「そうだね、・・・?、私・・・」
メリアは明日奈を知っているような会話をした自分を疑問に思った表情を見せる。
「思い出しそうかしら?」
「な、何の事やら!」
首を振ったメリアは剣から炎を放つ。愛理は剣から光の斬撃を放つ事で対抗し。二人の斬撃は激しい爆発を起こす。
「くぅぅ!?」
爆発の中に突っ込んだ明日奈は爆発に視界を防がれていたメリアの目の前に現れる。そして下から剣を振り上げ。メリアが身に纏う鎧を斬り裂いた。
「あら、見えちゃったわね」
「ッー!」
鎧を斬った事によりメリアの胸元が見えてしまった。明日奈はそれを見て小悪魔な笑みを見せる。その笑顔を見て顔を真っ赤にしたメリアは紅蓮のブラスターを放つが明日奈は剣でそれを何度も撃ち落とす。
「無駄だよ!相棒!、あんたの事は私がよーく知ってる!」
「私だってあなたの事はよーく知ってるよ!、明日奈!、・・・あっ」
遂にメリアは明日奈の名を呼んだその瞬間。次々と明日奈との思い出が蘇り。メリアは混乱する。
「何だこれ、私あなたを知ってる?、し、知るか!こんな記憶!、うわぁぁぁ!」
混乱するメリアは明日奈に接近するとめちゃくちゃに剣を振るう。明日奈は落ち着いてその剣を捌きその手から剣を弾いた。
「くっそぉぉぉ!」
「これで終わりにしよう相棒、フルバーストモード!レーヴァブラスターヘキサ!!」
『フルドライブ!』
明日奈が放つはレーヴァブラスターヘキサ。親友の記憶を戻す為に最高の技を明日奈は放った。
「!!」
その砲撃を見たメリアは完全に記憶を取り戻す。
「ハハッ、相変わらずの馬鹿威力、変わらないなぁ、明日奈は」
メリアは変わらない親友の姿を見て楽しそうに笑いつつ、ブラスターに巻き込まれて行った。
「・・・、殺す気か!この馬鹿狐!」
記憶が戻り命からがらに転移してブラスターから逃れたメリアは明日奈に向けて怒っていた。
「いやー?だって記憶を戻すなら本気で挑んでボコボコにしろって言うでしょう?」
「どこで言われてるんだよ!そんなの!、聞いたこともないよ!」
「今考えた」
「相変わらずだなっ!ホント相変わらずだなっ!」
メリアは相変わらずな明日奈に近付くとその頭をポコポコと叩く。メリアに叩かれる明日奈は楽しそうに笑う。
「さぁ、戦いを止めよう、メリア、この軍はあなたのもの、停戦命令を」
「分かってる」
メリアは魔導通信を開き全軍に停船命令を下した。しかし・・・。
「我々は停船命令を譲渡しました!、しかし魔獣が止まりません!、暴走しているようです!」
「何だって!?」
見ると魔獣達は暴走しているようで街に向けて進軍して行っている。戦いに興奮しきってた影響で歯止めが効かなくなったようだ。
「ふふっ、責任、取らなきゃね?、メリア」
「うん、記憶を失っていたとは言え、この戦闘を始めたのは私、責任は取る!、行こう明日奈!、あれ全部止めるよ!」
「ええ!」
明日奈とメリア。過去の英雄は戦場に現在の戦士として降り立つ。人々を守る為に。




