二話
アリシアと愛理が仲良くするだけの回
聖シルベリラ王国行き魔導船、客室
「んん・・・」
愛理の胸の中でスヤスヤと眠っていたアリシアが身じろぎし目を覚ました。
「おはようアリシア、よく寝てたね」
「おはよー、愛理さん、ごめんね?抱き枕にしちゃって、このムニムニのフカフカの魔力には勝てなかったわ」
そう言ってアリシアは愛理のムニムニのフカフカを指先でツンツンと突く。
「くすぐったいからやめなさい、ほら離れて?みんな船の探検に行ったわ、私達も行きましょう?」
「やだー、もうちょっとこの柔らかさを堪能するー」
「自分のでも好きなだけ触ってなさい!、ほら行くよ!」
愛理のムニムニのフカフカに顔をグリグリと擦り付けるアリシア。それを受けて愛理はバッと立ち上がりアリシアを引き離した。
「はぁい」
ベッドの上で仰向けになっていた愛理は立ち上がると寝る前に脱いでいた黄色い騎士服を着直し愛理と共に部屋の外に出る。
聖シルベリラ王国行き魔導船、船内
アリシアと愛理は仲良く話しながら船内を歩いている。すると美味しそうな匂いが漂って来た。その匂いを嗅いだ愛理は早速耳をピーン!と立てて尻尾をブンブンと振り始めた。
「もうお腹空いたの?」
「美味しいものに目がないのだよ、私はね」
「・・・記憶で見た通りの食いしん坊だ」
アリシアが呟いている間に愛理はフラフラと唐揚げ屋に近付いていき入って行った。数秒後に山ほど唐揚げが入った大きな箱を持って店から出て来た。
「・・・あげないよ」
アリシアの視線を感じた愛理は尻尾で唐揚げを隠す。
「私は人の物を欲しがるほど卑しくはありません、自分で買うから待ってて」
「あ、あれ・・・?、ただの冗談で欲しいって言うのならあげたのに・・・」
「・・・」
人の物を欲しがらないと言った以上貰ってしまう訳にはいかないアリシアはプイッと顔を背けると自分の分の唐揚げを買う。二十個程の大型パックを買った食いしん坊な愛理と違い小食であるアリシアは三個ほどの小さな箱を持って出て来た。
「それで足りるの!?」
「こっちからすると、そんなに食べれるの!?、よ」
「食べれますが?」
(なんで太らないんだろう・・・この人)
あっけらかんと食べれますが?と言う愛理のドヤ顔と誇らしげに立つ尻尾を見てアリシアは愛理が太らない理由を疑問に思う。
「それじゃ食べよう?、ずっと寝てたからお腹空いてるでしょ?、私も早く食べたいし!」
「一番最後が本音だコレ!!」
「バレたか」
アリシアに本音を言い当てられた愛理はベンチに座ると尻尾をゆらりゆらり揺らしながら唐揚げを食べる。その瞬間尻尾の動きが変わりビビビと動く。アリシアも隣に座る。
「美味しかった?」
「それは勿論!、ジャワと油が口の中に広がってねぇ、それで・・・」
「頂きまーす!」
「魔王様の貴重な食レポを最後まで聞かないとは・・・、良い度胸だね・・・?聖騎士君」
「・・・」
「無視するなー!」
怒って尻尾の毛を逆立てた愛理は唐揚げを大切そうに自分の隣に置いてから無視をするアリシアに飛び掛かる。
「フッ、甘いわね、愛理さん」
「何!?」
しかし愛理はスッとベンチの上に乗ると前上に飛んで愛理を避ける。
「そしてあなたの唐揚げを捕まえさせて貰ったわ?、さぁ?どうする?これでおしまいにすると言うのならばこの唐揚げは助けてあげても良いのだけれど」
「くっ・・・降参するよ」
「ふふっ賢い選択よ」
唐揚げを人質にされた時点で愛理にそれ以上愛理と戦うと言う選択肢はない降参をした愛理はんっと手を差し出す。アリシアに唐揚げ返せと言っているのだ。
「ええー?簡単に返すと面白くないわ?」
「なっ!?降参したでしょー?」
「そだねー、でもそれで唐揚げを返したりする私じゃないの、これを返して欲しかったら私の目の前で三回回ってワンしなさい」
クルクルクル。
「ワン!」
「・・・本当にやらないでくれる?恥ずかしいから・・・」
アリシアは本当に三回回ってワンをした愛理を見て頭を抱える。
「私食べ物の為なら何でも出来る」
「でしょうね、はい返してあげるわよ、約束ですもの」
「おかえりー唐揚げ君達!、さぁー食べてあげるねー!」
「ふふっ本当に食いしん坊なんだから」
美味しく唐揚げを食べたアリシアと愛理はベンチから立ち上がると船内の何処かにいるメア達を再び探し始める。




