一話
聖シルベリラ王国行き魔導船、客室
「・・・」
フュージョンモードを発動させテレシアとなっている少女が目を閉じて周囲の気配を探っている。これからDIVAに対してのメアが考えた切り札について愛理に話す。その際にマイナスがいれば敵に手の内がバレるので探知能力にも優れたテレシアの状態で船内にマイナスが隠れていないかどうか探しているのだ。
「いないわね、一応だけどシメラに愛理さん、この部屋全体を覆うように結界を張ってくれる?」
テレシアからアリシアに戻った少女はシメラと愛理に結界を張ってくれと頼む。
「はーい」
「おまかせー」
シメラと愛理は結界を張りこの部屋を監視魔法などの魔法から隔離した。結界が張られた事を確認したアリシアはメアと目を合わせた。メアは頷くと時渡りの書を鞄の中から取り出す。
「それ未来のアリシアがあなたに渡した・・・、消えてなかったんだ!」
「はい、愛理さんとアリシアのシールドで私と一緒に保護されてたんです」
「そっか!やっぱり君を守った意味があったよ!」
「はい、あの時私もDIVAの力に飲み込まれていれば時渡りの書は消えてしまっていたでしょうから・・・」
メアは改めて切り札となる時渡りの書が消滅せずに済んだ要因である愛理と皇帝アリシアに感謝した。
「それで?その書をどうするの?、一応この世界で産まれた体でも魔神である私なら安全に使えるかもだけど」
「かも、なのでしょう?、少しでも危険性があるのならば私はこれを使う事は絶対に許しません、未来のアリシアがこの書を使ったせいで苦しんだ事を私は知っていますから」
メアは安全に使える確証がない今の状態で誰かが時渡りの書を使おうとするのを見た瞬間。書を消滅させるつもりだ。その理由は大切な仲間に未来のアリシアのような苦しみを味わって欲しくないからだ。
「ならそれをどうするのさ?」
「DIVAに使います、時の力を持つこの書を改造して突き刺した者の時間を逆行させる剣とするのです」
「それで初期化されたDIVAで世界を元に戻すって計画か・・・」
「そうなります」
愛理はメアの計画を聞きメアに近付くと肩を叩いた。
「よく考えたね、やってみる価値あるよ、アイリーンに会った後次は妖狐の里に戻りお婆ちゃんに私達の切り札を作ってもらおう!」
「はい!」
愛理の言葉に喜びを感じたメアは嬉しそうに微笑みながら振り返る。
「やりましたよ!アリシア!、私の作戦が採用されました!、・・・?、アリシア?」
作戦が採用された事をアリシアと共に喜ぶつもりであったメアは。どこかボーとした様子のアリシアを揺する。
「えっ?、な、何?」
「ボーとしてましたよ?、疲れてるんじゃないですか?」
「そうかも・・・、ちょっと寝る」
普段あのようにボーとする事はないアリシア。メアはアリシアが疲れているのではないか?と心配しグレイと目を合わせる。目を合わされたグレイは頷くとアリシアの疲れ?を癒すため髪を撫で初めた。するとすぐにアリシアはスヤスヤと眠り始める。
「聖騎士の仕事忙しいの?」
「ここ最近はちょっと・・・、何故か王都で犯罪を犯すチャレンジャーな人が多くて私達は良く任務に出ていました」
「そう・・・なら仕方ないね、今回の旅はアリシアの休養の時間としても使わせてあげよう」
「はい」
メアは疲れているアリシアの髪をグレイの代わりに撫で始める。するとアリシアは眠りながら気持ち良さそうな表情を見せた。
「・・・突然監視魔法が効かなくなったから見に来てみたものの、結界ですか・・・、厄介な代物を」
アリシア達が泊まる部屋に前に立つマイナスはどうやらアリシア達が中で何をしているのか把握出来ていないようだ。
「・・・諦めるしかないですね、オリジナル?今回は負けを認めてあげます」
やけに素直に負けを認めたマイナスは転移して行く。結界を張っているため中から周囲の魔力を探らなくなっているメア達は至近距離での転移すら気付かなかった。
「おはよー」
深い眠りから目を覚ましたアリシアは起き上がる。そして立ち上がるがフラつきフラフラ〜と愛理の胸元に辿り着いた。
「まだ回復出来てないね、もう少しベッドで休んでなさい」
「ベッドより愛理さんのムニムニのフカフカが良い」
「ムニムニのフカフカって・・・、仕方ないなぁ」
今の愛理の姿を見て母性が溢れて来た愛理は優しくアリシアの体を尻尾で包み髪を撫で始める。これは母性が強い妖狐本能的な行動で疲れている者がいれば癒してあげようとするのだ。実際にかなりの癒し効果があり。愛理の夫レベンも疲れて帰って来た日の夜同じように愛理に癒して貰い翌日の朝には完全に元気になって仕事に行くのが彼が忙しい時期の日課であった。
(安心する凄く・・・、愛理さんの尻尾気持ちいいなぁ)
愛理の綺麗な毛並みの尻尾に癒されているアリシア夢心地のまま夢の世界に再び旅立って行った。




