十話
アルトシャルセン王城、アリシアの部屋
アリシアが部屋で本を読んでいると一人の騎士が大慌てで入って来た。
「どうかした?」
アリシアは慌てている男に何事か聞く。
「な、何やら金色の髪を持った妖狐が城の中に入れろと暴れておりまして!、我々では手が付けれませんのでアリシア様に救援を頼みに来ました!」
「金色の髪を持った妖狐・・・、んん?、う、うん、だ、誰だろう?取り敢えず行ってみよう、案内して?」
「はい!」
金色の髪を持った妖狐に思い当たる人物がいたがアリシアはその考えを除外する。もしその人物が自分に会いに来ていたとしたらその人物が暴れているのは自分の責任となる。それを考えたくなかったのだ。
鎧を身に付けたアリシアは騎士と共に城の入り口に向かう。
王城一階
「オラー!通せー!、弟子に会いに来たんだってばぁ!」
アリシアが一階に降りて来るとやはりと言うかなんというか愛理が突然の侵入者を排除する為に集まった騎士達相手に暴れている。
「おー!いたいた!アリシア!、こいつらどうにかしてよ!」
愛理がアリシアを見つけた。愛理は早速アリシアに騎士達をどうにかしてくれと言ってくる。
「・・・侵入者を聖騎士として逮捕します」
アリシアは愛理の言動に頭痛を感じながら愛理に近付くと彼女を逮捕すると言ってから剣を抜いた。
「なんでー!?」
「当たり前よ、王城へ騎士や関係者以外が入るには許可状が必要、その許可状もなしに王城に侵入し、しかも騎士相手に暴れたあなたは立派な犯罪者、私は聖騎士として二つの犯罪を犯したあなたを見逃すわけにはいかないの」
「あーごめん、許可状はそりゃ必要だよね、ごめんごめん、それじゃ取ってからここに戻って・・・」
「それで犯罪が許されるなら騎士はいらないのよ、侵入者さん、と言うわけで大人しく逮捕されなさい」
愛理が大暴れをした責任を取りたくないアリシアはニコリと笑って逮捕されろと愛理に伝える。
「嫌に決まってるでしょ!、逮捕されたら牢屋行き!、誰が牢屋になんて行くかぁ!」
「そう、ならあなたを倒して逮捕します、あなた達は下がりなさい、この者は強い魔力をもっている、近くにいれば怪我をしてしまうわ」
「「はっ!」」
アリシアが邪な感情もなく聖騎士として愛理を逮捕しようとしていると思っている騎士達は元気良く騎士の礼をし後退して行く。
「ほーう?やろうてーの?、良いよ、あなたがこの数ヶ月でどこまで強くなったのか見せてもらおうじゃないか!」
「良いわよ見せてあげる!、私達の力をね!、行くよ!もう一人の私!」
(ええ!フュージョンモード!)
「発動!!」
アリシアは皇帝アリシアと融合しフュージョンモードを発動させた。融合しテレシアとなった少女は両手に持つエリシャディアを構えた。
「あなたのその力・・・、まさか・・・」
「ご名答、皇帝の名を名乗っていた私と聖騎士と名を名乗る私が融合し、この私テレシアとなったの」
「もう一人のあなたを助けたんだ!やるね!、しかもその力すっごい!、なら試させてもらおうじゃないか!、ゼロフォーム!!」
愛理もゼロフォームに変身しエクスカリバーを構えるとテレシアに斬りかかった。
ズン!と愛理の重い斬撃を受け止めたテレシアはパワーで愛理を押し返す。
「凄い凄い!、ゼロフォームの私のパワーについて来るなんて!」
「ふふふ!、パワーだけじゃないわよ!」
テレシアは駆け出すと一気に愛理の真後ろに回り蹴りを当てた。愛理はすぐに後ろに剣を振るうが既にテレシアはいない。愛理の真横に移動していたテレシアは剣を振るうが愛理はシールドで防いだ。
「へぇ、早いね、飛ばすにこのスピードを出せる事に驚いたよ」
「まぁね!」
「でも、まだまだ私には及ばない、それに前のあなたの体にも、そんな状態で私にどうやって捕まえるつもり?」
「あー、それは簡単よ?」
「?」
テレシアの言葉に愛理は首を傾げる。テレシアは上を指差した。愛理はつられて上を見るその瞬間・・・。
「なっ!?」
地面から飛び出して来た鎖に愛理は拘束された。
「はい、逮捕完了、話は後でね?、犯罪者さん?」
「卑怯者ー!」
「犯罪者が何を言う」
テレシアからアリシアに戻った少女は鎖を手に持つと鎖を引いて牢に向かう。
牢
ムッとした顔で牢屋の中にいる愛理に彼女に作戦勝ちしたアリシアが睨まれている。そこに王がやって来た。
「妖狐の里の長の孫よ・・・、お前だからこの罪は一日牢屋に入るだけで許してやるが、次はないぞ?良いな?」
「・・・」
「返事をしないのならここに入る期間を一ヶ月に伸ばしてやっても良いんだぞ?」
「はい!」
「よろしい、それで?、お前は前の世界の強者達に関しての情報を集めていると聞いた、全員見つかったのか?」
王は愛理の仲間である強者達の情報が集まったのか愛理に聞く。
「見つかったよ、それを話す為にもここから出してくれないかな?」
「断る、また明日話をしようじゃないか」
牢屋から出せと言う愛理の申し出をはっはっはと笑いながら拒否した王は離れて行く。
「ドンマイ」
「こうなる原因になったあなたにドンマイなんて言われるとかなりムカつくのですが」
「ド・ン・マ・イ」
アリシアは思いっきり煽った顔で愛理にドンマイと伝えると自身も牢から去っていく。
「後で覚えてろよー!」
夜、牢屋
愛理がイライラと尻尾を揺らしながら牢の中で暇を潰しているとヒールの音がした。愛理が音がする方を見ると赤目の少女皇帝アリシアがいた。
「本当に戻ったんだね、良かった」
皇帝アリシアの姿になったアリシアを見て愛理はホッと安心した表情を見せる。
「・・・私はあなたに良かった、なんて言われる立場じゃないわ・・・、私のせいで前の世界は滅びた、私がDIVAに手を出さなければこんな事にはならなかったのよ・・・」
皇帝アリシアは過去の行いを後悔し切った表情を愛理に見せると俯いた。
「私から何か言うとすればこれだけだよ、気にするな、前の世界を消されてしまったのなら消した張本人の力で戻せば良い、ってね」
「でも・・・」
「言ったでしょ?気にするなって、それにあなたにも協力してもらう、あの金色の髪になった姿もその為だよね??」
「ええ・・・まだ完全ではないのだけれどね」
「そうなんだ?、ならどうなれば完成なの?」
愛理はフュージョンモードがまだ完全ではないと言う皇帝アリシアの言葉の意味を聞く。
「闇と雷のスタイルの力を取り戻す必要があるの、そして光のスタイルの力もいる、その三つのスタイルの力を持った姿になった時、フュージョンモードはフュージョンスタイルとなる、そうなれば完成よ」
「スタイルの力かぁ、ならプラスって奴を絶対に倒さないといけないね?」
「ええ、なんとしてでも私は、いいえ?私達はあいつに勝つ!」
「うん!、それじゃもう前の世界が滅びる原因にあなたがなった事気にしてないよね?」
「ええ、その代わり絶対に私達であの世界を取り戻すわ!!」
「うん!、その意気だ!、と言うわけでここから出してくれないかな!?」
牢から出せそう言う愛理の言葉を聞いた皇帝アリシアはフッとドSな笑みを見せた。
「断るわ、あなたみたいな強い人がそうやって牢の中に捕らえられてるのってなんかこうワクワクするし」
「・・・あなたに頼んだ私が馬鹿だった」
「それじゃあまたねー」
フフフフフと笑いながら去って行く皇帝アリシア。そんな彼女の背中を恨めしげに見送る愛理は彼女の姿が見えなくなるとため息を吐いてベッドに寝転び眠り始めた。
???
「そう、そのフュージョンスタイルを持つお前を使うのは俺だ、人間どもなどに強力な力を使わせたりなどせん」
世界を監視しているDIVAはそう言うと不気味にツインアイを光らせた。




