九話、結婚指輪と金色の九尾の帰還
グレイの部屋
「良し・・・」
グレイ達が騎士となってから二ヶ月近くが経過した。その間にみっちりとアリシアに訓練させられ実力を飛躍的に上げたグレイの目の前には一つの小さな箱がある。
「今日渡そう、決めた」
グレイはこの日アリシアに結婚指輪を渡すつもりなのだ。この指輪を受け取り喜ぶ彼女の様子を想像すると思わず顔が綻ぶ。
「行くか」
グレイは彼女の喜ぶ顔を見る為に部屋を出た。
鍛錬場
時間が早い為アリシアは一人で騎士鍛錬場で剣を振っていた。屋敷に住んでいた頃の毎朝の習慣はこの鍛錬場で行われるようになったのだ。
「ねっ、あなたが闇と雷のスタイルの力を使えていた頃はもっと早く腕にも負担なく剣を振れていたのよね?」
(ええ、あの頃の私の体の方が今の私達の体よりも強いわ)
「そっかぁ、テレシアになった状態ならどう?」
(うーん・・・それでもちょっと弱いくらいかしら、とにかく闇の遺跡から吸収して取り込んだ魔力が凄かったからね、あの体より強くなるのは中々に難しいわ)
「ふむふむ、ならもっと頑張らなきゃ!」
頑張るぞー!と腕を振り上げるアリシア。目指せ前の世界での自分の体越えである。
「そう言えばロボの設計図作成は順調?」
(まだまだよ、創造の力ならすっごいロボが作れるはずだからね!、練りに練りまくってるわ!)
「・・・練るのはいいけどね?もうちょっと早く寝てくれない?、寝不足で若干ダルいんどけど・・・」
創造でロボを作りたいと言う皇帝アリシアの為アリシアは最近仕事を終え夕食を食べ風呂に入った後皇帝アリシアに体を使わせてあげている。本気でロボを作ろうとしている皇帝アリシアは夜遅くまで設計図作成を行なっている為。アリシアの精神がその間寝ていたとしても体は寝不足になってしまうのである。
(ごめんごめんこれからは出来るだけ早く寝るわ)
「お願い」
アリシアがこれで寝不足問題が解決しそうだと思った瞬間。鍛錬場のドアが開いたアリシアがドアの方を見るとグレイがいた。アリシアは部屋に入って来た彼にふわりと微笑みかけると正面を向き剣を振り始める。
「おはよう、今日は早いのね?」
「ま、まぁな」
アリシアがグレイに話しかけるとグレイは緊張した様子で返答をして来た。何故からが緊張しているのか分からないアリシアは剣を振るのをやめてグレイの顔を見る。
「どうかした?」
「い、いやそのな?」
グレイはモジモジとしながら何か言おうとしている。
「どうしたのよ?、私もう少し剣を振りたいのだけれど?」
「ご、ごめん、ちょっと待ってくれ、深呼吸するから」
スーハーとグレイは深呼吸しポケットの中に手を突っ込み指輪が入った箱を取り出した。その箱を見た時点でアリシアの顔にもしかして!と笑顔が浮かんだ。
「アリシア、俺と結婚してくれ」
緊張した今の状態では長々とは喋れないならばとグレイはシンプルにアリシアに結婚して欲しいとの想いを伝えアリシアに向けて指輪を差し出した。
「はい!」
アリシアは満面の笑みを見せてグレイから指輪を受け取り嬉しそうに手を差し出した。
「・・・」
緊張して手が震えるグレイは何度かミスをしつつアリシアの左手薬指に指輪を嵌めた。アリシアは暫く幸せそうに左手を眺め。ギュッと自分の手を抱きしめる。
「これからよろしくね、グレイ!、私あなたのとってもとっても!素敵なお嫁さんになるから!」
「俺もお前をいつも笑顔にしてやれる夫になるよ」
「ふふっ!うん!、大好きよ!」
グレイへの気持ちが昂り抑えが付かなくなったアリシアは剣を鞘に戻してからグレイに抱き着いた。
「ねっ赤ちゃん欲しい」
「気が早いなオイ」
「好きな人と結婚するのならば子供も欲しいって思うのは当然でしょう?」
「まぁそうだけども、俺も欲しいけども、結婚してからにしよう、なっ?」
「ええー」
グレイとの子が欲しいアリシアは結婚してからにしようと言うグレイの言葉を聞いてムーと頬を膨らませる。
「急がなくても良いさ、俺たちはずっと一緒にいるんだからさ、なっ?」
「うん、そうだね、私達はずっと一緒、ごめんね?焦っちゃった」
「良いさ、俺も子供が欲しいって気持ちは同じだから」
「えへへ」
暫くアリシアは幸せを感じながらグレイに抱きしめられ続けたそして離れると剣を抜く。
(剣を持つと緩み切った顔からすぐに騎士の顔になる、この切り替え凄いよな)
グレイは一瞬で騎士の顔となったアリシアに感心する。
「あなたもやる?」
「お前に指輪を渡すだけでもかなり疲れたから休ませて・・・」
「ふふっ、はいはい」
アリシアは大好きな人に見られながらいつもの日課を行う。見られながら行ったからだろうアリシアは自分でいつもより質の良い日課が出来たそう思った。
側付きの部屋
グレイに城下町の巡回の仕事が来てしまった為アリシアは幸せな時間を切り上げて鍛錬場を後にしメアの部屋にやって来た。部屋の中に入るとメアが筋トレをしていた。
「何か任務でも入りましたか?」
アリシアが部屋に入って来る時は大抵がメアに任務が入ったと伝える為だ。その為今回もそうだと思ったメアは筋トレをする為脱いでいた服を着込みながらアリシアに近付く。
「ううん違うよ?」
「あら?違いましたか?、ならどうしたんです?」
「じゃーん!」
どうしたのか聞かれたアリシアは体の後ろに隠していた左手を出しメアに見せる。アリシアの左手を見たメアは思わずアリシアを抱きしめた。
「おめでとう!アリシア!、指輪貰ったんですね!!」
「うん!」
「良かったですねぇ、最近いつ指輪渡してくれるんだろうってあなたソワソワしてましたかしら」
「そ、ソワソワなんてしてないわよ?」
「してました、すぐに意地張るんですからもう」
「うー」
ちょっと意地を張った結果メアにクスクスと笑われたアリシアはうーと唸る。
「しかしこれで晴れてあなたもグレイのお嫁さんですか、どうかお幸せに」
「うん、幸せになるわ私」
「はい!」
アリシアの幸せを祈るメアはぎゅーとアリシアを抱きしめる。もう一人の彼女を含めてずっとアリシアの幸せを祈っていたメアも彼女が結婚と言う幸せを掴む事で報われたのだ。
「それでさ?あなたも式場の準備色々と手伝って欲しいの、頼めるかな?」
「勿論です!、素敵な結婚式にしましょう!!」
「うん!!」
城下町入り口
「大きいなぁ、流石は城下町」
城下町の入り口に金色の髪と金色の狐の耳と金色の狐の九本の尻尾を持った女性がいる。金色の九尾久城愛理が長きに渡る情報集めからアルトシャーニアに帰って来たのだ。
「さぁて弟子達に会いに行こう」
愛理は弟子達と会うのを楽しみにしながら城下町を進む。




