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セブンススタイル  作者: ブレイブ
第一部三章、アリシアのファントム
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三話

フドーンフォール


ズーンとギルスが岩山の頂上に降り立った。


「こんなに派手に降りたのに無視されたんですけど・・・」


「笑えるくらいに私達を気にしてませんね」


『撃っちゃいましょうオーナー』


「えー、なんか気が引けると言うか何と言うか・・・」


アリシアがグレートモンキーを撃とうか撃たまいか悩んでいると、木にしがみ付いてバナナを食べていたグレートモンキーは、突然木の上で立ち上がり大声で叫ぶ。


「キキィィィィ!」


「っ!っ!、いきなり何よ!」


大声で叫んだグレートモンキーは木から飛び降りギルスの前に立つ。


「な、何よやるの?」


アリシアはグレートモンキーにビームライフルの銃口を向けた、するとグレートモンキーはギルスの前で何やらポーズを取り始めた。


「えっ何?、今から?」


「あの高速の上で」


『ヒャッハーするけど』


「一緒に楽しまないかい?」


「・・・、ヒャッハーってどう言う意味・・・、あっ!」


グレートモンキーはポーズを取り終えると岩山の上から降り始めた、そして高速道路の方に向かって行く。


「アリシア!、ヒャッハーの意味って!」


「ええ!、高速を走ってる車を襲うって意味ね、止めなきゃ!」


『その・・・、彼のポーズ的に私、仲間だと思われてるみたいなのですが・・・、心外なのですが・・・、ですのでオーナー彼への抗議声明を考えたいので、暫くお待ちを』


「そんなの移動している間に考えなさい!、メア!、乗って!、飛ばすわよ!」


「はい!」


抗議声明を考えたいと言うギルを無視し、アリシアは操縦桿を前に押した、するとギルスは走り始め、岩山の斜面を滑って降り始める。


「待ちなさい!」


激しく揺れるコクピット内、アリシアはその中で前を行くグレートモンキーに照準を合わせビームライフルを放つ。


「キキー!?」


本当にギルスを仲間だと思っていたらしいグレートモンキーは驚いた声を上げてビームを避ける、そして急停止すると近くの大きな岩をこちらに向けて投げて来た、攻撃して来るのならすぐに敵として認識するようである。


「アリシア!、避けて!」


「ダメよ!、見て斜面を降り始めてる!、この岩は私達の足を止める為の囮よ!」


『その通りです、ならば!、こんな岩程度!』


「斬って押し通る!」


アリシアは左の操縦桿を二回クリックした、するとギルスは左のサイドアーマーからビームサーベルを抜く、次にアリシアは左操縦桿のトリガーを引く、するとギルスはビームサーベルを振るい、見事大きな岩を斬り裂いてみせた。


「やりましたね!」


「ええ!、でも距離を取られたわ」


『大丈夫です、オーナー、私の加速性能ならばこの程度の距離、簡単に追い付けます!』


「そう、なら信じるわよ!」


再び操縦桿を前に押したアリシアはギルスを数歩走らせてからフットペダルを踏み込む、するとギルスは地面スレスレの高度を滑空し始め、前を行くグレートモンキーを追う。


「よし!詰めた!」


「キャー!」


ギルの言う通りギルスは簡単にグレートモンキーとの距離を詰めてみせた、ギルスに追い付かれたグレートモンキーは尻尾を鞭のように振るう。


『避けて!』


「蹴る!」


アリシアはギルスをしゃがませ、グレートモンキーの横っ腹に蹴りを叩き込ませた、高威力な一撃を喰らったグレートモンキーはよろめくがすぐに立ち直り、両手の爪を鋭く伸ばし、飛び掛かって来る。


アリシアはグレートモンキーの爪を盾で弾き、腹にビームライフルの銃口を合わせる、そして右トリガーを引くが、グレートモンキーは驚異的な動きを見せ、体を回転させると至近距離から発射されたビームを避けた。


「今のを避けるんですかぁ!?」


ビームを避けたグレートモンキーは足払いをして来た、至近距離であり反応しきれなかったアリシアはギルスの足を掬われ、ギルスは背中から倒れた。


「くぅぅ!」


『オーナー!、攻撃が来ます!』


コクピット内を走った衝撃に目を瞑ってしまったアリシアは、ギルの声を聞き慌てて目を開ける、するとグレートモンキーは鋭い爪をギルスの胸に突き立てようとしていた、それを見たアリシアはペダルを踏み込みスラスターを点火させ、ギルスを組み抑えているグレートモンキーごと空に飛び上がった。


「うぉぉ!」


左手に持っていたサーベルをサイドアーマーに戻し、左手でグレートモンキーの腕を掴ませたアリシアは、宙で機体を回転させて勢いを付け、グレートモンキーを地面に叩き付けた。


「ま、回るならそう言って下さい」


「ごめん・・・」


今の動きでメアは頭をコクピットの天井に打ち付けていた、ジトーと見て来る彼女にアリシアは謝る。


「キ、キキー!」


今の攻撃でかなりのダメージを受けたグレートモンキーはフラつきながら立ち上がり、爪をこちらに向ける、そして手招きをする、決着を付けようと言う意味だろう。


「誇り高いお猿さんですね」


「ええ!、でも勝つのは私達よ!」


『はい!、初陣を華々しく終えましょう!』


地面に着地し、腰のウェポンラッチにビームライフルを取り付けてからアリシアは今度は右手でビームサーベルを持たせる、そして操縦桿を前に押しギルスを走らせる、グレートモンキーも爪を掲げギルスを迎え討つ為に走り始めた。


「ハァァァ!」


「キィィィ!」


その瞬間両者は交差する、互いに勝利を確信する両者、ギルスがビームサーベルを取り落す。


「キキッ!、キッ・・・」


ギルスがサーベルを取り落としたのを見て勝利をしたとグレートモンキーが思ったその瞬間、彼は口から血を吹き出し倒れた。


「強かったわ、本当に」


「はい」


『さぁ、お仕事は終わりました、帰りましょう』


アリシアは取り落としたビームサーベルを拾ってから下山をし始める、山から降りて行く一機のファントムをフドーンフォールの岩山は静かに見つめていた。




グレートモンキーに勝利したアリシア達は、フドーンフォールの国道37号線を進み高速道路に向かっている、そこで一軒のスーパーを見付けた。


「あそこで夕食の材料を買って行きませんか?」


「そうね、冷蔵庫の中、ほぼ空だったし」


『ここにはフォトンエネルギースタンドはないのですね・・・』


「何言ってるの、まだまだたっぷりと燃料あるじゃない」


『確かにそうですが、一仕事した後の一杯を飲みたいのですよ』


「もっと減るまではダーメ!」


『そんなぁ・・・』


アリシアにフォトンエネルギーをお預けされしょげるギル、メアはそんなギルを労いマニピュレーターを撫でてあげる、その間にアリシアは駐車場にギルスを停めた。


「よっと、それじゃ暫くお留守番ね、ギル」


『早く帰ってきてください』


「はいはい」


コクピットから飛び降り先にマニピュレーターから降りていたメアと合流したアリシアは店内に入る、そこでとある物を見付ける。


「あっ!、これってフドーンバナナ!」


「お店でも売ってるんですね!、買って行きましょう!」


「うん!、メッシュさんにも買って行こう!」


「おやぁ?、好きな人へのプレゼントですかぁ?」


「あ、あら?、何を言ってるのかしら、優しいこのアリシア様は勿論、シメラやロビーのビ・・・おっちゃん!の分やみんなの分も買って行くわ!」


「照れちゃって、可愛いですねぇ、アリシアも」


「て、照れてないわよ!、最初からみんなの分も買うつもりだったもん!」


「はいはい、分かりましたよー」


頬を真っ赤にするアリシアにはいはいと手を振り、メアはアリシアが言った三人の分やノメッツの分のバナナを籠に入れた。


「だーかーら!、メッシュさんの分だけ買おうとなんてしてないってば!」


「分かりましたって、ならメッシュさんの分を渡すのアリシアに任せますね?」


「えっ?、ムリムリ、メアが渡してよ」


「私は他の人に渡しに行くので、メッシュさんの分はアリシアに任せます」


「わ、私が他の人の分を渡しに行くって」


「もう決めましたからダメですー」


「ちょっとぉ〜!」


この後、アリシアは何とかメアにメッシュにフドーンバナナを渡す役目を代わって貰おうとしたが、メアはヒラリヒラリとアリシアの言葉を流し、夕食の分やその次の日の分の食材を籠の中に入れて行った。



エンジェルズ本部、寮、メッシュの部屋の前


ギルスを操縦し町に戻って来たアリシアはメッシュの部屋の前でモジモジしている。


「掛かりそうですねぇ」


「ありゃ後三十分は掛かりそうだね〜」


「し、シメラさん!?、いつの間に!?」


「さっきの間に」


モジモジしているアリシアを陰から見守るメアは頑張れと友を応援する、メアの応援が通じたのか、遂に勇気を出したアリシアは、ノックをする為に部屋の扉に手を伸ばす、その瞬間部屋のドアが開いた。


「!!」


「う、うぉ!?、アリシア!?、何してんだ?、俺の部屋の前で」


「え、えと、その、これ!、今日ね!フドーンフォールに仕事に行って来たの!、それでこれ!、あげる!」


「お、おう、ありがとな」


「うん!、それじゃ!」


メッシュにバナナを渡したアリシアは、耐え切れなくなったのか、全力疾走でメッシュの部屋から離れて行った、メッシュはそんな彼女を首を傾げながら見送っている。


(うーむ、アリシアは頑張りましたが、メッシュさんのタイミングが悪かったですね、さて、次の手を考えませんと)


(アリシアちゃん、足はやーい〜)


一部始終を見守っていたメアはシメラと共にこの場を離れた。

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