二話
エンジェルズ本部ロビー
「おーいおっちゃーん!いるー?」
「せめて名前で呼べ!」
エンジェルズの朝の日常の一つがこのアリシアとビラスの漫才である、これを見て他のエージェント達は今日も一日頑張るぞと仕事に向かって行く。
「おはようございます、ビラスさん、ボスさんから大型の魔物の討伐依頼を私達に回して貰うと言う話なのですが・・・」
「聞いてるぜ、ほらグレートモンキーの討伐依頼だ、おうクソガキ、お前のファントムでぶっ飛ばしてやんな」
「誰がクソガキよ、私はアリシア様よ、言われなくても私のギルスでぶっ飛ばしてやるわ!、行くわよ!、メア!」
「はい!」
ビラスからグレートモンキーの討伐依頼を受けたアリシアとメアは、エンジェルズのロビーから出て、ファントム倉庫に向かう。
『おはようございます、オーナー』
「!?」
アリシアがギルスに乗り込み、エンジンを起動させようとした時、突然機械音声が聞こえて来て、それに驚いたアリシアはその場で軽く飛んだ。
『その様子だと私の事を聞いていないようですね、私はこのFNL-010ギルスの一般発売仕様のみに搭載されているサポートAIです、ギルとお呼びください』
「そ、そうなんだ、本当にビックリしたわ」
『申し訳ございません、それで?、今日はどちらまでお出掛けですか?』
「西のフドーンフォールにいるグレートモンキーを狩りに行くの」
『西のフドーンフォールですか、分かりました目的地に設定します、それでは行きましょうか、オーナー』
「ええ!、それとこれからよろしく!、ギル!」
『はい!、よろしくお願いします!オーナー!』
(・・・、中々動きませんね・・・?)
中々ギルスが動かない事に首を傾げるメア、コクピットを叩こうと近づいた時、エンジンが起動しこちらも驚きその場で小さく飛んだ。
『申し訳ございません、私のエンジン起動音は少し品がありませんので・・・』
「誰!?」
フドーンフォール
フドーンフォール、沢山の魔物が住む魔物の楽園である、このフドーンフォールの近くには高速道路が走っており、弱い魔物は車の走行音に怯え近付いて来ないのだが、強い魔物はちょっかいを出しに近付いて来るため、定期的な討伐が必要なのである。
「はいはい、料金は1500ゴールドね」
「はぁーい」
その高速道路をギルスでメアをコクピットに乗せ(一般道ではマニピュレーターに人を乗せ走る事を許されているが、高速では禁止されている)せっせと走りフドーンフォールのインターチェンジまでやって来たアリシアは、料金所でハッチを開き、料金である1500ゴールドを払った。
「お嬢ちゃんのファントム、見た事がない機種だねぇ、新型かい?」
「ふふん、そうよこの機体は新型の」
『FNL-010ギルスと申します、あっ私はサポートAIのギルです』
「お、驚いた、最近のファントムは喋るんだねぇ」
「そうよ!」
『喋るのです!』
(最新型のギルだけですけどね、それともう仲良いですね、二人とも)
アリシアとメアはコクピットの中から料金所のおっちゃんに手を振り、ギルは左マニピュレーターを振って手を振り、おっちゃんと別れた。そしてフドーンフォールに入った。
目の前には広大な石の大地で遠くの方には巨大な岩山、周囲を見渡してみると、ファントムを使わずに狩りをしている者達や、アリシアと同じくファントムを使い狩をしている者達がいる。
「あっ、見てメア、コンビニとファントムのフォトンエネルギーの給油所があるわ、お昼ご飯と給油をしてからグレートモンキーを探しに行きましょう」
フォトンとは一般的には魔力と呼ばれているものだ、この世界の人々はフォトンを液体化した、フォトンエネルギーと呼ばれる物を電力に変換して様々な機械に使っている。
「はい、お腹が空いていては戦えませんしね」
『初めてのご飯です!、楽しみです!』
「そうか、ギルにとってはフォトンエネルギーがご飯なのね」
『はい!』
アリシアはギルスの給油と昼食を買う為、コンビニとフォトンエネルギースタンドが併設された施設に向かう、そしてフォトンエネルギースタンドでギルスを片膝立ちさせ、給油ボタンを押し、給油ハッチを開く。
『オーナー、早く!早く!』
「はいはい」
フォトンエネルギースタンドは基本的にセルフサービスである、その為自分で給油口に給油ノズルをセットしなくてはならない、急かすギルの為に急いでコクピットから降りたアリシアは、給油開始ボタンを押してから、給油口に給油ノズルを差し込み固定した。
『あぁ・・・、美味しいです・・・』
(フォトンって美味しんですね)
(飲んでみようかな・・・)
(死にます)
ギルがフォトンエネルギーを美味しく飲んでいる中、アリシアとメアはコンビニに入り、昼食を選ぶ。
「何にします?」
「ハンバーガー」
「好きですね」
「My Soul Food」
「ふふ、私はパスタが好きですよ」
楽しく会話をしながら、アリシアとメアはそれぞれパスタとハンバーガーを手に取り、レジに向かう、そして会計を済ませ、コンビニから出ると、給油を終え、誰かに給油口を締めてもらったらしいギルが手を振りながらズシンズシンと近付いて来た。
「そのね?ギル、自律歩行はやめて・・・」
『おやすみません、余りにフォトンエネルギーが美味しくて興奮してしまいました、以後注意します』
フランクなAIである。
アリシアはコクピットに乗り込み、メアはギルスの左手に乗り、フドーンフォールを進む。
『広くて綺麗ですねぇ、この風景を撮ったスクリーンショットが増えてしまいます、オーナー、このままでは私のデーターベースの保存容量が埋まってしまいそうです、その為、私の保存容量の拡張を進言します』
「その内ね、さてグレートモンキーはここら辺にいるはずよ」
巨大な岩山の手前、ここがグレートモンキーがよく目撃される場所である、アリシア達は周囲を見渡してグレートモンキーを探すがその姿は見えない。
「いませんね、赤毛に黄色い毛とかなり目立つ筈なのですが・・・」
『あの岩山の上にいるのでは?』
「その可能性はあるわね、メア掴まって!、ギル!ちょっと飛ぶわよ!」
『はい!、オーナー!』
「ええ!?、ひゃぁぁ!」
ギルスは足をグッと沈ませしっかりと地面を蹴り、背中と足の裏のスラスターを吹かし飛んだ、その上昇スピードはかなりの物で、あっという間に、フドーンフォールの高い岩山より上の高度にまで達してしまった。
「死ぬかと思ったじゃないですか!、でも見てください!、いました!」
「ええ、山の上にある、何アレ、バナナ?、を食べてるみたいね」
『検索してみたところ、フドーンバナナと言うらしいです、人が食べても美味しいみたいですよ』
「へぇ、なら私達も後で頂くとしましょう!」
アリシアはフットペダルを更に踏み込み、空を滑空しグレートモンキーの元に向かう。




