一話
一回闇に堕ちたキャラがそのままの衣装で活動するの良いよねってキャラが皇帝アリシアです
アルトシャーニア王国、王城、図書室
黒いドレスを着た皇帝アリシアが王城の図書室で調べ物をしている。図書室にいる者達はいつもは鎧を着ているアリシアが。この日はドレスを着ているのを見てリィターニア家の令嬢としてドレスを着る事もあるのだなと勝手に納得していた。
(見つかりそう?)
「ちょっと待って」
皇帝アリシアはシュルツ王の顔を見た時から何かピンと来るものがあった。その為彼自身にとある事を聞く前に図書室でこの国の歴代の王について調べているのだ。
「見つけた・・・」
そして皇帝アリシアは見つける。水彩画で描かれた愛する夫の顔を。この世界のアルムスはこの国にアルトシャーニアの国父として尽力を尽くし一代でこの国の基盤を作った事を尊敬されながら亡くなっていった正に初代王にして最高の王と呼ばれた王であったようだ。つまりシュルツ王はアルムスの子孫である。
「彼の顔を見た時にもしかしてって思ったの、シュルツ王はアルムスの子孫でこの世界の彼は既に亡くなっているんじゃないかって・・・、いざ現実に直面すると、あはは・・・悲しすぎて涙も出ないわね」
(・・・)
アリシアは思うもし自分の体がもう一つあれば皇帝アリシアを抱きしめてあげたのにと。そして同時に彼女をどうやって慰めようかとも考える。
(これしかないわ、ねっ私、私の父さんと母さんに会いたがっていたでしょう?、なら今日会いに行こう!)
「お父さんとお母さんかぁ・・・」
皇帝アリシアはアリシアの記憶の中でいつもアリシアに向けて優しく微笑んでいた二人の姿を思い浮かべる。傷心の皇帝アリシアはその顔を思い浮かべると二人に会い抱きしめて貰いたくなった。
「行く!、会ってみたい!」
(良し!、そうと決まればシロの所にいこー!)
皇帝アリシアは前日のうちにアリシアに案内してもらい把握している道順を通り部屋に戻る。
「お帰りなさいアリシア」
「調べ物終わったの?、・・・、ママの好きな人見つかった?」
アレシアは亡くなっている場合もある為少し申し訳なさそうにアルムスの事について皇帝アリシアに聞いてきた。
「亡くなっていたわ、彼はこの国を作った人みたいでね、尊敬されて亡くなったみたい」
「そうなんだ・・・、ごめんなさい」
「ふふ、なんで謝るのよ」
皇帝アリシアは謝ってきた娘の頬を突く。
「だって聞かない方が良かったもの・・・、ママに悲しい思いをさせちゃった・・・」
「良い子なんだから、ふふ、気にしてないから安心なさい、それよりもこれからオルゴンの町に行ってもう一人の私の両親に会うの、あなたも来ない?」
「行く!、ママが会ってみたいように私のもう一人のパパやママに会ってみたいし!」
「うんそうと決まれば早速行動!、オルゴンの町に行くわよ!」
「はい!」
アリシア達はシロに乗りオルゴンの町に向かう。そしてアリシアは母の口から知る事となるプレミリア家の真実を・・・。
オルゴンの町、リィターニア家庭
黒いドレスをなびかせ皇帝アリシアは屋敷の庭にシロを降り立たせた。そしてアレシアの手を引きシロから降りる。
「お帰りなさいませアリシアお嬢様、・・・ドレスを着ているとは珍しいですね?、しかも・・・そっくりさんが増えてる・・・」
屋敷にいた頃のアリシアはメイド達が用意したドレスを着るのを嫌がり母にお小遣いを貰うと自分でそこら辺の町娘達が着ているような服を買って来て着ていた。ドレスは動きにくく嫌いなのだ。その為ドレスを着ている目の前の令嬢を見てメイドは不思議に思いそしてそっくりさんがもう一人増えているのに驚く。
「あはは、これにはちょっと込み入った理由が・・・」
皇帝アリシアが自分はアリシアとは別人とメイドに説明しようとした所で屋敷の中から飛び出して来た人影に皇帝アリシアは抱きしめられる。
「お帰りなさーい!!アリシア!、寂しかったわよ・・・、あなた・・・アリシアじゃないわね?」
アリシアを抱きしめたのはアイリスだったそして彼女は即メイドが感じなかった自分の娘への違和感を感じる。感じた理由は娘の雰囲気の違いだ。アリシアはどこか気の抜けた雰囲気があるが今抱きしめたアリシアからは凛とした雰囲気を感じるのだ。
「ご名答です、私はアリシア・レイティス、もう一人のあなたの娘よ」
皇帝アリシアはすぐに自分は別人だと説明しアリシアと体の主導権を変わる。
「今度こそ間違いなく私の娘だわ、それで?どう言う事?」
「ちゃんと説明するから家の中に入ろう?」
「分かったわ、お茶をお願い」
「はいアイリス様」
母を伴ったアリシアはメアとアレシアと共に家の中に入って行く。
リィターニア家、談話室
「オーグルが言っていた滅びた世界の私の娘がさっきのドレスを着たアリシアって事ね?、そしてそこにいるアレシアがそのもう一人のあなたが産むはずだった子供の魂と同じ魂を持っていると」
「そう言う事、流石母さん理解力が高くて助かるわ」
「そう言う事ならもう一人のあなたも私の娘でアレシアは私の孫よ、もう一人のアリシア?、ちょっと出て来なさい」
「え、ええ」
アイリスに呼ばれた皇帝アリシアは少し戸惑った様子で表に出て来る。するとアイリスは皇帝アリシアを抱きしめる。
「さっきはごめんね?、あんな態度を取っちゃって、それに前の世界では辛い思いをしたのね?、もう一人の私の代わりに謝るわ、あなたの側にいれなくてごめんなさい」
アイリスは目の端に涙を溜めつつもう一人の自分の代わりに皇帝アリシアに謝る。
「いいの、こうやってあなたに抱きしめて貰えただけで報われた気がするから・・・、この世界では死なずに生きていてくれてありがとう・・・」
「ふふ、これからはたっぷりとあなたも愛してあげる、覚悟しなさいな」
「うん、これからよろしく、お母さん」
「ええ、よろしく」
アイリスは涙を流す皇帝アリシアを強く抱きしめてから離れアレシアに近付く。
「そしてあなたがアレシア、まさかこの歳でこんなに大きな孫が出来るとは思ってなかったわ、あなたもこれからよろしくね?、アリシアは仕事で忙しいから中々帰ってこれないでしょうけど、あなたは城に住まうのならいつでも来れるでしょう?、だからいつでもいらっしゃいな」
「うん!、ママにシロを借りて時間がある時はここに来るね」
「待ってます」
アイリスはアレシアの髪を撫でると椅子に座りなおす。
「さて、それじゃ何のお話をしましょうか?」
話好きなアイリスは何の話をしようかと三人の少女に聞く。
「なら・・・母さんに聞きたかったことがあるの」
皇帝アリシアからアリシアに変わり母に話しかける。
「なぁに?」
「プレミリア家のこと、そして私にも流れてるバトルシアの血の事よ」
「・・・プレミリカに行った時点で知って帰って来ると思っていたけど、どこまで知ったの?」
アイリスは柔らかな表情から暗い表情に変わりアリシアがどこまで知ったのかを聞く。
「プレミリカ王国にプレミリアって分家があったって事までよ」
「そう、いずれあなたには話さないといけないと思っていた事よ、話すわ、私達プレミリアの歴史を」
アリシアは今まで見た事がない母の暗い表情にゴクリと生唾を飲む。
「プレミリアがプレミリアを出たのは五百年前、その理由は突然当時の一族の長がバトルシアの血に目覚め、バトルシアの血に目覚める事により突然強大な力を得て暴走してしまった長が一つの町を滅ぼす大殺戮を起こしてしまったからなの・・・」
「・・・」
アリシアは自分の血に流れる罪の歴史に驚く。
「そして大殺戮を起こしてしまった当時の長はその事を恥じ自害した、残された家族はプレミリカにいるわけにもいかずアルトシャーニアにやって来た、そして新たな長は新たな土地で王の信頼を得れる程まで名声を上げ、今の私達に至ると言う訳よ」
「・・・父さんにそれ話したの?」
「・・・話してない、あなたの話を聞くにプレミリカの王にすら語り付かれていないプレミリアの歴史なんて、あの人に話せるわけがないでしょう?」
「・・・」
夫に隠し事をしている負い目があるアイリスの暗い表情を見てアリシアは母の手を握る。
「父さんなら大丈夫だよ母さん、そんな事で母さんを見捨てたりなんてしないわ?、だから話す勇気が持てた時で良い、父さんへの隠し事を無くしてね?」
「ええ、ありがとうアリシア、いつか話すわ」
誰かに隠し事を話せただけで気は随分と楽になる物。アイリスは少しだけ救われた表情で娘に微笑みかけた。
「ねぇ母さんにもバトルシアの紋章はないのよね?」
「ええあくまでも五百年前の長がその血に急に目覚めただけで、私を含む歴代の長達やその兄弟達にも紋章が現れる事はなかったわ」
「・・・もしだよ?、私が目覚めたら私はどうなるのかしら?」
目覚めれば強大な力を得る代わりに暴走し大殺戮をしてしまうバトルシアの血が怖くなったアリシアは自分が目覚めた場合どうなるのか聞く。
「突然己の力が膨れ上がるわけですもの、それにバトルシアの血を持つ者は戦闘民族と呼ばれる程高い闘争本能を持っている、目覚めた場合あなたも暴走してしまうでしょうね」
「・・・そう」
アリシアは母の言葉を聞いて目を伏せる。バトルシアの血が目覚めればDIVAの戦いが楽になるかもなどと安易な事を考えていた自分が恥ずかしくなったアリシアは出来れば血が目覚めて欲しくないと思い直す。
「そしてアレシア、あなたも同じく王家の血を持つ者、よって血に目覚める可能性は高い、注意しなさい」
「分かった」
アレシアはアイリスの言葉を聞き力強く頷く。
「さて、それでは何か楽しい話をしましょう、グレイとは上手く行ってる?」
「なっ!?いきなり!?」
この後アリシアは母に夜の体験を全て話させられた。
ナイリアーノ帝国、皇帝の部屋
ラフォリアは皇帝に呼ばれ彼の部屋にやって来ていた。
「先のお前の失態、アルトシャーニアの聖騎士が原因と聞いた」
「はい・・・、私の力を持ってしても討ち切れない将来性のある少女です」
「うむ、アレシア・プレミリカを私は欲していたが、お前を失態に追い込む程のその少女に私は興味を持った、それにその少女にはプレミリカ王家の血が流れていると言うではないか、我等ナイリアーノに相応しい闘争本能に満ち溢れた血が」
「・・・陛下?、まさか・・・」
「うむ、私はアリシア・リィターニアが欲しい、今すぐアルトシャーニアに向かいこの女をここに連れて来い、私がバトルシアの血に目覚めさせ私が戦闘民族の血を持つ者ですら飼い慣らして見せよう」
世界を全て己の物にすると言う欲望に満ちた目を見せる皇帝はラフォリアにアリシアを連れてくるように言った。
「承知致しました、このヴェアヴォルフの長ラフォリアが陛下がご所望のアリシア・リィターニアを必ずここに連れて来るとお約束致しましょう」
「ククク、頼んだぞ、ラフォリアよ」
「ハッ!」
皇帝に臣下の礼をしたラフォリアは黒い鎧に付けられたマントを揺らし部屋から出て行く。
ヴェアヴォルフ隊の宿舎
「エリシア、キース、ついて来なさい、任務です」
ヴェアヴォルフ隊の宿舎に戻ったラフォリアは早速部下について来るよう命令をした。
「なんの任務だい?」
「いつも通り戦力増強の為の人攫いですよ」
「今回は誰がターゲットだ?」
エリシアが今回のターゲットについて聞く。
「十五人目の聖騎士でありバトルシアの血を持つ者、アリシア・リィターニアです」
そう言ってラフォリアは机の上にアリシアの顔写真を置く。
「・・・我々を二度も失態させたこの女を仲間に引き入れるのですか?」
「陛下は世界を手に入れる為なら敵ですら引き入れ己の戦力とすると言う考えを持ったお方です、ならば臣下である我々もその考えに同調するまでですよ」
「それもそうだ、俺達は陛下に忠誠を誓ってる、ならば陛下の考えは俺達の考えさ、エリシアお前は不満だろうが我慢しろよ?」
「チッ、分かっている」
エリシアはそっぽを向き舌打ちをしてから手を差し出すアルトシャーニアには転移で行くはずならばラフォリアの手を掴み転移をするはずなので手を差し出したのだ。
「ふふ、それでは行きましょうか」
バトルシアの血に目覚めたくないそう思うアリシアの血を目覚めさせようと画策する者達がアルトシャーニアに向けて転移した。アリシアは果たしてナイリアーノの騎士達を退ける事が出来るのだろうか?。
アリシアはヒーローでありヒロインですからねこう言う話もやって来ます。




