九話
シュルツ王の客室
「と言うわけで、私の中にもう一人私がいるって事を覚えておいて下さいね」
金色の鎧を着たアリシアが自身の王にもう一人の自分について説明していた。
「了解した、基本的にはお前のままでこれからも活動するのだろう?」
「はい、基本的にはそうなります」
「了解した、ならば今までと大して変らん」
「ですね、それではアレシアと約束があるので」
アリシアは王に背を向けアレシアの元に向かおうとするが。突然体の中から漆黒の光が溢れ出しアリシアから皇帝アリシアにへと体の主導権が移った。同時に身に纏っていた金色の鎧が消え漆黒のドレスが現れた。
(コラー!、変わるなら変わるって言えー!)
「ごめんごめん、この人と話がしたかったの」
突然肉体の主導権を奪われ驚いたアリシアはプリプリと皇帝アリシアに怒る。頭の中に響くアリシアの声を聞く皇帝アリシアは申し訳なさそうに微笑みつつ謝った。
「お前が皇帝としてのアリシアか」
「ええ、初めまして、シュルツ王」
アリシアはドレスの裾を掴み会釈する。
「それで?、何の話だ?」
「忠告よ、DIVAは強い物凄くね、だからこそ彼に立ち向かうのならばしっかりとした準備がいる、その事を伝えたかったの」
「DIVAに一度負けたお前の言葉だ、説得力がある、お前の忠告を受け入れしっかりとした人員と兵器の開発を取り行おう」
「頼んだわ、その代わり私はメアと共に仲間集めをする、あなたがこれから作る戦力が量だとするのならば、私が作る戦力は質、量と質が合わされば間違いなく最強の軍が出来上がる筈よ」
「うむ、必ずDIVAに打ち勝つぞ!皇帝アリシアよ!」
「ええ!」
戦友として皇帝アリシアとシュルツ王は握手をする。そして金色の鎧を着た姿に戻るとアリシアは王に騎士の礼をしてから部屋から出て行く。
城下町
アリシアとアレシアとメアは前日頓挫した城下町巡りを行なっていた。
「さっ!アレシア!街を案内してね!」
「えっ?無理よ」
「はっ?」
「だって私、お城からこの城下町を眺めていただけですもの、城下町に来たのは昨日が初めて、巡るのは今日が初めてなの」
「あらら・・・」
アレシアに街を案内してもらうつもりだったアリシアはどうしましょと思う。
(行く当てもなく回るのも楽しいんじゃない?)
「そうね」
アリシアがうーむと悩んでいると皇帝アリシアが声を掛けてきた。アリシアはその意見に同調した確かに行く当てなく街を巡るのも楽しそうだ。
「良し!、なら適当にブラブラしてみよう!」
(間違いなくこれは皇帝の方のアリシアの意見ですね)
「おー!」
おーと腕を振り上げるアリシアとアレシアは街を見ながら歩き始める。メアはアリシアの言葉が皇帝アリシアの意見だろうと思う。
「見て見て!ママ!、シュークリーム屋さんだって!、食べてみたい!」
少し歩いた所にシュークリーム屋があったアレシアは食べてみたいと言う。アリシアは即座に買いに行きアレシアとついでにメアに渡す。
「おいしー!」
パクリと一口シュークリームを食べたアレシアは頬に手を当ててシュークリームの美味しさに感動する。
「可愛い」
(うちの子最高)
それを見た二人のアリシアは見事な親バカっぷりを発揮した。
「アリシア、服見ませんか?、あなたいつもその鎧ばかり着てるでしょう?、たまには女の子らしい服を着ましょうよ」
「んー?、まぁ良いけど、アレシアの服も選んであげたいし」
(そうよね!娘の服を選ぶのって母親としてとても楽しい事よね!)
「そうと決まればゴー!です、目指せ服屋さん!」
「「ゴー!」」
ゴー!と、楽しそうに腕を上げる三人はシュークリームを食べつつ街を歩き服屋を探す。
服屋
「流行りはワンピースか、良いわね」
「着こなしが簡単ですしね」
「ドレスしか着たこと無いから着こなしの違いが分かりません、教えて下さい」
「んー、これは自分で色々と服を買って自分でセンスを身に付けるものだからなぁ、これは教えれないかな、だから娘よ自分で服を選んでみなさい、私も選んであげるけども!」
アリシアは敬礼しながらアレシアに服を自分で選んで見ろと言う。
「自分でか・・・、分かった!やってみる!」
母の言葉を聞いたアレシアは服を選び始めた。アリシアもアレシアの服をメアは自分とアリシアに似合いそうな服を選び始めた。
「ママ、これどうかな?」
「早っ!、どれどれ?」
服を選び始めて五秒でアレシアは選んだ服を見せに来た。アレシアが選んだのは青いワンピースだ。
「オッケー!」
(最高に可愛いわ!)
「本当!?、私ってセンス良いのかしら?」
「そりゃあもう!」
(最高のセンスよ!アレシア!!)
「・・・」
メアは親子の会話を聞いて思う。アリシアはアレシアが選んだ服ならなんでも最高と言うのだろうなと。
「もっともっと持ってくるからねー!」
「うん!、ドンと掛かって来なさい!」
アレシアはアリシアが持つ籠の中にワンピースを入れると服を選びに戻って行く。
「全くアレシアが可愛いからってなんでも可愛いって言うのはちょっと違いますよ?」
メアがアリシアに近付き選んだ服を合わせながら親馬鹿っぷりを注意する。
「本当に似合ってたんだから仕方ない、しかもこれでも似合ってないなら似合ってないって言う理性は多分ある!、私が娘に似合ってない服を着て街を歩かせたりなんてするわけないでしょ?」
「わー!なんて説得力がある言葉なんでしょう!」
「でしょう?」
(これは暫くは親馬鹿が収まりそうにないですね・・・)
この後もアリシアは親馬鹿服選びを続ける。
アリシアは赤いチェックのブラウスに黒いスカートにブーツ。メアは黄色いシャツにジーンズ、アレシアは母に一番最初に褒めてもらった青いワンピースを着て街を歩いている。
「パレードやってるね」
「メイド達が言ってたわ、有名な旅団が来てるんだって、確か・・・グランブルパレードだったかしら」
「折角だし見ていきましょう」
「そうね」
アリシア達は人混みの中に入りパレードを見始める。パレードの内容は最初は着ぐるみ達のダンス。次に動物達の芸、最後は演者達による様々な芸だった。
「ま、ママ!?、け、剣を飲み込んでるわ!?、あの人の体どうなってるのかしら・・・」
アレシアは剣を飲み込む芸を見て驚きアリシアの腕に抱き着く。
「大丈夫、大抵斬れない剣を使ってるから」
「そ、そうなの?、なら安心、きゃっ!?今度は炎を吐いたわ!?」
「あー可愛い、パレード見て大正解」
(ですよねー)
演者達の演技を見て逐一驚くアレシアを見て二人のアリシアは満足気な顔だ。
「さっ、帰る前に写真を撮ろう」
「うん!」
「ふふ、あの人にとって貰いましょう」
三人は通行人に頼みパレードの前で写真を撮る。その写真は三人に輝かしい笑顔をいつまでも写し続ける。
楽しい思い出をアリシア達が作る中、ナイリアーノのスパイ達が動き始めようとしていた。
「今日の夜決行する、準備はいいな?」
「ああ」
アリシアの娘アレシアに確実に危機が迫っている。アリシアは果たして大切な娘を守りきる事が出来るのだろうか。




