八話、あなたを絶対に一人にしない
白と黒の世界
プラスの襲撃を受けたアリシア達は更なる攻撃の可能性を考えこの日は城下町を回るのを諦め城に戻っていた。その代わりアリシアは甘えたがるアレシアをたっぷりと甘えさせてやり夜は一緒のベッドで眠った。
「ここは・・・?」
気付けば中心地で白と黒に分かれている世界にアリシアは白いドレスを身に纏って立っていた。白い世界にはこれまでアリシアが体験して来た様々な思い出がビジョンとして浮かんでいる。
「来たのね」
アリシアが辺りを見渡していると背後から声がする。振り返るとそこには紅い目をした自分がいた。
「あなたがいるって事はここは私の中か」
「そう、ここはあなたの精神世界、私が入った事によりあなたの領域である白の世界と私の領域である黒の世界に分かれたみたい」
「私の頭の中で不思議現象が起こってるの凄く怖いのですが・・・」
「死んでないし大丈夫大丈夫」
「ほんとー?」
あっけらかんと言った表情をしている皇帝アリシアの顔をアリシアはおりゃおりゃと突く。
「こらっ!くすぐったいでしょ?やめなさい」
「やー、あなたの柔らかい頬もっと突くのー」
「ほほーう?、ならやり返してやる!」
突然始まったアリシア同士の頬の突き合い。もし現実でやっていれば自分同士で何やってるんですかとメアの手痛いツッコミが入っていただろうがここにはメアがいない為二人は思う存分自分同士で戯れ合う。
「はいはい!やめやめ!、キリがない!」
「ええー、ノってくれたの嬉しかったのになぁ」
このままでは永遠と続きそうな突き合いを皇帝アリシアが無理矢理に切り上げる。対するアリシアは口を尖らせ不満気な表情を見せたが突くのはやめた。
「座りましょうか、そして話をしましょう?」
「ええ」
座りたいそう二人が思うとベンチが現れた二人は腰掛ける。
「あなたの世界は何もないんだね・・・」
元々は白い風景であったであった皇帝アリシアの領域黒の世界にはアリシアの白の世界のようにビジョンが浮かんでおらず殺風景だ。
「私にはあなたのように楽しい思い出なんてないもの・・・」
皇帝アリシアは悲しそうな顔で俯く。
「私にはあなたのように親がいない、私にはあなたのようにいつもすぐ側にいてくれる人なんていなかった、私には・・・あなたのように本当に叶えたい夢なんてなかった・・・、私・・・私には・・・」
ないないないと言い続ける皇帝アリシアその目からはポロポロと涙が零れ落ちる。それを見たアリシアは優しく抱きしめた。
「あなたの人生は私にとって理想なの、幸せで家族に囲まれていて恋人もいて夢も叶えて・・・、私もあなたのようにありたかった・・・、でも・・・私には無理だった、大人達に歪められたせいで・・・」
「・・・あなたのお父さんとお母さんを殺した人達の事?」
「そう、あいつらのせいで私は!私はあなたのように生きる事が出来ななかった!、私は普通に生きたかったのに!普通が良かったのに!、あいつらが歪めたから!、だから復讐をした!全員殺してやった!、ふふふ!あははは!!」
狂ったかのように泣きながら笑う皇帝アリシア。アリシアにはその姿が幼い子供にしか見えなかった。アリシアは思う皇帝アリシアの精神は大人達に歪められたせいで成長する事が出来なかったのだろうと。
「あなたは許してくれるよね??私がやった事何も悪くないよね?、だってあいつらが悪いんだもん!、私に殺されて当然だもん!」
皇帝アリシアはアリシアに許しを乞いそして自分は悪くないと言った。その言葉を聞いてアリシアは皇帝アリシアから離れ腕を振りかぶる。そして思いっきり殴った。
「許しもしないし人を殺した時点でアンタも悪いに決まってんだろ、何言ってんだ」
「ッ!」
自分自身なら許してくれるそう思っていた皇帝アリシアは信じられないと言った顔を見せた。
「先に言っておくわよ?、アンタの世界は私には私はいないだから私にはアンタの罪は問えない、でもな?、この世界で何か悪い事をしてみろ、私は聖騎士としてアンタをこの精神世界で殺す!、そのつもりでこれからを生きていけ!、アリシア・レイティス!、それが私と体を共にする条件だ!」
アリシアは皇帝アリシアの胸ぐらを掴み叫んだ。
「なんで許してくれないの?、同じ私なのに・・・、なんで・・・なんで・・・、あなたなら許してくれるって思ってたのに・・・」
「私は聖騎士、悪事を許したりはしない、だから同じ私であるアンタの罪も絶対に許さない!、その代わり・・・」
アリシアはここで厳しい表情から優しい表情に顔を変える。
「私達はこれから長い時を生きる、だから一緒に罪を償う方法を考えよう?、あなたが言っている事はさ?、罪から逃げようとしているのと一緒なんだよ、私が怒ったのはそれが許せないからなの」
「私、沢山の人を殺したのよ?、そんな重すぎる罪と向き合うなんて・・・、怖い・・・」
「そうだね、一人なら怖いさ、でも」
アリシアは再び皇帝アリシアを抱きしめる。
「これからは私があなたと永遠に一緒にいる、あなたを絶対に一人にしない!!、・・・だからさあなたはもう一人じゃないんだよ?」
「本当?、本当にずっと私と一緒にいてくれる?」
「うん、約束する」
子供のようにアリシアにその言葉が本当かどうか聞いてくる皇帝アリシア。アリシアは彼女に向けて太陽のように笑い約束すると告げた。
「うう・・・、うわぁぁぁん!!」
アリシアの言葉を聞き今まで押さえ付けていた物が決壊した皇帝アリシアはアリシアの胸に顔を埋めると泣き始めた。その涙は闇に染まり切った心が救われた証拠であった。皇帝アリシアの心はもう一人の自分と言う太陽に照らされて浄化されたのである。
「よしよし」
アリシアは母性を発揮し泣き続ける皇帝アリシアをあやし続けた。
「忘れなさい!」
泣き止んだ皇帝アリシアは泣きまくった事が恥ずかしくなり顔を真っ赤にしアリシアに今の事を忘れろと言う。
「無茶言わないで下さいよ、ここ精神世界の中っすよ?、忘れる方が無理っすよ」
「くっ・・・、ならあなたは覚えても良い!、メアやみんなには言わないでよね!」
「悪い事を二度としないって約束するなら考えてあげよう」
「あー!、この小悪魔め!、良いわよ!約束してやるわよ!、その代わり絶対に話さないでよ!?」
「ふふ、はいはい」
「はいはいってなんだー!?」
「分かった分かった」
「キー!」
アリシアに揶揄われる皇帝アリシアの顔は真っ赤だ。しかし楽しげでもある。
「そ、そう言えば見たわよ!、あなたグレイと付き合ってるのね!」
皇帝アリシアはアリシアに揶揄われた仕返しとしてグレイと付き合っている事について言及する。
「夜してる時はグレイからばかりしてもらって、自分が感じまくって何も出来てないのって恥ずかしくないの?」
最低な仕返しである。
「グレイに触ってもらったりしてもらうの凄く幸せで気持ち良いから恥ずかしくないです」
「開き直りやがった!?」
そして強力な反撃を喰らった。この反撃でアリシアに大ダメージを与える筈だった皇帝アリシアが大ダメージを負う。
「しかもあなたもグレイと付き合うのよ?」
「はっ?、いやいや何を言って・・・」
「だってあなた言ったわよね?、この体はあなたの物だしって、つまりこの体はあなたが私の中にいても私の物、誰と付き合うかの主導権も私の物、おめでとー!自由を手に入れて早々に彼氏できたねー!」
「余計な事言うんじゃなかった・・・」
皇帝アリシアは少し前の自分の発言に後悔しそしてこの世界にいるかどうか分からない強制的に別れることになった夫に心の中で謝る訳がなかった。
「いいえ!これだけは引けないわ!、私が好きなのはアルムスなの!!」
「却下、この体は私の物です」
「結婚もしてたのよ!?」
「関係ない、この体は私の物」
「アレシアがこの世界で産まれたのも結婚してたお陰だし!」
「それは感謝してる、でもこの体は私の物です」
「あーあー!、自分ってウゼー!」
この後皇帝アリシアはアルムスな事が如何に好きか帝国式で演説を胸を張って上を見ながら行ったが。アリシアは皇帝アリシアが上を見ているのを良い事に呼び出した耳栓を耳に付け一言も耳に入れない。
「どう!?アルムスがどれだけカッコいいか分かった!?」
「あっ終わった?」
「コノヤロー!!」
客室
ここは客室、アリシアとメアが眠る予定だった部屋。メアはアリシアがアレシアの部屋に行ってしまった為一人でここで眠っていた。そこに紅い目のアリシアが入ってくる。
「起きてる?、メア?」
時刻は朝の四時頃、いくらなんでも早すぎるが皇帝アリシアは一刻も早くメアに対しとある言葉を伝えたかったのでこの部屋にやって来た。
「んん?、んー起きてますよー」
皇帝アリシアの声を聞いたメアはフラフラと起き上がる。
「おはよう、寝ぼけている所悪いんだけど、あなたに伝えたい言葉があるの、聞いてくれるかしら?」
「勿論」
「私ともう一度、その・・・友達になってくれないかしら?」
アリシアは頬を赤く染めそっぽを向きながらメアに友達になってくれと伝えた。
「!!!、勿論!勿論ですよぉ!アリシア!!、友達になりましょう!!」
この言葉で一気に目が覚めたメアは嬉しすぎて何回か転けながらも皇帝アリシアに近付き彼女を抱きしめた。
「うん、今まで本当にごめん・・・」
「良いのです、今の言葉だけでぜーんぶ許します」
「ありがと」
皇帝アリシアとメアリ。とある路地裏で出会った同じ顔の二人の少女は再び友となった。
これより本当に始まるヒーローに慣れなかった二人がヒーローを目指す物語が。




