六話
ちなみに解放は解放と言うワードが入っていればどんな言葉でも剣は目覚めてくれます。
その為アリシアは気分によって目覚めさせる時の言葉がコロコロ変わります。
プレミリカ王国、王都、鍛錬場
最近やたらと恥ずかしい思いをさせられているアリシアはその主な原因であるメアをチラチラと睨みつつ鍛錬場にやって来る。チラチラとアリシアに睨まれるメアは何故か誇らしげなドヤ顔だ。
「一つ聞くんだけどね?、あなた本当に私をなんだと思ってるの?」
「おもちゃ」
「即答!?しかもおもちゃって!?」
「だってあなた恥ずかしい目に遭った時の反応が可愛いんですよ、だからついついやっちゃいます!!」
「いつか絶対街のど真ん中で恥ずかしい目に遭わせてやる!!」
「うっへっへ、望むところですよぉ〜、後悔しないでくださいねぇ?」
(あっこれやっちゃったかも・・・)
メアに変な戦いを挑んだアリシアは今し方の自分の言葉に後悔する。メアと言う女は容赦なく街中でもアリシアの服をひん剥いて来るだろうそう思うとアリシアはやっちまったと思い焦り始めた。
「い、今のなし!、やっぱなし!」
「ええー?ならアリシアのおっぱいをいつでもどこでも触りますねぇ?」
「それも嫌!」
「なら街中で勝負しましょうよぉ〜」
「あー!こいつウゼー!」
(ふふ、仲良いんだ、あんな風に二人と仲良くなりたい)
ギャーギャーと仲良く騒ぐアリシアとメアを見てアレシアは自分もあんな風に騒げるように二人と仲良くなりたいと思う。
「お騒ぎの所申し訳ないのだけれど鍛錬場に着いたわ、さっ!アリシア、一戦やりましょう!」
「メア!話はまだ終わってないんだからね!、うん!良いよ!アレシアやろう!」
「ええ!」
アリシアとアレシアは同時に剣を抜く。アリシアのエリシャディアが金色なのに対しアレシアの剣は純白だ。メアは怪しげに微笑みつつ戦闘を始めようとしているアリシアを見ている。
「さぁ!今日も行くわよ!エリシャディア!、解放!」
「目覚めなさい!エルスゥーイヤ!、解放!」
アレシアの剣はエルスゥーイヤと言う名のようだ。目覚めさせた途端白い光が眩く輝き剣がブゥゥンと白い膜に覆われた。
「この剣の白い膜は魔力の塊、触れただけで斬れちゃうから触れないようにしなさい!」
簡単に言うとアレシアの剣は刀身に魔力を纏うビームサーベルである。ちなみにビームライフル機能もある。
「流石王族の剣、凄い能力ね」
「あなたの剣だってただの剣ではないのでしょう?」
「まぁね、戦いの中で見せてあげる!」
「ふふ!、楽しみ!、それじゃ行くわよ!」
アレシアは腕を上げると刀身からビームを放つ。
「うおお!?、ビーム来たー!?」
アリシアは飛来するビームを見てバックステップを取りながら剣を振るいビームを弾く。
「ほーう・・・、そんな防ぎ方をする人初めて見た、みんな避けるのに」
「弾けるなら弾いた方が安全ですもの!、さぁ今度はこっちから行くわよ!」
アリシアは駆け出しアレシアと剣を合わせる。
(凄いパワー・・・、これがこの世界で有数の実力を持つと言われる聖騎士の力!)
アレシアはこの国のどの騎士よりもパワーがあるアリシアに押し込まれ、たった一度の攻撃でアリシアの方が圧倒的に自分より強いのを理解した。それでも簡単に負けるつもりのないアレシアは刀身に纏われている魔力を解放する。
「おお!?」
刀身から膨れ上がるビームを見たアリシアは慌てて後退する。
「ふふふ、魔力さえあれば私の剣は幾らでもビームを増幅出来るの!、その代わりビームを増幅させればさせるほど魔力消費量が増えちゃうけどね・・・」
「ありがちな欠点ね」
アリシアのウェポンビットも召喚する武器の数が増えれば増えるほどに魔力消費量が増えていく。アリシアの魔力量が100だとすれば10創造すると十分ごとに3の消費となり100創造すると20の消費となり1000だと80の消費となる。
「ええ!、だからこそビームを増幅させた時の魔力量の省エネ化が私の一番の改善点なの!」
「出来ると良いね、それにここにいる間は私も省エネ化について一緒に考えてあげる!」
「えへへ、ありがとう!」
同じ顔をした同じ見た目の二人の少女は会話を終えるとアレシアが先に攻撃を仕掛ける。先程よりも増幅させスピードも上げたビームを放った。
(これは弾けない!、なら!)
アリシアは考えていたこのビームもしかすれば弾き返す事が出来るのでは?と。思い付いたのならば即実行なアリシアは大きな鏡を自身の目の前に創造する。そこにビームが直撃しビームが跳ね返った。
「わわわ!?」
アレシアは跳ね返って来たビームを見て慌てて横に飛び退く。
「ビックリしたぁ、エルスゥーイヤのビームってそんな方法で跳ね返せるんだ」
「思い付いた事を実行してみただけで跳ね返せたのは偶々だけどね」
(戦闘中にも思考を止めないそれはとても難しい事、でもこの人はそれが出来るだから最年少で聖騎士に慣れたんだろうな)
アリシアの強さの一端を感じ多くの事を学べるだろうと思ったアレシアはアリシアに向かって行く。
夜
アリシアとアレシアの立ち合いは最後に何発も放たれるビームを弾きながらアレシアに迫ったアリシアがアレシアの首に剣を突き付ける事でアレシアは降参をしアリシアの勝利に終わった。
現在は夜、アリシアはメアに任務内容を話し、アレシアに今日から暫く一緒のベッドで寝ない?と誘い部屋の中でアレシアの警備をしている。メアは扉の外で同じくこの国の騎士達と共に警備中だ。
「私初めてだなぁ、こうして歳が近い人と一緒に寝るのは」
「楽しい?」
「うん!」
アリシアに楽しいか?と聞かれたアレシアはその答えとしてアリシアに抱き着く。アリシアは見た目が似ている事もありアレシアを妹のように感じ始めていた。実際アリシアが十八歳でアレシアが十六歳であるためアリシアの方が歳上である。
「明日も早いし早く寝てしまいましょうか」
「うん!、色んな事しようね?」
「この聖騎士アリシア、アレシア姫様をたっぷりと楽しませましょうぞ!」
「ふふ、しっかりと務めを果たしなさい」
「ははぁー!」
ふざけ合う二人はクスクスと笑い合う。
暫くアリシアがアレシアの髪を優しく撫でているとアレシアはスースーと幸せそうな寝息を立て始める。その手はしっかりとアリシアの腕を抱きしめている。
「あなたはこれまで寂しい思いをして来た、でもこれからは私とメアがいるからね?」
アリシアは眠るアレシアに優しい言葉をかける。するとアレシアは眠りながら嬉しそうに微笑んだ。
夢の世界
(ここは?)
アリシアは夢の世界にいた。すると目の前に一人の赤ん坊が現れる。その赤ん坊は徐々に成長して行き十歳くらいの背格好になった。
「君は誰?、あれ?このドレスってもう一人の私の・・・」
アリシアは一瞬で成長した赤ん坊に何者か尋ねる。それと同時にもう一人の自分が着ていたドレスを自分が身に纏っているのに気付く。
「私はアレシア、あなたは私の・・・」
今のアレシアと同じ姿に成長した少女は今にも泣き出しそうな顔でアリシアに抱き着いてくる。
「ママだよ・・・」
「!?」
アリシアが自分の母親だと告げたアレシアはアリシアの胸の中で泣き始める。急にアレシアに自分が母だと告げられたアリシアは混乱しつつもアレシアを抱きしめる。
「どういう事?、君は一体・・・」
アリシアは泣き続けるアレシアに言葉の意味を尋ねる。
「ごめんなさい、混乱させてしまったわね、正確には私の魂はもう一人のあなたの娘の物なの」
「!、そっか・・・あの日私のお腹の中にいた子なのね、君は」
「・・・あなたもあの日を知ってるの?」
「うん、夢で体験した事が何度もある、そして君がお腹の中にいるのも感じたよ、生まれ変わって無事にこの世界で産まれることが出来たんだね、良かった・・・」
優しい顔を見せるアリシアはもう一人の自分と夢の中で完全に融合していた事もあり、目の前のアレシアを自身の娘として見ていた。その為強く強くアレシアを抱きしめる。
「・・・本当はもう一人のあなたの娘として産まれたかった」
「そうだね、もう一人の私もあなたを自分で産みたかったと思う、だって私もそう思うから」
「でもね?、こうしてママと同じ魂を持つあなたに会えたそれだけで幸せなの・・・」
「私だって幸せよ?、君に会えて嬉しい」
幸せだと言い合った二人はクスクスと微笑み合う。同じ気持ちを共有している事が嬉しかった。
「この夢が覚めたらあなたはここでの記憶を覚えているのかしら?」
「うん、ママの魔力を受ける事でDIVAの記憶改変が解けたみたいだから、だから私はママの夢の中に来れたの」
アレシアがアリシアの魔力を受けたのは先の立ち合いと抱き合って眠った事の二度だ、この二度の接触でアレシアの中のDIVAの記憶改変が解けたのだ。
「ほうほう、ならばたっぷりと君を愛さなきゃそして、君の本当のママであるもう一人の私を取り戻して、私ともう一人の私で胸焼けするくらいに君を愛してあげよう!」
「ふふ、覚悟してる、だから一緒にもう一人のあなたを取り戻そう!」
「ええ!、それじゃ夢の世界の外で会いましょう」
「うん!、また後でね!、ママ!」
アリシアとアレシアが離れた、その瞬間に夢の世界は白い光に包まれた。
アレシアの部屋
「おはよう、ママ」
「おはよう、アレシア」
現実の世界で会った二人は嬉しそうな顔で抱きしめ合う。
「でも、君にママって呼ばれるのは君のこの世界でのお母さんともう一人の私に悪い気がするなぁ」
「・・・この世界の私のお母様は亡くなってるんだ」
「ごめん・・・」
アレシアの母が亡くなっていると聞いたアリシアはすぐにアレシアに謝る。
「良いの、知らなかったんだしね」
「ありがと、それでさ?、この事王様に話すの?」
「うん、お父様に隠し事をするのは嫌だし」
「分かった、話す時君の側にいてあげる」
「ありがとう、ママ」
アリシアとアレシアは手を繋ぎ合うとベッドから降り部屋から出た、そして王の部屋に入り二人は前の世界の事と前の世界ではもう一人のアリシアから産まれる筈だったと話した。
「そうか・・・、しかし前の世界でのお前はもう一人のアリシア殿の娘であっても、この世界のお前は私と妻の娘だ、その事を忘れないでくれよ?」
「分かってる、お父様も私の大切なお父さんよ」
「なら良い、そしてアリシア殿よ、もう一人のそなたから産まれる事が出来なかったアレシアの魂の為にも必ずもう一人のそなたを取り戻してやってくれ」
「はい、必ずや」
アリシアはドレド王に片膝を着きそして必ずもう一人の自分を取り戻すと改めて誓った。
「そしてそなたがアレシアを娘と呼ぶ事を許可しよう、その代わり絶対にアレシアを守ってくれ」
「分かりました、この聖騎士アリシア、必ずアレシア姫を守り切ってみせます!」
アリシアは立ち上がり騎士の礼を取るとアレシアを守り切ると言い切った。
「最後の頼みだ、アレシアを愛してやってくれ、頼むぞ!!」
「勿論です!」
「うむ!、それでは行くといい、今日は町の観光でもして来たらどうだ?」
「良いですね、行ってきます、行こっかアレシア」
「うん!」
アリシアは最初は妹のように感じ今は自身の娘として認識している少女と共に王の部屋から出た。すると部屋の前にメアが待っていた。
「・・・結婚する前に一応?子持ちになる人初めて見ましたよ」
「グレイにどう言い訳しようかしら・・・」
「い、一緒に考えるわっ!」
グレイに何と言い訳をしようか悩むアリシアにアレシアが抱き着き一緒に言い訳を考えると言う。
「仕方ないから私も考えてあげます」
メアもアレシアの反対側に抱き着き自分も考えると言った。
「流石!私の親友!、心強い!」
「エヘン、です」
親友と娘に囲まれるアリシアは幸せを感じながら街に向かって行く。
???
DIVAの世界、レイティスの名を持つアリシアは下界の監視をするプラスの目を通し今のアリシア達の会話を見ていた。
(あの子が私の娘・・・、くっ!、抱きしめてあげたい!、だからこんな所にはいられない!)
「くっ!、煩いわね!、黙りなさい!」
プラスは騒ぐアリシアを抑え込もうとする、しかしアリシアは収まらない。アレシアを抱きしめる為プラスの中で暴れ始めた。
「くっ!くっ!、急に元気になって!」
プラスは何とか暴れるアリシアを抑え付けようと奮闘する。




