六話、オルボーフVSアリシアとメア
アルトシャーニア国立銀行、金庫
盗賊団のボスと二人の騎士の戦いが始まった。戦闘が始まるなり駆け出したオルボーフはアリシアに向けて剣を振り下ろす。アリシアは落ち着いて剣で受け止めようとするが・・・?。
「!、ダメです!アリシア!、避けて下さい!」
嫌な予感を感じたメアがアリシアに警告をする、信用する相棒の言葉を聞いたアリシアは慌てて横っ跳びに飛んで斬撃を避けた。
「良かったなぁ?嬢ちゃん受け止めてたら死んでたぜ?、俺の剣はただの炎の剣じゃねぇ、敵が持つ剣や鎧を無条件ですり抜けその奥にいる敵を叩き斬る剣だ!」
「!!」
オルボーフの剣の能力を聞いたアリシアとメアは驚く。二人共この様な能力の剣を相手にした事は一度もないのだ。
「どんどん行くぜ!」
オルボーフは次々と斬撃を放って来る、敵の斬撃を避けるしかないアリシアとメアは後手に回る。
(くっ!メアですら苦戦してる!、この男強い!)
アリシアもメアも相手の剣を受け止めて弾き敵の腕を跳ね上げさせる事で隙を作る事が多い、その手が使えないオルボーフにはどうしても苦戦してしまう。
「ハハハ!どうしたどうしたぁ!?、この程度かよ!?聖騎士様がよぉ!」
「このぉ!」
アリシアが一気に前に出てオルボーフの懐に潜り込むと突きを放つ。
しかしアリシアの攻撃は正にオルボーフの狙い通りであった、オルボーフは身を捩りアリシアの突きを避けると剣を逆手に持ち替え振り下ろす。
「くっ!?」
「ごめんなさい!」
アリシアの背中に剣が触れる前にメアがアリシアを蹴り飛ばし、鎧を通過し背中に剣が突き刺さるのを防いだ。
「物凄く痛かったのですが・・・」
メアに蹴り飛ばされ吹っ飛び地面をゴロゴロと転がったアリシアは文句を言う。
「あの剣が当たってたら死んでましたよ?寧ろ感謝して欲しいです」
「・・・ありがと」
「素直でよろしい、さて、彼をどう倒します?、外ならブラスターを使い遠距離で仕留める事が出来ますが、ここは室内、そしてこの国の心臓である紙幣や金塊があります、派手な攻撃は出来ませんよ?」
「剣も飛ばせないわね、外れて金塊や紙幣にぶつかったらそれだけでもダメ、でも見てみなさい?メア?、天井ならどうかしら?」
アリシアが天井を指差す、それを見てメアはハッとした顔をする。
「流石ですアリシア!、確かに天井なら金塊も紙幣もない!、ここは私に任せて!」
メアは駆け出しオルボーフに迫る。オルボーフは近付いてきたメアに横振りの斬撃を振るうがメアはしゃがんで避けオルボーフの首を掴むと天井に向けて飛んだ、そしてオルボーフごと天井を突き破り野外に脱出し回転しつつオルボーフを屋根に叩き付けた。
「あなたこそ流石よ!」
追って宙に召喚した剣を踏み台にしてメアを追って来たアリシアは、オルボーフに剣を飛ばす。
「くっ!?」
オルボーフは迫る剣を焦った顔で避ける。
「やっぱりね、剣や鎧を無条件で通過するって事は、飛んで来る剣を弾く事が出来ずあなたに突き刺さるって事!、つまりさっきまでとは立場が逆転したって事よ!」
金庫ではオルボーフの攻め一辺倒だったが、今度はアリシアがオルボーフを攻め立てる。アリシアが飛ばした剣を防ぐ事が出来ないオルボーフは必死になって避ける。
「前にばっかり集中してて良いのですか?、後ろからの攻撃もありますよ!」
走ってオルボーフの背後に回っていたメアがオルボーフの背中を斬り裂く。
「チィィ!調子に乗んなよ!ガキどもが!」
室外が不利なら室内に戻れば良い、そう判断したオルボーフはメアが開けた穴に向けて走って行く。
「させないわよ!、エリシャストライク!」
ブゥンと言うか音と共に放たれるエリシャストライクがオルボーフが穴に入る前に彼を捉えた。強力な突き攻撃を喰らった男は屋根の上から落ちアリシアと増援要請を受け駆け付けた騎士達の前に落ちる。
「ほほう?、蕾だと思っていたがこの剣に勝ってみせるとは・・・、既に開花した小さな花だったらしい」
騎士達と共に国立銀行にやって来ていたオデッセルスは剣士であるならばとにかく不利な能力を持つオルボーフに勝ったアリシアとメアを小さな花と評した。
「さて騎士達よ、彼女達二人が倒した盗賊達を捕らえろ、一人も逃すな」
「「はっ!」」
オデッセルスの命を受けた騎士達は入って行きアリシアとメアが倒した盗賊達を拘束していく。
王室
「無茶をしたなお前達、だか良くやった聖騎士の名に恥じぬ活躍と言えよう」
オデッセルスの報告を聞いた王はたった二人で国立銀行を救ったアリシアとメアを褒める。
「お褒め頂き光栄です」
アリシアはビシッ!と騎士の礼をし王の労いの言葉に応えた。
「うむ、それでは今日は疲れただろう?、もう休め、ククッ彼氏の所にでも行って来たらどうだ?、アリシアよ」
王はアリシアを揶揄う。それを聞いたアリシアはプイッとそっぽを向く。実際この後グレイの元に甘えに行く予定だったので思いっきり図星を突かれていたのだ、なのでそっぽを向いたのは必死の抵抗である。
「分かりやすい奴だ」
アリシアの反応からこの後の彼女の予定を察した王はクスクスと笑う。王に笑われ顔を真っ赤に染めたアリシアはメアを置いてそそくさと王室から逃げて行く。
「でもあの分かりやすくて可愛い所がアリシアのいい所なんですよ」
「そうだな」
十中八九グレイの元に向かったアリシアを追いかけず。自室である側付きの部屋に戻って行く。
夜
「やっ、グレイ」
ガチャっと扉を開けアリシアがグレイが泊まる客室に入って来た。
「おう」
何かのカタログを見ていたグレイは慌ててそれを鞄の中に突っ込む。
「なぁに?それ」
「なんでもねぇよ」
「ええー?、ならなんであんな慌てて隠したのよ?、あんな慌てて隠した時点で何でもないわけがないわ?」
アリシアはグレイに抱き着いて甘えつつグレイが隠したカタログについて聞く。
「後のお楽しみだ」
「えー?いいじゃない教えてよ?」
「だめだ」
「ムー」
彼氏の隠し事が不満なアリシアは拗ねた顔を見せ頬を膨らませる。
「・・・」
「んん!?」
このままだといつまでも聞かれ続け最後には喋ってしまいそうだと思ったグレイはアリシアを押し倒すと唇を奪う。いきなりのキスに驚いたアリシアは足をジタバタさせるがすぐに大人しくなる。
「あなたはどこまで私の心を奪うつもりかしら?、今のはかなり効いたわ、凄く効いたわ」
「全部だ、オーグルさんにお前の全部を手に入れろって言われたしな」
「あーもう!、大好き!、愛してる!」
グレイにならば己の全てを捧げても良いと思うアリシアは彼を押し倒しキスをする。




