三話
シームシの家
シームシの機嫌が直った所でアリシアとメアは今度は真面目に彼女と会話をする。
「それで?聖騎士様が一体何の用かしら?」
「さっきも言った通りウルボ・・・オルボーフ盗賊団について聞きに来たの、何か情報はないかしら?」
「コマ好きなのねー面白いもんねー、・・・そうね、あるっちゃあるわよ?、彼等が潜んでいるかもしれない場所についての情報がね?」
「流石情報屋さんです!、昨晩の事なのにもう情報を得ているのですか!」
「ふふん、私はこの街一番の情報屋ですもの、これくらい出来て当たり前なの」
メアの言葉を聞きシームシはふふんと大きな胸を張る。メアはまたその大きな胸に殺意を送るが一々ツッコミを入れると話が進まないのを理解したシームシは無視する。無視されてムカっと来たメアはそぉーとアリシアの胸に手を伸ばすがアリシアはスススとスライドしメアの手から逃げる。
「チッ」
「私の胸はおもちゃじゃないわよメア」
「チッ」
「・・・、それで情報を買うの?、30万ゴールドになるけど」
「高っ!?」
30万ゴールド、メアが側付きになった時に貰ったお金が1万ゴールドなのでそこそこの大金である。しかし情報屋は危険を犯して情報を得る仕事である為この位の料金はどこの情報屋でも当たり前の料金なのである。
「良いわ、払う」
アリシアはスッと財布を出しスッと払う、ちなみにこの世界のゴールドは紙幣である。
(ワーオ、流石お嬢様・・・)
メアはアリシアのお嬢様っぷりに尊敬の眼差しを送った。
「確かに、流石はリィターニア家のお嬢様ね、でも・・・財布にこんな大金入れておくのはやめておきなさい?」
「何で?」
「財布をスられたりしたらどうするの?」
「大丈夫よ、ちょっと剣を飛ばして真横に突き刺してやれば・・・、フフフフフフ」
「そうだったわねー、あなた聖騎士だもんねー、強いもんねー、剣創造出来るもんねー、はぁ・・・」
アリシアの言葉にため息を吐いてからシームシは次の話に移る。
「オルボーフ盗賊団の隠れ家は工業区の西側のトルラ通りの赤い小屋よ、奴等いつも前準備を入念にやるんだけどそれが仇になった訳、聖騎士さんとその側付きさんで一網打尽にしてやりなさい」
「ええ!ええ!まっかせなさい!!、宝石強盗犯はこの聖騎士アリシアと!!」
「その側付き兼親友兼相棒の!!メアリが捕まえてみせます!!」
「さっきまではあんな面倒な喧嘩をしてた癖にすぐ仲直り出来るのね・・・、仲良いわね・・・、ええ!行って来なさい!!、聖騎士アリシアに!側付きメアリ!」
「「おー!!」」
アリシアとメアはおー!と手を振り上げシームシの家から出て行く。
「はぁぁー・・・疲れた・・・、でも・・・ついて行こうかしらね・・・、ちょっと気になる噂もあるし・・・」
アリシアとメアの相手をし疲れ果てているシームシは気になる噂がアリシアとメアが向かう隠れ家にある為、武装をしてから二人を追って家を出る。
西工業区、トルラ通り
アリシアとメア、そしてシームシは工業区を歩きオルボーフ盗賊団の隠れ家の近くまでやって来た。
「あれか」
オルボーフ盗賊団の隠れ家を見たアリシアは、エリシャディアに手をかけ戦士の目になると駆け出そうとするがシームシが引き止める。
「すぐに突入したいだろうけども、ちょっと待って、奴等は一人一人の戦闘能力も高いの、だから無策で突っ込むわけには行かないわ、ここは私に任せなさい」
「分かった」
シームシの言葉を聞いたアリシアは剣から手を離しシームシが何をするのか見る。
「我、求む、透視の目!」
シームシが発動させたのは透視魔法、この魔法によりシームシは壁向こうに何があるのかを見る事が出来るようになるのだ。
「・・・、誰もいない?、やはりね・・・」
「どういう事?」
「あの隠れ家の中を探れば分かるわ、行きましょう」
「?、ええ」
先頭を行くシームシと共にアリシアとメアは隠れ家の中に入る。
「確かに・・・、何の気配もしませんね」
「ええ・・・」
剣士として気配探知に優れるメアとアリシアはすぐにこの隠れ家に誰もいないと気付く。
「こっちよ」
透視魔法を継続しているシームシは透視は魔力消費が多い為やや早足で隠れ家の奥の部屋に入って行く。
「解除っと、ここよ、私の力じゃ動かせないからあなた達で動かしてみて?」
「ええ」
「分かりました」
シームシが指差す先には大きな鉄製の重そうな箱がある。アリシアとメアは二人協力してズズズと箱を押してズラした。すると箱の下に扉があった。
「流石情報屋、優秀な能力を持っているわね」
アリシアとメアだけならばここまで到着するのにかなりの時間がかかった。その為アリシアはシームシを評価する。聖騎士に評価されたシームシはフフンと大きな胸を張る。
「さっ入ってみましょう、あっ私隠密とか暗視とか透視とかそう言う魔法が得意なだけで、戦闘は苦手だからあなた達が前に出てね?」
「了解です」
シームシの言葉にメアが返事をしアリシアが扉を開けると三人は地下に続く梯子を降りて隠れ家の地下に降り立つ。
「暗いわね・・・」
隠れ家の地下は明かりの入らない地下水路だった。この暗さでは敵がどこから来るか分からないのです戦闘に支障がありそうだ。敵も同様ではあるが。
「明かりは点けられないわよ、点けたら敵にここにいまーす!って教えてるのと同じですもの、周囲の警戒は私が暗視魔法でしてあげるからあなた達はとにかく足元に警戒をして進みなさい」
「分かった」
「武器は抜いておきましょう」
アリシアとメアは剣を抜き歩き始める、シームシは暗視魔法を発動させ周囲の警戒をする。
「前方、ネズミ型の魔物がいるわ、こっちに近付いてきてる!、三、二、一、今よ!」
シームシが魔物の接近を目で捉えた、アリシアとメアは彼女の目を信じ暗闇に向けて剣を振るう。すると飛び掛かってきていたのだろう二人の剣は水路ネズミの体を捉え真っ二つに斬り裂いた。
「やるー!、流石騎士様ね!、あっ!奥からもまだまだ来るわ!、お相手よろしくー!」
「任せなさい」
「頼りにしてますよ!」
アリシアとメアは彼女の目を頼りに水路ネズミとの戦いを始めた。




