三話
モルヒェン山脈
「ママ!魔物ですよ!」
「ママはやめろって言ったでしょーが!」
相変わらずアリシアに甘えているメアと押されると弱い自分をどうにかしなきゃと思うアリシアの目の前に多数の狼型の魔物がいた。モルヒェン山脈に住まうモルヒェンウルフだ。
「人と出会うまでは私のママになってくれるって言ったのはアリシアですよぉ?、なら何と呼ばれようが黙ってるのが筋です」
「あーもう、押しに弱い私って全く、本当に全く」
メアはこの会話の合間に指先からビームを飛ばし狼を脅し追い払っていたりする、可哀想な狼達である。
「ほら狼もいなくなったし進むわよ」
「はいママ」
「もう何も言わん」
「それで良いのです!」
「何で偉そうなのかしらこいつ・・・」
正に普段のアリシアとメアが逆転した状況での二人の山登りは続く。雪が降り始め徐々に地面が雪に覆われて行くいつしか深い雪を踏みしめながら歩く事となる。
「物凄く寒いですね、ママは寒くないのですか?」
「慣れた」
「ええ・・・、山を登る当初はあれだけ寒い寒いって言ってたのに・・・、まぁアリシアで暖をとるだけですけども」
そう言ってメアはギューとアリシアに抱き着く。
「歩きにくいんですけどー」
「まぁまぁ」
「魔物来たんですけどー」
「まぁまぁ」
「ドラゴンなんですけどー」
「まぁま・・・、!?」
「ガァァ!」
アリシアとメアの側に現れたドラゴンは冷えたメアの体を温めるブレスを放って来た。
「きゃぁぁぁ!」
メアは慌ててシールドを張りブレスを防ぐ。
「ほら見ろ」
「ふ、ふん!倒せば良いんですよ!倒せば」
「頑張ってねー」
「ちょっ!?いつの間にそんなに遠くに!、もう!」
アリシアはメアが小さな胸を張って倒せば良いんですよと言っている間にそそくさと遠くに退散していた。そして創造した白旗をフリフリと振っている。今回の戦闘はやる気ないですよーのポーズである。
「こんのぉ!」
ドラゴンがメアに向けて噛み付いてくる。剣も抜けていないメアはドラゴンの噛み付きを避け顎を蹴り上げると、華麗に体を回転させながら剣を抜く。
「やる気のないママは放っておいて戦いますよ!ドラゴンさん!、私に喧嘩を売った事今回なさい!」
「ガァァ!」
ドラゴンは再びブレスを放って来る。メアは近付いて来るブレスに向けて剣を振るいブレスを真っ二つに斬り裂く。
「さぁてトドメの!」
「ゼロブレイドたね!」
「!?」
メアの横を通り過ぎた九本の尻尾の持ち主はドラゴンを一撃で仕留めた。
「師匠!」
ドラゴンを仕留めたのは妖狐族の里からやって来た愛理であった。
「ん?、君なんて弟子に取った覚えはないよ?、アルトシャーニアの騎士君」
「やはりですか・・・」
この反応だけで分かる愛理もDIVAの書き換えの影響を受けていると思いメアは落ち込む。
「まぁたすぐに落ち込むんだからこの子は、ほらしゃんとしなさい!、・・・知り合い?」
「はい、前の世界での名は久城愛理、世界を救った事もある魔王様です」
「魔王が世界を救うってどうなってんのよ・・・」
「また勇者なんですよ、あの人」
「あー勇者が魔王になるってよくあるアレね?」
「大体そう言うことです、と思います多分」
「仲良いね君達、そっちの金色の鎧を着た子が聖騎士君だよね?、今日は何の用で来たの?」
背を向けてコソコソ話している二人に愛理は何の用で来たのか聞く。
「とある存在への警告をしに、詳しくはこの手紙に書いてあるわ」
「ふむ、確かに今代の王の印で間違いないです、まぁ聖騎士と言う時点で疑う必要はありませんが」
「うんうん、よく来てくれたね聖騎士の・・・」
「アリシア・リィターニアよ、こっちはメアリ・アルビオン」
「アリシア・・・アリシア?うん、メアリ、メアリ・アルビオン?、・・・!、歓迎するよ!アリシアにメア!、メア君ちょっとこっちに」
愛理はメアを手招きし呼び寄せ、近くの木の陰に入る。
「何でアリシアと君が一緒に?、あのアリシアは?」
「随分と思い出すのが早いですね・・・、流石と言うか手間が省けて助かったと言うか・・・、あのアリシアはこの世界で産まれたアリシア・リィターニアです」
「ふむ、つまりは別人と・・・」
「そうなります、そして私達が知るアリシアもあのアリシアの中にいましたが、プラスと言う存在に吸収されてしまいました・・・」
「・・・私が書き換えられて記憶を失ってるうちに面倒な事になってるようだね、詳しい事は里に行って話そう、ホワイトローズ!ガソリンに浸けてあげるね!」
「なっ!?絶対嫌です!愛理!、私にはワールドセイバーに専門の担当者がいると何度言えば・・・、記憶が戻ったようです、感謝します愛理」
(ガソリンに浸けられたトラウマでもあるのでしょうか・・・)
「良し、次はお婆ちゃんの記憶を戻すか・・・、さてどうしてやろうか・・・」
明日奈の記憶を戻すと宣言した愛理はどうな方法で戻してやろうかとニヤニヤと策を考え始める、尻尾は楽しげにブンブンと揺れている。
「何やらお手軽に記憶が戻ったのね・・・、まぁこんな簡単に戻るのはこの人達だけなんでしょうけども・・・」
「はい・・・、なんせ神様と魔王様ですから・・・、他の人達と比べても規格外な人達なので・・・」
「いきなり凄い人達に出会うものだわ・・・」
策を考え付いたのかポーンと手を叩き愛理はアリシアに近付いて来る。
「さぁて山登りするよ!」
「おー!」
「ノリいいね!流石アリシア!」
「それ程でもあるわ!」
「そこはないって言うところだよ!」
(それ前にやったネタですよアリシア・・・)
愛理と漫才を始めたアリシアをメアは呆れた目で見つめる。暫くワイワイと漫才をしていた二人は寒くなって来たのかブルルと真面目に震え山を登り始める。
妖狐の里、族長の家
「ごめーん!お婆ちゃん!、桜お婆ちゃん怒らせちゃった!今からここに怒りに来るって!」
「なぁにしてんのよ!馬鹿じゃないの!?、早くどうにかしなきゃ!?、・・・!、冗談よね?」
「うん、桜お婆ちゃんがこの世界にいるのかどうかがそもそも不明だし・・・」
「ふぅー・・・、付くならもっとマシな冗談にしなさい・・・、今回は私の記憶を戻す為だから良いけどね?、次やったら私があなたを怒るわよ?」
「分かってる」
「よろしい、・・・私達の記憶が戻ったのはあなた達が来てくれたお陰よ、感謝するわ」
そっくりな見た目の二人がマシンガントークをしていると言う面白い状況をボーと眺めていたアリシアとメアは。いきなり感謝されて驚きつつもいえいえと首を振る。
「この子達がここに来たのはDIVAのことを知らせる為みたいなんだ、でも私達は記憶が戻ってるから説明はいらないよね?、でも別件があってこの子達がついさっきDIVAの仲間に襲われたみたいだよ」
「ええDIVAについての説明はいらないわ、DIVAの仲間について教えてくれる?」
皆に座るよう促した明日奈はDIVAの仲間について聞いて来た。
「DIVAの仲間の名はプラスと言います、私とアリシアの見た目と同じ・・・」
「違うよね、特に胸の所が違うよね・・・イテテテテ!」
「・・・私とアリシアの見た目とお・な・じ子で、髪の色だけが私の金色やアリシアの茶髪と違って白いのです、恐らくは私とアリシア、どちらかの遺伝子を使った・・・」
「間違いなく私の遺伝子だよね、メアの使ったらあんなに胸大きくならないよね、イテテテテ!」
「私の!遺伝子を使った子でしょう!、その子が私達を襲って来て、アリシアの中のレイティスの精神を奪い、闇と雷のスタイルの力を手にしてしまったと言う訳です」
途中途中でアリシアのヤジが飛んだがメアはアリシアを鉄拳制裁しつつ話し終えた。
「つまりアリシアの遺伝子を使った子がアリシアの中にいたレイティスの精神を奪って物凄く強くなってしまったと言う訳か厄介ね・・・」
「うん、アリシアのコピーってだけでも厄介なのにスタイルの力まで使えるなんて・・・、強敵だよ」
「ムー!」
「まぁまぁ」
明日奈と愛理と会話を聞いてメアは頬をプクーと膨らませる。アリシアはそんな彼女を見てまぁまぁと肩を叩く。
「DIVAがどこに隠れているのかは勿論不明よね?」
「はい、そもそも今回の遭遇が初ですから」
「了解、なら私達に出来る事は仲間集めだわ、DIVAが襲って来た時に戦力が無かったら話にならないもの」
「だね、いの一番に見つけるとしたら、メリアさんとラフォリアとスタイル使いのみんなだよね?」
「ええ、彼女達は前の世界でも最強クラスの力を持つ、あの二人と私達三人とスタイル使い達、それにアリシアがプラスからスタイルの力を奪い返せば簡単には負けないでしょう、勝てるかどうかは実際にやってみないと分からないけども」
「プラスはどうあっても倒さなきゃダメって事ね」
「そう言う事」
今後の方針が大分決まった、ならば次は実行するのみだと考えたアリシアはその事を口にしようとする。
「なら早速王に・・・」
「ごめんなさい、ダメなの、ちょっとこの里で問題があってね、あなた達に手伝って欲しいのよ」
「なんですか?」
「窓から外を見なさい」
明日奈が指をさす先そこには真っ黒な雲がある、明らかに何かがいると言った雰囲気である。
「ここに来るまでの道中ドラゴンに会わなかったかしら?、あそこには雷竜と呼ばれるドラゴンがいて理由は分からないけど荒れているの彼が荒れているのに合わせて他のドラゴンも荒れていてね、アリシアとメアであそこに行って彼を静めてくれないかしら?」
「分かりましたやってみます」
「頼むわね?、私達里の者も何回か彼の元に向かっているけど静められなかった、でも里の外から来たあなた達なら静めれるかもしれない、期待しているわ」
「ええ!ええ!、まっかせなさい!、必ず雷竜って奴を静めてみせるわ!」
鎧に手を当てて任せろと言ったアリシア、明日奈はそれを見て頷く。アリシアとメアは族長の家から出て、雷竜の元に向かう。
四人の主人公が揃い踏みな豪華な回でした。




