二話
プラスの精神世界
ここはプラスの脳内の精神世界、リィターニアの名を持つアリシアの中から吸い出されプラスに取り込まれたレイティスの名を持つアリシアは、彼女の精神世界の奥深くに捕らわれていた。
「やぁ?、レイティス、ふふ良い姿だ事」
精神世界の奥深くにプラスが現れる彼女の目の前には十字架に磔にされた黒いドレスを着たアリシアがいる。アリシアはプラスを睨み付ける。
「私を解放しなさい!」
「前の世界で罪を犯しすぎているあなたに自由があると思うの?、そんな物あるわけないじゃない見つけた時点であなたを消さなかったお父様に感謝して欲しいものね?」
「・・・」
アリシアは自身の恨みを晴らすために沢山の人々を殺し確かに罪を犯しすぎている。自由などないと言うプラスの言葉を聞きアリシアは正しいと思ってしまい黙ってしまった。
「さて?私が正しいって理解出来たみたいだし、私にあなたの全てを明け渡してくれる?あなたの力を全部私の物にしてもっとお父様の役に立てたいの」
「ッ!、私の子を消したあいつの為に私の力を使わせるわけないでしょうが!!、絶対にあんたなんかにこれ以上私の力を使わせたりしないわ!」
俯き黙ってしまっていたアリシアはプラスのDIVAの為にアリシアの力を役立てると言う言葉を聞き顔を上げるとこれ以上は使わせないと言い放った。
「ふふ、ここは私の中、引き出せる方法なんていくらでもあるのよ?、例えばこんな感じ」
「?、ああ!?、あああああ!!」
プラスが指を鳴らすとアリシアの体に激しい電流が襲ったその電流を浴びアリシアは悲鳴をあげる。
「ふふふ、苦しいでしょう?、その苦しみから逃れる為にも早く私と一つになりましょう?」
「はぁはぁ・・・、誰がなるものか!」
「ならもう一回ね」
「うぁぁぁぁぁ!!」
プラスによるアリシアへの拷問が始まった。
「奴はどうだ?」
「無駄な抵抗を続けてる、まっ時間をかけて奴を追い詰めて私と完全に同化させるわ」
「フン、リィターニアから奴を吸い出した時点で時間は無限にある、好きなだけ時間を掛けて奴を完全に取り込むと良いさ」
「ええ」
DIVAの言葉に相槌を打ったプラスは目を瞑る再び精神世界に戻って行ったのだろう。
「ククッ、メアリ・アルビオン、レイティスを取り戻せると思ったのに早々に我々に奪われた気分はどうだぁ?、クッククク!フハハハハ!」
DIVAの邪悪な笑い声が無機質な空間に響く。
モルヒェン山脈
「さ、寒いわね・・・」
「だからって私に抱き着かないで下さい」
「やよ、あなた体温高くて抱き着くとあったかいんだもん」
「歩きにくいんです!、離れて下さい!」
「やー!」
モルヒェン山脈をアリシアとメアは登っている。麓はそこまで寒くはなかったのだが、登り始めて三十分ほどで急激に寒くなりブルルと震えたアリシアはメアに抱き着き暖をとっている。
「ねっ、もう一人の私ってどんな人だった?親はいるの?」
離れろーとメアにグイグイと頬を押されているアリシアはメアにレイティスの名を持つ自分について聞いた。
「親はいません、とある人が原因で殺されてしまいました」
「そう・・・」
「両親が殺された結果、アリシアは一人になりました、そして孤独感を感じ続けた結果、世界を恨むようになったんです、でもあなたと一緒でアリシアは優しかった、だから世界を恨んでいてもギリギリで踏み止まっていたんです、そして・・・踏み止まっていたアリシアを闇に堕としたのは私なんです・・・」
「どう言う事?」
アリシアはメアから離れ正面に立ち更に質問する。
「順を追って説明します、私はアルビオン王国と言う国の姫でした、そのアルビオン王国はアトリーヌ帝国という国に滅ぼされ私だけが生き残った、私は国が滅びた日に私を育ててくれたお母さんと一緒になんとか逃げ果せお母さんに育てられました」
「私はお母さんがいたとは言え本当の両親を殺した帝国を憎み続けていました、そして・・・とある町にどこの国にも属していないスタイル使いがいると聞き、帝国への復讐に利用出来ると考え実行に移しました」
「そのスタイル使いがもう一人の?」
「はいあなたです、彼女に近付きふふっ嘘っぱちの友になった私は彼女を利用する為信用されようとし続けました、アリシアは優しいから私の言葉を素直に信じてくれました」
暗い表情のメアは更に話す。
「ある日、私は彼女に全てを話しました、私の復讐の為の兵器になってくれと彼女に伝えたのです、彼女は表面上は私の言葉を受け入れました、でもその裏では私に裏切られたそう思っていたのです」
「それと同時に彼女の元に彼女の姉が現れました、ずっと一人だと思っていた彼女にとって姉という存在はとても大きな存在に見えたのでしょう、彼女は彼女を兵器として利用しようとしていた私に裏切り者と伝え帝国に行ってしまいました」
「それから彼女は変わりました、自分が住んでいた国が私と同じく彼女を兵器として利用しようとしていた事を知り、世界への恨みが隠せなくなり、その心を完全に闇に染めてしまったんです・・・、そして彼女はアトリーヌ帝国の初代皇帝の子孫だった、つまり私が利用しようとしていた女の子が私にとって最大の敵だったのです」
アリシアは俯きながらメアの話を聞いている。
「皇帝となった彼女は世界への恨みを晴らす為の準備を始めました、彼女を兵器として利用しようとした事を後悔した私は彼女ともう一度友達になる為、彼女を止めるのと同時に彼女ともう一度友達になろうとしましたが、彼女は一度も受け入れてはくれませんでした」
「そして準備を終えた彼女は復讐を始めた、その結果ギグルスと言う国だけを残し彼女は両親の仇も殺し、復讐を完遂し掛けた、その時私が一度破壊した筈のDIVAが現れ私の体を奪ったのです、彼女は自分の物となりかけていた世界を失わない為、そしてお腹の中にいた赤ちゃんの為、DIVAに体を奪われた私を取り戻しに来てくれました」
「その結果私の体は奪い返す事が出来ました、でもDIVAはエクストールと言う兵器を新たな依り代とし世界を書き換えた、その寸前に私の師匠と彼女は私だけを守る為に魔力の盾を作ってくれました、そのお陰で私は少し記憶混乱だけで新たに産まれたこの世界に来る事が出来たのです、これが私が知る彼女、アリシア・レイティスです」
語り終えたメアは俯く。メアの話を聞いていたアリシアが動きメアに近付く。殴られる!そう思ったメアは身を震わせたがアリシアはメアを殴らず抱きしめた。
「辛かったね・・・メア」
「・・・なんで優しくするのですか?アリシア、私はもう一人のあなたを裏切った勇者なんて名を名乗れる人間では決して無い存在なのですよ!?」
「そうだねあなたはもう一人の私を裏切ったわ、でもね?あなたはもう一人の私に許されようと向き合い続けた、その結果もう一人の私はあなたを最後に許していたわ」
「なんでそんな事が分かるのですか?」
「夢の中の私はね?もう一人の私と一つになっているの、だからもう一人の私の感情も私の中に流れて来てたんだ、だから言える、あの時の私はあなたを許していた、そして言葉通り私と向き合い続けてくれていたあなたに感謝していたわ、現に私はあなたに優しく笑いかけたはずよ?、覚えてない?、メア?」
今、アリシアは敢えてレイティスの名を持つアリシアとして喋っている、メアを勇気付ける為に。
「はい・・・、あの時のアリシアは私が見たかった笑顔を見せてくれていました・・・」
「ならもう気にするな!、私はあなたを恨んでなんてない!、むしろあなたに感謝してる!、分かった!?」
ドンとアリシアはメアの胸を強く叩く。
「はい!」
「良し!、この事で悩んだら私に相談しなさい!、何度でも元気付けてあげる!、何故なら私はあなたの友達だから!、友達にはいつも笑っていて欲しいからね!」
「ありがとう・・・、アリシア」
「いいって事よ」
アリシアに抱き着くメアは泣き始める、アリシアは涙を流すメアを優しく抱きしめる。
メアはアリシアの腕の中で泣き続ける、その涙を勇気に変える為に。
一時間後メアは泣き止んだアリシアは彼女の顔に笑顔が戻ったのを見てホッと安心する。
「さっきのアリシアお母さんみたいでした」
「・・・おいおいいきなり何を言い出すんだ?、私の相棒は?」
「だってぇ本当にお母さんみたいだったんですもん」
そう言ってメアはアリシアに甘え抱き着く。
「私にはこんなでっかい娘はまだいないぜ?」
「もう一人のあなたにはちっさな子供がいましたよ?、だからあなたもお母さんです」
「それはもう一人の私のことでしょお?、結婚もしてない私を子持ちにするなぁー!」
先程散々泣いた事もあり甘々モードなメアはもっと彼女に甘える為にアリシアを母親にしようとする。
「いいじゃないですかぁ、人に出会うまでは私の母親やって下さいよぉ、さっきはあんなに甘えさせてくれたのにいきなりダメってのはないですよぉ〜」
「もう、仕方ないわねぇ」
「やったぁ!、それじゃアリシアは暫くは私のお母さんですね!」
「はいはい」
押しに弱いアリシアはメアに押し切られ暫くはメアの母親をやる事になった。普段はアリシアがメアに甘えているのにこの日はメアがアリシアに甘えると言う逆の立場になった形である。
「それじゃあ!行きましょう!、ママ!」
「ママはやめて!」
レイティスの名を持つアリシアと同じく、メアも本当の両親を求めておりアリシアが優しくした結果それが表に出てしまい最後には甘々モードになっちゃったと言う回でした。




