十四話
王都、アルトシャルセン、城下町
アリシアとメアが城下町を歩いている。朝、王の元に行った所。特に任せられる任務はないので、城下町の警備でもすればどうだ?と言われたので。二人は素直に従い町の様子を眺めながら城下町を歩いている。
「平和ですね」
「そうだね、でもあなたが言うDIVAがこの世界を襲えばこの平和は無くなっちゃう。だからもしそのDIVAか関係する奴が襲って来たら私は私の全てを持ってこの町やこの国に住む人を守るつもりよ。それが聖騎士となった私の役目だと思うからね」
「私もその時は全力であなたのサポートをします」
「ありがと、頼りにしてるわ、勇者様?」
「フフン、そうです私は勇者です頼りにするのです」
アリシアの言葉を聞き見事なドヤ顔をしたメアは、フフンと小さな胸を張る。
「調子に乗らない」
「あはは、冗談ですよ」
「ふふっ、分かってます」
同じ顔をした少女達は冗談を交えて会話をしながら町を行く。そこにもう一人の同じ顔をした女性が歩いて来た。メイドと共に歩くアリシアの母アイリスだ。
「母さん!」
母の姿を見たアリシアは嬉しそうに駆け出して行き母に抱き着いた。母に抱き着いたアリシアを見てメアは優しく微笑んだ。
「お仕事中?」
「うん!、町の警備中なの」
「頑張りなさい」
アイリスは抱き着いてきたアリシアの髪を撫でつつ、アリシアの背後にいるメアを見る。
「あなたがあの人が言っていたメアリさんね?、この子は私に似て甘えん坊でドジで怖がりだけど、やると決めた事には真っ直ぐと向かって行ける子なの、そんな私の娘をこれからよろしくね?」
「はい、アリシアの事は私にお任せ下さい」
メアは小さな胸に手を当てて任せろと言った。
「頼むわね、休みが来たら二人一緒にうちに来なさい、美味しいご飯を作ってあげるから」
「うん!」
「はい!」
「良い返事、それじゃあね、私は服を見にこの町に来たから」
「またね、母さん」
「ええ、また」
母と娘は名残惜しそうに離れ、アイリスは手を振りながら去って行く。メイドはアリシアにペコリと頭を下げてからアイリスを追って去って行く。
「良いお母さんですね」
「うん、とっても素敵な、最高のお母さんだわ」
アリシアはアイリスに愛し続けて貰った十八年間を思い出しながら、アイリスを最高の母だと称した。メアはアリシアのその言葉を聞き再び優しく微笑む。
「それでは仕事に戻りましょうか」
「ええ」
アイリスと別れたアリシアとメアは再び警備の仕事に戻って行く。
「見なさいメアリ、彼、不審な動きをしているわ」
「はい、キョロキョロと周囲の様子を伺ってます、お店の人に隙が出来たら何かを取るつもりなのでしょう」
アリシアとメアがいるのは様々な店や出店が立ち並ぶ商業区。アリシアとメアはとある男を見て怪しい思い建物の陰から宝石店の近くにいる男の様子を監視する。男は店主の隙を狙い宝石を盗もうとしているようだ。
「現行犯で抑えるわ、目を離さないようにね」
「はい」
いくら騎士と言えど、犯罪を犯していない者を問答無用で捕らえる事は出来ない。その為、彼が宝石に手を出すまでは、アリシアとメアは見守っている事しか出来ないのだ。
「ねぇねぇお兄さん」
(・・・仲間ね)
「なんだい?」
宝石店の店主に女が背後から話しかける、それに反応した店主は振り返り女の顔を見た、その隙に男が宝石に手を伸ばし宝石を握った。
「残念でした、現行犯よ。」
「な、何を!?、宝石を手に取っただけじゃないか!」
「ほう?、なら何故後ろを向いている店主さんに声をかけなかったのです?。しかも手の中に隠すように宝石を握り込んでますね。どう見ても盗むつもりですよね?」
「そしてあなたも仲間でしょう?。仲間が店主に声をかけ店主が後ろを向いた隙にあなたが宝石を奪う。単純だけど効果的なやり方ね。」
「く、くそ!」
「逃げるわよ!」
アリシアとメアにやろうとしていた事を言い当てられた泥棒二人は、アリシアの腕を振り払い逃走を図る。
「させない!」
「逃さない!」
アリシアは一瞬で男に近寄ると腕を掴み放り投げる。メアはタックルをし女を転けさせると地面に押さえ付ける。
「あ、あんた達ありがとう」
騒ぎを見てアリシア達を追って走って駆け付けた店主が、泥棒を捕らえたアリシア達に礼を言って来た。
「良いの良いの、私達はこれが仕事ですもの」
「寧ろ私達が居合わせて宝石が盗まれなくて良かったです」
「それでもありがとう、その二人は君達に任せても良いかい?」
「勿論、王城の牢屋にぶち込んでおくわ」
「店主さんも注意してお仕事をしてくださいね?。この国は平和だと言え悪い事をする人はどうしてもいますから」
「うん、君の言葉、肝に命じておくよ」
アリシアとメアは手を振りながら店に戻って行く店主に手を振り返しながら、泥棒二人を王城の牢屋に入れる為、王城に戻って行く。
王城
「おや?、ついこの間聖騎士になったアリシア君とその側付き君じゃないか」
アリシアとメアが捕らえた二人を無理矢理に動かしながら王城の牢屋に向けて進んでいると。一人の男が話しかけて来た。
「聖騎士バーニアル」
「うん、ちゃんと覚えてくれているみたいで良かったよ。その二人は町で何かやらかした者達かい?」
「はい、宝石店の宝石を盗もうとしていたので、現行犯で逮捕しました」
逮捕と言う言葉を聞き、泥棒二人は悔しそうな顔をした。このような顔をする時点でこの二人どう考えても反省していない。
「君は聖騎士となってから連日任務を成功させてると聞く、やるじゃないか聖騎士アリシア」
バーニアルは連日任務を成功させているアリシアの肩をやるじゃないかと叩く。
「い、いやぁ」
バーニアルに褒められたアリシアは嬉しそうに後頭部を触る。
「この調子で頑張れ、これから確実に失敗をするだろうが、あまり気にしないようにね、失敗は成長の糧にすれば良いだけなのだから」
「「はい!」」
バーニアルの言葉を聞いたアリシアとメアは大きな声で返事をする。二人の声を聞いたバーニアルは頷いてから去って行った。
「さてと、先輩との話であんた達を放置する事になったけど、牢屋に入れるからね」
「んな事分かってるよ、さっさとしやがれ」
「少しは反省して下さいよ、もう・・・」
アリシアとメアは反省していない男に呆れつつ男と女を牢屋に連れて行き。二人を牢屋番の騎士に引き渡した。そして再び町に戻り警備任務を遂行する。