七話
アンナの部屋
アンナに隅々まで体を洗われ放心状態なアリシアは椅子に座りポケーとしている、そんなアリシアにアンナはとある服を持って近付き着せ始めた。
「!!、何よ!この服!?」
「ゴスロリよ、似合うと思って借りて来たの」
アンナがアリシアに着させたのはゴスロリなドレスだ、黒がメインで白のワンポイントが入ったドレスは、アリシアを可愛らしく彩っている。
「こんな服を着て街になんて行けないわ、私の服は?」
「洗った」
「へっ?」
「気を遣いました」
「わざとねぇー!?」
「へっ」
「へっ、じゃなーい!」
アリシアはニヤニヤしているアンナの肩を掴み揺する、アンナはあーと言いながらアリシアに揺すられている。
「もう、仕方ないわね、ならパイロットスーツを着て街に行ってらっしゃいな」
「決めた私、この服で良い」
「あらさっきまでその服嫌がってたじゃない」
「あら?なんの話かしら?、私この服気に入ってるけど?」
「嘘おっしゃいな、ほら早く脱いで。パイロットスーツで街に出て、街の男達にたっぷりとその大きなおっぱいを見られて来なさい」
今度はパイロットスーツを持ってアリシアに近付く、基地の少数な男達にだけならともかく、街にいる多数の男にピッチリと浮かび上がった胸を見られるつもりはないアリシアは扉の方を見てから跳んだ。
「あっ!、ズルいわよ!」
「ふふん、このアリシア様の能力を使っただけよ、それじゃーねー!」
アンナの方を見てあっかんべーしたアリシアは扉を開けて部屋の外に出て街にへと向かって行った。
「逃げられたか・・・」
アリシアに逃げられたアンナは悔しそうにしつつも、次にアリシアに着せる服を考え始めるのだった。
ギグルス国首都アーシア
アンナにメア達が泊まっているホテルの名と場所を聞いていたアリシアは、道路の隅の歩道を歩いてホテルに向かっている。
「見て見てー、あの子かわいー」
「ホントだゴスロリって奴ー?」
「・・・」
街を歩くアリシアは男に見られるだけではなく女にもキャーキャー言われながら見られていた、あまりの恥ずかしさに顔を真っ赤にして歩くアリシアは、チラリと服屋を見て新しい服を買おうかとも思ったが、店の中に大勢の客がおりその真っ只中に飛び込む勇気が持てなかったので、そのまま俯いてホテルまで行く。
「キャー!」
その時だ、女性の悲鳴が聞こえて来た、その声を聞いて俯いて歩いていたアリシアは顔を上げ、悲鳴が聞こえた方向を見る、どうやら男に鞄を引ったくられたらしい。
「・・・、あーもう!」
この格好で目立つ行為をしたくないアリシアだが、エンジェルズの一員として困っている者を助けない訳には行かないので、走って道路を渡り男を追いかけ始める。
「可愛いのに足はやーい!」
「可愛いのに格好いい!」
走っていると女達にまたまたキャー!キャー!言われる、アリシアはあーあー聞こえないと思いつつ、前を走る男を追い、追いついたが・・・。
「はっ!」
「メア!?」
同じく悲鳴を聞いて走って来たらしいメアが、男を背負い投げて倒してしまった。
「あら、アリシアじゃないですか、その格好、可愛いですね、アンナさんに貰ったのですか?」
「そ、そんな感じ」
「ふぅん、よく似合ってますよ、今度一緒に服を見る時はこういう服を選んでみても良いかもしれませんね」
「・・・、それよりも鞄を取られた女の人に、鞄を返さなきゃね、そいつ押さえてて」
「了解です」
メアが背負い投げた時に男が落とした鞄を拾ったアリシアは、鞄を取られた彼女の元に向かう。
「はい鞄、これからは取られないように注意しなさい」
「ええありがとう、可愛い騎士さん」
「っー!、早く行きなさい!」
「ふふっ、ええ、本当にありがとう」
腰にガンブレードを付けている所からアリシアを可愛い騎士さんと呼んだ女性は、アリシアとその後方にいるメアに頭を下げると去って行った。アリシアは女性の姿が見えなくなるまで見守ってからメアの元に戻る。
「さてと可愛い騎士さん?、この人どうします?」
「軍に突き出す、それと可愛い騎士って呼ぶのはやめて」
「やです、この呼び方気に入りました」
「このー!」
「あはは!、ほら行きますよ!」
アリシアとメアは捕らえた男を突き出す為、軍基地に向かって行った。
所変わって、ハンバーガー屋、男を突き出し軍に拘束して貰ったアリシアとメアは、椅子に座りアリシアはチキンバーガー、メアはチーズバーガーを食べている。
「それで?、あなたあそこで何をしてたのよ?」
「ホテルの中で暇だったので、可愛い騎士さん、あなたを誘いに向かおうとしてたんです」
「ふぅん、メッシュさんは?」
「もう無視ですか・・・、早いですね・・・、部屋で寝てますよ」
「そっか」
メッシュが部屋で寝ていると聞いて、彼とも一緒に街を見て回りたかったアリシアはシュンとした。
(んん?、これは・・・)
そんなアリシアを見て何かを察したメアは、ちょっとした質問をしてみる事にした。
「そう言えば聞いてませんでしたよね?」
「何を?」
「そのですね?、アリシアって今好きな人っているんですか?」
「ねぇ?、今日のあなた熱でもあるの?」
「ありません、それで?どうなんです?、いるんですか?」
ずいっとアリシアに顔を近付けて質問をするメア、これは答えないと話が進まないなと思ったアリシアは頬を掻きながら口を開く。
「いるかいないかって言われると、いるよ、多分あの人は私の事ただの子供だって思ってるだろうけどね」
「へぇー、それって誰なんです?」
「どんどん聞いてくるわねあなた・・・、答えてあげるけども、私が好きなのはメッシュさんよ、小さい頃から面倒を見て貰ってるうちに好きになってたの」
「そうなのですか」
思い返せばメッシュといる時のアリシアは髪を触ったり、腕に抱きついたりして、彼に振り向いてもらえるようにアピールしていた、その事からメアはアリシアの言葉に納得をした。
「一つ言っておきますけど、あなたは確かに子供です、私もですけどね、でも十分に魅力的な女性です、だからメッシュさんにアタックしてみたらどうですか?、何もせずに挫けちゃうのは駄目だと思います」
「・・・、駄目よ、告白して駄目だったらと思うと、勇気が出ないの」
「好きなら当たって砕けろだと思いますけどねぇ」
「そうね、いつか勇気を持てる日が来れば当たって砕けてみせるわ、だからさ・・・それまでは見守っていて欲しいの」
「分かりました、あなたの恋、見守らせて頂きます」
そう言って優しく微笑むメア、アリシアはそんな彼女をみて口を尖らせながら質問する。
「所で、あなたはどうなのよ?、好きな人いるの?」
「沢山いますよ?、あなたの事、そして私をすぐに受け入れてくれた、エンジェルズの皆さんの事が大好きです」
「ふふ、あなたらしいわ」
「へへへ〜」
恋する少女とまだ恋をしていない少女は同時にハンバーガーを食べ終える。
「それではホテルに行きましょうか」
「ええ、あっ、そう言えば言い忘れてたけど、私ファントムを買う事になったわ」
「これまたいきなりですね・・・」
この後ホテルに着くまでの間に、メアがどの型のファントムを買うのか聞き、アリシアが熱い口調でレギルスの量産品を買うと説明するのだった。
「そう言えばお金はあるのですか?」
「ローンですが何か?」
「・・・」
ホテル
お菓子を買って来ると一階の店にメアは向かって行った、一人でメア達が泊まる部屋に入ったアリシアは、いびきを掻きながら眠るメッシュに近付く。
「相変わらず煩いわね、全く・・・」
そう言ってメアに色々と告白したのもあり大胆になっているアリシアは、メッシュが眠るベッドに寝転がる。
(わ、我ながら何をしているのかしら!?私!、でもこうしていると小さい頃を思い出すなぁ・・・)
幼い頃、アリシアは孤児院にやって来たメッシュに遊んで貰っていた、そして遊び疲れウトウトし始め、眠ってしまう前に、部屋に連れて行ってもらい寝かし付けて貰うと言う事が何度もあった。
(ねぇメッシュさん、あなたは私の事どう思ってるの?、私、私はあなたの事好きだよ?、小さい頃からずっと・・・)
眠るメッシュの顔を見つめ続けるアリシア、しばらくの間そうしていると、メッシュが苦しそうに呻き始め寝言を言った。
「ごめんな・・・、アリシア・・・、俺のせいでお前を一人にしちまって・・・」
メッシュの寝言を聞いたアリシアは思う、もしかしてメッシュは、ずっと知りたかった両親の死の真相を知っているのではないか?、と。
「メッシュさん・・・、あなた何を知っているの?」
アリシアの問い、それは眠るメッシュには届かない。
夜
メッシュはホテルにやって来たボスとバーで話していた。
「そういやよぉメッシュ、お前にこの前アリシアの事どう思ってるか聞いたよな?」
「そうだったな、それがどうしたよ?」
「あいつの事、女としてはどう思ってる?」
「!、ゴホッゴホッ・・・、いきなりなんだよ?」
ボスの予想外の質問にむせたメッシュは、息を整えなおしてからボスに話しかけた。
「気になっただけさ、それで?、どうなんだよ?」
「そうだな・・・、可愛いと思うよ、でも俺があいつに手を出しちゃいけねぇ、そうだろ?ボス」
「・・・あの事を気にしてるなら、あれはお前は何にも悪くねぇ、悪いのはお前らを行かせた俺だって、何度も言ってるだろうが」
「あんたのせいじゃねぇ、俺のせいだよボス、俺が弱えからあの時、あの二人は俺を守っちまった、そして逝っちまったんだ、だから俺にはあいつを守る責任はあっても、あいつの男になる事は絶対に許されねぇんだよ」
「そうか・・・」
メッシュの話を聞いたボスはタバコを吸い煙を口から吐く、その煙はどこか寂しげに天井にへと向かって行った。
「さぁ、こんな湿っぽい話はやめて楽しく酒を飲もうぜ、そういやよぉ、さっき部屋で聞いたんだがアリシアがファントムを買うんだってよ、だからドックを使わせてやってくれよな?、ボス」
「ほぅ・・・、うちの一番の美人のためだ、喜んで準備してやるよ、なんならお祝いパーティもしてやるさ」
「良いじゃねーか、そのパーティの時によ、あいつが好きなもんたっぷりと食わせてやろうぜ」
「おう」
二人の男は楽しく酒を飲みながら、近いうちに開くパーティの計画について話し合うのだった。




