一話
エンジェルズ本部
アリシアはメアを連れてエンジェルズの本部にやって来た、メアはとにかく目立ちたくないらしく、アリシアにピッタリと引っ付いて歩き顔はフードで隠している、しかしそれが余計に注目を集めているのに少女は気付いていない。
「あ、あの?、ここは?」
「ん?、私の家エンジェルズの本部よ、簡単に説明すると、お金の為ならなんでもするなんでも屋かな」
「ここが・・・」
ここがエンジェルズの本部だと聞いたメアはフードの中で明るい顔を見せた。
「うちってさぁ、あなたみたいに追われてる奴を匿ったりもしてるの、だから顔なんて隠さなくて良いわ、ここにいる奴らはみんなあなたの味方だから、ね?」
「は、はい」
(本当に同じ顔・・・)
アリシアに促されメアはフードを外した、アリシアはメアの顔を見て改めて自分と同じ顔だと思う、カツラを被って茶髪と金髪と言う二人の髪色を逆にすれば、変装も出来てしまいそうだ。
「あなたが何を思っているのかは分かります、私も驚きましたから」
「案外私達って双子の姉妹だったりしてね」
「それはありません、私は一人っ子ですから」
「真面目ね・・・、あなた・・・」
ちょっとした冗談に乗って欲しかったアリシアだが、まぁ良いかと思い、目の前の部屋を指差す。
「ここがうちのボスの部屋、どうやらあなたってここに用があったみたいだし、私が助けて丁度良かったわね?」
「はい、案内してくれて、ありがとうございます」
ペコリとメアは頭を下げる、自分と全く同じ顔の少女がする礼儀正しい仕草に、自分が礼儀正しくしたらこんな感じに見えるのかしら?と思いつつ、アリシアは部屋の扉をノックしてから、中に入る。
ボスの部屋
「ん?、なんだアリシア?、・・・、ちょっと来い」
メアの顔と金色の髪を見た途端、アリシアに側に来るように大男は言った、アリシアは首を傾げつつ、彼に近付く。
「良くやった」
「はっ?」
そしていきなり褒められた、いきなり褒められ頭の中が?でいっぱいなアリシアは混乱する。
「このお方はとにかく偉い人なんだよ、詳しくは話せんがな」
「へー」
とにかく偉い人と言われても、どう偉いのか分からんと思うアリシアは物凄い棒読みでへーと言った。
「よくぞお越しいただきました、道中大変だったでしょう?」
「はい凄く大変でした、今日もうっかりお花に見惚れていたら捕まってしまいましたし」
今の言葉を聞きアリシアは思う、この子天然だと。
「・・・、それで例の物は?」
「こちらに」
メアは懐から箱を取り出す、箱には七つの属性を示す紋章が刻まれていた。
「これの中に彼等への切り札となる武器の場所が書かれた地図が入っているのですね」
「はい・・・、でも開け方が分からなくて・・・、これの開け方を探す為にも様々な情報が入るここにやって来たのです」
(彼等って、この子を追ってたあの二人の事かなぁ)
「ねっ!、それ見せなさいよ」
「ん?、見るくらいなら良いが、落とすなよ?」
ボスはアリシアに箱を渡す、すると・・・?。
「んにゃあああああ!?」
アリシアの雷が勝手に発生した。
「何やっとるんだぁぁぁぁ!?、早く止めろ!」
「と言われても!、止まんないぃぃぃぃ!」
今まで自身の雷の力が暴走した事がないアリシアは、必死に止めようとするが、雷は止まらない、箱を離せばいいのでは思い、箱を離そうとするが、今度は指が動かないのに気付く、カチッ。
「はぁ・・・、はぁ・・・、止まったぁ・・・」
キッチリ三分間、雷を放出し続けたアリシアは、恨めしげに箱を睨みつつ、ボスに箱を返す。
「全く・・・、壊れなかったから良いものの・・・」
「ちょっと待って下さい!、箱を見せて!」
ボスが受け取った箱の変化に気付いたメアは、ボスに箱を見せるように言った、ボスは言われた通り少女に箱を見せる。
「やはり・・・、雷属性のマークが光っています・・・、これはつまり、分かりますよね?、カイグさん?」
「ええ・・・大体は・・・」
何かを理解したらしいカイグはアリシアに近付くと、全力で頭を撫で始める、良くやったぞぉぉぉ!、と言いながら。
なぜ褒められるのか分からないアリシアは完全に混乱しきった表情である。
「さて、それではええっと・・・」
「今は、メアと名乗っています」
「それではメアさん、今後の方針が見えて来たので、話し合うとしましょうか」
「はい」
「アリシア、お前は帰っても良いぞ」
「はーい」
色々分からない事だらけだが帰っても良いなら帰る、それがアリシアだ、手を振って来るメアに手を振り返してから、アリシアは部屋から町に夕食を買いに行った。
翌朝、アリシアの部屋
キッチリと磨かれ清潔なアリシアの部屋、ピシッと綺麗な姿勢で眠っているアリシアは目を覚まし、身を起こす。
「!?」
そして自分のベッドにメアが眠っているのを見て驚いた。
「えへへ〜、アリシアしゃーん・・・」
メアは寝言を言いスリスリとアリシアの腕に頬を擦り付ける、一方のアリシアは・・・?。
(夜、何した!?私!?、手を出してないわよね!?、女同士でそんな事してないわよね!?)
頭の中で大運動会をしていた。
「ん・・・」
「!」
大運動会の競技が思考停止という名の表彰式に移ろうとした頃、メアが目を覚ました、そしてアリシアの顔を見てポッと頬を染める。
「昨日は凄かったですね・・・」
「!?」
メアのこの言葉でアリシアの脳内大運動会は、脳内大戦争に変わった、頭の中で激しい銃声が飛び交う。
「な、何が凄かったのかしらぁ!?」
「はい・・・、ビリリと雷を発したと思ったら、次の瞬間には彼等の後ろにいて、敵を倒したあの手際の良さ、惚れ惚れいたしました」
(ん?)
「それに開け方が分からなかったあの箱の開け方もあなたのお陰で分かりました、本当に感謝しています」
(んん?)
「ですので、その・・・、私とお友達になってくれませんか?、アリシアさん」
(んんん?)
「ねぇメア、一つ聞きたいんだけど、私とあなたって夜、何かした?」
「へっ?、何のことです?」
「あぁ、そう、なら良いの、友達だっけ?良いわよ、なってあげる!、よろしくね!」
メアと何もなかったと安心したアリシアはホッとしつつメアに向けて手を差し出す、それを見てメアは可愛らしく微笑むと、アリシアと握手をした。