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セブンススタイル  作者: ブレイブ
第四部、一章、アリシア・リィターニア
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十一話、勇者メア


「見て!父さん!、あれって小さい頃に行った頃がある牧場じゃない?」


「よく覚えてたな」


「えへへ〜、あの日はすっごく楽しかったもん!」


後方からメアの耳に父と楽しそうに話すアリシアの声が聞こえて来る、メアはその声を聞き、レイティスの名を持つアリシアのとある言葉を思い出していた。


『なんで!、なんで壊したの!、あれは、あれはっ!、お父さんとお母さんに会う為に必要だったのにぃ!!』


(両親に愛されるだけでこんなにも変わるのですね・・・)


楽しそうに幸せそうに話すアリシアの声を聞き、メアは嬉しい気持ちと、レイティスの名を持つアリシアも両親さえいればここにいるアリシアと同じく幸せに生きていたのだろうと思う、複雑な気持ちに苛まれていた。


(明日奈さんとアリシアが私をシールドで覆った後、アリシアは私に何かを伝えた筈、私はそれを何としてでも思い出さなきゃいけない、とても大切な言葉だった筈だから・・・)


リーリナにしがみ付きながら俯き、世界がDIVAに書き換えられる寸前にアリシアが伝えて来た言葉は何だったのか?と考えるメア、そこにアリシアのとある言葉が聞こえて来た。


「ねっ?、あなたって勇者様なの?」


「!」


アリシアの言葉を聞いた途端、メアの脳に衝撃が走った、同時にメアはレイティスの名を持つアリシアの優しい笑顔と、言葉を思い出す。


『アトリーヌ帝国皇帝、アリシア・レイティスがあなたを任命する、全ての世界を取り戻す勇者として、あなたを・・・、ありがとうメア、私と何回も向き合ってくれて・・・、本当に感謝してる・・・』


『ダメよ、それじゃ魔力が足りない、そもそもあなたを書き換えから守れるかすら一種の賭けなのに、だからあなたに託すの、そしてもし書き換えらた世界に私がいたら、もう一度友達になってね!、私待ってる、だからまた会いましょう!、メア!』


「あぁ・・・、私、見れていたし聞けていたのですね、あなたの優しい笑顔と、大切な言葉を・・・、こんな大切な言葉と記憶を一瞬とは言え忘れていたなんて・・・」


天を仰ぎレイティスの名を持つアリシアの言葉を噛み締めるメアは、目を瞑り胸に手を当てる、暫くしてから目を開き、アリシアの顔を見る。


「はい、私は勇者です」


「やっぱり!、それならあの夢は本当の・・・」


「どうかしましたか?」


「な、なんでもないわ、気にしないで」


「?、分かりました」


気にしないでと言われた時点でメアにはこれ以上詮索出来ない、メアはアリシアに分かったと伝え頷いた。


「見なさい、不審人物ちゃん、あれが私達の国の王都アルトシャルセンよ、あなたはこれより王と会う、失礼のないように」


「分かっています」


「まっ、優しくて話の分かる人だから、そんなに緊張する必要はないわ」


「いきなり国のトップに会うんですよ?、緊張する必要がないってのは無理です」


「あはは、それもそうね、なら言い直しましょうか、出来るだけ緊張しないように」


「ふふっ、はい」


和やかに会話をしながら二頭の竜は王城のアリシアの部屋の竜着き場に降りて行く、メアは会話をしながら嬉しく思っていた、アリシアとこんなに和やかに話せる事を。




王都アルトシャルセン、王室


オーグルは仕事があると離れて行った、一人減り三人となった一行は王室のドアを開き二人の聖騎士は王の前で片膝を着く。


「シュルツ王、例の魔力反応の原因となる少女を連れて来ました、名はメアリ・アルビオンと言うそうです」


「そして、どうやら、この子は勇者であるようです」


「ほう?、勇者とな?、誠か?」


リーリナとアリシアの言葉を聞き、メアが勇者であると聞いた王は、本当かどうかをメアに聞いた。


「はい、私はとある皇帝から勇者として任命され、任命された直後に世界を崩壊させる光に巻き込まれ、気付けばあの場所に倒れていました」


「世界を崩壊させる光・・・?、つまりお前は異世界から来て、お前の世界はその光により滅んだという事か?」


「はい、私の世界は多重世界と呼ばれる多数の世界が連なる世界でした、でも・・・、私が知るどの世界にも転移出来ない、という事は万を超える世界が同時に滅びたと言う事です・・・」


「万を超える世界が滅びただと・・・、それ程の力を持つ者とは何者だ?」


シュルツ王は万を超える世界を滅ぼせる力を持つ存在は、自分が住むこの世界にとって脅威になると考え、その存在とは何者かメアに聞いた。


「彼の名はDIVAと言います、又の名を世界を書き換える力を持つ者、私が住んでいた世界を書き換える事により滅ぼした後、彼がこの世界を作ったのでしょう、つまりあなた達にとっては彼こそが創造神となります」


「・・・、お前の反応は突然あの場所に現れたと宮廷魔導師達も言っていた、そして私の経験から見てもお前の目は嘘を付いている者の目ではない、よって私はお前の言葉を信用しよう」


「ですが!王!、彼女は我が国への不法侵入罪に問われたくないから、作り話をした可能性もあります!」


王がメアの言葉を信じると聞き、リーリナが作り話の可能性もあると意見した、それを聞きアリシアが前に出る。


「リーリナ、大丈夫よ、彼女の言ってる言葉は本当だから、ねぇ勇者メアリ?、私ともう一度友達になってくれに来たのよね?」


「ッ!、もしかして!」


「今あなたが何を思ったのかは大体察しが付くわ、私があなたの事を覚えていると思ったのでしょう?、・・・ごめんなさい、私はあなたが言う多重世界の最期の日の夢を見ていただけなの、私があなたを勇者として任命する夢をね?、だから私はあなたを知らないの」


「そうなのですか・・・」


メアにはこれで分からなくなってしまった、前の世界の記憶を夢で見れると言う事は、ここにいるアリシアは前の世界のアリシアと同一人物と言う可能性もあるからだ、その場合はDIVAが何らかの方法でアリシアの記憶を封じていると言う事となる。


「・・・、つまりはアリシアが見ていた多重世界と言う世界の最期の日の夢はメアリ、お前が実際に経験したと言う訳か」


「そうなります」


「ふむふむ、更に信じるに値するな、リーリナ?、お前はどう思う?」


「・・・アリシアの方は夢とは言え証人が二人になったんです、信じますとも」


「うむ、ならば我が国としてもお前を裁く理由はなくなった、よく来てくれたな勇者メアリよ、そして世界を書き換えると言う恐ろしい力を持つ存在を私に伝えてくれてありがとう」


王は椅子から立ち上がりメアに近付くと肩を叩き感謝をした。


「感謝なんてしないで下さい・・・、私は前の世界を守れなかった存在なのですから・・・」


「だとしてもだ、お前がDIVAと言う存在を伝えてくれたお陰で、我々はその存在に対しての対策が出来るのだからな、お前も我々に貢献できたと思えば気が楽だろう?」


「たしかに・・・」


「メアリ、お前はどこか後ろ向きだが、私から一つ伝えておく、自信を持てそして前を見ろ、そうすれば必ず上手く行く、よいか?」


「はい!シュルツ王!」


シュルツ王のこの言葉はこれ以降メアを何度も勇気付ける、大切な言葉、となる。


「それではメアリ、お前がこの国で出歩く為の相応の身分が必要になるな、アリシア、お前には当たり前だが、まだ側付きはいないな?」


側付きとは聖騎士のサポートをし、時には執務の補助を、時には戦闘を共に行う者の事である。


「はい、だからこそ、今回の任務は父さんの手を借りました」


「良し、ならばメアリ・アルビオン、お前を聖騎士アリシア・リィターニアの側付きとして任命する、同時にお前は我が国の騎士団に入って貰う事になるが、よいか?」


「勿論です!」


側付きになれば、アリシアの側にいる事が出来る、そう考えたメアは顔を輝かせ王の言葉を了承した。


「うむうむ、それではアリシアよ、このメアリ・アルビオンと共に聖騎士として精進すると良い、お前達二人には期待しているぞ」


「「はい!」」


王に期待していると言われた、アリシアとメアは二人顔を見合わせ頷き合ってから王の顔を見て返事をした、そしてアリシアはメアの方に体を向ける。


「コホン、さっきも言ったけども、メアリ!、私と友達になってくれないかしら!」


(この言葉、あの時はアリシアを利用するつもりだった私の嘘の始まりの言葉、でもアリシアは嘘偽りなく私と友達になりたいと思ってこの言葉を言ってくれている、だからこそ私は!絶対にアリシアに嘘をつかないと誓いましょう、そして・・・!今度こそ世界をアリシアと一緒に救う!)


友達になろうと柔らかく微笑みながら言い手を差し出して来るアリシア、それを見てメアは心の中で誓いを立てる、そして自身も手を差し出してアリシアと手を繋いだ。


「はい!友達になりましょう!、アリシア!」


「ふふっ、これからよろしく!」


「はいっ!」


こうしてアリシアとメアは再び友となった、そして同時に物語が再び動き始める。



???


「あの二人がまた出会ったか、フン、無駄だがな」


様々な機械が立ち並ぶ無機質な空間にDIVAがいた、アリシアの監視をしていた彼は、メアが現れた事に驚きはした物の、メア一人ではエクストールの体を手にしている彼にとっては大した脅威ではない為、無駄だと鼻で笑った。


「それに・・・、ククッ」


DIVAは部屋の中央にあるカプセルを見て不気味に笑う、その内部には一人の少女が眠っていた。


「アリシアのデータを元に作ったこれがあれば、俺がわざわざ出向かなくても奴等など簡単に始末出来る、クッククク!、ハハハハハ!」


DIVAの不気味な笑い声が無機質な空間に鳴り響く。

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