六話、聖騎士大会3
王都、アルトシャルセン、闘技場
アヌバスとライロスの戦いが続いている。
「はぁぁあ!」
アヌバスはブースターを吹かし加速させた斬撃をライロスが剣から放出した水で作ったシールドに何度も叩き付けている。
「くっ!!グッ!」
ライロスは必死な顔でアヌバスの斬撃に耐え続ける、しかし剣を振るうアヌバスに隙はなく、ライロスから動き隙を作るしか突破口はなさそうだ。
「うぉぉ!」
「今だ!」
ライロスはアヌバスが剣を振りかぶった瞬間、シールドを変形させ、棘を飛び出させた。
「甘いな!」
しかしアヌバスは飛び出して来た棘を体を仰け反らして避け、その姿勢から振りかぶっていた剣を振るい棘を斬り飛ばした、棘を斬り飛ばされた事によりライロスのシールドが崩壊した。
「くそぉ!」
ライロスは踏み込んで来るアヌバスから逃げる様に下がりつつ剣を振るうが、アヌバスはその剣を自身の剣で弾く、その重い一撃によりアヌバスは剣を取り落とし、ライロスは敗北した。
「まだまだ鍛錬が足りんな、ライロス」
「・・・あぁ、あんたに負けてるようじゃな」
負けを認めたライロスはアヌバスに向けて手を振ると去って行った、アヌバスはその背中を見送ってから更なる戦いに向かって行く。
(凄い、あれがこの王都を守る騎士団の一番隊アヌバス、私なら壊すのにもっと時間がかかる筈のあの水の盾をあんな簡単に壊すなんて・・・なんて凄い・・・、でもあんな凄い人にも勝って私が聖騎士になるんだ!、私をここまで育ててくれた父さんと母さんの為に!)
聖騎士になる為にアヌバスに勝つと誓ったアリシアは、アヌバスに戦いを挑もうとするが、アリシアの前に二人の少女が立ち塞がる、ベルシとナータだ。
「やぁ後輩ちゃん」
「何か御用かしら?」
アヌバスと戦う為には邪魔な二人にアリシアは何か用かと聞く。
「私達ってさぁ、あんたさえいなきゃ最年少で聖騎士になったって栄誉を受ける事が出来るわけね?」
「だからさぁ、その栄誉を受ける為に邪魔なアンタを協力して倒す事にしたってわけ、だから大人しく私達に倒されな!」
ベルシとナータ、二人の十九歳の少女は十八歳の少女、アリシアに斬りかかる。
「・・・私はそんな栄誉を受ける為に聖騎士になろうとしてるんじゃない!、家族の為に聖騎士を目指してるんだ!、だから私は栄誉を受ける為とかそんなつまらない事に拘ってるあなた達には絶対に負けない!」
アリシアは栄誉を受ける為じゃないと言い切り、斬りかかって来た二人の剣を、両手に持つ剣で受け止めた。
「言ってくれるじゃないか!」
「なら私達に勝ってみなよ!」
「言われなくても!勝ってやるわよ!」
アリシアは両腕に力を込め無理矢理に左右から押し込んで来る二人を押し切った、そして宙に剣を創造すると、二人に差し向ける。
「こんなにも沢山の剣を・・・」
「任せな!」
ナータは剣を振るう、すると強風が吹きアリシアが差し向けた剣達が吹き飛ばされ地面に落下した、ナータの剣の名はウィンドソード、能力は風を起こす事が出来ると言う物だ。
「よくやった!」
ベルシはアリシアの剣を落としたナータを褒めつつ、アリシアに迫り剣を振るう、すると刀身が鞭のように伸びアリシアのエリシャディアに絡み付いた、ベルシの剣の名はウィップソード、刀身が鞭のように伸びる事からこの名が付けられた。
「お前の剣を奪ってやるよ!」
「協力する!」
ベルシはグイグイと引っ張りアリシアからエリシャディアを奪おうとする、ナータは風の刃をいくつも飛ばし、ベルシの援護をする。
「・・・」
アリシアは迫る風の刃を冷静に見据え、地面に落ちている剣を操るとぶつけて防いだ、そしてウィップソードに地面に落ちた剣をぶつけエリシャディアの拘束が緩んだ所で引き抜いた。
「も、もう一度!」
「二度目はないわ!」
ベルシはアリシアの剣を掴もうとウィップソードを振るうが、アリシアは左手に持つ剣を掴ませる事で防ぎベルシに迫った、そしてウィップソードにエリシャディアを叩き付けウィップソードを取り落とさせた。
「このぉ!」
ナータが強風をアリシアに差し向け、強風をその身に受けたアリシアは吹き飛ばされた、それでも剣を取り落とさなかったアリシアは、地面に落ちている剣を操りナータに差し向ける。
「風がある限り喰らわないって!」
ナータは風を操りアリシアが差し向けて剣を再び弾く。
「そうね、宙を飛ばす剣じゃあなたには届かないみたい、でもね?」
ナータが襲いかかってくる剣を防ぐ事に集中している間に、アリシアはナータの懐に潜っていた。
「あなた、同時に複数の風を操る事が出来ないみたいね、だから私の剣を防いでいる間にここまで迫る事が出来たわ!、これで終わりよ!」
アリシアは剣を振るい、ナータの剣を弾き飛ばし、勝利した。
「・・・、負けた・・・」
「二人で挑んだのに・・・」
アリシアに敗北したベルシとナータは落ち込んだ表情で闘技場から去って行った。
「後四人・・・、頑張ろう!」




